データde出〜た
第1280回 実績馬と将来出世する馬が交差する!? 中山金杯を分析
2018/12/27(木)
年明け最初の重賞は東西の金杯。ともに4歳以上の馬によるG3のハンデ戦だ。今回は芝2000mの中山金杯の方を分析し、レースの傾向を探っていくことにする。データの集計・分析にはJRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用した。
■表1 過去10年の中山金杯好走馬
年 | 着順 | 馬名 | 人気 | 性 | 齢 | 斤量 |
2018年 | 1 | セダブリランテス | 1 | 牡 | 4 | 55 |
2 | ウインブライト | 2 | 牡 | 4 | 56 | |
3 | ストレンジクォーク | 10 | 牡 | 6 | 54 | |
2017年 | 1 | ツクバアズマオー | 1 | 牡 | 6 | 56.5 |
2 | クラリティスカイ | 6 | 牡 | 5 | 57.5 | |
3 | シャイニープリンス | 4 | 牡 | 7 | 56.5 | |
2016年 | 1 | ヤマカツエース | 3 | 牡 | 4 | 56 |
2 | マイネルフロスト | 5 | 牡 | 5 | 57 | |
3 | フルーキー | 1 | 牡 | 6 | 57.5 | |
2015年 | 1 | ラブリーデイ | 4 | 牡 | 5 | 57 |
2 | ロゴタイプ | 1 | 牡 | 5 | 58 | |
3 | デウスウルト | 5 | セ | 7 | 55 | |
2014年 | 1 | オーシャンブルー | 5 | 牡 | 6 | 57.5 |
2 | カルドブレッサ | 8 | 牡 | 6 | 54 | |
3 | ディサイファ | 1 | 牡 | 5 | 55 | |
2013年 | 1 | タッチミーノット | 2 | 牡 | 7 | 57 |
2 | アドマイヤタイシ | 4 | 牡 | 6 | 55 | |
3 | ジャスタウェイ | 1 | 牡 | 4 | 56.5 | |
2012年 | 1 | フェデラリスト | 2 | 牡 | 5 | 55 |
2 | ダイワファルコン | 4 | 牡 | 5 | 56 | |
3 | コスモファントム | 5 | 牡 | 5 | 57.5 | |
2011年 | 1 | コスモファントム | 1 | 牡 | 4 | 56 |
2 | キョウエイストーム | 11 | 牡 | 6 | 55 | |
3 | ナリタクリスタル | 5 | 牡 | 5 | 56 | |
2010年 | 1 | アクシオン | 1 | 牡 | 7 | 57 |
2 | トウショウシロッコ | 5 | 牡 | 7 | 56 | |
3 | トウショウウェイヴ | 15 | 牡 | 5 | 54 | |
2009年 | 1 | アドマイヤフジ | 4 | 牡 | 7 | 58 |
2 | ヤマニンキングリー | 2 | 牡 | 4 | 56 | |
3 | ミヤビランベリ | 11 | 牡 | 6 | 55 |
まずは過去10年の中山金杯で3着以内に好走した馬を見ていくことにする(表1参照)。昨年は1番人気のセダブリランテスが勝利を飾った。1番人気は2年続けての勝利で、過去10年では4勝を挙げている。1番人気から5番人気までの成績を総合すると、【10.7.7.26】という結果が出ている。つまり、勝ち馬はすべて5番人気以内。2着、3着馬の7割も5番人気以内に収まる。比較的上位人気が強いレースと言えるだろう。
好走馬のべ30頭はすべて牡馬(うち1頭はセン馬)で、牝馬の好走はない。ただ、牝馬は出走そのものが少ない。年齢の傾向は4歳馬から7歳馬までの馬が好走している。なお、8歳以上の成績は【0.0.0.29】でかなり苦しい。
斤量(ハンデ)面を調べると、58キロの馬が1着1回(2009年アドマイヤフジ)、2着が1回(2015年ロゴタイプ)。最も重い斤量で好走したのはこの2頭だ。一番軽い斤量は54キロで、2018年3着のストレンジクォークら3頭が好走している。
