データde出〜た
第1328回 海外帰りは条件が厳しい!? 宝塚記念を占う
2019/6/20(木)
今週は宝塚記念が行われる。登録の段階でフルゲート割れという寂しい頭数だが、G1馬が6頭参戦する予定。グランプリにふさわしいレースとなりそうだ。レイデオロらが人気を集める模様だが、果たして結果はどうなるか? 週末の天気は崩れるとの予報で、予想はかなり難しいものとなりそうだ。いつものように過去10年のデータを分析し、今年のレースを占ってみたい。データの集計・分析にはJRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用した。
■表1 宝塚記念出走馬の前走レース別成績(過去10年)
レース名 | 着別度数 |
天皇賞春G1 | 5- 2- 2-33/42 |
鳴尾記念G3 | 1- 2- 1-12/16 |
金鯱賞G2 | 1- 1- 1- 6/ 9 |
目黒記念HG2 | 1- 0- 1-15/17 |
大阪杯G1 | 1- 0- 0- 2/ 3 |
メトロポH | 1- 0- 0- 0/ 1 |
ヴィクトG1 | 0- 2- 3- 5/10 |
ドバイシーマCG1 | 0- 1- 1- 5/ 7 |
(香港)QE2世G1 | 0- 1- 0- 3/ 4 |
ライオンロックTG3 | 0- 1- 0- 0/ 1 |
安田記念G1 | 0- 0- 1- 5/ 6 |
産経大阪G2 | 0- 0- 0- 5/ 5 |
まずは過去10年の宝塚記念に出走した馬の前走レース別成績(表1参照)を調べた。天皇賞(春)組の頭数がかなり多く、勝ち馬5頭を出している。大阪杯はG2時代が【0.0.0.5】の成績だが、G1となってから1頭勝ち馬が出た。ヴィクトリアマイル組は【0.2.3.5】で、勝ち馬こそ出ていないが、複勝率は50%で高い好走率を誇る。なお、安田記念組は【0.0.1.5】でひと息。とはいえ、全体的には今春に行われた国内の芝G1組の成績がいい。
近年は同じG1でも海外組の出走が目立つ。特に多いのがUAEのドバイシーマクラシック組と、香港のクイーンエリザベス2世C組。どちらも勝利こそないが、2着、3着馬は出ている。あとは、鳴尾記念や金鯱賞、目黒記念などからも勝ち馬は出ている。G1ではないが、近い時期に行われた芝中長距離戦であり、宝塚記念へのステップの性格を持つレースとしては自然と言える。
■表2 前走天皇賞(春)出走馬の前走着順別成績(過去10年)
前入線順位 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回収率 | 複回収率 |
前走1着 | 0- 0- 1- 6/ 7 | 0.0% | 0.0% | 14.3% | 0 | 21 |
前走2着 | 0- 0- 1- 5/ 6 | 0.0% | 0.0% | 16.7% | 0 | 26 |
前走3着 | 1- 0- 0- 5/ 6 | 16.7% | 16.7% | 16.7% | 118 | 26 |
前走4着 | 1- 0- 0- 0/ 1 | 100.0% | 100.0% | 100.0% | 1310 | 390 |
前走5着 | 1- 0- 0- 2/ 3 | 33.3% | 33.3% | 33.3% | 96 | 46 |
前走6〜9着 | 1- 1- 0- 7/ 9 | 11.1% | 22.2% | 22.2% | 30 | 80 |
前走10着〜 | 1- 1- 0- 8/10 | 10.0% | 20.0% | 20.0% | 32 | 82 |
続いては天皇賞(春)組について掘り下げていく。表2は同組の前走着順別成績。特徴的な傾向が出ており、1着馬と2着馬の成績が悪い。宝塚記念3着馬が出ているだけで、連対馬はゼロ。5頭の勝ち馬はすべて前走3着以下に敗れていた馬だった。2018年の優勝馬ミッキーロケットも、前走天皇賞(春)は4着だった。このデータから言えることは、天皇賞(春)と宝塚記念はつながりにくいということ。要求される適性がかなり異なるため、大きく敗れていてもあまり気にしない方がいいだろう。
■表3 前走天皇賞(春)出走馬の前走着差別成績(過去10年)
前走着差 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回収率 | 複回収率 |
勝0.6〜0.9 | 0- 0- 0- 1/ 1 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0 | 0 |
