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第1364回 人気2頭の一騎打ち? それとも!? 天皇賞(秋)を分析する

2019/10/24(木)

東京競馬場の芝2000mを舞台に争われる秋の天皇賞。荒れるG1の代名詞となっていた時期もあったが、ここ20年ほどは人気馬がおおむね安定した走りを見せている。ただ、今年は人気を集めそうな2頭、アーモンドアイが安田記念以来の休養明けで、サートゥルナーリアは古馬と初対戦の3歳馬。それでも2頭の一騎打ちとなるのか、あるいは波乱の結末が待っているのか。データから分析してみたい。データの分析には、JRA-VAN DataLab.TARGET frontier JV馬天楼 for データde出〜たを利用した。

■表1 人気別成績

人気 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回収 複回収
1 4-2-2-2/10 40.0% 60.0% 80.0% 123% 108%
2 1-3-2-4/10 10.0% 40.0% 60.0% 31% 110%
3 0-0-1-9/10 0.0% 0.0% 10.0% 0% 15%
4 0-2-0-8/10 0.0% 20.0% 20.0% 0% 55%
5 4-0-0-6/10 40.0% 40.0% 40.0% 546% 112%
6 0-0-4-6/10 0.0% 0.0% 40.0% 0% 119%
7 1-2-0-7/10 10.0% 30.0% 30.0% 333% 190%
8 0-0-0-10/10 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0%
9 0-0-0-10/10 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0%
10 0-1-0-9/10 0.0% 10.0% 10.0% 0% 59%
11〜 0-0-1-69/70 0.0% 0.0% 1.4% 0% 8%

2017/10/29 東京11R 天皇賞(秋)(G1) 1着 7番 キタサンブラック(1番人気)

過去10年、1番人気が連対率60.0%、2番人気は複勝率60.0%と、1、2番人気の信頼性は上々だ。3〜4番人気は計【0.2.1.17】複勝率15.0%と奮わず、5〜7番人気が【5.2.4.19】同36.7%と健闘。8番人気以下になると3着以内に2頭のみと、穴馬の出番は少ない。

■表2 1〜3着馬の人気と、主な配当

人気 配当
1着 2着 3着 馬連 馬単 3連複 3連単
2009 5 7 1 16,490円 29,270円 9,970円 102,110円
2010 1 4 2 1,030円 1,660円 1,680円 7,480円
2011 7 2 6 7,020円 23,560円 22,790円 214,010円
2012 5 1 2 3,250円 8,980円 3,990円 39,520円
2013 5 1 3 1,190円 4,510円 1,400円 14,310円
2014 5 2 1 3,140円 6,780円 2,850円 23,290円
2015 1 10 6 7,340円 10,390円 24,850円 109,310円
2016 1 7 6 2,420円 3,700円 7,430円 32,400円
2017 1 2 13 900円 1,660円 15,290円 55,320円
2018 2 4 6 1,520円 2,370円 6,420円 24,230円

注意したいのは、1、2番人気馬によるワンツー決着は過去10年で1回しかないことだ。1、2番人気が揃って連対を外したのも10年前の一度きりで、どちらか一方のみ連対した年が8回を占める。

■表3 年齢別成績

年齢 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回収 複回収 1〜5番人気 同複勝率 6番人気以下 同複勝率
3歳 0-2-1-11/14 0.0% 14.3% 21.4% 0% 36% 0-2-1-4 42.9% 0-0-0-7 0.0%
4歳 3-5-4-30/42 7.1% 19.0% 28.6% 49% 87% 3-3-0-11 35.3% 0-2-4-19 24.0%
5歳 6-3-4-33/46 13.0% 19.6% 28.3% 154% 80% 5-2-3-7 58.8% 1-1-1-26 10.3%
6歳 0-0-1-28/29 0.0% 0.0% 3.4% 0% 5% 0-0-1-6 14.3% 0-0-0-22 0.0%
7歳以上 1-0-0-38/39 2.6% 2.6% 2.6% 29% 6% 1-0-0-1 50.0% 0-0-0-37 0.0%

