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第1331回 降級制度の廃止で、夏競馬の重賞は4歳馬に注目!?

2019/7/1(月)

今年から降級制度が廃止され、4歳の降級馬がいなくなった夏競馬。やはり条件戦では、昨年までに比べ4歳馬の好走確率は低下しているようだ。しかし一方で、重賞戦線ではなぜか4歳馬が大活躍を見せている。「よく来ている」という印象を持った方は多いだろうが、実際に数字としてはどれほどなのか。夏競馬ここまでの重賞の結果をまとめておきたい。データの分析にはJRA-VAN DataLab.TARGET frontier JVを利用し、集計期間は6月23日までとしている。

■表1 現3歳世代の「3歳以上」戦成績

クラス 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回収 複回収 ※参考:2016〜18年複勝率
1勝 36-25-33-229/323 11.1% 18.9% 29.1% 73% 73% 24.2%
2勝 14-2-3-17/36 38.9% 44.4% 52.8% 141% 98% 34.5%
G3 0-1-0-0/1 0.0% 100.0% 100.0% 0% 210% 26.8%

※参考データの2016〜18年分は6〜8月の平地競走を対象とした

4歳馬の成績を見る前に、まずは、4歳の降級馬という「目の上のたんこぶ」がなくなった3歳馬の成績を簡単に見ておこう。表1は「3歳以上」の条件戦がはじまった今年6月1日から、23日までのクラス別成績だ。一番右に参考として、過去3年・6〜8月の複勝率も掲載したが、1勝クラス(旧500万条件)では該当馬がかなり多いこともあって、今年も「率」としてはさほど大きくは上がっていない。一方、2勝クラスでは勝率38.9%、複勝率52.8%、単複の回収率も141%、98%という好成績。過去3年の複勝率も34.5%と上々だったが、これをさらに上回っている。まだ3勝クラスへの出走馬はいないが、この流れなら、出走する馬さえいれば結果はついてくることだろう。現時点では、3歳馬は特に2勝クラスの出走馬に注目したい。

■表2 現4歳世代の平地「3歳以上」戦成績

クラス 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回収 複回収 ※参考:2016〜18年複勝率
1勝 20-24-21-267/332 6.0% 13.3% 19.6% 40% 92% 23.3%
2勝 6-11-12-116/145 4.1% 11.7% 20.0% 17% 55% 38.7%
3勝 7-5-5-34/51 13.7% 23.5% 33.3% 155% 118% 49.7%
OPEN他 0-0-0-4/4 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0% 49.0%
OPEN(L) 1-1-0-7/9 11.1% 22.2% 22.2% 46% 34% 該当なし
G3 4-2-3-9/18 22.2% 33.3% 50.0% 228% 191% 29.2%
G1 1-0-1-5/7 14.3% 14.3% 28.6% 274% 57% 21.7%
重賞計 5-2-4-14/25 20.0% 28.0% 44.0% 241% 154% 26.9%

※参考データの2016〜18年分は6〜8月の平地競走を対象とした

2019/6/2 東京11R 安田記念(G1) 1着 5番 インディチャンプ

続いて表2は、4歳馬のクラス別成績である。降級制度が廃止されたことにより、1勝クラスから3勝クラスまですべて、過去3年との比較で複勝率は低下。特に2勝クラスと3勝クラスでは15ポイント以上の大幅なマイナスを記録している。それでも3勝クラスでは複勝率33.3%、単複の回収率100%超という結果を出しているが、これには前述のように、3勝クラスにはまだ3歳馬が出走していない影響もありそうだ。今後、3勝クラスに3歳馬が多く出走してくると、これほどの成績は残せない危険性があることは頭に入れておきたい。

一方、重賞では予想外に素晴らしい成績を記録し、複勝率は44.0%。そして単複の回収率はそれぞれ241%、154%をマークした。過去3年・6〜8月の複勝率は26.9%止まりだったため、2、3勝クラスとは正反対の結果と言えるだろう。なお、オープン特別についてはまだ出走数が少なく参考外と考えたい。

