データde出〜た
第1317回 平地G1における単勝1倍台の1番人気馬を考察する
2019/5/13(月)
春の東京5週連続G1初戦のNHKマイルCでは単勝オッズ1.5倍と圧倒的支持を集めていたグランアレグリアがまさかの5着に敗れた。G1において1番人気馬に票が集中し、単勝1倍台となるのは多々あるケースで、そうした1番人気馬がどういった成績だったのかを2009年以降・過去10年のデータから考察していきたい。なお、データの分析にはJRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用した。
■表1 1番人気馬の単勝オッズが1倍台の平地G1における人気別成績(過去10年)
人気 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単勝回収率 | 複勝回収率 |
1番人気 | 26- 12- 6- 14/ 58 | 44.8% | 65.5% | 75.9% | 70% | 85% |
2番人気 | 10- 11- 8- 29/ 58 | 17.2% | 36.2% | 50.0% | 99% | 93% |
3番人気 | 7- 7- 12- 32/ 58 | 12.1% | 24.1% | 44.8% | 101% | 118% |
4番人気 | 2- 7- 4- 45/ 58 | 3.4% | 15.5% | 22.4% | 35% | 78% |
5番人気 | 3- 6- 3- 46/ 58 | 5.2% | 15.5% | 20.7% | 67% | 69% |
6番人気 | 2- 1- 4- 51/ 58 | 3.4% | 5.2% | 12.1% | 47% | 75% |
7番人気 | 3- 1- 6- 48/ 58 | 5.2% | 6.9% | 17.2% | 141% | 92% |
8番人気 | 3- 4- 4- 47/ 58 | 5.2% | 12.1% | 19.0% | 177% | 123% |
9番人気 | 0- 2- 1- 55/ 58 | 0.0% | 3.4% | 5.2% | 0% | 39% |
10番人気以下 | 2- 7- 10-426/445 | 0.4% | 2.0% | 4.3% | 53% | 61% |
※2019年はNHKマイルCまでを集計(以下の表も同じ)。
まず表1は過去10年で1番人気馬が単勝1倍台だった平地G1における人気別成績。1番人気馬の成績を見ると、勝率44.8%と全体の半分も勝利していない。単勝1倍台の1番人気馬は、@前走を含めた過去内容が良い、A調教や状態の良さが伝えられている、B血統の良さや鞍上が成績上位のジョッキー、といった要素が組み合わさって、人気が集中しているケースだろう。実力的に抜けていて、勝つのは当然だと見られている場合でも、実際には勝率で5割を切っており、勝ち切るのが難しいことがわかる。
1倍台の1番人気馬がいたのは過去10年で58レース。過去10年の平地G1全236レースの約4分の1を占めている。なお、全236レースにおける1番人気馬の勝率は34.9%。1倍台の馬に限ると勝率は高くなるものの、それでも半分以下しか勝利できていないのが現状だ。
先日のNHKマイルCでは単勝オッズ1.5倍のグランアレグリアが5着に敗れ、2番人気馬のアドマイヤマーズが勝利した。このように2・3番人気馬が勝利するケースも多く、2番人気馬の単複回収率は100%弱、3番人気馬は単複回収率ともに100%を超えている。他では伏兵といえる7・8番人気馬の単勝回収率が100%を大きく上回っている。
■表2 単勝オッズが1倍台の1番人気馬のオッズ別成績(過去10年)
単勝オッズ | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単勝回収率 | 複勝回収率 |
1.0〜 1.4 | 10- 2- 1- 3/16 | 62.5% | 75.0% | 81.3% | 82% | 89% |
1.5〜 1.9 | 16-10- 5-11/42 | 38.1% | 61.9% | 73.8% | 65% | 83% |
続いて表2は単勝オッズ1.0〜1.4倍と1.5〜1.9倍の2つのグループに分けたもの。黄色で強調した1.0〜1.4倍の1番人気馬は勝率62.5%とかなり高い。なお、このグループで4着以下に敗れたのは12年天皇賞・春のオルフェーヴル(1.3倍/11着)、13年天皇賞・春のゴールドシップ(1.3倍/5着)、17年宝塚記念のキタサンブラック(1.4倍/9着)の3回だった。実績十分で他との比較でも負けようがないと思われるケースでも、実際に負ける場合があるというのがG1攻略の難しさといえそうだ。