年齢別では4、5歳馬が中心になり、ともに連対率19%台、複勝率28%台。6勝を挙げている5歳馬の勝率が高いが、馬券に絡む確率は互角だ。また、4歳の3着以内馬12頭のうち半数の6頭が6番人気以下なのに対し、5歳馬は同13頭中10頭が5番人気以内という違いがある。

■表4 前走レース別成績(本年登録馬の前走)

前走 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回収 複回収
毎日王冠 4-3-5-43/55 7.3% 12.7% 21.8% 99% 60%
宝塚記念 2-4-2-14/22 9.1% 27.3% 36.4% 24% 100%
札幌記念 2-1-1-15/19 10.5% 15.8% 21.1% 194% 76%
オールカマー 1-0-0-26/27 3.7% 3.7% 3.7% 11% 5%
京都大賞典 1-0-0-12/13 7.7% 7.7% 7.7% 26% 12%
安田記念 0-1-0-3/4 0.0% 25.0% 25.0% 0% 87%
神戸新聞杯 0-0-0-1/1 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0%
新潟記念 0-0-0-5/5 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0%
府中牝馬S 該当なし

過去10年の前走レース別で好走馬を多く出しているのは、毎日王冠、宝塚記念、そして札幌記念の3競走。オールカマーと京都大賞典からの出走馬も計40頭を数えるが、オールカマーは昨年のレイデオロ、京都大賞典は2015年のラブリーデイが優勝した以外は、すべて馬券圏外に敗退した。もし狙うなら相手候補ではなく、思い切って馬単や3連単の1着に据える手もある。

■表5 3歳馬の前走内容別成績(1986年以降)

前走 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回収 複回収
着順 1着 1-2-3-3/9 11.1% 33.3% 66.7% 72% 107%
2〜5着 1-2-0-9/12 8.3% 25.0% 25.0% 61% 122%
6〜9着 0-1-0-10/11 0.0% 9.1% 9.1% 0% 19%
10着〜 0-0-0-1/1 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0%
人気 1番人気 1-5-3-5/14 7.1% 42.9% 64.3% 46% 175%
2番人気 1-0-0-4/5 20.0% 20.0% 20.0% 148% 40%
3番人気以下 0-0-0-14/14 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0%
年齢条件 3歳限定(中央) 1-2-2-9/14 7.1% 21.4% 35.7% 46% 117%
3歳以上(中央) 1-3-1-13/18 5.6% 22.2% 27.8% 41% 55%

冒頭でも触れたように、今年はアーモンドアイとサートゥルナーリアが人気を集めそうだが、アーモンドアイは安田記念、サートゥルナーリアは神戸新聞杯と、どちらも上記の主要3競走以外からの参戦になる。そこで過去10年からさらに範囲を広げ、JRA-VAN Data Lab.でデータが提供されている1986年以降について調べてみた。

まず表5は、3歳馬の前走内容別成績である。今年のサートゥルナーリアは神戸新聞杯を1番人気で制してきたが、表にあるように前走1着馬、前走1番人気馬はともに複勝率60%台の好成績をマーク。また、前走が3歳馬同士のレースでも複勝率35.7%と、古馬との対戦だった馬の同27.8%を上回っており、不安視する必要はまったくない。
ここで気になるのは、優勝馬が1996年・バブルガムフェロー、そして2002年・シンボリクリスエスの2頭しか出ていないこと(ともに3番人気)。1、2番人気に推された馬では、1988年のオグリキャップがタマモクロスとの一騎打ちの末に2着、2012年のフェノーメノはエイシンフラッシュの末脚に屈してやはり2着に敗れるなど、勝ち星には手が届いていない。

■表6 宝塚記念、札幌記念以外からの休養明けで7番人気以内に推された馬(1986年以降)

