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第1449回 狙う価値の高い「父」と「母の父」の組み合わせをチェック!

2020/8/24(月)

今回は好成績を残している「父」と「母の父」の組み合わせ、いわゆる「ニックス」について考えてみたい。ニックスとは「優秀な競走馬が出やすい血統の組み合わせ」を意味する競馬用語。今回は特に単勝回収率に着目し、馬券的な価値の高い「父」と「母の父」の組み合わせを調べていく。集計期間は2016年1月5日〜2020年8月16日。データの分析には、JRA-VAN DataLab.TARGET frontier JVを利用した。

■表1 芝・ニックス別成績(単勝回収率順)

父 x 母の父 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回率 複回率
ロードカナロア x アグネスタキオン 13-  10-  13-  84/ 120 10.8% 19.2% 30.0% 239% 78%
ダイワメジャー x ジャングルポケット 13-  14-  18-  72/ 117 11.1% 23.1% 38.5% 142% 159%
ロードカナロア x クロフネ 16-   5-  12-  67/ 100 16.0% 21.0% 33.0% 140% 74%
ハービンジャー x キングカメハメハ 22-  15-  26- 155/ 218 10.1% 17.0% 28.9% 118% 115%
ステイゴールド x シンボリクリスエス 19-  16-  15-  89/ 139 13.7% 25.2% 36.0% 104% 92%
ディープインパクト x クロフネ 30-  23-  16- 107/ 176 17.0% 30.1% 39.2% 102% 93%
オルフェーヴル x キングカメハメハ 18-  10-  13- 101/ 142 12.7% 19.7% 28.9% 100% 90%
ルーラーシップ x ゼンノロブロイ 12-  17-  13-  63/ 105 11.4% 27.6% 40.0% 100% 102%
ステイゴールド x クロフネ 23-  16-  11- 101/ 151 15.2% 25.8% 33.1% 95% 82%
ハービンジャー x ディープインパクト 22-  15-  11- 121/ 169 13.0% 21.9% 28.4% 93% 67%
ディープインパクト x Unbridled's Song 30-  12-  15-  73/ 130 23.1% 32.3% 43.8% 91% 74%
ディープインパクト x キングカメハメハ 54-  32-  33- 158/ 277 19.5% 31.0% 43.0% 90% 86%

※100走以上で、勝率10%かつ単勝回収率90%以上

2020/5/31 東京11R 東京優駿(日本ダービー)(G1) 1着 5番 コントレイル

表1は、芝におけるニックスを表すデータで、集計期間内に100走以上し、勝率10%かつ単勝回収率90%以上を満たす「父」と「母の父」の組み合わせを単勝回収率順で掲載した。トップの単勝回収率239%を記録したのはロードカナロア×アグネスタキオン(この場合、ロードカナロアが父、アグネスタキオンが母の父を表す。以下も同様)。ほかの組み合わせと比べて、好走率に関しては特別高いわけではなく、オープンでの勝ち鞍もないが、1勝〜3勝クラスでよく勝っている。これに続くダイワメジャー×ジャングルポケットの組み合わせからは、16年函館スプリントSを制したソルヴェイグが出ている。複勝系の数値がより優秀なのは3着が多いことの裏返しとも言えるが、安定感は評価できる。そのほか、ひときわ高い勝率を記録しているのがディープインパクト×Unbridled's Songで、この組み合わせから生まれた代表馬はもちろん、今年春のクラシックで無敗の二冠を達成したコントレイルだ。

■表2 ダート・ニックス別成績(単勝回収率順)

父 x 母の父 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回率 複回率
ゴールドアリュール x キングカメハメハ 18- 20- 17- 87/142 12.7% 26.8% 38.7% 263% 133%
シンボリクリスエス x スペシャルウィーク 16- 11- 10- 96/133 12.0% 20.3% 27.8% 156% 112%
キングカメハメハ x フレンチデピュティ 16- 18- 12-109/155 10.3% 21.9% 29.7% 154% 108%
キングカメハメハ x アグネスタキオン 31- 17- 16-156/220 14.1% 21.8% 29.1% 107% 101%
ロードカナロア x サンデーサイレンス 12- 13- 11- 73/109 11.0% 22.9% 33.0% 100% 126%
ヘニーヒューズ x アグネスタキオン 14-  8-  8- 97/127 11.0% 17.3% 23.6% 94% 64%
サウスヴィグラス x ダンスインザダーク 13- 13-  3- 76/105 12.4% 24.8% 27.6% 92% 94%

