データde出〜た
第1319回 スプリントG1へ続く道!? 葵Sに注目!
2019/5/20(月)
今週は日曜日に大一番の日本ダービーが控えているが、先に土曜日の葵Sにも注目してみたい。昨年重賞に格上げとなったレースだが、2010年から2017年までは同じ京都芝1200mの条件で、オープン特別として行われていた。データとしては十分そろっているので、同レースの傾向を分析していくことにする。データ分析にはJRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用した。
■表1 2010年以降の葵S好走馬
年 | 着順 | 馬名 | 性別 | 人気 | 3角 | 4角 | 走破タイム | 前半3F | 後半3F | 前−後 |
18年 | 1 | ゴールドクイーン | 牝 | 9 | 1 | 1 | 1080 | 33.9 | 34.1 | -0.2 |
2 | ラブカンプー | 牝 | 6 | 2 | 2 | 1082 | ||||
2 | トゥラヴェスーラ | 牡 | 2 | 12 | 12 | 1082 | ||||
17年 | 1 | アリンナ | 牝 | 2 | 1 | 1 | 1105 | 34.9 | 35.6 | -0.7 |
2 | エントリーチケット | 牝 | 1 | 10 | 9 | 1108 | ||||
3 | ショウナンマッシブ | 牡 | 6 | 3 | 2 | 1110 | ||||
16年 | 1 | ナックビーナス | 牝 | 4 | 4 | 3 | 1079 | 34.3 | 33.6 | 0.7 |
2 | ラズールリッキー | 牝 | 6 | 1 | 1 | 1080 | ||||
3 | ワンダフルラッシュ | 牝 | 10 | 4 | 5 | 1083 | ||||
15年 | 1 | ジャストドゥイング | 牡 | 8 | 5 | 6 | 1080 | 34.0 | 34.0 | 0 |
2 | フィドゥーシア | 牝 | 4 | 3 | 3 | 1082 | ||||
3 | マジックシャトル | 牡 | 10 | 2 | 2 | 1083 | ||||
14年 | 1 | リアルヴィーナス | 牝 | 9 | 6 | 7 | 1075 | 33.4 | 34.1 | -0.7 |
2 | シゲルカガ | 牡 | 5 | 1 | 1 | 1077 | ||||
3 | エルカミーノレアル | 牡 | 10 | 9 | 9 | 1080 | ||||
13年 | 1 | ティーハーフ | 牡 | 1 | 15 | 13 | 1087 | 33.9 | 34.8 | -0.9 |
2 | カゼニタツライオン | 牡 | 14 | 2 | 2 | 1087 | ||||
3 | プレイズエターナル | 牡 | 2 | 6 | 6 | 1087 | ||||
12年 | 1 | マコトナワラタナ | 牝 | 4 | 10 | 11 | 1080 | 33.9 | 34.1 | -0.2 |
2 | ゴールデンムーン | 牝 | 6 | 14 | 14 | 1082 | ||||
3 | マイネルアダマス | 牡 | 14 | 9 | 9 | 1082 | ||||
11年 | 1 | ロードカナロア | 牡 | 1 | 2 | 2 | 1093 | 34.8 | 34.5 | 0.3 |
2 | サクラベル | 牝 | 13 | 11 | 9 | 1095 | ||||
3 | ミヤジエムジェイ | 牡 | 6 | 5 | 4 | 1095 | ||||
10年 | 1 | ケイアイデイジー | 牝 | 3 | 7 | 6 | 1076 | 33.3 | 34.3 | -1 |
2 | カレンチャン | 牝 | 2 | 3 | 3 | 1076 | ||||
3 | ジュエルオブナイル | 牝 | 9 | 7 | 5 | 1076 |
※2018年より重賞。10年〜17年はOP特別。
まずは10年以降に行われた、過去9回の葵S好走馬を見ていくことにする(表1参照)。重賞に昇格した昨年は9番人気の伏兵ゴールドクイーンが逃げ切り勝ちを果たし、2着はラブカンプーとトゥラヴェスーラの同着という結果だった。勝ち馬は現在ダート戦線に進んでいるが、ラブカンプーはその後、サマースプリントシリーズで古馬を相手に善戦を続け、秋にはスプリンターズSでも2着と好走を果たした。
それ以前の好走馬を見ると、ナックビーナスやロードカナロア、カレンチャンといった名前がある。重賞に昇格したことで出走馬のレベルが上がったわけでなく、オープン特別時代から素質ある短距離馬が出走し、好走していたというわけだ。後のスプリントG1につながる可能性があるレースとして、今後も注目していきたい。
好走馬の内訳をあらためて見ると、牝馬が多い。3着以内に好走した27頭中、15頭が牝馬だ。また、近年は逃げ馬の好走が目立つ。昨年1着のゴールドクイーン、17年1着のアリンナ、16年2着のラズールリッキー、14年12着のシゲルカガが連対している。各年のレースラップを調べてみると、明らかに違いがあるものの、結果的には逃げ馬が残っている。
例えば16年はレースの前半3ハロンが34秒3で、後半3ハロンが33秒6というラップだった。後半3ハロンの方が0.7秒も速い、上がりの競馬。芝1200mの重賞としてはかなり遅いペースだった。一方、17年の前後半3ハロンを比較すると、後半の方が0.7秒遅かった。16年とは一転し、速いペースとなったが、それでも逃げ馬が勝った。ペースはあれこれ考えず、ハナを切りそうな馬は常にマークしておきたいところだ。
■表2 葵S出走馬の前走クラス別成績(2010年以降)
