データde出〜た
第1356回 波乱の立役者になる馬は? スプリンターズS分析
2019/9/26(木)
秋のG1開幕戦・スプリンターズS。過去10年の3着以内馬30頭中、6番人気以下の馬が半数の15頭、10番人気以下にかぎっても6頭を数え、ともに秋のG1では最多という荒れ模様の一戦だ。今年の人気馬は信頼できるのか、そして穴候補はどの馬か。過去の傾向から考えてみたい。データの分析には、JRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JV、馬天楼 for データde出〜たを利用した。
■表1 1〜3着馬の人気と主な配当
年 | 人気 | 配当 | |||||
1着馬 | 2着馬 | 3着馬 | 馬連 | 馬単 | 3連複 | 3連単 | |
2009 | 6 | 2 | 8 | 2,140円 | 5,630円 | 11,660円 | 66,890円 |
2010 | 10 | 3 | 7 | 9,900円 | 22,400円 | 50,860円 | 358,410円 |
2011 | 3 | 9 | 7 | 13,030円 | 30,430円 | 25,610円 | 212,610円 |
2012 | 2 | 1 | 9 | 510円 | 1,170円 | 4,300円 | 17,540円 |
2013 | 1 | 2 | 15 | 400円 | 530円 | 13,070円 | 28,020円 |
2014 | 13 | 2 | 5 | 7,360円 | 26,040円 | 19,580円 | 190,930円 |
2015 | 1 | 11 | 9 | 5,550円 | 9,090円 | 23,020円 | 106,170円 |
2016 | 3 | 2 | 9 | 4,490円 | 8,240円 | 42,230円 | 180,060円 |
2017 | 1 | 5 | 7 | 1,760円 | 2,890円 | 7,650円 | 31,850円 |
2018 | 1 | 11 | 13 | 4,140円 | 5,260円 | 65,370円 | 209,620円 |
表1は、過去10年の1〜3着馬の人気と、主な配当である。3着には毎年のように人気薄が入っており、10頭中9頭が6番人気以下で、残る1頭も5番人気。1、2着に激走する馬もいるが、特に3連単の3着候補は穴馬だけに絞ってもいいだろう。
逆の見方をすれば、5番人気以内馬同士の組み合わせで「馬連(馬単)ハズレ、ワイド的中」という結果は2014年の1回のみ。もし「保険」としてワイドを買ってもムダになるか、その分馬連(馬単)の金額を増やしたほうが良かった、というケースがほとんどだ。なお、1〜3番人気馬が揃って3着以下に敗れた年はない。3連複や3連単なら、3番人気以内の馬も1頭は絡めつつ穴を狙うのが的中に近い。
■表2 枠番・人気別成績(新潟代替開催を除く)
枠番 | 1〜5番人気 | 6番人気以下 | 全馬 | ||||
着別度数 | 複勝率 | 着別度数 | 複勝率 | 着別度数 | 連対率 | 複勝率 | |
1枠 | 1-1-0-4/6 | 33.3% | 0-0-1-11/12 | 8.3% | 4-4-7-57/72 | 11.1% | 20.8% |
2枠 | 0-0-0-3/3 | 0.0% | 0-2-3-10/15 | 33.3% | |||
3枠 | 0-0-0-7/7 | 0.0% | 0-0-3-8/11 | 27.3% | |||
4枠 | 2-1-0-7/10 | 30.0% | 1-0-0-7/8 | 12.5% | |||
5枠 | 2-1-0-3/6 | 50.0% | 0-1-0-10/11 | 9.1% | 5-5-2-58/70 | 14.3% | 17.1% |
6枠 | 0-0-0-4/4 | 0.0% | 0-0-1-13/14 | 7.1% | |||
7枠 | 1-2-0-2/5 | 60.0% | 1-0-1-10/12 | 16.7% | |||
8枠 | 1-1-0-2/4 | 50.0% | 0-0-0-14/14 | 0.0% |