※100走以上で「勝率10%かつ単勝回収率90%以上」

表2は、ダートにおけるニックスを表すデータで、掲載の基準は表1と同様。単勝回収率トップのゴールドアリュール×キングカメハメハは好走率も高く、19年3月3日の総武S(オープン特別)ではマイネルオフィールが最低14番人気で勝利するなど激走も少なくない。これに続くシンボリクリスエス×スペシャルウィークキングカメハメハ×フレンチデピュティも150%を超える単勝回収率を記録。前者は4〜9番人気の中穴クラスの数値がよく、後者は10番人気以下の大穴に注意したい。

■表3 1000〜1300m・ニックス別成績(単勝回収率順)

馬場 父 x 母の父 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回率 複回率
ヨハネスブルグ x サンデーサイレンス 7- 3- 0-42/52 13.5% 19.2% 19.2% 205% 66%
クロフネ x サンデーサイレンス 7- 2- 2-54/65 10.8% 13.8% 16.9% 132% 55%
ロードカナロア x ディープインパクト 9- 5- 6-39/59 15.3% 23.7% 33.9% 90% 82%
ダート サウスヴィグラス x ブライアンズタイム 6- 4- 4-38/52 11.5% 19.2% 26.9% 215% 89%
ヘニーヒューズ x アグネスタキオン 7- 4- 2-39/52 13.5% 21.2% 25.0% 126% 64%
サウスヴィグラス x ダンスインザダーク 10-11- 2-41/64 15.6% 32.8% 35.9% 91% 119%

※50走以上で「勝率10%かつ単勝回収率90%以上」

表3〜6ではもうすこし細かく、距離別のデータを見ていきたい。表3は1000〜1300mのニックスを芝・ダート別で示したデータで、掲載の基準は50走以上、勝率10%かつ単勝回収率90%以上とした(表4、5も同様。表6は30走以上)。

芝で単勝回収率100%以上となったのはヨハネスブルグ×サンデーサイレンスクロフネ×サンデーサイレンスの2組。どちらも1着に対して2、3着の数が少なく、好走したときには勝ちきる傾向が見られる。産駒がさらに増えてくるだろうロードカナロア×ディープインパクトは今後注目の組み合わせで、重賞でも18年小倉2歳Sをファンタジストが制してすでに結果を出している。

一方、ダートで基準を満たした3組のうち、父サウスヴィグラスの組み合わせが2組。サウスヴィグラス×ブライアンズタイムは全6勝中3勝が7番人気以下と激走が目立ち、サウスヴィグラス×ダンスインザダークの連対率32.8%は馬連の軸馬にもってこいの数値だ。

■表4 1400〜1600m・ニックス別成績(単勝回収率順)

馬場 父 x 母の父 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回率 複回率
ディープインパクト x サクラバクシンオー 6- 3- 5-46/60 10.0% 15.0% 23.3% 228% 106%
ハーツクライ x ブライアンズタイム 7- 5- 5-34/51 13.7% 23.5% 33.3% 202% 100%
ルーラーシップ x ディープインパクト 10- 4- 6-51/71 14.1% 19.7% 28.2% 159% 72%
キングカメハメハ x サンデーサイレンス 24- 19- 16-159/218 11.0% 19.7% 27.1% 120% 72%
タイキシャトル x スペシャルウィーク 7- 5- 5-37/54 13.0% 22.2% 31.5% 117% 91%
ダイワメジャー x シンボリクリスエス 12- 8- 7-36/63 19.0% 31.7% 42.9% 96% 85%
ディープインパクト x キングカメハメハ 11- 5-10-41/67 16.4% 23.9% 38.8% 95% 89%
ダート キングカメハメハ x アグネスタキオン 9- 5- 4-42/60 15.0% 23.3% 30.0% 140% 111%