勝0.3〜0.5 | 0- 0- 0- 0/ 0 | |||||
勝0.1〜0.2 | 0- 0- 0- 3/ 3 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0 | 0 |
勝0.0 | 0- 0- 1- 2/ 3 | 0.0% | 0.0% | 33.3% | 0 | 50 |
負0.0 | 0- 0- 0- 4/ 4 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0 | 0 |
負0.1〜0.2 | 1- 0- 1- 4/ 6 | 16.7% | 16.7% | 33.3% | 218 | 91 |
負0.3〜0.5 | 2- 0- 0- 5/ 7 | 28.6% | 28.6% | 28.6% | 140 | 47 |
負0.6〜0.9 | 1- 1- 0- 3/ 5 | 20.0% | 40.0% | 40.0% | 58 | 156 |
負1.0〜1.9 | 1- 1- 0- 7/ 9 | 11.1% | 22.2% | 22.2% | 35 | 81 |
負2.0〜2.9 | 0- 0- 0- 3/ 3 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0 | 0 |
負3.0〜3.9 | 0- 0- 0- 1/ 1 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0 | 0 |
天皇賞(春)での着順は度外視できるとして、着差はどうだろうか。表3では同組の前走着差別成績を記した。勝ち馬から1.0〜1.9秒負けていた馬は【1.1.0.7】という成績。通常は負けすぎと言われる着差だが、ここでは平気で巻き返しがある。しかし、2.0秒以上離された場合はさすがに厳しそうだ。
■表4 前走ドバイSC・クイーンエリザベス2世C組の成績
年 | 馬名 | 人気 | 着順 | 前走レース名 | 前着 |
18年 | サトノクラウン | 6 | 12 | DSCG1 | 7 |
18年 | ダンビュライト | 5 | 5 | QE2G1 | 7 |
16年 | ドゥラメンテ | 1 | 2 | DSCG1 | 2 |
16年 | ラストインパクト | 11 | 7 | DSCG1 | 3 |
16年 | ワンアンドオンリー | 13 | 14 | DSCG1 | 5 |
16年 | ラブリーデイ | 4 | 4 | QE2G1 | 4 |
16年 | サトノクラウン | 9 | 6 | QE2G1 | 12 |
15年 | ワンアンドオンリー | 4 | 11 | DSCG1 | 3 |
14年 | ジェンティルドンナ | 3 | 9 | DSCG1 | 1 |
13年 | ジェンティルドンナ | 1 | 3 | DSCG1 | 2 |
12年 | ルーラーシップ | 2 | 2 | QE2G1 | 1 |
天皇賞(春)組と同じように、前走着順が重要となりそうなレースがあった。それは海外組。表4では前走ドバイシーマクラシック組と香港のクイーンエリザベス2世C組の成績を記した。表1で示したように、過去10年では3頭の好走馬がいる。16年のドゥラメンテ、13年のジェンティルドンナ、12年のルーラーシップ。いずれも実力馬であり、前走で連対を果たしていた。天皇賞(春)組とは対照的に、前走着順が良くないとここでは厳しいという傾向が出た。海外遠征明けなので調整は難しく、好調を維持できているかがポイントとなるが、まずは前走での好走が、単純ながら重要な条件だ。
■表5 前走天皇賞(春)・DSC・QE2C組以外の宝塚記念好走馬(過去10年)
年 | 馬名 | 人気 | 着順 | 前走レース名 | 前着 | 備考 |
18年 | ワーザー | 10 | 2 | ライオG3 | 6 | |
ノーブルマーズ | 12 | 3 | 目黒記念HG2 | 2 | ||
17年 | サトノクラウン | 3 | 1 | 大阪杯G1 | 6 | 京都記念1着 |
ミッキークイーン | 4 | 3 | ヴィクトG1 | 7 | ||
16年 | マリアライト | 8 | 1 | 目黒記念HG2 | 2 | エリザベス女王杯1着 |
15年 | ラブリーデイ | 6 | 1 | 鳴尾記念G3 | 1 | 京都記念1着 |