■表2 中山金杯の斤量別成績(過去10年)
斤量 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 |
〜49kg | 0- 0- 0- 1/ 1 | 0.0% | 0.0% | 0.0% |
49.5〜51kg | 0- 0- 0- 5/ 5 | 0.0% | 0.0% | 0.0% |
51.5〜53kg | 0- 0- 0- 22/ 22 | 0.0% | 0.0% | 0.0% |
53.5〜55kg | 2- 3- 5- 47/ 57 | 3.5% | 8.8% | 17.5% |
55.5〜57kg | 6- 5- 3- 42/ 56 | 10.7% | 19.6% | 25.0% |
57.5〜59kg | 2- 2- 2- 9/ 15 | 13.3% | 26.7% | 40.0% |
斤量別成績をまとめると表2のような結果が出た。結論から言うと、重いハンデを課せられた馬の方がよく走っている。57.5キロから59キロの馬の成績が【2.2.2.9】で連対率は26.7%、複勝率は40.0%もある。一方、軽い斤量は総じて不振。53キロ以下の馬は合計28頭出走しているが、1頭も馬券に絡んでいない。ハンデ戦ではあるが、軽ハンデ馬が全く3着以内に食い込めていない。
■表3 中山金杯好走馬の前走成績など(過去10年)
年 | 着順 | 馬名 | 斤量 | 前走レース名 | 前着 | 前実績 | 後実績 |
2018年 | 1 | セダブリランテス | 55 | アルゼンHG2 | 3 | ||
2 | ウインブライト | 56 | 福島記念HG3 | 1 | 中山記念1着 | ||
3 | ストレンジクォーク | 54 | 修学院H1600 | 1 | |||
2017年 | 1 | ツクバアズマオー | 56.5 | ディセン | 1 | オールカマー3着 | |
2 | クラリティスカイ | 57.5 | ディセン | 5 | NHKマイルC1着 | ||
3 | シャイニープリンス | 56.5 | ディセン | 3 | |||
2016年 | 1 | ヤマカツエース | 56 | 福島記念HG3 | 1 | 金鯱賞1着 | |
2 | マイネルフロスト | 57 | 金鯱賞G2 | 4 | |||
3 | フルーキー | 57.5 | チャレンHG3 | 1 | |||
2015年 | 1 | ラブリーデイ | 57 | 金鯱賞G2 | 4 | 天皇賞(秋)1着 | |
2 | ロゴタイプ | 58 | マイルチG1 | 7 | 皐月賞1着 | 安田記念1着 | |
3 | デウスウルト | 55 | チャレンHG3 | 2 | |||
2014年 | 1 | オーシャンブルー | 57.5 | 金鯱賞G2 | 10 | 金鯱賞1着 | |
2 | カルドブレッサ | 54 | 朝日チャHG3 | 5 | |||
3 | ディサイファ | 55 | 福島記念HG3 | 4 | 札幌記念1着 | ||
2013年 | 1 | タッチミーノット | 57 | 毎日王冠G2 | 3 | 毎日王冠3着 | |
2 | アドマイヤタイシ | 55 | 朝日チャHG3 | 2 | |||
3 | ジャスタウェイ | 56.5 | 天皇賞秋G1 | 6 | 毎日王冠2着 | 天皇賞(秋)1着 | |
2012年 | 1 | フェデラリスト | 55 | 東京ウェ1600 | 1 | 中山記念1着 | |
2 | ダイワファルコン | 56 | ディセン | 9 | 中山記念2着 | ||
3 | コスモファントム | 57.5 | 中日新聞HG3 | 1 | |||
2011年 | 1 | コスモファントム | 56 | 中日新聞HG3 | 2 | ||