※50走以上で「勝率10%かつ単勝回収率90%以上」

表4は1400〜1600mのニックスを示したデータで、単勝回収率200%を超えたのは2組。ただし、このうちディープインパクト×サクラバクシンオーは全6勝中5勝をエントシャイデン1頭が挙げており、やや再現性に乏しいきらいがある。もうひとつのハーツクライ×ブライアンズタイムは異なる3頭が勝利を挙げ、そのすべてが複数の勝利をマーク。うち1頭は、重賞のダービー卿CTやターコイズSを勝ったマジックタイムだ。ルーラーシップ×ディープインパクトでは菊花賞馬キセキが代表例だが、その印象とは違ってマイル近辺での活躍が目立つ。ほかに好走率が高いのはダイワメジャー×シンボリクリスエスディープインパクト×キングカメハメハといったあたり。なお、ダートで基準を満たしたのはキングカメハメハ×アグネスタキオンのみだった。

■表5 1700〜2000m・ニックス別成績(単勝回収率順)

馬場 父 x 母の父 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回率 複回率
ハーツクライ x Unbridled's Song 13- 5- 4-32/54 24.1% 33.3% 40.7% 205% 90%
ハービンジャー x ディープインパクト 14- 7- 6-50/77 18.2% 27.3% 35.1% 141% 84%
ノヴェリスト x アグネスタキオン 10- 4- 7-48/69 14.5% 20.3% 30.4% 134% 112%
エイシンフラッシュ x アグネスタキオン 9- 3- 3-50/65 13.8% 18.5% 23.1% 133% 88%
ディープインパクト x Unbridled's Song 21- 7- 7-37/72 29.2% 38.9% 48.6% 123% 83%
ディープインパクト x Kingmambo 10- 5- 3-47/65 15.4% 23.1% 27.7% 117% 56%
ディープインパクト x Acatenango 15- 7- 4-25/51 29.4% 43.1% 51.0% 115% 84%
ハービンジャー x キングカメハメハ 15- 9-16-87/127 11.8% 18.9% 31.5% 103% 103%
ステイゴールド x クロフネ 11- 7- 6-56/80 13.8% 22.5% 30.0% 94% 90%
ディープインパクト x Galileo 10- 4- 8-30/52 19.2% 26.9% 42.3% 94% 64%
ハービンジャー x サンデーサイレンス 72-42-53-425/592 12.2% 19.3% 28.2% 91% 82%
ダート ゼンノロブロイ x エンドスウィープ 6- 8- 5-34/53 11.3% 26.4% 35.8% 327% 119%
カジノドライヴ x スペシャルウィーク 9- 4- 5-32/50 18.0% 26.0% 36.0% 318% 140%
ゴールドアリュール x キングカメハメハ 12-13-12-57/94 12.8% 26.6% 39.4% 313% 148%
ゴールドアリュール x ティンバーカントリー 8- 3- 2-43/56 14.3% 19.6% 23.2% 228% 91%
シンボリクリスエス x スペシャルウィーク 15-10- 8-65/98 15.3% 25.5% 33.7% 195% 139%
ディープインパクト x フレンチデピュティ 7- 3- 7-35/52 13.5% 19.2% 32.7% 163% 122%
アイルハヴアナザー x フジキセキ 12-13- 4-22/51 23.5% 49.0% 56.9% 144% 110%
ルーラーシップ x フジキセキ 7- 4- 2-47/60 11.7% 18.3% 21.7% 122% 66%
キングカメハメハ x アグネスタキオン 22-11- 9-88/130 16.9% 25.4% 32.3% 117% 98%
エンパイアメーカー x フジキセキ 10- 2- 6-46/64 15.6% 18.8% 28.1% 112% 64%

※50走以上で「勝率10%かつ単勝回収率90%以上」

表5は1700〜2000mのニックスを示したデータ。この距離はレース数が1000〜1300mや1400〜1600mより多く、基準を満たしたニックスの組み合わせもぐっと増えた。