ショウナンパンドラ | 11 | 3 | ヴィクトG1 | 8 | ||
14年 | カレンミロティック | 9 | 2 | 鳴尾記念G3 | 4 | |
ヴィルシーナ | 8 | 3 | ヴィクトG1 | 1 | ||
13年 | ダノンバラード | 5 | 2 | 鳴尾記念G3 | 3 | AJC杯1着 |
12年 | ショウナンマイティ | 6 | 3 | 鳴尾記念G3 | 2 | |
11年 | アーネストリー | 6 | 1 | 金鯱賞G2 | 3 | 宝塚記念3着 |
ブエナビスタ | 1 | 2 | ヴィクトG1 | 2 | 宝塚記念2着 | |
10年 | ナカヤマフェスタ | 8 | 1 | メトロポH | 1 | セントライト記念1着 |
ブエナビスタ | 1 | 2 | ヴィクトG1 | 1 | 京都記念1着 | |
アーネストリー | 3 | 3 | 金鯱賞G2 | 1 | ||
09年 | サクラメガワンダー | 3 | 2 | 金鯱賞G2 | 1 | 京都記念2着 |
ディープスカイ | 1 | 3 | 安田記念G1 | 2 |
表5では前走天皇賞(春)組、ドバイシーマクラシック組、クイーンエリザベス2世C組以外の好走馬を記した。前走レースは何でもいいが、できるだけいい着順であるのが理想。ただ、ヴィクトリアマイル組だけは大きく負けていても、軽視しない方がよさそうだ。あとは、過去1年以内に芝2200mの重賞で好走経験があるかどうかが重要。G1であれば3着以内、G2やG3であれば連対していることが望ましい。そうした実績を保持していた馬は、17年のサトノクラウン、16年のマリアライト、11年のアーネストリー、10年のナカヤマフェスタなどがいる。勝ち馬は例外なく該当しており、距離実績・適性はかなり重要だと考えられる。
【結論】
それでは今年の宝塚記念を占っていくことにする。出走予定馬は表6の通り。
■表6 今年の宝塚記念出走予定馬
馬名 | 前走レース | 前着 | 備考 |
アルアイン | 大阪杯G1 | 1 | オールカマー2着 |
エタリオウ | 天皇賞春G1 | 4 | 前走着差1.0 |
キセキ | 大阪杯G1 | 2 | |
クリンチャー | 天皇賞春G1 | 10 | 前走着差2.7 |
ショウナンバッハ | エプソムG3 | 4 | |
スティッフェリオ | 大阪杯G1 | 7 | |
スワーヴリチャード | DSCG1 | 3 | |
タツゴウゲキ | 宝塚記念G1 | 15 | |
ノーブルマーズ | 鳴尾記念G3 | 5 | 宝塚記念3着 |
マカヒキ | 大阪杯G1 | 4 | |
リスグラシュー | QE2G1 | 3 | エリザベス女王杯1着 |
レイデオロ | DSCG1 | 6 | オールカマー1着 |
まずは前走天皇賞(春)に出走していた馬は2頭。エタリオウとクリンチャーだ。エタリオウは勝ち馬から1.0秒とやや引き離されてしまったが、許容範囲内の着差。有力馬の1頭と考えたい。一方、クリンチャーは勝ち馬から2.7秒離されており、一変は厳しいと見る。
前走海外組は3頭。スワーヴリチャード、レイデオロ、リスグラシューといずれも実力馬であることは間違いないが、データ的には推奨しにくい。特に上位人気が予想されるレイデオロは、ドバイシーマクラシックが6着。不本意な展開とはいえ、大きく敗れた。スワーヴリチャードとリスグラシューはともに前走3着。好走はしているが、前走連対という条件からは外れる。ただリスグラシューは、2着馬とタイム差なしなので非常に惜しい。なおかつ前年のエリザベス女王杯を勝っている。同馬だけは捨てがたいところだ。
その他では、やはり前走大阪杯の連対馬になるだろう。芝2200mの実績ではアルアインが上だが、キセキが逆転しても全く不思議はない力関係だ。あとは、昨年の宝塚記念で激走したノーブルマーズを今年も押さえるかどうかといったところだろう。
ライタープロフィール
小田原智大(おだわら ともひろ)
1975年6月、東京生まれ。早稲田大学商学部卒業後、業界紙記者を経て、(株)レイヤード入社。ライター&エディターとして活躍。JRA-VANデータの配信初期から、いち早くデータ競馬の有効性に着目する。05年5月より「競馬 最強の法則WEB」にて、障害戦を除く全重賞レースの傾向と対策、予想を展開。「オッズパーク ダートグレードデータ作戦」では、地方競馬の重賞の攻略にも取り組んでいる。仕事の関係でなかなか競馬場には行けなくなったが、年に1、2回行くローカル遠征が楽しみ。