馬名 人気 着順 前走 前走人気 前走着順
1992 ホワイトストーン 6 5 安田記念 6 9
トウカイテイオー 1 7 天皇賞(春) 1 5
1995 マチカネタンホイザ 5 6 函館記念 1 8
ナリタブライアン 1 12 阪神大賞典 1 1
1997 ロイヤルタッチ 6 4 天皇賞(春) 4
1998 グルメフロンティア 7 11 フェブラリーS 6 1
1999 エアジハード 5 3 安田記念 4 1
2005 ゼンノロブロイ 1 2 インターナショナルS 2
2007 カンパニー 6 3 関屋記念 1 1
2008 ダイワスカーレット 2 2 大阪杯(G2) 1 1
2011 ペルーサ 6 3 天皇賞(春) 4 8
2012 トーセンジョーダン 7 13 天皇賞(春) 3 2
2014 エピファネイア 4 6 QE2世C 4
フェノーメノ 3 14 天皇賞(春) 4 1
2015 サトノクラウン 7 17 日本ダービー 3 3
2016 リアルスティール 7 2 安田記念 2 11
エイシンヒカリ 2 12 プリンスオブWS 6
2018 スワーヴリチャード 1 10 安田記念 1 3

続いて表6は、前走宝塚記念、札幌記念以外からの休養明け(中9週以上)で本競走に出走し、7番人気以内に推された馬の成績だ(8番人気以下は全馬4着以下)。休養明けにもかかわらず一定の支持を受けただけあって、その多くがG1級の実力馬のため、実績は取捨の参考にはならない。また、馬券に絡んだ6頭中4頭は前走2着以内だが、今年のアーモンドアイと同じく安田記念以来の出走だった2016年2着のリアルスティールは、同レース11着から巻き返している。
この表6に挙げた18頭の成績は計【0.3.3.12】で複勝率33.3%。同じ1986年以降の本競走7番人気以内全馬では【31.29.23.148】同35.9%と、7番人気以内であれば休養明けでも馬券に絡む確率はほぼ変わらない。ただ、優勝馬が出ていないという点で、先の3歳馬と同じく勝ち切るまではどうか、という不安が残る。

■表7 前走毎日王冠からの3着以内好走馬

馬名 人気 着順 前走人気 前走着順 芝2000m実績
2009 カンパニー 5 1 4 1  
ウオッカ 1 3 1 2  
2010 ペルーサ 4 2 1 5 3戦3勝
2011 ダークシャドウ 2 2 1 1  
2012 エイシンフラッシュ 5 1 2 9 京成杯1着、皐月賞3着
2013 ジャスタウェイ 5 1 6 2  
エイシンフラッシュ 3 3 4 1  
2014 スピルバーグ 5 1 5 3  
2015 ステファノス 10 2 6 7 QE2世C2着
イスラボニータ 6 3 7 3  
2016 ステファノス 6 3 2 5 前年本競走2着
2018 キセキ 6 3 6 3  

ここからは過去10年に戻り、前走レース別の成績をみていきたい。表7は、前走毎日王冠組の好走馬12頭で、うち8頭は同レースでも1〜3着に入っていた。残る4頭のうち3頭は、芝2000mのG1で3着以内の実績があり、同じく4頭中3頭は毎日王冠で2番人気以内だった。

■表8 前走宝塚記念からの3着以内好走馬

馬名 人気 着順 前走人気 前走着順 過去1年の主な実績
2009 スクリーンヒーロー 7 2 6 5 ジャパンC1着
2010 ブエナビスタ 1 1 1 2 ヴィクトリアM1着
2012 ルーラーシップ 2 3 2 2 QE2世C1着
2013 ジェンティルドンナ 1 2 1 3 ジャパンC1着
2014 ジェンティルドンナ 2 2 3 9 ジャパンC1着
2017 キタサンブラック 1 1 1 9 ジャパンC1着
サトノクラウン 2 2 3 1 香港ヴァーズ1着
レインボーライン 13 3 7 5 (宝塚記念5着)

