データde出〜た
第1316回 ヴィクトリアマイルで波乱の主役となる馬は?
2019/5/9(木)
日曜の東京競馬場では、古馬のマイル女王決定戦・ヴィクトリアマイルが行われる。優勝馬にはウオッカやブエナビスタ、アパパネといった歴史的な名牝が名を連ねる一方で、ここ5年はすべて5番人気以下の馬が優勝するなど、波乱度の高いレースでもある。今年も難解なメンバー構成となったが、果たしてタイトルを手中にするのはどの馬か、過去の傾向を分析してみたい。データの分析には、JRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JV、馬天楼 for データde出〜たを利用した。
■表1 人気別成績
人気 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回収 | 複回収 | 過去3年 |
1 | 3-3-0-4/10 | 30.0% | 60.0% | 60.0% | 63% | 80% | 0-2-0-1 |
2 | 1-0-1-8/10 | 10.0% | 10.0% | 20.0% | 41% | 29% | 0-0-1-2 |
3 | 0-1-2-7/10 | 0.0% | 10.0% | 30.0% | 0% | 72% | 0-0-0-3 |
4 | 1-0-0-9/10 | 10.0% | 10.0% | 10.0% | 72% | 22% | 0-0-0-3 |
5 | 1-0-1-8/10 | 10.0% | 10.0% | 20.0% | 141% | 85% | 0-0-0-3 |
6 | 1-0-1-8/10 | 10.0% | 10.0% | 20.0% | 135% | 93% | 1-0-0-2 |
7 | 1-1-3-5/10 | 10.0% | 20.0% | 50.0% | 177% | 219% | 1-0-2-0 |
8 | 1-1-0-8/10 | 10.0% | 20.0% | 20.0% | 194% | 125% | 1-0-0-2 |
9 | 0-0-0-10/10 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% | 0-0-0-3 |
10 | 0-0-0-10/10 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% | 0-0-0-3 |
11〜 | 1-4-2-71/78 | 1.3% | 6.4% | 9.0% | 36% | 189% | 0-1-0-22 |
参考:単10倍台 | 4-1-5-18/28 | 14.3% | 17.9% | 35.7% | 231% | 143% | 3-0-2-4 |
過去10年の人気別では、1番人気馬が連対率・複勝率ともに60.0%と、まずまずの成績。2〜8番人気は4番人気以外すべて好走馬を2頭以上輩出しており、その中では人気薄になる5〜8番人気の回収率が高く出ている。単勝オッズで見ると、10倍台だった馬が【4.1.5.18】複勝率35.7%の好成績だ。
また、ステップレースの阪神牝馬Sが200m延長され、本競走と同じ芝1600mになった過去3年の成績を見ると、本競走優勝馬3頭はすべて6〜8番人気で単勝オッズ10倍台。単勝10倍台の馬は3着にも2頭が入り、複勝率は55.6%を記録している。一方、過去10年では7頭が好走している11番人気以下の馬は、この3年にかぎるとデンコウアンジュ(一昨年)の2着1回のみにとどまる。
■表2 年齢別成績
年齢 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回収 | 複回収 | 過去3年 | 同複勝率 |
4歳 | 5-7-3-70/85 | 5.9% | 14.1% | 17.6% | 34% | 75% | 1-3-1-19/24 | 20.8% |
5歳 | 3-2-5-47/57 | 5.3% | 8.8% | 17.5% | 86% | 215% | 1-0-2-12/15 | 20.0% |
