データde出〜た
第1396回 ダート頂上決戦を制する馬は? フェブラリーS分析
2020/2/20(木)
中央競馬ではその年最初のG1となるフェブラリーS。地方競馬のダートグレード競走も含めて考えると、前年秋の南部杯から続いたダートG1・Jpn1戦線にひと区切りをつける一戦だ。ただ、今年は前年12月以降に行われたチャンピオンズC、東京大賞典、そして川崎記念の優勝馬がいずれも不在。この3レースの勝者が出走しないフェブラリーSは4年ぶりで、前回・2016年はモーニンがG1初出走・初制覇を飾っていた。今年はどんな結果が待っているのか、過去の傾向を見てみたい。データの分析には、JRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用した。
■表1 人気別成績
人気 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回収 | 複回収 |
1 | 4-2-2-2/10 | 40.0% | 60.0% | 80.0% | 99% | 107% |
2 | 2-2-2-4/10 | 20.0% | 40.0% | 60.0% | 101% | 109% |
3 | 1-1-1-7/10 | 10.0% | 20.0% | 30.0% | 67% | 66% |
4 | 1-1-1-7/10 | 10.0% | 20.0% | 30.0% | 107% | 116% |
5 | 0-3-0-7/10 | 0.0% | 30.0% | 30.0% | 0% | 72% |
6 | 0-0-1-9/10 | 0.0% | 0.0% | 10.0% | 0% | 35% |
7 | 1-0-2-7/10 | 10.0% | 10.0% | 30.0% | 243% | 143% |
8 | 0-0-1-9/10 | 0.0% | 0.0% | 10.0% | 0% | 34% |
9 | 0-1-0-9/10 | 0.0% | 10.0% | 10.0% | 0% | 60% |
10〜 | 1-0-0-66/67 | 1.5% | 1.5% | 1.5% | 406% | 49% |
過去10年、1番人気【4.2.2.2】、2番人気【2.2.2.4】と1〜2番人気は安定しており、2014年以降は少なくともそのどちらか一方は連対を確保している。対して、2桁人気馬の好走は1頭のみ。その1頭、単勝16番人気で優勝したコパノリッキー(2014年)の激走が印象的だが、2015年以降の近5年は馬連最高配当1570円と平穏だ。
■表2 年齢別成績(牡・セン馬のみ)
年齢 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回収 | 複回収 | 1〜3番人気 | 同複勝率 |
4歳 | 3-2-1-22/28 | 10.7% | 17.9% | 21.4% | 1007% | 151% | 2-1-0-6/9 | 33.3% |
5歳 | 5-3-5-17/30 | 16.7% | 26.7% | 43.3% | 55% | 87% | 5-2-3-2/12 | 83.3% |
6歳 | 2-2-2-28/34 | 5.9% | 11.8% | 17.6% | 102% | 66% | 0-1-2-4/7 | 42.9% |
7歳 | 0-2-1-31/34 | 0.0% | 5.9% | 8.8% | 0% | 19% | 0-1-0-1/2 | 50.0% |
8歳 | 0-1-1-16/18 | 0.0% | 5.6% | 11.1% | 0% | 52% | 該当なし | |
9歳以上 | 0-0-0-4/4 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% |
牡・セン馬の年齢別(牝馬は本年登録なし)では、5歳馬が複勝率43.3%などの好成績。特に3番人気以内に推された馬は同83.3%の高率を記録している。4歳と6歳の比較では、4歳馬がやや優勢だ。なお、7歳以上で馬券に絡んだ5頭のうち船橋所属のフリオーソを除くJRA勢4頭は、本競走で既に3着以内に入った実績があった。
■表3 枠番別成績
枠番 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回収 | 複回収 | 過去5年 |