対して、1倍台後半(1.5〜1.9倍)では勝率38.1%と相当下がっている。同じ単勝1倍台でも勝率に大きな開きがある点は覚えておきたい。
■表3 単勝オッズ1倍台の1番人気馬・G1における距離別成績(過去10年)
距離 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単勝回収率 | 複勝回収率 |
1200m | 2- 0- 0- 2/ 4 | 50.0% | 50.0% | 50.0% | 65% | 55% |
1600m | 10- 6- 2- 6/24 | 41.7% | 66.7% | 75.0% | 66% | 85% |
1800m | 1- 0- 1- 0/ 2 | 50.0% | 50.0% | 100.0% | 95% | 110% |
2000m | 4- 1- 1- 1/ 7 | 57.1% | 71.4% | 85.7% | 87% | 94% |
2200m | 0- 2- 2- 2/ 6 | 0.0% | 33.3% | 66.7% | 0% | 75% |
2400m | 4- 2- 0- 0/ 6 | 66.7% | 100.0% | 100.0% | 106% | 113% |
2500m | 2- 1- 0- 0/ 3 | 66.7% | 100.0% | 100.0% | 116% | 113% |
3000m | 3- 0- 0- 0/ 3 | 100.0% | 100.0% | 100.0% | 146% | 110% |
3200m | 0- 0- 0- 3/ 3 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% |
表3は単勝1倍台の1番人気馬の距離別成績。全体的に距離が延びた方が勝率は上がる傾向にあるが、2200mと3200mの距離では一度も勝利していない。2200mは宝塚記念とエリザベス女王杯、3200mは天皇賞・春が該当する。
対して、3000mの菊花賞では3戦3勝とすべて勝ち切っている。距離やレースによって、断然人気馬でも成績に大きな違いが出ている。
■表4 単勝オッズ1倍台の1番人気馬・G1における前走着差別成績(過去10年)
前走着差 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単勝回収率 | 複勝回収率 |
勝1.0〜1.9 | 1- 0- 0- 0/ 1 | 100.0% | 100.0% | 100.0% | 180% | 110% |
勝0.6〜0.9 | 2- 1- 1- 2/ 6 | 33.3% | 50.0% | 66.7% | 60% | 78% |
勝0.3〜0.5 | 7- 6- 2- 6/21 | 33.3% | 61.9% | 71.4% | 49% | 80% |
勝0.1〜0.2 | 9- 1- 0- 3/13 | 69.2% | 76.9% | 76.9% | 105% | 86% |
勝0.0 | 1- 1- 0- 2/ 4 | 25.0% | 50.0% | 50.0% | 42% | 55% |
負0.0 | 1- 1- 2- 0/ 4 | 25.0% | 50.0% | 100.0% | 32% | 112% |
負0.1〜0.2 | 1- 0- 1- 1/ 3 | 33.3% | 33.3% | 66.7% | 63% | 76% |
表4は単勝1倍台の1番人気馬の前走着差別成績。前走で1秒以上の差をつけて今回も勝利したのは09年安田記念のウオッカ(前走ヴィクトリアMで1.2秒差勝ち)だ。
前走0.6〜0.9秒差勝ちの馬も前走0.3〜0.5秒差勝ちの馬もともに勝率33.3%と表1で示した平均44.8%を下回っている。前走で2着に0.3秒差以上の完勝を見せていても、意外に負けるケースが多いことがわかる。グランアレグリアも前走桜花賞で2着に0.4秒差をつける完勝だったが、NHKマイルCではスムーズなレースができずに敗れている。
対して、黄色で強調した前走0.1〜0.2秒差勝ちの馬が勝率69.2%と他よりも抜きんでて勝率が高い。差をつけて勝つわけではなく競り合いの中から少し抜け出して勝った馬の方が次走の勝ちにつながるようだ。
■表5 単勝オッズ1倍台の1番人気馬・G1における騎手別成績(過去10年)
騎手 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単勝回収率 | 複勝回収率 |
ルメール | 4- 0- 2- 2/ 8 | 50.0% | 50.0% | 75.0% | 76% | 82% |