6歳 | 1-1-2-24/28 | 3.6% | 7.1% | 14.3% | 50% | 106% | 0-0-0-11/11 | 0.0% |
7歳 | 1-0-0-6/7 | 14.3% | 14.3% | 14.3% | 252% | 58% | 1-0-0-2/3 | 33.3% |
8歳 | 0-0-0-1/1 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% | 該当なし |
年齢別では、4歳馬が3着以内馬の半数を占め、連対率では5、6歳馬を一歩リード。ただ、単複の回収率は低めだ。7歳以上の好走馬は2016年の優勝馬・ストレイトガールのみ。同馬は本競走で3、1着、そして前年秋にはスプリンターズSを制した実績もあった。また、6歳馬も過去3年では11頭がすべて馬券圏外。十分なコース実績、G1実績を持つ馬でなければ、6歳以上の馬は割り引きたい。
■表3 年齢・前走着順別成績
年齢 | 前走着順 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回収 | 複回収 | 過去3年 |
5歳以下 | 1着 | 0-1-1-26/28 | 0.0% | 3.6% | 7.1% | 0% | 42% | 0-0-0-9 |
2〜5着 | 5-3-7-33/48 | 10.4% | 16.7% | 31.3% | 95% | 286% | 2-3-3-9 | |
6着以下 | 3-5-0-58/66 | 4.5% | 12.1% | 12.1% | 50% | 55% | 0-0-0-13 | |
6歳以上 | 1着 | 0-1-2-5/8 | 0.0% | 12.5% | 37.5% | 0% | 311% | 0-0-0-2 |
2〜5着 | 0-0-0-11/11 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% | 0-0-0-6 | |
6着以下 | 2-0-0-15/17 | 11.8% | 11.8% | 11.8% | 187% | 52% | 1-0-0-5 |
年齢別(5歳以下/6歳以上)成績を、さらに前走の着順別に分けると、5歳以下では意外なことに前走1着馬が不振。近3年は、3着以内馬全8頭が前走では2〜5着だった。一方、6歳以上はその前走2〜5着馬に好走なし。前述のストレイトガール(2016年)は、前走阪神牝馬S9着から一変していた。
■表4 過去3年の1〜3着馬(1)
年 | 馬名 | 年齢 | 人気 | 着順 | 前走 | 人気 | 着順 |
2016 | ストレイトガール | 7 | 7 | 1 | 阪神牝馬S | 3 | 9 |
ミッキークイーン | 4 | 1 | 2 | 阪神牝馬S | 1 | 2 | |
ショウナンパンドラ | 5 | 2 | 3 | 大阪杯(G2) | 4 | 3 | |
2017 | アドマイヤリード | 4 | 6 | 1 | 阪神牝馬S | 3 | 2 |
デンコウアンジュ | 4 | 11 | 2 | 福島牝馬S | 8 | 4 | |
ジュールポレール | 4 | 7 | 3 | 阪神牝馬S | 4 | 3 | |
2018 | ジュールポレール | 5 | 8 | 1 | 阪神牝馬S | 5 | 5 |
リスグラシュー | 4 | 1 | 2 | 阪神牝馬S | 1 | 3 | |
レッドアヴァンセ | 5 | 7 | 3 | 阪神牝馬S | 11 | 2 |
表4は、阪神牝馬Sが芝1600mになった2016年以降の本競走3着以内馬9頭である。2009年〜15年の7年間で阪神牝馬S組の好走はわずか4頭だったが、同距離になったここ3年では7頭と、ステップレースとしての重要度が急激に増してきた。ただし、同レース1着馬は過去10年【0.0.0.9】、ここ3年も4、7、5着に終わっている。狙いは2〜5着馬だ。
■表5 過去3年の1〜3着馬(2)
年 | 馬名 | 東京芝1600m | その他の主な実績 | |
