データde出〜た
第1296回 少頭数も混戦か!? 弥生賞を占う
2019/2/28(木)
今週は日曜日に中山競馬場で弥生賞が行われる。皐月賞へ向けての最重要ステップレースだ。例年、頭数は揃いにくい一戦で、過去10年ではフルゲートで行われたことは1度もない。今年も登録の段階で11頭しかおらず、フルゲート割れは確実だ。なおかつ、確固たる中心馬が不在のメンバー構成。すでにクラシックの有力候補となっているサートゥルナーリアやアドマイヤマーズ、ダノンキングリーといった素質馬に肩を並べるだけの勝ち方をできる馬が果たして出てくるだろうか。そうした点も大きな注目となるだろう。いつものように過去10年のデータを分析し、今年のレースを展望してみたい。データの集計・分析はJRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用した。
■表1 過去10年の弥生賞好走馬
年 | 着順 | 馬名 | 人気 | 馬場 | 前走レース名 | 前着 | 父 |
18年 | 1 | ダノンプレミアム | 1 | 良 | フューチG1 | 1 | ディープインパクト |
2 | ワグネリアン | 2 | 東京スポG3 | 1 | ディープインパクト | ||
3 | ジャンダルム | 4 | ホープフG1 | 2 | Kitten's Joy | ||
17年 | 1 | カデナ | 1 | 良 | 京都2歳G3 | 1 | ディープインパクト |
2 | マイスタイル | 8 | こぶし賞500* | 1 | ハーツクライ | ||
3 | ダンビュライト | 5 | きさらぎG3 | 3 | ルーラーシップ | ||
16年 | 1 | マカヒキ | 2 | 良 | 若駒S | 1 | ディープインパクト |
2 | リオンディーズ | 1 | フューチG1 | 1 | キングカメハメハ | ||
3 | エアスピネル | 3 | フューチG1 | 2 | キングカメハメハ | ||
15年 | 1 | サトノクラウン | 2 | 稍 | 東京スポG3 | 1 | Marju |
2 | ブライトエンブレム | 4 | フューチG1 | 7 | ネオユニヴァース | ||
3 | タガノエスプレッソ | 10 | フューチG1 | 6 | ブラックタイド | ||
14年 | 1 | トゥザワールド | 1 | 良 | 若駒S | 1 | キングカメハメハ |
2 | ワンアンドオンリー | 4 | ラジオNIG3 | 1 | ハーツクライ | ||
3 | アデイインザライフ | 2 | 京成杯G3 | 3 | ディープインパクト | ||
13年 | 1 | カミノタサハラ | 6 | 良 | 500万下* | 1 | ディープインパクト |
2 | ミヤジタイガ | 10 | 若駒S | 4 | ネオユニヴァース | ||
3 | コディーノ | 2 | フューチG1 | 2 | キングカメハメハ | ||
12年 | 1 | コスモオオゾラ | 9 | 稍 | 共同通信G3 | 5 | ロージズインメイ |
2 | トリップ | 3 | ラジオNIG3 | 4 | クロフネ | ||
3 | アーデント | 5 | 京成杯G3 | 4 | ディープインパクト | ||
11年 | 1 | サダムパテック | 1 | 良 | フューチG1 | 4 | フジキセキ |
2 | プレイ | 7 | つばき賞500* | 2 | ロックオブジブラルタル | ||
3 | デボネア | 5 | 京成杯G3 | 2 | アグネスタキオン | ||
10年 | 1 | ヴィクトワールピサ | 1 | 重 | ラジオNIG3 | 1 | ネオユニヴァース |
2 | エイシンアポロン | 2 | フューチG1 | 2 | Giant's Causeway | ||
3 | ダイワファルコン | 7 | 500万下* | 2 | ジャングルポケット | ||
09年 | 1 | ロジユニヴァース | 1 | 稍 | ラジオNIG3 | 1 | ネオユニヴァース |
2 | ミッキーペトラ | 5 | 未勝利* | 1 | シンボリクリスエス | ||
3 | モエレエキスパート | 7 | シンザンG3 | 10 | マジックマイルズ |
まずは過去10年の弥生賞で3着以内に好走した馬を表1にまとめた。昨年は前走朝日杯フューチュリティSを圧勝したダノンプレミアムと、前走東スポ杯2歳Sを勝ったワグネリアンとの一騎打ちムード。競馬はなかなか前評判通りには決まらないが、結果はこの2頭によるワン・ツー決着。馬券の配当もかなり安かった。それだけこの両馬の実力が抜けていたということだろう。2016年も前評判が高かった馬が上位を独占した。後にダービー馬となったマカヒキには敗れたものの、2歳王者のリオンディーズは2着を確保。前年の朝日杯FSで好走した馬が出てくれば、かなり有力な存在と言えるだろう。
また、東京スポーツ杯2歳Sの勝ち馬は前述のワグネリアンだけでなく、15年1着のサトノクラウンも該当。ここでも1着という結果を出した。このように前走芝1600m以上の重賞で好走している馬が強い。近年ではジャンダルム(前走ホープフルS2着)やカデナ(前走京都2歳S1着)も該当。かつては阪神芝2000mで行われていたラジオNIKKEI杯2歳Sが重要なステップレースだった。同レースでの好走馬が、ここでも数多く馬券に絡んでいる。
