第1289回 東京芝1600mと1800mの違いを考える |競馬情報ならJRA-VAN

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第1289回 東京芝1600mと1800mの違いを考える

2019/2/4(月)

今週末の東京では、土曜にクイーンC、日曜に共同通信杯の重賞2レースが行なわれる。使用コースは、前者が芝1600m、後者が芝1800m。距離が200m違うだけなので共通する傾向はあるだろうし、やっぱり異なる部分もあるだろう。今回はそのあたりを調べてみたい。集計期間は2016〜2018年の過去3年分。データの分析には、JRA-VAN DataLab.TARGET frontier JVを利用した。

2018/2/12 東京11R デイリー杯クイーンC(G3) 1着 6番 テトラドラクマ 2018/2/11 東京11R 共同通信杯(G3) 1着 6番 オウケンムーン


■表1 人気別成績

コース 人気 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回率 複回率
芝1600m 全体 210- 211- 210-2452/3083 6.8% 13.7% 20.5% 51% 65%
1番人気 80-  34-  25-  71/ 210 38.1% 54.3% 66.2% 91% 85%
2番人気 46-  41-  22- 101/ 210 21.9% 41.4% 51.9% 90% 84%
3番人気 32-  26-  30- 122/ 210 15.2% 27.6% 41.9% 95% 82%
4〜6番人気 35-  68-  78- 449/ 630 5.6% 16.3% 28.7% 67% 82%
7〜9番人気 13-  28-  37- 548/ 626 2.1% 6.5% 12.5% 59% 78%
10番人気〜 4-  14-  18-1161/1197 0.3% 1.5% 3.0% 18% 40%
芝1800m 全体 173- 174- 172-1826/2345 7.4% 14.8% 22.1% 64% 67%
1番人気 66-  30-  20-  57/ 173 38.2% 55.5% 67.1% 90% 85%
2番人気 27-  34-  28-  84/ 173 15.6% 35.3% 51.4% 66% 81%
3番人気 29-  23-  27-  94/ 173 16.8% 30.1% 45.7% 97% 94%
4〜6番人気 33-  50-  67- 369/ 519 6.4% 16.0% 28.9% 77% 90%
7〜9番人気 12-  27-  19- 451/ 509 2.4% 7.7% 11.4% 61% 68%
10番人気〜 6-  10-  11- 771/ 798 0.8% 2.0% 3.4% 44% 40%

表1は人気別成績を比較したもので、それぞれのいちばん上に全体成績も掲載した。まずは全体の成績を見ておくと、両コースともに単勝回収率が50〜60%台にとどまっている。その大きな理由と考えられるのが、いずれも人気サイドの成績が優秀なことだ。なかでも1番人気はよく似通った数字が残っており、同じぐらいの信頼性を持っている。また、7〜9番人気や10番人気以下の数値が低調で、穴馬の激走にはあまり期待できないことも共通している。

細かく見ていけば、芝1600mは1〜3番人気の単勝回収率がすべて90%以上なのに対して、芝1800mは2番人気が単勝回収率66%と振るわず、ここは少々異なる傾向となっている。とはいえ、全体的な人気傾向は似ており、どちらのコースも堅めの決着が多いと考えていいだろう。

■表2 枠番別成績

コース 枠番 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回率 複回率
芝1600m 1枠 22- 23- 19-248/312 7.1% 14.4% 20.5% 62% 67%
2枠 19- 24- 26-262/331 5.7% 13.0% 20.8% 48% 66%
3枠 27- 22- 20-277/346 7.8% 14.2% 19.9% 53% 63%
4枠 24- 22- 22-296/364 6.6% 12.6% 18.7% 31% 50%
5枠 27- 29- 23-308/387 7.0% 14.5% 20.4% 91% 83%
6枠 23- 39- 21-319/402 5.7% 15.4% 20.6% 42% 54%
7枠 31- 25- 43-363/462 6.7% 12.1% 21.4% 44% 81%
8枠 37- 27- 36-379/479 7.7% 13.4% 20.9% 44% 55%
芝1800m 1枠 19- 23- 17-181/240 7.9% 17.5% 24.6% 70% 83%
2枠 11- 14- 21-201/247 4.5% 10.1% 18.6% 23% 58%
3枠 19- 20- 25-197/261 7.3% 14.9% 24.5% 44% 78%
4枠 33- 23- 20-202/278 11.9% 20.1% 27.3% 154% 90%
5枠 13- 24- 24-231/292 4.5% 12.7% 20.9% 53% 58%
6枠 25- 26- 24-237/312 8.0% 16.3% 24.0% 57% 68%
7枠 26- 20- 22-285/353 7.4% 13.0% 19.3% 39% 55%
8枠 27- 24- 19-292/362 7.5% 14.1% 19.3% 73% 57%