■表3 本年の平地「3歳以上」重賞の1〜3着馬

レース 馬名 性齢 人気 着順
鳴尾記念 メールドグラース 牡4 1 1
ブラックスピネル 牡6 5 2
ステイフーリッシュ 牡4 4 3
安田記念 インディチャンプ 牡4 4 1
アエロリット 牝5 3 2
アーモンドアイ 牝4 1 3
エプソムC レイエンダ 牡4 5 1
サラキア 牝4 7 2
ソーグリッタリング 牡5 1 3
マーメイドS サラス 牝4 7 1
レッドランディーニ 牝4 10 2
スカーレットカラー 牝4 5 3
函館スプリントS カイザーメランジェ 牡4 5 1
アスターペガサス 牡3 2 2
タワーオブロンドン 牡4 1 3
宝塚記念 リスグラシュー 牝5 3 1
キセキ 牡5 1 2
スワーヴリチャード 牡5 6 3

2019/6/1 阪神11R 鳴尾記念(G3) 1着 7番 メールドグラース

本年の6月23日までに行われた「3歳以上」の重賞競走は表3の6レースで、このうち宝塚記念(4歳の出走馬はエタリオウ1頭のみ)を除く5レースではすべて4歳馬が優勝し、なおかつ2頭以上が馬券に絡む活躍を見せている。また優勝馬のうち、レイエンダ(エプソムC)と、カイザーメランジェ(函館スプリントS)の2頭は、昨年までなら1600万条件に降級していた馬。そしてマーメイドSのサラスは現行ルールでも3勝クラスからの格上挑戦で、以前のルールなら1000万条件在籍馬だった。ほかにエプソムC2着のサラキアなど、もし降級制度が継続していればオープンには在籍していなかった馬や、1000万条件まで降級していた馬の好走が多い。

■表4 2017〜19年、平地「4歳以上」戦、年齢・条件別複勝率

年齢 500万 1000万 1600万 OP特別 重賞
4歳 21.0% 27.1% 33.6% 25.5% 30.6%
5歳 21.6% 25.1% 29.0% 36.2% 27.3%
6歳 17.8% 16.2% 16.8% 20.1% 16.6%
7歳以上 11.8% 8.3% 9.3% 11.6% 9.1%

なぜこのような事態が起きているのか。それは、もともと4歳馬は降級しなくても好成績だった上に、まだ重賞に出走する3歳馬が少ないため、と考えられる。表4は2017〜19年に行われた「4歳以上」(例年おおむね1〜5月)の平地競走における年齢別複勝率で、各クラスとも4歳馬は1位、または2位となる数字を残していた。重賞競走における複勝率30.6%はトップだ。

この「4歳以上」の時期から夏競馬になると、多くの4歳馬はさらなる成長を見せる一方、高齢馬は徐々に衰えていく。さらに降級制度の廃止でもともと通用していた4歳馬が降級しなくなったとなれば、今夏の重賞で4歳馬が大活躍していることも、まったく不思議ではない。昨年までは「クラス分けの賞金」で降級馬が決まっていただけのことで、決して力不足の馬ばかりが降級していたわけではない、と考えるのが妥当だろう。また、3歳馬の進出も2〜3勝クラスより重賞のほうが遅くなるため、例年を上回る4歳馬の好成績はしばらく続くと予想される。重賞で「過去10年の傾向」などを調べても、年齢別の成績はまったくアテにならない可能性があることには注意したい。

ライタープロフィール

浅田知広(あさだ ともひろ)

1970年12月、埼玉県生まれ。立命館大学文学部中退後、夕刊紙レース部のアルバイト、競馬データベース会社を経て、現在はフリー。パソコンが広く普及する以前から、パソコン通信でデータ手入力方式の競馬予想ソフトを公開するなど、競馬のみならずPCやネットワークにも精通。その知識を活かし、Webや雑誌で競馬ライターとして活躍するかたわら、ネットワークの専門誌にも連載を持つ。


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