2016 | ストレイトガール | 1-0-1-0 | 本競走3、1着 | スプリンターズS1着 |
ミッキークイーン | 0-1-0-0 | クイーンC2着 | オークス、秋華賞1着 | |
ショウナンパンドラ | 0-0-0-1 | 前年本競走8着 | ジャパンC、秋華賞1着 | |
2017 | アドマイヤリード | 未経験 | 近5走連続連対 | |
デンコウアンジュ | 1-0-0-0 | アルテミスS1着 | … | |
ジュールポレール | 未経験 | 近5走連続3着以内 | ||
2018 | ジュールポレール | 0-0-1-0 | 前年本競走3着 | 阪神牝馬S3着 |
リスグラシュー | 2-0-0-0 | 東京新聞杯、アルテミスS1着 | 桜花賞2着 | |
レッドアヴァンセ | 1-0-0-0 | ユートピアS1着 | 阪神牝馬S2着 |
もうひとつ、同じく近3年の3着以内馬について、東京芝1600mの実績も見ておきたい。好走した9頭中6頭は、東京芝1600mで複勝率100%。出走数は1〜2回と少なくても構わない。その6頭のうち2頭は既に本競走で3着以内の実績があり、他の4頭中3頭は東京芝1600mの重賞で連対経験があった。
コース経験があって複勝率100%未満の馬なら、ショウナンパンドラ(ジャパンC、秋華賞)級の実績馬でなければ評価を下げたい。また、コース未経験の馬なら、近5走のすべてで馬券に絡むような安定感が必要だ。
【結論】
今年は各項目をすんなりクリアする馬が不在で、データからも混戦模様の一戦と言える。そんな中でまず取り上げたいのは、2016年以降の3着以内馬9頭中8頭を占めている、5歳以下の前走2〜5着馬(表3)。特に前走阪神牝馬S組が有力になる(表4)。今年の登録馬でこれに該当するのは、同レースで2着だったアマルフィコーストだ。東京芝1600mは未経験だが、デビュー以来、競走を中止したフィリーズレビューを除けば【2.4.3.1】。表5にあった、コース未経験の好走馬2頭に見劣らない安定感を発揮していることもプラス材料になる。冒頭でも触れたように荒れる一戦だけに、この馬が大波乱を演出する可能性は十分にありそうだ。
同馬のほかに、5歳以下の前走2〜5着馬はプリモシーン(前走ダービー卿チャレンジT2着)1頭のみ。東京芝1600mは未勝利戦1着、NHKマイルC5着で、重賞連対やG1での3着以内こそないものの、同じ左回りで直線も長い新潟1600m戦・関屋記念の優勝実績で、ある程度は相殺できるだろう。
一方、その東京芝1600mで複勝率100%(表5)を記録しているのは、クロコスミア(2戦1勝、アルテミスS3着)、ラッキーライラック(アルテミスS1着)、そしてレッドオルガ(東京新聞杯2着など)の3頭だ。いずれも前走では阪神牝馬Sに出走しており、クロコスミア(5着)は「前走2〜5着」に該当する。ただ同馬は6歳馬で、このコースでの重賞連対やG1・3着以内の実績もない。阪神牝馬S6着以下でも、4〜5歳馬で重賞連対があるラッキーライラックとレッドオルガも互角以上とみたい。
その他では、アエロリットが本コース複勝率100%には届かないものの、【1.2.0.1】で昨年の本競走が0.1秒差の4着と、これに準じる成績を残している。NHKマイルC優勝、安田記念2着という実績からも、まったく無視してしまうのは危険だ。加えて、過去3年のうち2回は本競走3着以内の実績馬が優勝しているため(表5)、一昨年の2着馬・デンコウアンジュにもチャンスがありそうだ。また、上記の中で単勝オッズ10倍台(表1)に該当する馬がいれば、評価を一段階上げてもいいだろう。
ライタープロフィール
浅田知広(あさだ ともひろ)
1970年12月、埼玉県生まれ。立命館大学文学部中退後、夕刊紙レース部のアルバイト、競馬データベース会社を経て、現在はフリー。パソコンが広く普及する以前から、パソコン通信でデータ手入力方式の競馬予想ソフトを公開するなど、競馬のみならずPCやネットワークにも精通。その知識を活かし、Webや雑誌で競馬ライターとして活躍するかたわら、ネットワークの専門誌にも連載を持つ。