2 | キョウエイストーム | 55 | マイルチG1 | 14 | |||
3 | ナリタクリスタル | 56 | 新潟記念HG3 | 1 | |||
2010年 | 1 | アクシオン | 57 | 鳴尾記念G3 | 1 | 札幌記念2着 | |
2 | トウショウシロッコ | 56 | ディセン | 5 | AJC杯3着 | オールカマー3着 | |
3 | トウショウウェイヴ | 54 | 中日新聞HG3 | 11 | |||
2009年 | 1 | アドマイヤフジ | 58 | JCDG1 | 14 | 京都記念2着 | 中山記念3着 |
2 | ヤマニンキングリー | 56 | 中日新聞HG3 | 1 | 札幌記念1着 | ||
3 | ミヤビランベリ | 55 | 新潟記念HG3 | 9 | 目黒記念1着 |
ハンデの重い馬が強いということは、実績上位馬がよく走っているということになる。表3のデータを参考に、具体的な実績について調べてみることにする。前述した斤量58キロの好走馬の、過去の主な実績は、ロゴタイプが皐月賞1着、アドマイヤフジが京都記念で2着というのがある。斤量57.5キロの馬にはクラリティスカイ(NHKマイルC1着)や、オーシャンブルー(金鯱賞1着)らがいる。
昨年1着のセダブリランテスは斤量55キロ。重いハンデではなかったが、前走はG2のアルゼンチン共和国杯で3着に好走していた。ハンデとは関係なく、過去に芝1600m以上のG2以上(2歳・3歳限定戦を除く)で3着以内に入った実績があるとかなり心強い。2歳・3歳限定戦でもG1であれば、その好走実績は評価してもいい。
無論、実績上位馬ばかりが走るレースではない。この中山金杯での好走を経て、その後G2以上でも好走するパターンの方がむしろ多くなっている。例えば、昨年中山金杯2着のウインブライトは次走中山記念で1着となった。2015年は1着馬ラブリーデイが、その年に京都記念や宝塚記念、そして天皇賞(秋)も制するに至った。2013年3着のジャスタウェイもその年の天皇賞(秋)を優勝。翌年にはドバイデューティーフリー(現・ドバイターフ)や安田記念を制した。その他にも、後に中山記念や札幌記念などで好走する馬が多いことがわかる。
今回の中山金杯より前か後かの違いはあるものの、「芝1600m以上のG2以上(2歳・3歳限定戦を除く)で好走」というのがキーワードになる。すでにこうした実績を持つ馬に加えて、将来的にG2レベルでも勝ち負けができる実力馬でないと、ここでは通用しにくいと言えるだろう。とはいえ、未来の成績を予測することは、そう簡単ではない。前走1着など、目に見えて勢いがあって、底を見せていない馬だけが将来有望というわけではない。前述のラブリーデイやジャスタウェイにしても、中山金杯が終わった時点でG1級と評価できた人はどれぐらいいただろうか。当時そのような評判は聞かなかった気がする。元々高い素質はあったのだろうが、その後の成長力が想像以上だったと筆者は受け止めている。
その他の好走馬を考えると、G2以上のレースにあまり縁がない馬は苦しいものの、軽視もできない。前走ディセンバーSやチャレンジCなど、比較的近い時期に行われたOP特別やG3で善戦していた馬が好走している。前年秋のG1戦線で強い相手と走っていた馬の好走は、逆に少ない印象だ。G1からG3になり、相手が軽くなったと考えて安易に飛びつくのは危険と言えるだろう。
ライタープロフィール
小田原智大(おだわら ともひろ)
1975年6月、東京生まれ。早稲田大学商学部卒業後、業界紙記者を経て、(株)レイヤード入社。ライター&エディターとして活躍。JRA-VANデータの配信初期から、いち早くデータ競馬の有効性に着目する。05年5月より「競馬 最強の法則WEB」にて、障害戦を除く全重賞レースの傾向と対策、予想を展開。「オッズパーク ダートグレードデータ作戦」では、地方競馬の重賞の攻略にも取り組んでいる。仕事の関係でなかなか競馬場には行けなくなったが、年に1、2回行くローカル遠征が楽しみ。