前走クラス | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回収率 | 複回収率 |
500万下 | 2- 3- 1- 30/ 36 | 5.6% | 13.9% | 16.7% | 28 | 73 |
OPEN特別 | 5- 4- 5- 40/ 54 | 9.3% | 16.7% | 25.9% | 91 | 164 |
G3 | 0- 1- 1- 15/ 17 | 0.0% | 5.9% | 11.8% | 0 | 74 |
G2 | 2- 1- 0- 8/ 11 | 18.2% | 27.3% | 27.3% | 370 | 140 |
G1 | 0- 1- 1- 8/ 10 | 0.0% | 10.0% | 20.0% | 0 | 206 |
重賞 | 2- 3- 2- 31/ 38 | 5.3% | 13.2% | 18.4% | 107 | 127 |
次は葵S出走馬の前走クラス別成績を調べた(表2参照)。G3とG2、G1を前走重賞組として1つにまとめて、オープン特別組や500万クラス組と比較して考えてみることにする。勝率や連対率、複勝率で見ると、オープン特別組の成績が最もいい。回収率の面でも単勝が91%、複勝が164%とまずまずの数字だ。重賞組と500万組の比較では、勝率・連対率、複勝率ではあまり差がない。しかし、回収率では大きな差があり、重賞組の方が明らかに好配当を見込める。
■表3 前走OP特別組のレース別成績
順位 | 前走レース名 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回収率 | 複回収率 |
1 | 橘S | 5- 3- 2-24/34 | 14.7% | 23.5% | 29.4% | 145 | 78 |
2 | 端午S | 0- 1- 0- 4/ 5 | 0.0% | 20.0% | 20.0% | 0 | 934 |
3 | マーガレ | 0- 0- 2- 9/11 | 0.0% | 0.0% | 18.2% | 0 | 68 |
4 | 昇竜S | 0- 0- 1- 1/ 2 | 0.0% | 0.0% | 50.0% | 0 | 385 |
5 | クリスマ | 0- 0- 0- 1/ 1 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0 | 0 |
6 | 福島2歳 | 0- 0- 0- 1/ 1 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0 | 0 |
ここからは前走のレースを個別に見ていくことにする。まずは前走オープン特別組のレース別成績を調べた(表3参照)。前走橘S組が中心で【5.3.2.24】という成績。勝ち馬はすべて同組から出ている。基本的には橘S組が有力となり、5着以内に入っていた馬を有力視するのがコツ。京都芝1400m→1200mの距離短縮により、上位勢の着順が若干入れ替わる傾向がある。
■表4 前走重賞組の人気別成績
人気 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回収率 | 複回収率 |
1〜5人気 | 0- 1- 0-15/16 | 0.0% | 6.3% | 6.3% | 0 | 11 |
6〜 人気 | 2- 2- 2-16/22 | 9.1% | 18.2% | 27.3% | 185 | 212 |
続いて前走重賞組を見ていく。ファルコンSや桜花賞からくる馬がやや多い傾向。そこでの着順は悪い馬が多く(良い馬はNHKマイルCやオークスに行くため)、あまり気にしないほうがいい。もっともそれは、前走着順だけでは取捨が難しいということを意味する。そこで表4を見ていただきたい。前走重賞組の人気別成績を記したものだが、興味深い傾向が出ている。葵Sで1〜5番人気に支持された馬は【0.1.0.15】で不振なのに対し、6番人気以下だった馬が【2.2.2.16】という成績なのだ。人気は前走だけでなく、それ以前の成績も考慮されて形成されるものだが、なぜか上位人気馬が全く走っていない。
■表5 前走500万クラス組の人気別成績
人気 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回収率 | 複回収率 |
1〜5人気 | 2- 2- 0- 9/13 | 15.4% | 30.8% | 30.8% | 77 | 70 |
6〜 人気 | 0- 1- 1-21/23 | 0.0% | 4.3% | 8.7% | 0 | 74 |
一方、前走500万クラスの人気別成績を見ると、前走重賞組とは対照的な傾向が出ている。1〜5番人気に支持された馬が【2.2.0.9】という成績。回収率は70%程度だが、連対率は約30%ある。しかし、6番人気以下だった馬は【0.1.1.21】という成績。前評判が高い馬ほど好走しやすい傾向が出ている。前走500万クラスを勝利して勢いがあり、また、そのレース内容が今回の前評判につながっているはず。勝ちっぷり=人気と考えるなら、取捨はしやすいようだ。
ライタープロフィール
小田原智大(おだわら ともひろ)
1975年6月、東京生まれ。早稲田大学商学部卒業後、業界紙記者を経て、(株)レイヤード入社。ライター&エディターとして活躍。JRA-VANデータの配信初期から、いち早くデータ競馬の有効性に着目する。05年5月より「競馬 最強の法則WEB」にて、障害戦を除く全重賞レースの傾向と対策、予想を展開。「オッズパーク ダートグレードデータ作戦」では、地方競馬の重賞の攻略にも取り組んでいる。仕事の関係でなかなか競馬場には行けなくなったが、年に1、2回行くローカル遠征が楽しみ。