データde出〜た
第1359回 キンカメを継ぐ万能タイプ!? ルーラーシップ産駒を分析する。
2019/10/7(月)
今年はディープインパクト、キングカメハメハという大種牡馬を立て続けに失うことになった。残念なことではあるが、キングカメハメハの後継種牡馬としては、ロードカナロアやルーラーシップが大きな役割を担えそうだ。そこで今回はルーラーシップ産駒に注目して、成績を分析してみることにした。データの集計・分析にはJRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用した。
ルーラーシップは父にキングカメハメハ、母にオークスや天皇賞(秋)を制したエアグルーヴを持つ超良血馬としてデビュー当初から注目が高かった。同期にはヴィクトワールピサやエイシンフラッシュがいる。重賞5勝を挙げるも、2012年のクイーンエリザベス2世C(香港)が唯一のG1勝ちで、国内のG1は勝つことができなかった。同じキングカメハメハ産駒でも、現役時代の成績はロードカナロアの方が圧倒的に上だ。しかし、産駒成績はルーラーシップも素晴らしい。その良質な血統は偉大で、活躍馬を次々に出している。
■表1 ルーラーシップ産駒の本賞金上位馬
馬名 | 性 | 賞金合計 | 主な実績 |
キセキ | 牡 | 49480万円 | 宝塚記念2着、菊花賞 |
ダンビュライト | 牡 | 26850万円 | 京都記念、AJC杯 |
メールドグラース | 牡 | 18180万円 | 小倉記念、鳴尾記念 |
リオンリオン | 牡 | 13480万円 | セントライト記念、青葉賞 |
リリーノーブル | 牝 | 12600万円 | オークス2着 |
ディアンドル | 牝 | 11380万円 | 葵S |
アディラート | 牡 | 10964万円 | |
ムイトオブリガード | 牡 | 10075万円 | アル共杯2着 |
ウラヌスチャーム | 牝 | 8870万円 | 中山牝馬S2着 |
サンリヴァル | 牡 | 8610万円 | 皐月賞2着 |
マイブルーヘブン | 牡 | 8605万円 | 新潟ジャンプS |
レジェンドセラー | 牡 | 7042万円 | |
イシュトヴァーン | 牡 | 6760万円 | コーラルS2着 |
インヘリットデール | 牝 | 6710万円 | |
スペリオルシチー | 牡 | 6650万円 |
※2019/9/29開催終了時成績。
表1はルーラーシップ産駒の代表馬一覧。獲得した本賞金(2019/9/29開催終了時まで)が高い順に並べた。菊花賞馬のキセキを筆頭にダンビュライト、メールドグラース、リオンリオンといった馬が重賞を勝利している。牝馬はオークス2着のリリーノーブルや、先日のスプリンターズSは残念な結果だったが芝短距離戦で活躍するディアンドル。ムイトオブリガードやウラヌスチャームらも重賞勝ちを虎視眈々と狙っている。先日の紫苑Sでは、ルーラーシップ産駒のパッシングスルーとフェアリーポルカでワン・ツー・フィニッシュを決めた。
産駒は芝の中長距離タイプが最も多いものの、牡馬・牝馬を問わず活躍馬が輩出。短距離やダート、障害でも走る馬が出ており、バラエティーに富んでいる。
■表2 ルーラーシップ産駒の年齢・月別成績(芝・ダート・障害)
年齢 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 |
2歳・7-9月 | 31- 35- 38- 182/ 286 | 10.8% | 23.1% | 36.4% |
2歳・10-12 | 37- 39- 35- 277/ 388 | 9.5% | 19.6% | 28.6% |
3歳・1-3月 | 42- 38- 37- 356/ 473 | 8.9% | 16.9% | 24.7% |
3歳・4-6月 | 49- 45- 46- 377/ 517 | 9.5% | 18.2% | 27.1% |
3歳・7-9月 | 46- 43- 41- 340/ 470 | 9.8% | 18.9% | 27.7% |
3歳・10-12 | 21- 16- 15- 107/ 159 | 13.2% | 23.3% | 32.7% |
4歳・1-3月 | 16- 11- 16- 110/ 153 | 10.5% | 17.6% | 28.1% |
4歳・4-6月 | 13- 9- 9- 118/ 149 | 8.7% | 14.8% | 20.8% |
4歳・7-9月 | 8- 8- 7- 92/ 115 | 7.0% | 13.9% | 20.0% |
4歳・10-12 | 4- 6- 10- 52/ 72 | 5.6% | 13.9% | 27.8% |
5歳・1-3月 | 7- 5- 5- 56/ 73 | 9.6% | 16.4% | 23.3% |