1枠 | 1-0-0-18/19 | 5.3% | 5.3% | 5.3% | 35% | 13% | 0-0-0-9/9 |
2枠 | 3-2-2-12/19 | 15.8% | 26.3% | 36.8% | 46% | 109% | 2-0-2-5/9 |
3枠 | 0-2-3-15/20 | 0.0% | 10.0% | 25.0% | 0% | 72% | 0-1-1-8/10 |
4枠 | 1-1-0-18/20 | 5.0% | 10.0% | 10.0% | 13% | 12% | 1-1-0-8/10 |
5枠 | 0-1-4-14/19 | 0.0% | 5.3% | 26.3% | 0% | 56% | 0-1-2-7/10 |
6枠 | 2-0-1-17/20 | 10.0% | 10.0% | 15.0% | 71% | 29% | 1-0-0-9/10 |
7枠 | 2-3-0-15/20 | 10.0% | 25.0% | 25.0% | 1386% | 207% | 1-2-0-7/10 |
8枠 | 1-1-0-18/20 | 5.0% | 10.0% | 10.0% | 121% | 45% | 0-0-0-10/10 |
枠番別では内から外まで好走馬が出ているが、中では2〜3枠の【3.4.5.27】複勝率30.8%あたりが目立つ。また、1枠と8枠の3着以内馬計3頭は2014年以前のもので、ここ5年は全19頭が馬券圏外敗退を喫していることには注意したい。
■表4 前走着順別成績
前走着順 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回収 | 複回収 | 参考:チャンピオンズC |
1着 | 7-4-4-25/40 | 17.5% | 27.5% | 37.5% | 81% | 81% | 4-5-3-30/42 |
2着 | 0-3-3-15/21 | 0.0% | 14.3% | 28.6% | 0% | 62% | 3-1-2-15/21 |
3着 | 1-2-1-14/18 | 5.6% | 16.7% | 22.2% | 135% | 84% | 1-2-3-17/23 |
4〜5着 | 0-1-0-25/26 | 0.0% | 3.8% | 3.8% | 0% | 23% | 2-1-0-26/29 |
6〜9着 | 1-0-1-26/28 | 3.6% | 3.6% | 7.1% | 971% | 130% | 0-1-0-20/21 |
10着〜 | 1-0-1-21/23 | 4.3% | 4.3% | 8.7% | 21% | 16% | 0-0-2-19/21 |
※取消、除外を挟む馬は除く
前走で3着以内に好走していた馬、特に前走を勝ってきた馬が好成績を残しているのがフェブラリーSの特徴だ。同じダートG1・チャンピオンズCも前走から連続で好走する馬が多いレースだが、それと比較しても前走1着馬の安定ぶりは光っている。
■表5 前走4着以下からの好走馬
年 | 馬名 | 性齢 | 人気 | 着順 | 前走 | 主な実績 | |||
レース | 人気 | 着順 | 東京ダ1600m | ダ1600mG1 | |||||
2013 | エスポワールシチー | 牡8 | 9 | 2 | 東京大賞典 | 4 | 5 | フェブラリーS1着 | 南部杯1着 |
2014 | コパノリッキー | 牡4 | 16 | 1 | フェアウェルS | 3 | 9 | ヒヤシンスS3着 | 未経験 |
2015 | ベストウォーリア | 牡5 | 3 | 3 | チャンピオンズC | 9 | 11 | ユニコーンS1着 | 南部杯1着 |
2017 | ゴールドドリーム | 牡4 | 2 | 1 | チャンピオンズC | 2 | 12 | ユニコーンS1着 | 未経験 |
2018 | インカンテーション | 牡8 | 6 | 3 | 東京大賞典 | 4 | 7 | 武蔵野S1着 | フェブラリーS2着 |
前走4着以下から巻き返して馬券に絡んだ馬は、表5の5頭のみ。このうち、表1でも例外的な存在だったコパノリッキーを除く4頭は、すべて本競走と同じ東京ダート1600mで重賞を制した実績馬。また、5歳以上の3頭はダート1600mのG1で連対した実績もあった。
