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第1447回 セレクトセール2020・高額取引馬(1歳)トップ10はこの馬だ!

2020/8/17(月)

セレクトセールは一般社団法人日本競走馬協会が主催する日本最大のセリ市だ。セレクトセールを通じて取り引きされた馬のなかから、これまでに数多くのG1馬が誕生している。今年の桜花賞・オークスを制し、無敗で牝馬2冠を達成したデアリングタクトも同セール出身馬だ。

今年のセレクトセールは先月(7月)13〜14日に開催された。歴代最高価格での落札こそなかったが、数億円もする高額馬が次々と取り引きされた。JRA-VAN DataLab.TARGET frontier JVを利用すると、これら取り引きされた馬の情報も簡単に入手することができる。今回は1歳馬にスポットを当て、高額取引馬トップ10を調べてみることにする。

■表1 セレクトセール2020・高額取引馬(1歳)トップ10

順位 取引価格(税込み) 馬名 生産者 父名 母名 母父名 母父父 落札者
1 5億6100万円 シーヴの19 ノーザンファーム ディープインパクト シーヴ Mineshaft A.P.Indy 国本哲秀
2 4億4000万円 フォエヴァーダーリングの19 ノーザンファーム ディープインパクト フォエヴァーダーリング Congrats A.P.Indy ダノックス
3 2億6400万円 テディーズプロミスの19 ノーザンファーム ディープインパクト テディーズプロミス Salt Lake Deputy Minister キーファーズ
4 2億4200万円 アブソリュートレディの19 社台ファーム ディープインパクト アブソリュートレディ Galileo Sadler's Wells 金子真人HD
5 2億2000万円 カンビーナの19 社台ファーム ディープインパクト カンビーナ Hawk Wing Woodman 島川隆哉
6 2億900万円 キャンプロックの19 ノーザンファーム ディープインパクト キャンプロック Myboycharlie Danetime 野田みづき
6 2億900万円 ラッキートゥビーミーの19 ノーザンファーム ハーツクライ ラッキートゥビーミー Bernstein Storm Cat エフレーシング
6 2億900万円 パレスルーマーの19 ノーザンファーム ディープインパクト パレスルーマー Royal Anthem Theatrical 麻布商事
9 1億8700万円 カルティカの19 社台ファーム ディープインパクト カルティカ Rainbow Quest Blushing Groom 廣崎利洋HD
9 1億8700万円 マルシアーノの19 ノーザンファーム キングカメハメハ マルシアーノ フジキセキ サンデーサイレンス 麻布商事

セレクトセール2020・高額取引馬(1歳)のトップ10は表1の通りだ。1位は5億6100円(税込み、以下同様)で取り引きされたシーヴの19。父がディープインパクト、母父がMineshaftという血統だ。同じ父と母父の配合であるJRA所属馬は極めて少なく、全兄にあたるサトノスカイターフ(栗東・池江泰寿厩舎)という馬しか見当たらなかった。同馬は現2歳でまだデビューはしていないが、もし無事に出走できるようであれば非常に注目されることだろう。

2020/6/7 東京11R 安田記念(G1) 1着 11番 グランアレグリア

また、シーヴの19の母父父はA.P.Indyなので、今年の安田記念を制したグランアレグリア(母父Tapit)や2019年大阪杯を勝ったアルアイン(母父Essence of Dubai)の配合と近いイメージだ。2位の4億4000万円で取り引きされたフォエヴァーダーリングの19も母父父がA.P.Indyだった。ディープインパクト×A.P.Indyの特徴がいい方にでれば、瞬発力と持続力を兼ね備えた馬となり、芝1600〜2000mあたりでの活躍が期待できそうだ。

2019/11/23 京都11R 京都2歳ステークス(G3) 1着 8番 マイラプソディ

3位のテディーズプロミスの19は、19年のラジオNIKKEI杯京都2歳Sを優勝したマイラプソディ(父ハーツクライ)の半妹にあたる。この兄弟の馬主はキーファーズということで、落札者のこの血統への思い入れを感じる。配合をさらに調べると、興味深いことが判明した。父ディープインパクト×母父Salt Lakeの配合馬が極めて少ないということだ。母父Salt LakeはDeputy Ministerの系統で、クロフネやフレンチデピュティらと同じで決してマイナーではない。むしろ父ディープインパクト×母父Deputy Minister系は相性が良く、ダービー馬マカヒキなど活躍馬が多数出ている。母父がSalt LakeのJRA所属馬(引退馬含む)を調べたところ、約70頭がヒットした。代表格としては牝馬3冠などG1・5勝を達成したアパパネ(父キングカメハメハ)がいる。

4位のアブソリュートレディの19は母父がGalileo。父ディープインパクトとの配合馬はカンタービレ(18年ローズS・フラワーC)やヴァンキッシュラン(16年青葉賞)らがいる。まだJRAのG1を制した馬はいないが、本馬の落札者は金子真人ホールディングス。数多くのG1を勝っている馬主だけにおのずと期待が集まる。

5位はカンビーナの19。全兄に今年の阪神大賞典2着のトーセンカンビーナがいる。同馬の馬主である島川隆哉氏が、カンビーナの19も落札した。

6位は2億900万円で3頭が並んだ。キャンプロックの19の母父はMyboycharlie(マイボーイチャーリー)。同馬を母父に持つJRAの産駒は非常に少なく、めずらしい血統だ。Myboycharlieは現役時代、2007年にモルニ賞というフランスの2歳G1(芝1200m)を勝っている。母父父はDanetimeで、デインヒルの系統だ。

ラッキートゥビーミーの19は父ハーツクライ×母父Bernsteinという配合。2018年の京都新聞杯で2着に入ったアドマイヤアルバと同じ配合だ。パレスルーマーの19の母父はRoyal Anthem。母父父はTheatricalでヌレイエフの系統だ。

9位は1億8700万円でカルティカの19、マルシアーノの19の2頭。トップ10のうちディープインパクト産駒が8頭を占めるなか、マルシアーノの19はキングカメハメハ産駒の牝馬だった。また、トップ10のなかで唯一、母父(フジキセキ)もJRA所属馬として日本で走った。父キングカメハメハ×母父フジキセキの配合馬は数多くおり、代表例はユラノト(19年フェブラリーS3着)やグレートタイム(18年ジャパンダートダービー3着)。どちらかと言えばダートを得意とするタイプが多い印象だ。

ライタープロフィール

小田原智大(おだわら ともひろ)

1975年6月、東京生まれ。早稲田大学商学部卒業後、業界紙記者を経て、(株)レイヤード入社。ライター&エディターとして活躍。JRA-VANデータの配信初期から、いち早くデータ競馬の有効性に着目する。05年5月より「競馬 最強の法則WEB」にて、障害戦を除く全重賞レースの傾向と対策、予想を展開。「オッズパーク ダートグレードデータ作戦」では、地方競馬の重賞の攻略にも取り組んでいる。仕事の関係でなかなか競馬場には行けなくなったが、年に1、2回行くローカル遠征が楽しみ。


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