5歳・4-6月 | 8- 3- 4- 38/ 53 | 15.1% | 20.8% | 28.3% |
5歳・7-9月 | 3- 1- 5- 33/ 42 | 7.1% | 9.5% | 21.4% |
ここからは産駒の成績を詳しく見ていく。表2はルーラーシップ産駒の年齢・月別成績(芝・ダート・障害)。同産駒は2014年生まれの現5歳馬が最も年上で、ここまで4世代がデビューしている。まず、気になる点は2歳戦の成績が意外といいということ。2歳・7〜9月の勝率が10.8%、連対率23.1%、複勝率36.4%となっている。2歳・10〜12月の成績には、2017年の阪神ジュベナイルフィリーズで2着のリリーノーブルも含まれている。その他にもダンビュライトやアマーティがサウジアラビアロイヤルCで好走。重賞勝ちこそないが、2歳戦からでも十分に戦えている。
3歳時の成績は出走頭数が大きく増え、勝ち鞍も伸びている。1月から9月の勝率は8〜10%、連対率は16〜18%、複勝率は24〜27%あたりを推移。10〜12月になると勝率13.2%、連対率23.3%、複勝率32.7%を記録。キセキが菊花賞制覇を飾ったのもこの時期だ。
4歳の成績を見ると、徐々に数字は下がってきている。しかし、メールドグラースは連勝街道を爆走。重賞3勝を含む5連勝をマークした。その他にも重賞好走実績があり、成績をグンと伸ばしてくる馬もいる。5歳の4〜6月の成績を見ると、勝率15.1%、連対率20.8%、複勝率28.3%とまた数字が伸びている。今年6月の宝塚記念ではキセキが2着に入った。
ルーラーシップ自身の競走成績から、産駒はやや奥手で、年齢を重ねた方がいいというイメージもあった。しかし、実際はそうでなく、2歳時からしっかり走る馬もいれば、キャリアを重ねて本格化していくタイプもいる。まだ成績が出ていない6歳以降の方がさらに良くなるということは常識的に考えにくいが、今後の走りも注目して見ていきたい。
■表3 ルーラーシップ産駒の競馬場別成績(芝)
場所 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 |
札幌 | 9- 7- 10- 58/ 84 | 10.7% | 19.0% | 31.0% |
函館 | 9- 11- 10- 49/ 79 | 11.4% | 25.3% | 38.0% |
福島 | 15- 7- 15- 80/ 117 | 12.8% | 18.8% | 31.6% |
新潟 | 23- 14- 17- 116/ 170 | 13.5% | 21.8% | 31.8% |
東京 | 33- 32- 27- 189/ 281 | 11.7% | 23.1% | 32.7% |
中山 | 24- 28- 23- 160/ 235 | 10.2% | 22.1% | 31.9% |
中京 | 11- 15- 13- 138/ 177 | 6.2% | 14.7% | 22.0% |
京都 | 30- 29- 31- 204/ 294 | 10.2% | 20.1% | 30.6% |
阪神 | 23- 29- 25- 228/ 305 | 7.5% | 17.0% | 25.2% |
小倉 | 22- 16- 15- 145/ 198 | 11.1% | 19.2% | 26.8% |
東開催 | 95- 81- 82- 545/ 803 | 11.8% | 21.9% | 32.1% |
西開催 | 86- 89- 84- 715/ 974 | 8.8% | 18.0% | 26.6% |
中央開催 | 110- 118- 106- 781/1115 | 9.9% | 20.4% | 30.0% |
ローカル | 89- 70- 80- 586/ 825 | 10.8% | 19.3% | 29.0% |
※2019/9/29開催終了時までの成績。
次は競馬場別の成績を調べた。得意な芝に限定した成績は、表3の通りだ。勝率は新潟の13.5%がトップ。連対率と複勝率は函館がトップだった。同じ洋芝の札幌と比較すると、函館の方がいい。この2場の違いを一つ挙げるとすれば、スパイラルカーブの有無。函館の方にはスパイラルカーブがある。
東京と中山では、かなりコース形態は違う。それでも成績はあまり変わらないというのが面白い。一方、中京と新潟では結構違う。同じ左回りのローカルでも、直線の坂の有無や芝状態(新潟は1年を通して野芝)に違いがあることは確かだ。
京都と阪神の比較でも差が目立つ。京都の方が全般的に好成績だ。平坦の方がいいのかもしれないが、中山の成績は悪くない。平坦巧者とも坂が苦手とも言いにくい。
■表4 ルーラーシップ産駒の芝成績(連対率)優秀コース(10走以上)
コース | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 |
新潟・芝1000 | 2- 2- 0- 6/10 | 20.0% | 40.0% | 40.0% |