人気面でもうひとつ注目したいのは、枠番別の成績だ(表2・14年の新潟開催時を除く)。全体としては人気馬なら中〜外枠、穴馬なら内よりの枠を引いた馬の好走が多く、それが2枠と3枠には顕著に出ている。この2〜3枠の5番人気以内馬は計【0.0.0.10】とまったく馬券に絡んでいないのに対し、6番人気以下の馬は【0.2.6.18】と8頭が3着以内に入っていた。
■表3 性齢別成績
性別 | 年齢 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回収 | 複回収 | 6番人気以下 |
牡・セン | 3歳 | 0-0-0-5/5 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% | 0-0-0-4/4 |
4歳 | 1-2-1-9/13 | 7.7% | 23.1% | 30.8% | 33% | 140% | 0-1-1-4/6 | |
5歳 | 4-2-1-21/28 | 14.3% | 21.4% | 25.0% | 96% | 72% | 1-0-1-14/16 | |
6歳 | 2-0-1-28/31 | 6.5% | 6.5% | 9.7% | 160% | 63% | 1-0-1-19/21 | |
7歳以上 | 1-2-1-35/39 | 2.6% | 7.7% | 10.3% | 75% | 80% | 1-1-1-33/36 | |
計 | 8-6-4-98/116 | 6.9% | 12.1% | 15.5% | 95% | 77% | 3-2-4-74/83 | |
牝馬 | 3歳 | 0-1-1-4/6 | 0.0% | 16.7% | 33.3% | 0% | 208% | 0-1-1-2/4 |
4歳 | 1-0-3-6/10 | 10.0% | 10.0% | 40.0% | 112% | 176% | 0-0-2-3/5 | |
5歳 | 0-3-2-16/21 | 0.0% | 14.3% | 23.8% | 0% | 73% | 0-0-2-11/13 | |
6歳 | 1-0-0-4/5 | 20.0% | 20.0% | 20.0% | 88% | 36% | 0-0-0-3/3 | |
7歳 | 0-0-0-2/2 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% | 0-0-0-2/2 | |
計 | 2-4-6-32/44 | 4.5% | 13.6% | 27.3% | 35% | 107% | 0-1-5-21/27 |
性別の比較では複勝率に大きな差が出ており、牡・セン馬15.5%に対し、牝馬は27.3%。勝率や連対率はほぼ互角だ。また、表1にあったように6番人気以下の馬が6連対を記録しているが、うち5連対は牡・セン馬。牝馬の穴馬は好走しても3着止まりに終わることが多いので注意したい。なお、年齢別では5歳以下が計【6.8.8.61】複勝率26.5%、6歳以上は計【4.2.2.69】同10.4%と、5歳以下が優勢だ。
■表4 前走クラス・レース別成績(レース別は本年登録馬の前走のみ)
前走 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回収 | 複回収 |
OPEN特別 | 0-0-1-5/6 | 0.0% | 0.0% | 16.7% | 0% | 58% |
G3 | 3-3-5-57/68 | 4.4% | 8.8% | 16.2% | 98% | 79% |
G2 | 5-4-4-48/61 | 8.2% | 14.8% | 21.3% | 43% | 93% |
G1 | 1-3-0-11/15 | 6.7% | 26.7% | 26.7% | 21% | 89% |
海外 | 1-0-0-9/10 | 10.0% | 10.0% | 10.0% | 293% | 90% |
セントウルS | 5-4-4-45/58 | 8.6% | 15.5% | 22.4% | 46% | 98% |
キーンランドC | 2-2-4-35/43 | 4.7% | 9.3% | 18.6% | 134% | 102% |