■表6 主な前走レース別成績(前走1〜3着馬のみ)
前走レース名 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回収 | 複回収 | 過去5年 | 同複勝率 |
根岸S | 3-2-2-17/24 | 12.5% | 20.8% | 29.2% | 167% | 106% | 2-1-2-7 | 41.7% |
東海S | 3-1-1-6/11 | 27.3% | 36.4% | 45.5% | 103% | 111% | 2-1-1-3 | 57.1% |
JCダート | 2-0-1-1/4 | 50.0% | 50.0% | 75.0% | 130% | 102% | チャンピオンズCへ移行 | |
川崎記念 | 0-3-1-5/9 | 0.0% | 33.3% | 44.4% | 0% | 94% | 0-0-0-4 | 0.0% |
チャンピオンズC | 0-2-0-1/3 | 0.0% | 66.7% | 66.7% | 0% | 83% | 0-2-0-1 | 66.7% |
東京大賞典 | 0-1-3-2/6 | 0.0% | 16.7% | 66.7% | 0% | 135% | 0-1-0-1 | 50.0% |
ここからは、3着以内馬30頭中25頭を占める、前走でも3着以内に入っていた馬(表4)にかぎった成績を見ていきたい。まず表6は前走レース別の成績。このうち川崎記念組は近年好走がなく、ここ5年は根岸S、東海S、チャンピオンズC、そして東京大賞典の4レースからしか好走馬が出ていない(前走4着以下も同様・表5)。
■表7 前走根岸S、東海Sからの好走馬
年 | 馬名 | 性齢 | 人気 | 着順 | 前走 | 主なダート1600m実績 | ||
レース | 人気 | 着順 | ||||||
2012 | テスタマッタ | 牡6 | 7 | 1 | 根岸S | 5 | 3 | フェブラリーS2着 |
シルクフォーチュン | 牡6 | 4 | 2 | 4 | 1 | 南部杯3着 | ||
2016 | モーニン | 牡4 | 2 | 1 | 1 | 1 | 武蔵野S3着 | |
2017 | ベストウォーリア | 牡7 | 5 | 2 | 3 | 2 | 南部杯1着 | |
カフジテイク | 牡5 | 1 | 3 | 1 | 1 | 武蔵野S3着 | ||
2018 | ノンコノユメ | セ6 | 4 | 1 | 6 | 1 | フェブラリーS2着 | |
2019 | ユラノト | 牡5 | 8 | 3 | 3 | 2 | 武蔵野S4着 | |
2013 | グレープブランデー | 牡5 | 3 | 1 | 東海S | 4 | 1 | ユニコーンS2着 |
2015 | コパノリッキー | 牡5 | 1 | 1 | 1 | 1 | フェブラリーS1着 | |
インカンテーション | 牡5 | 5 | 2 | 3 | 3 | 500万条件4着 | ||
2016 | アスカノロマン | 牡5 | 7 | 3 | 4 | 1 | 未経験 | |
2019 | インティ | 牡5 | 1 | 1 | 1 | 1 | 未経験 |
表7は前走根岸S、東海S3着以内からの好走馬12頭。このうち10頭は前走連対馬、特に東海S組は4頭中3頭が優勝馬だった。また、200mの距離延長になる根岸S組は、ダート1600mの重賞で3着以内の実績を持つ馬が7頭中6頭を占めている。対して距離短縮の東海S組は、特に1600mでの実績は問われない。東海S組なら好走した5頭すべてが該当する5歳馬に注目したい。
■表8 前走G1・Jpn1からの好走馬(前走1〜3着馬のみ)
年 | 馬名 | 性齢 | 人気 | 着順 | 前走 | 主な実績 | |||
レース | 人気 | 着順 | 東京ダ1600m | ダ1600mG1 | |||||
2010 | エスポワールシチー | 牡5 | 1 | 1 | JCダート | 1 | 1 | 1600万条件1着 | 南部杯1着 |
テスタマッタ | 牡4 | 5 | 2 | 川崎記念 | 4 | 3 | 武蔵野S11着 | 未経験 | |
サクセスブロッケン | 牡5 | 2 | 3 | 東京大賞典 | 2 | 1 | フェブラリーS1着 | フェブラリーS1着 | |