中山・芝2200 | 5- 4- 2-12/23 | 21.7% | 39.1% | 47.8% |
函館・芝1800 | 4- 6- 6-14/30 | 13.3% | 33.3% | 53.3% |
東京・芝2400 | 10- 6- 4-30/50 | 20.0% | 32.0% | 40.0% |
札幌・芝1800 | 2- 5- 4-13/24 | 8.3% | 29.2% | 45.8% |
京都・芝2400外 | 1- 3- 0-10/14 | 7.1% | 28.6% | 28.6% |
東京・芝1600 | 11-10- 4-49/74 | 14.9% | 28.4% | 33.8% |
小倉・芝2600 | 2- 1- 0- 8/11 | 18.2% | 27.3% | 27.3% |
中京・芝1400 | 0- 6- 1-15/22 | 0.0% | 27.3% | 31.8% |
京都・芝2200外 | 6- 1- 2-17/26 | 23.1% | 26.9% | 34.6% |
さらに詳しく調べるためにコース別成績も見ておきたい。表4はルーラーシップ産駒の芝成績が優秀なコース。10走以上のデータがあり、連対率が高い順番に並べた。全体的にはやはり中長距離のコースが目立つ。特に中山芝2200mは連対率が39.1%もある。この秋、リオンリオンがセントライト記念を制したシーンがすぐに思い浮かぶ。2018年のアメリカジョッキークラブCではダンビュライトが勝利した。また、京都芝2200mは【6.1.2.17】で勝率が非常に高い。2200mの距離が得意なのかもしれない。函館芝1800mや札幌芝1800mもランクイン。一方、G1が行われる東京芝2400mや東京芝1600mも入っており、大舞台でも心強い。
サンプル数は少ないが新潟芝1000mにも注目したい。連対率は40.0%で、最も優秀。中長距離だけでなく直線短距離という特殊なコースでも好成績というのは面白いデータだ。
■表5 ルーラーシップ産駒の芝成績(連対率)不振コース(10走以上)
コース | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 |
京都・芝1600外 | 0- 1- 1-15/17 | 0.0% | 5.9% | 11.8% |
東京・芝1400 | 0- 2- 2-20/24 | 0.0% | 8.3% | 16.7% |
札幌・芝2600 | 1- 0- 1- 9/11 | 9.1% | 9.1% | 18.2% |
阪神・芝2600外 | 0- 1- 0- 9/10 | 0.0% | 10.0% | 10.0% |
中京・芝2000 | 5- 2- 5-50/62 | 8.1% | 11.3% | 19.4% |
京都・芝1400 | 1- 1- 3-12/17 | 5.9% | 11.8% | 29.4% |
小倉・芝1200 | 3- 2- 4-32/41 | 7.3% | 12.2% | 22.0% |
中京・芝1600 | 3- 4- 3-45/55 | 5.5% | 12.7% | 18.2% |
新潟・芝1400 | 1- 1- 0-13/15 | 6.7% | 13.3% | 13.3% |
新潟・芝1600外 | 3- 2- 3-29/37 | 8.1% | 13.5% | 21.6% |
最後に、ルーラーシップ産駒が苦戦しているコースを見ておくことにする。表5は、10走以上のデータがあるコースについて連対率が低い順に並べた。一番成績が悪かったのは京都芝1600mの外回り。連対率は5.9%しかなかった。マイルチャンピオンシップなど大きなレースが行われる場所だが、非常に苦戦している。東京芝1600mとは対照的だ。東京芝1400mも未勝利で連対率も8.3%と厳しい。全体的にはマイル以下のコースがランクインしている。阪神芝2600mも苦しいが、サンプル数が少ないのでまだ何とも言えない。むしろ気になるのが中京芝2000mの成績。出走数はかなり多いが、連対率11.3%と平凡な成績だ。中京芝1600mも表5にランクインしている。表3で中京競馬場の成績がひと息だったのは、このあたりが影響しているようだ。
ライタープロフィール
小田原智大(おだわら ともひろ)
1975年6月、東京生まれ。早稲田大学商学部卒業後、業界紙記者を経て、(株)レイヤード入社。ライター&エディターとして活躍。JRA-VANデータの配信初期から、いち早くデータ競馬の有効性に着目する。05年5月より「競馬 最強の法則WEB」にて、障害戦を除く全重賞レースの傾向と対策、予想を展開。「オッズパーク ダートグレードデータ作戦」では、地方競馬の重賞の攻略にも取り組んでいる。仕事の関係でなかなか競馬場には行けなくなったが、年に1、2回行くローカル遠征が楽しみ。