安田記念 | 1-1-0-7/9 | 11.1% | 22.2% | 22.2% | 35% | 83% |
ヴィクトリアM | 0-1-0-0/1 | 0.0% | 100.0% | 100.0% | 0% | 300% |
北九州記念 | 0-0-0-9/9 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% |
前走別では、サマースプリントシリーズのセントウルS、キーンランドCの2競走で、全出走馬の約3分の2を占めている。3着以内の好走馬が多く、好走確率も高いのがセントウルS組、単複で高回収率を記録するのはキーンランドC組だ。ただ、同じサマースプリントシリーズの一戦でも、北九州記念からの直行馬はすべて馬券圏外に敗退している。なお、10年2着のキンシャサノキセキ(高松宮記念1着→セントウルS取消)と、翌11年13着のアーバニティ(CBC賞7着→朱鷺S取消)は、それぞれセントウルSと朱鷺Sを前走として数えている。
■表5 前走セントウルSからの好走馬
年 | 馬名 | 性齢 | 人気 | 着順 | 前走 | 通過順 | 人気 | 着順 | G1優勝実績 |
2009 | ローレルゲレイロ | 牡5 | 6 | 1 | セントウルS | 1-1 | 4 | 14 | 高松宮記念 |
カノヤザクラ | 牝5 | 8 | 3 | 9-8 | 2 | 4 | |||
2010 | キンシャサノキセキ | 牡7 | 3 | 2 | … | … | 消 | 高松宮記念 | |
2011 | エーシンヴァーゴウ | 牝4 | 7 | 3 | 2-2 | 2 | 1 | ||
2012 | ロードカナロア | 牡4 | 2 | 1 | 3-3 | 1 | 2 | ||
カレンチャン | 牝5 | 1 | 2 | 2-2 | 3 | 4 | スプリンターズSほか | ||
2013 | ロードカナロア | 牡5 | 1 | 1 | 3-3 | 1 | 2 | スプリンターズSほか | |
ハクサンムーン | 牡4 | 2 | 2 | 1-1 | 2 | 1 | |||
マヤノリュウジン | 牡6 | 15 | 3 | 3-3 | 7 | 7 | |||
2015 | ストレイトガール | 牝6 | 1 | 1 | 8-8 | 3 | 4 | ヴィクトリアM | |
2018 | ファインニードル | 牡5 | 1 | 1 | 6-6 | 1 | 1 | 高松宮記念 | |
ラブカンプー | 牝3 | 11 | 2 | 1-1 | 2 | 2 | |||
ラインスピリット | 牡7 | 13 | 3 | 3-3 | 9 | 5 |
表5は、セントウルS組の好走馬13頭である。出走を取り消したキンシャサノキセキを除いた12頭のうち、9頭は同レースの3、4コーナーを3番手以内で通過。そして12頭中10頭は5着以内。この双方をクリアした馬は、【2.3.2.7】で複勝率50.0%の好成績だ。両条件をともに満たした好走馬は12頭中7頭。残る5頭もどちらか一方には該当しており、このうちマヤノリュウジンを除く4頭はG1馬か牝馬だった。
■表6 前走キーンランドCからの好走馬
年 | 馬名 | 性齢 | 人気 | 着順 | 前走 | 人気 | 着順 | 同年成績 | 同年主な実績 |
2009 | ビービーガルダン | 牡5 | 2 | 2 | キーンランドC | 2 | 1 | 2-0-0-2 | 重賞2勝 |
2011 | カレンチャン | 牝4 | 3 | 1 | 1 | 1 | 4-0-0-1 | 重賞3勝 | |
パドトロワ | 牡4 | 9 | 2 | 4 | 3 | 3-0-0-2 | オープン特別2勝 | ||
2012 | ドリームバレンチノ | 牡5 | 9 | 3 | 2 | 7 | 3-0-1-1 | 2走前まで3連勝 | |
2014 | スノードラゴン | 牡6 | 13 | 1 | 4 | 8 | 1-3-0-2 | 重賞2着3回 | |
レッドオーヴァル | 牝4 | 5 | 3 | 1 | 2 | 1-2-1-1 | 前走2着、阪急杯3着 | ||
2015 | ウキヨノカゼ | 牝5 | 9 | 3 | 8 | 1 | 2-0-0-2 | 前走1着、2連勝中 | |