実績上位の人気馬同士で決まることがある一方、伏兵馬の出番も十分にある。むしろ人気サイドで決まるケースの方が少なく、穴馬の台頭は常に考えるべきだろう。単勝7番人気以下で好走した馬は、17年2着のマイスタイルをはじめ7頭もいる。タガノエスプレッソ、ミヤジタイガ、コスモオオゾラ、プレイ、ダイワファルコン、モエレエキスパートという面々だ。
それぞれ個性は様々だと思うが、逃げ〜先行から粘り込むタイプが多いイメージだ。瞬発力で勝負するよりも、しぶとい末脚で食い下がる。東京のような広いコースではなく、小回りの中山向きという特徴がある。例えば、マイスタイルは前走こぶし賞を3番手から抜け出して優勝。弥生賞では逃げて2着に残った。レース当日の馬場状態を調べると、稍重が3回、重馬場が1回あった。やや馬場が渋ったことで、こうした馬たちが力を出してきたとも考えられる。天気予報によると、今週の日曜日は雨が降る可能性があるようだ。道悪も想定した予想も準備しておきたいところだ。
最後に種牡馬(父)傾向をチェックしておく。目下、ディープインパクト産駒が3連勝中。近3年は良馬場であったことも大きく、同産駒の最大の持ち味である瞬発力が生きたと考えられる。13年はカミノタサハラが6番人気で優勝。同馬は前走500万クラスの平場戦を勝ったばかりであり、連勝で重賞を制覇した点に血統的な適性の高さがうかがえる。ただ2走前にはホープフルSで3着に入っていた。たとえディープインパクト産駒であっても、しっかりとオープンクラスで実績があった馬が好走している。
あとはネオユニヴァース産駒にも注目だろう。10年1着のヴィクトワールピサ、09年1着のロジユニヴァースら4頭が好走している。こちらも実績上位のタイプだが、稍重〜重馬場で3頭好走している。しぶった馬場に強い同産駒の特徴がよく出ている結果であるという印象を受ける。
【結論】
それでは今年の弥生賞を占っていくとする。出走予定馬は表2の通りだ。
■表2 今年の弥生賞出走予定馬
馬名 | 前走レース名 | 前着 | 父 |
カントル | セントポ500* | 1 | ディープインパクト |
※クリノガウディー | フューチG1 | 2 | スクリーンヒーロー |
サトノラディウス | 梅花賞500* | 1 | ディープインパクト |
シュヴァルツリーゼ | 新馬 | 1 | ハーツクライ |
ナイママ | 共同通信G3 | 7 | ダノンバラード |
ニシノデイジー | ホープフG1 | 3 | ハービンジャー |
ブレイキングドーン | ホープフG1 | 5 | ヴィクトワールピサ |
メイショウテンゲン | きさらぎG3 | 5 | ディープインパクト |
ラストドラフト | 京成杯G3 | 1 | ノヴェリスト |
ラバストーン | 黄梅賞500* | 10 | ナカヤマフェスタ |
ヴァンケドミンゴ | 葉牡丹賞500* | 7 | ルーラーシップ |
登録の段階でわずか11頭。なおかつクリノガウディーはスプリングSへ向かうため回避となる見込みで、最大でも10頭立てという寂しい頭数となりそうだ。また、サートゥルナーリアやアドマイヤマーズ、ダノンキングリーといった皐月賞本番でも有力と目される素質馬は不在。今のところは図抜けた実力馬が見当たらず、ここで強烈なパフォーマンスを見せないと、クラシック戦線では苦しい立場になりそうだ。
一応、実績上位なのはニシノデイジー。昨年の札幌2歳Sと東スポ杯2歳Sを勝利しており、重賞は2勝。前走はホープフルSで3着だった。1着がサートゥルナーリア、2着がアドマイヤジャスタという一戦で、勝ち馬とは0.3秒差で入線。本馬は経済コースで立ち回り、最後の直線はインコースの窮屈なところから脚を伸ばしてきた。立ち回りのうまさは中山では武器になる。やや地味な存在ながらも実績は、ここでは最上位だろう。
ラストドラフトは前走京成杯を優勝。メンバー全体としてはやや緩かったが、本馬は新馬を勝ったばかり、キャリア1戦での重賞制覇だった。京成杯好走馬は弥生賞とあまり相性が良くない面はあるものの、今年の出走馬レベルを考えると、おのずと有力となりそうだ。
ディープインパクト産駒は3頭いるもののカントルとサトノラディウスは前走500万クラスを勝ったばかりで、オープンクラスは今回が初となる。また、カントルは中山コースも初めてとなる。メイショウテンゲンは前走きさらぎ賞が5着。格上挑戦だったことを考えればまずまずの内容かもしれないが、重賞で突き抜けるにはまだ決め手を欠く印象。
それならば少し馬場が渋った時にブレイキングドーンをマーク。ヴィクトワールピサ産駒で、ネオユニヴァースは祖父にあたる。2走前は京都2歳Sで2着。また、新馬戦が稍重の阪神芝1800mで、2着のアドマイヤジャスタ(ホープフルS2着)に3馬身の差をつけて勝っている。道悪巧者の可能性が高い。
ライタープロフィール
小田原智大(おだわら ともひろ)
1975年6月、東京生まれ。早稲田大学商学部卒業後、業界紙記者を経て、(株)レイヤード入社。ライター&エディターとして活躍。JRA-VANデータの配信初期から、いち早くデータ競馬の有効性に着目する。05年5月より「競馬 最強の法則WEB」にて、障害戦を除く全重賞レースの傾向と対策、予想を展開。「オッズパーク ダートグレードデータ作戦」では、地方競馬の重賞の攻略にも取り組んでいる。仕事の関係でなかなか競馬場には行けなくなったが、年に1、2回行くローカル遠征が楽しみ。