表2は枠番別成績。芝1600mのほうから確認すると、1枠から8枠までの好走率に大きな偏りは見られない。単勝回収率では6〜8枠の数値が低く、外枠は上位人気でないと好走しづらい様子も伺えるが、1600mは基本的にはフラットな枠番傾向と言えそうだ。

一方、芝1800mは2枠および7、8枠の数値がやや低く、特に気になるのが7、8枠だ。このコースはスタート地点からまもなくの地点で緩やかにカーブしており、外枠は若干の距離ロスを余儀なくされる。外枠不利で有名な芝2000mほどではないが、1800mでも7、8枠の数値が下がるということは、コースレイアウトの影響が多少なりともあるのではないか。データからはそう読み取れる。

■表3 牡牝・所属別成績

コース 枠番 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回率 複回率
芝1600m 牡馬・セン馬 115- 112- 107-1204/1538 7.5% 14.8% 21.7% 60% 65%
牝馬 95-  99- 103-1248/1545 6.1% 12.6% 19.2% 43% 65%
関東馬 163- 183- 167-2103/2616 6.2% 13.2% 19.6% 44% 64%
関西馬 47- 28- 43-337/455 10.3% 16.5% 25.9% 93% 73%
地方・海外馬 0- 0- 0-12/12 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0%
芝1800m 牡馬・セン馬 98- 104- 106- 973/1281 7.7% 15.8% 24.0% 56% 70%
牝馬 75-  70-  66- 853/1064 7.0% 13.6% 19.8% 74% 64%
関東馬 143- 142- 136-1567/1988 7.2% 14.3% 21.2% 61% 66%
関西馬 29- 32- 36-255/352 8.2% 17.3% 27.6% 81% 73%
地方・海外馬 1- 0- 0- 4/ 5 20.0% 20.0% 20.0% 202% 54%

表3は、牡牝別および東西の所属別成績を示したもので、セン馬は牡馬に含めている。まずは牡牝別の成績を見ていくが、競馬では基本的に牡馬の好走率が高く、東京芝1600m、1800mでもそれは変わらない。

ただし、牡馬と比較した数値の下がり幅には異なる傾向が見られるので、そのあたりに着目してみたい。芝1600mの場合、勝率の下がり幅は大きいが、複勝率はそこまで下がらない。逆に芝1800mでは、勝率はあまり下がらないが、複勝率は結構下がる。これは、芝1600mの牝馬は1着より2着、2着より3着が多いのに対して、芝1800mでは3着より2着、2着より1着が多いという正反対の傾向を反映しているためだ。簡単に言えば、牝馬は芝1800mのほうがやや勝ちやすく、芝1600mは3着どまりのケースも多いということになる。

次に東西の所属別成績を見ると、よく西高東低と言われる通り、どちらも関西馬のほうが高い好走率を記録している。特に芝1600mでは関西馬の勝率が高く、単勝回収率も93あるので、馬単や3連単で狙う際には参考にできそうだ。

■表4 騎手別成績

コース 枠番 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回率 複回率 勝率差
芝1600m
のほうが
高勝率
武豊 6-  4-  4- 22/ 36 16.7% 27.8% 38.9% 92% 71% 9.3%
C.ルメール 35- 17- 13- 41/106 33.0% 49.1% 61.3% 119% 99% 8.3%
柴山雄一 6-  4-  5- 47/ 62 9.7% 16.1% 24.2% 59% 82% 7.8%
吉田隼人 3-  4-  0- 34/ 41 7.3% 17.1% 17.1% 70% 55% 7.3%
津村明秀 4-  3-  5- 34/ 46 8.7% 15.2% 26.1% 236% 109% 6.8%
丸田恭介 1-  0-  2- 19/ 22 4.5% 4.5% 13.6% 21% 54% 4.5%
武藤雅 5-  1-  7- 50/ 63 7.9% 9.5% 20.6% 203% 73% 3.8%
芝1800m
のほうが
高勝率
横山典弘 11-  3-  3- 34/ 51 21.6% 27.5% 33.3% 89% 82% 11.7%
戸崎圭太 29- 18- 15- 56/118 24.6% 39.8% 52.5% 95% 115% 7.6%
岩田康誠 2-  0-  1- 25/ 28 7.1% 7.1% 10.7% 48% 20% 7.1%
勝浦正樹 2-  0-  2- 24/ 28 7.1% 7.1% 14.3% 162% 83% 7.1%
木幡巧也 2-  1-  2- 23/ 28 7.1% 10.7% 17.9% 32% 50% 7.1%
M.デムーロ 13-  6-  3- 22/ 44 29.5% 43.2% 50.0% 139% 86% 6.9%
蛯名正義 6-  9-  9- 47/ 71 8.5% 21.1% 33.8% 63% 80% 4.9%
菊沢一樹 1-  0-  0- 20/ 21 4.8% 4.8% 4.8% 39% 9% 4.8%
北村宏司 8-  3-  6- 60/ 77 10.4% 14.3% 22.1% 96% 53% 3.5%