2016 | ソルヴェイグ | 牝3 | 9 | 3 | 4 | 4 | 2-0-1-3 | 重賞2勝 |
続いて、キーンランドC組の好走馬8頭も見てみよう。その8頭中7頭は同レースで4番人気以内、そして全馬が8着以内。できれば3着以内が理想だが、「4番人気以内かつ8着以内」の馬でも【2.2.3.18】で複勝率28.0%、単複の回収率は230%、156%になる。
また、好走した8頭に共通するのは、その年に「好成績」を残していたことだ。具体的には「3勝以上」「重賞を含む2勝以上」、そして「重賞を含む3連対以上」のいずれかで、1つも該当しなかった馬の好走はない。
■表7 前走G1からの好走馬
年 | 馬名 | 人気 | 着順 | 前走 | 主な実績 | |||
レース | 人気 | 着順 | 同年 | 前年以前 | ||||
2010 | 参考:キンシャサノキセキ | 3 | 2 | 高松宮記念 | 1 | 1 | 高松宮記念1着 | 前々年本競走2着 |
2015 | サクラゴスペル | 11 | 2 | 安田記念 | 13 | 17 | 京王杯SC1着、オーシャンS1着 | オーシャンS1着 |
2016 | ミッキーアイル | 2 | 2 | 高松宮記念 | 2 | 2 | 阪急杯1着、高松宮記念2着 | NHKマイルC1着 |
2017 | レッドファルクス | 1 | 1 | 安田記念 | 3 | 3 | 京王杯SC1着、G1・3着2回 | 前年本競走1着 |
レッツゴードンキ | 5 | 2 | ヴィクトリアM | 3 | 11 | 京都牝馬S1着、高松宮記念2着 | 桜花賞1着 |
北九州記念組からは好走馬が出ていないため(表4)、今年の登録馬でほかにチャンスがあるとすればG1組になる。そのG1組の好走馬4頭に、実際に出走した前走がG1だったキンシャサノキセキ(セントウルS取消)を加えた5頭が表7だ。この5頭のうち4頭は既にG1勝ちの実績があり、その年のG1でも3着以内に好走。残る1頭、15年3着のサクラゴスペルは重賞3勝馬で、そのうち2勝は7歳の同年に挙げていた。
【結論】
今年の登録馬は、前走セントウルS組が7頭、キーンランドC組が4頭となった。このうち、特に「穴」として注目したいのは、キーンランドC組(表6)のリナーテだ。今年は【1.2.1.0】、敗れた3戦はすべて重賞で勝ち馬から0.1秒の僅差だった。勝利を挙げた2走前・UHB賞はオープン特別だが、「重賞を含む3連対以上」の条件は満たし、前走・キーンランドCも3番人気3着ならまったく問題ない。ただ、牝馬の穴馬は3着こそ多くても連対には届きづらいため(表3)、特に3連複や、3連単3着の穴候補として推奨したい。
また、同レースを1番人気で制したダノンスマッシュも、もちろん有力な候補になる。今年はほかにシルクロードSでも優勝し「重賞を含む2勝以上」。今回の人気どころでは唯一、各データをすんなりとクリアしてくる馬だ。
一方のセントウルS組(表5)では、勝ったタワーオブロンドンは中団からの差し切りだった。それなら、先行して2着に粘ったファンタジストのほうが配当妙味もありそうで、おもしろい存在だ。ほかに「3、4コーナー3番手以内」か「5着以内」のどちらかを満たす「牝馬」として、イベリス(3着)と、昨年の2着馬・ラブカンプー(11着、通過順2-2)が挙げられる。
そして最後にG1組(表7)だが、今年は各条件をすんなりクリアする馬は不在だ。ただ一昨年の2着馬・レッツゴードンキは、7歳を迎えた今年も阪急杯では2着に入り、まだまだ力があるところを見せている。表7ではG1馬4頭(+年内G1で3着以内)と7歳・サクラゴスペルの中間にあたるようなタイプだけに、余裕があれば押さえておきたい。
ライタープロフィール
浅田知広(あさだ ともひろ)
1970年12月、埼玉県生まれ。立命館大学文学部中退後、夕刊紙レース部のアルバイト、競馬データベース会社を経て、現在はフリー。パソコンが広く普及する以前から、パソコン通信でデータ手入力方式の競馬予想ソフトを公開するなど、競馬のみならずPCやネットワークにも精通。その知識を活かし、Webや雑誌で競馬ライターとして活躍するかたわら、ネットワークの専門誌にも連載を持つ。