2011 | トランセンド | 牡5 | 1 | 1 | JCダート | 1 | 1 | 武蔵野S6着 | 未経験 |
フリオーソ(地方) | 牡7 | 3 | 2 | 川崎記念 | 1 | 1 | 未経験 | 全日本2歳優駿1着 | |
バーディバーディ | 牡4 | 4 | 3 | 東京大賞典 | 5 | 3 | ユニコーンS1着 | 南部杯5着 | |
2012 | ワンダーアキュート | 牡6 | 2 | 3 | 東京大賞典 | 3 | 2 | 武蔵野S1着 | 未経験 |
2013 | ワンダーアキュート | 牡7 | 7 | 3 | 川崎記念 | 1 | 2 | 武蔵野S1着 | フェブラリーS3着 |
2014 | ホッコータルマエ | 牡5 | 2 | 2 | 川崎記念 | 1 | 1 | 青梅特別1着 | かしわ記念1着 |
ベルシャザール | 牡6 | 1 | 3 | JCダート | 3 | 1 | 武蔵野S1着 | 未経験 | |
2016 | ノンコノユメ | 牡4 | 1 | 2 | チャンピオンズC | 3 | 2 | 武蔵野S1着 | 未経験 |
2018 | ゴールドドリーム | 牡5 | 1 | 2 | チャンピオンズC | 8 | 1 | フェブラリーS1着 | フェブラリーS1着 |
2019 | ゴールドドリーム | 牡6 | 2 | 2 | 東京大賞典 | 1 | 2 | フェブラリーS1着 | かしわ記念1着 |
最後に表8は、前走G1、Jpn1・3着以内からの好走馬13頭である。このうち8頭は、フェブラリーSと同じ東京ダート1600mの重賞優勝実績馬。残る5頭中3頭はダート1600mのG1馬だった。前走4着以下(表4)の5歳以上馬3頭と違い、その双方で優勝や連対実績を持つ必要はないが、2012年以降の7頭中6頭が該当する「東京ダート1600mでの重賞優勝」実績には特に注目したい。
【結論】
フェブラリーSは表1で挙げたように、まず1〜2番人気馬への注目が欠かせないレースで、今年は恐らくモズアスコットとインティの2頭がその支持を受けそうだ。モズアスコットは前走・根岸Sを優勝。一方、昨年の覇者・インティは東海Sで3着に敗退してしまった。表4の通り前走1着馬が特に強いレースだけに、この2頭の比較ではモズアスコットを上位とみたい。
ただ、モズアスコットは根岸Sが初ダートだったため、この組の好走馬の大半に共通する「ダート1600m重賞好走」実績を持たない(表7)。芝1600mのG1・安田記念制覇で相殺できると考えるべきか判断が難しいところだ。一方のインティは東海Sが3着だったこと、そして昨年からひとつ年齢を重ねて6歳になったことも減点材料になる(同)。
このように、1〜2番人気が予想される2頭には不安材料もあるだけに、他馬が割って入る場面も十分に考えられる。その筆頭格は前走・東京大賞典2着で、2018年には本競走優勝の実績を持つ8歳馬・ノンコノユメ(表8)。表2本文で触れたように、年齢別では成績が落ちる7歳以上のベテランでも、過去のフェブラリーSで好走した実績があれば侮れない。
また、その表2で好成績だった5歳馬からは、アルクトスとタイムフライヤーを挙げたい。アルクトスは前走・Jpn1の南部杯で2着に好走。4走前には東京ダート1600mでリステッド競走のオアシスSを制しており、表8の各馬に近い成績と考えられる。もし3番人気(以内)に推されるようなら、大きく評価を上げてもいいだろう(表2)。
タイムフライヤーは2走前、ダート3戦目だった武蔵野Sで2着。芝ではG1・ホープフルSを制している。ダート経験が浅いため表5の条件を満たすには至らないものの、「G1実績馬が重賞好走歴のあるコースで巻き返す」と広い意味で捉えれば、エスポワールシチーやベストウォーリア、インカンテーションと近いタイプだ。
ライタープロフィール
浅田知広(あさだ ともひろ)
1970年12月、埼玉県生まれ。立命館大学文学部中退後、夕刊紙レース部のアルバイト、競馬データベース会社を経て、現在はフリー。パソコンが広く普及する以前から、パソコン通信でデータ手入力方式の競馬予想ソフトを公開するなど、競馬のみならずPCやネットワークにも精通。その知識を活かし、Webや雑誌で競馬ライターとして活躍するかたわら、ネットワークの専門誌にも連載を持つ。