表4は、芝1600mと芝1800mで勝率の差がある騎手を示したもの。今回は、過去3年に両コースでいずれも20走以上し、勝率差が3%以上ある騎手を掲載した。

「芝1600mのほうが高勝率の騎手」では、武豊騎手クリストフ・ルメール騎手が差の大きい上位ふたりを占めた。これほどの名手でさえ、どんなコースでも同じように勝つのは難しいということなのだろう。両騎手とも芝1800mでは単勝回収率60%台にとどまっており、芝1600mのほうが明らかに狙いやすい。

「芝1800mのほうが高勝率の騎手」でも事情は似たようなもので、差が大きい3騎手の横山典弘騎手戸崎圭太騎手岩田康誠騎手はいずれも全国リーディングの獲得歴を持っている。ただし戸崎騎手の場合、芝1600mでも単勝回収率93%と、勝率は下がるものの馬券で狙えないわけではないことは付記しておきたい。一方、横山典騎手は芝1600mで単勝回収率48%、岩田騎手に至っては43走して1勝もできなかったため、素直に芝1800mで狙ったほうがよさそうだ。

■表5 種牡馬別成績

コース 枠番 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回率 複回率 勝率差
芝1600m
のほうが
高勝率
クロフネ 6-  9-  2- 31/ 48 12.5% 31.3% 35.4% 95% 79% 8.3%
アイルハヴアナザー 3-  0-  2- 29/ 34 8.8% 8.8% 14.7% 60% 46% 6.2%
ディープインパクト 46- 35- 33-164/278 16.5% 29.1% 41.0% 95% 100% 6.0%
スクリーンヒーロー 2-  4-  1- 43/ 50 4.0% 12.0% 14.0% 29% 29% 4.0%
マツリダゴッホ 3-  3-  1- 80/ 87 3.4% 6.9% 8.0% 23% 27% 3.4%
ハーツクライ 13-  8- 13- 75/109 11.9% 19.3% 31.2% 44% 68% 3.4%
芝1800m
のほうが
高勝率
ヴィクトワールピサ 11-  3-  6- 42/ 62 17.7% 22.6% 32.3% 381% 151% 14.0%
ローエングリン 7-  2-  2- 28/ 39 17.9% 23.1% 28.2% 75% 63% 12.2%
エイシンフラッシュ 3-  1-  2- 27/ 33 9.1% 12.1% 18.2% 229% 140% 9.1%
オルフェーヴル 3-  3-  0- 18/ 24 12.5% 25.0% 25.0% 48% 121% 7.8%
ルーラーシップ 10-  7- 11- 38/ 66 15.2% 25.8% 42.4% 180% 127% 6.1%
ゼンノロブロイ 4-  3-  4- 31/ 42 9.5% 16.7% 26.2% 98% 63% 5.2%
メイショウサムソン 2-  3-  2- 19/ 26 7.7% 19.2% 26.9% 105% 63% 4.8%
ハービンジャー 14-  8- 10- 68/100 14.0% 22.0% 32.0% 94% 77% 4.5%
トーセンホマレボシ 1-  2-  3- 19/ 25 4.0% 12.0% 24.0% 76% 76% 4.0%
マンハッタンカフェ 9-  5-  4- 53/ 71 12.7% 19.7% 25.4% 48% 71% 3.4%

表5は、芝1600mと芝1800mで勝率の差がある種牡馬を示したもの。こちらも過去3年に両コースでいずれも産駒が20走以上し、勝率差が3%以上ある種牡馬を掲載している。

「芝1600mのほうが高勝率の種牡馬」を見ていくが、ここにディープインパクトが入ったのは意外だった。東京芝1800mはいかにも得意そうなイメージだが、実際には勝率10.5%、単勝回収率52%とそれほどでもない。芝1600mのほうが好走率、回収率とも明らかに良好だ。

「芝1800mのほうが高勝率の種牡馬」は、勝率の差がかなりある種牡馬も多いので気をつけたいところ。もっとも差が大きいヴィクトワールピサは14.0%も違い、回収率も非常に高いので、芝1800mで狙ったほうがはっきり得だ。そのほか、エイシンフラッシュルーラーシップにも注目したい。

ライタープロフィール

出川塁(でがわ るい)

1977年熊本県生まれ。上智大学文学部卒業後、出版社2社で競馬専門誌、競馬書籍の編集に携わり、2007年からフリーライターに。「競馬最強の法則」「サラブレ」「優駿」などへ寄稿するほか、出版社勤務時代を含めて制作に関わった競馬書籍は多数。馬券は単勝派だが、焼肉はタン塩派というわけではない。メインの競馬のほか、サッカーでも密かに活動中。


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