前走宝塚記念からの好走馬は表8の8頭。表には記していないが、G1で馬券圏内2回以上、または東京でのG1優勝実績(スクリーンヒーロー)を持つことが好走への最低条件になる。それに加え、過去1年以内のG1を制していることが重要だ。例外は一昨年3着のレインボーライン1頭で、同じ宝塚記念組で1年以内のG1優勝実績もあったキタサンブラックとサトノクラウンには先着できなかった。

■表9 その他のレースからの3着以内好走馬

馬名 人気 着順 前走 前走人気 前走着順 備考
2010 アーネストリー 2 3 札幌記念 1 1  
2011 トーセンジョーダン 7 1 札幌記念 1 1  
ペルーサ 6 3 天皇賞(春) 4 8 前年本競走2着
2012 フェノーメノ 1 2 セントライト記念 1 1  
2014 イスラボニータ 1 3 セントライト記念 1 1  
2015 ラブリーデイ 1 1 京都大賞典 1 1  
2016 モーリス 1 1 札幌記念 1 2 過去1年G1・3勝(海外2勝)
リアルスティール 7 2 安田記念 2 11 2走前ドバイターフ1着
2018 レイデオロ 2 1 オールカマー 1 1  
サングレーザー 4 2 札幌記念 2 1  

最後に表9は、札幌記念も含めたその他のレースからの好走馬10頭。全馬がG1またはG2からの参戦だが、前走がG2だった8頭は、そのG2戦を2番人気以内で連対しており、1番人気で優勝しているのが理想だ(8頭中6頭)。また、前走で敗れていた3頭をみると、2011年のペルーサは前年の本競走2着馬。そして2016年のモーリスとリアルスティールは、過去1年以内に海外G1制覇を果たしていた。

【結論】

人気の中心になりそうなアーモンドアイは前走・安田記念こそ3着に敗れたが、2走前のドバイターフは優勝。そしてサートゥルナーリアは前走・神戸新聞杯が1番人気1着。ともに表9の条件を満たし、馬券候補としては特に減点材料はなさそうだ。ただ、表5〜6から、どちらも1着候補には強く推しづらい。また、表2にあったように、1、2番人気馬のどちらか一方のみ連対した年が10年のうち8回。共倒れまでは考えづらいものの、他馬による一角崩しも十分に起こりうる。

2019/3/31 阪神11R 大阪杯(G1) 1着 3番 アルアイン

その候補は、まず今年の大阪杯を制したアルアイン。2017年の皐月賞も合わせ、この距離でG1・2勝の実績馬だ。前走・宝塚記念は4着に敗れたが、この組は過去1年のG1勝ちさえあれば前走着順は問われない(表8)。

毎日王冠組(表7)ではアエロリットが2着で条件をクリア。芝2000mは秋華賞7着の1戦のみだが、2013年には同じく毎日王冠で2着だったジャスタウェイが芝2000m【0.0.1.2】(中山金杯3着)で優勝した例などがあり、この馬も一発の可能性は秘めている。

そしてもう1頭、その他のレース(表9)からウインブライトの名前も挙げておきたい。前走がG1ではなくG2のオールカマーで9着という点はマイナス材料も、2走前には香港でクイーンエリザベス2世Cを制覇。「別路線組・前走2着以下」という括りでみれば、この海外G1制覇によって侮れない存在になる。以上の3頭はいずれも、過去10年で最多の6勝をマークする5歳馬だ(表3)。

ライタープロフィール

浅田知広(あさだ ともひろ)

1970年12月、埼玉県生まれ。立命館大学文学部中退後、夕刊紙レース部のアルバイト、競馬データベース会社を経て、現在はフリー。パソコンが広く普及する以前から、パソコン通信でデータ手入力方式の競馬予想ソフトを公開するなど、競馬のみならずPCやネットワークにも精通。その知識を活かし、Webや雑誌で競馬ライターとして活躍するかたわら、ネットワークの専門誌にも連載を持つ。


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