岩田康誠 | 3- 2- 0- 0/ 5 | 60.0% | 100.0% | 100.0% | 78% | 110% |
武豊 | 3- 1- 0- 2/ 6 | 50.0% | 66.7% | 66.7% | 90% | 76% |
M.デムーロ | 3- 1- 0- 0/ 4 | 75.0% | 100.0% | 100.0% | 140% | 115% |
安藤勝己 | 2- 0- 2- 0/ 4 | 50.0% | 50.0% | 100.0% | 65% | 110% |
池添謙一 | 2- 0- 0- 1/ 3 | 66.7% | 66.7% | 66.7% | 100% | 73% |
福永祐一 | 2- 0- 0- 1/ 3 | 66.7% | 66.7% | 66.7% | 106% | 73% |
前走騎手 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単勝回収率 | 複勝回収率 |
同騎手 | 21-10- 6-13/50 | 42.0% | 62.0% | 74.0% | 64% | 83% |
乗替り | 5- 2- 0- 1/ 8 | 62.5% | 87.5% | 87.5% | 105% | 98% |
※勝利数2勝以上。
表5は単勝1倍台の1番人気馬に騎乗した騎手の成績と、前走と同騎手・乗替り時の成績をまとめたもの。ルメール騎手が4勝と最多ではあるが、それでも勝率は50%にとどまる。次いで3勝で岩田騎手、武豊騎手、M.デムーロ騎手が並んでいるが、なかでもデムーロ騎手は勝率75%と一際高く、連対率も100%と優秀だ。
前走から継続騎乗もしくは乗替りの成績比較では、意外にも前走から乗替りとなった方が勝率は高い。近いところでは皐月賞における1着サートゥルナーリア(M.デムーロ→ルメール)が挙げられる。4着以下に敗れたのは11年スプリンターズSにおける外国馬のロケットマンのみで、日本馬では7頭すべて連対を果たしている。
■表6 単勝オッズ1倍台の1番人気馬・G1における種牡馬別成績(過去10年)
種牡馬 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単勝回収率 | 複勝回収率 |
ロードカナロア | 5- 0- 0- 0/ 5 | 100.0% | 100.0% | 100.0% | 158% | 110% |
スペシャルウィーク | 3- 3- 2- 0/ 8 | 37.5% | 75.0% | 100.0% | 51% | 110% |
ディープインパクト | 3- 3- 1- 3/10 | 30.0% | 60.0% | 70.0% | 44% | 82% |
キングカメハメハ | 3- 3- 1- 0/ 7 | 42.9% | 85.7% | 100.0% | 64% | 112% |
ステイゴールド | 3- 0- 0- 3/ 6 | 50.0% | 50.0% | 50.0% | 73% | 55% |
タニノギムレット | 2- 0- 0- 0/ 2 | 100.0% | 100.0% | 100.0% | 175% | 115% |
シンボリクリスエス | 2- 0- 0- 0/ 2 | 100.0% | 100.0% | 100.0% | 175% | 110% |
ハーツクライ | 1- 1- 0- 0/ 2 | 50.0% | 100.0% | 100.0% | 85% | 110% |
※連対数2回以上を掲載。
最後に表6は単勝1倍台の1番人気馬の種牡馬別成績。ディープインパクトをはじめとするサンデーサイレンス後継種牡馬やキングカメハメハ産駒などをおさえて、ロードカナロア産駒が5戦5勝とすべて勝ち切っている。
昨年のオークス・秋華賞・ジャパンカップを勝利したアーモンドアイ、昨年のホープフルSと今年の皐月賞を制したサートゥルナーリアが該当している。サートゥルナーリアの皐月賞はゴール前が際どかったものの勝利して、デビュー以来4連勝を決めた。皐月賞で騎乗したルメール騎手が現在騎乗停止中で、日本ダービーでは乗替りとなる。
日本ダービーにはサートゥルナーリア、安田記念にはアーモンドアイと単勝1倍台の人気が予想される2頭が出走を予定しており、ロードカナロア産駒の快進撃が続くのか、大いに注目しておきたい。
ライタープロフィール
ケンタロウ(けんたろう)
1978年6月、鹿児島県生まれ。早稲田大学社会科学部卒業。初めて買った馬券が大当たりし、それから競馬にのめり込むように。データでは、開催日の馬場やコース適性に注目している。好きなタイプは逃げか追い込み。馬券は1着にこだわった単勝、馬単派。料理研究家ではない。