芝で単勝回収率200%を超えた唯一の組み合わせがハーツクライ×Unbridled's Songで、主な馬に18年大阪杯を制したスワーヴリチャードがいる。勝率24.1%が示す通り、しっかり勝ちきっていることが高い単勝回収率につながっている。同じ母の父では、ディープインパクト×Unbridled's Songがさらに上回る勝率29.2%を記録。これは表1の項で前述した通り、今年の二冠馬コントレイルの組み合わせで、1、2番人気に推されたときは【16.4.4.7】、勝率51.6%、単勝回収率138%とかなり優秀な数値が残っている。勝率20%を超えるもうひとつの組み合わせはディープインパクト×Acatenangoで、これも昨年の菊花賞馬ワールドプレミアや16年紫苑Sを勝ったビッシュを送り出した好ニックスだ。

ダートではゼンノロブロイ×エンドスウィープカジノドライヴ×スペシャルウィークゴールドアリュール×キングカメハメハの3組が単勝回収率300%をオーバー。あるいは、勝率23.5%、複勝率56.9%と好走率が極めて高いアイルハヴアナザー×フジキセキのような組み合わせもあり、ダート中距離には注目のニックスが数多く存在している。

■表6 2100m以上・ニックス別成績(単勝回収率順)

馬場 父 x 母の父 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回率 複回率
ハービンジャー x キングカメハメハ 6- 4- 3-29/42 14.3% 23.8% 31.0% 285% 183%
ディープインパクト x Sholokhov 9- 4- 7-20/40 22.5% 32.5% 50.0% 229% 102%
ディープインパクト x Monsun 7- 4- 2-27/40 17.5% 27.5% 32.5% 145% 97%
ステイゴールド x メジロマックイーン 8- 3- 1-49/61 13.1% 18.0% 19.7% 143% 51%
ディープインパクト x ブライアンズタイム 9- 4- 7-41/61 14.8% 21.3% 32.8% 136% 68%
キングカメハメハ x ステイゴールド 3- 2- 2-23/30 10.0% 16.7% 23.3% 124% 60%
ルーラーシップ x サンデーサイレンス 19- 9- 5-45/78 24.4% 35.9% 42.3% 111% 85%
ハーツクライ x シンボリクリスエス 10- 5- 8-20/43 23.3% 34.9% 53.5% 104% 111%
ハービンジャー x アグネスタキオン 7-10-11-40/68 10.3% 25.0% 41.2% 101% 109%
ルーラーシップ x フジキセキ 5- 2- 2-21/30 16.7% 23.3% 30.0% 91% 75%
ダート クロフネ x サンデーサイレンス 8- 5- 3-24/40 20.0% 32.5% 40.0% 160% 138%

※30走以上で「勝率10%かつ単勝回収率90%以上」

2018/12/23 中山11R 有馬記念(G1) 1着 8番 ブラストワンピース

表6は2100m以上のニックスを示したデータ。芝で単勝回収率285%を記録したのがハービンジャー×キングカメハメハで、17年エリザベス女王杯のモズカッチャン、18年有馬記念のブラストワンピースと2頭のG1馬が出ている。続くディープインパクト×Sholokhovは同じ母を持つ産駒3頭で全9勝を記録しており、これは参考記録とすべきか。オルフェーヴルやゴールドシップを出した「黄金配合」として有名なステイゴールド×メジロマックイーンもランクイン。また、好走率が高い組み合わせとしてルーラーシップ×サンデーサイレンスハーツクライ×シンボリクリスエスの2組も挙げておきたい。ダートはこの距離のレースが少ないこともあって1組のみとなったが、そのクロフネ×サンデーサイレンスの数値は非常に良好だ。

ライタープロフィール

出川塁(でがわ るい)

1977年熊本県生まれ。上智大学文学部卒業後、出版社2社で競馬専門誌、競馬書籍の編集に携わり、2007年からフリーライターに。「競馬最強の法則」「サラブレ」「優駿」などへ寄稿するほか、出版社勤務時代を含めて制作に関わった競馬書籍は多数。馬券は単勝派だが、焼肉はタン塩派というわけではない。メインの競馬のほか、サッカーでも密かに活動中。


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