データde出〜た
第1279回 年内最後のG1・ホープフルSの傾向を探る
2018/12/24(月)
中央競馬における今年最後の開催は12月28日(金)。中山競馬場のメインレースにホープフルSが組まれている。2歳馬による芝中距離戦で、中山芝2000mを舞台に行われる。2014年より重賞(G2)となり、昨年からG1に昇格。翌年の牡馬クラシック戦線を占う一戦として注目度が増している。今回は同レースを、過去のデータから分析していくことにする。データの集計・分析はJRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用した。
■表1 2014年以降のホープフルS好走馬(1)
年 | 着順 | 馬名 | 人気 | 騎手 | 所属 | 調教師 | 馬主 |
2017年 | 1 | タイムフライヤー | 1 | C.デムーロ | (栗) | 松田国英 | サンデーレーシング |
2 | ジャンダルム | 4 | 武豊 | (栗) | 池江泰寿 | 前田幸治 | |
3 | ステイフーリッシュ | 8 | 中谷雄太 | (栗) | 矢作芳人 | 社台レースホース | |
2016年 | 1 | レイデオロ | 1 | ルメール | (美) | 藤沢和雄 | キャロットファーム |
2 | マイネルスフェーン | 8 | シュミノー | (美) | 手塚貴久 | サラブレッドクラブ・ラフィアン | |
3 | グローブシアター | 2 | 福永祐一 | (栗) | 角居勝彦 | キャロットファーム | |
2015年 | 1 | ハートレー | 3 | ボウマン | (美) | 手塚貴久 | サンデーレーシング |
2 | ロードクエスト | 1 | M.デムーロ | (美) | 小島茂之 | ロードホースクラブ | |
3 | バティスティーニ | 2 | ルメール | (栗) | 松田国英 | サンデーレーシング | |
2014年 | 1 | シャイニングレイ | 2 | 川田将雅 | (栗) | 高野友和 | キャロットファーム |
2 | コメート | 8 | 嘉藤貴行 | (美) | 土田稔 | ケンレーシング組合 | |
3 | ブラックバゴ | 9 | 戸崎圭太 | (美) | 斎藤誠 | シルクレーシング |
表1は重賞になった2014年以降のホープフルS好走馬(1)。3着以内に入った馬の人気や騎手、所属厩舎、馬主を記した。まだ4年分のデータだが、ある程度の傾向は見えてきている。勝ち馬はすべて3番人気以内。近2年はタイムフライヤー、レイデオロと1番人気が勝利している。比較的上位人気は強く、二けた人気馬の好走はまだない。8番人気馬が3頭好走しており、伏兵馬ならばこのあたりの人気に注意といったところだ。
なお、表1の該当馬12頭中、その後重賞を勝利した馬は4頭いる。ステイフーリッシュは京都新聞杯、レイデオロは日本ダービーや天皇賞(秋)、ロードクエストは京成杯オータムハンデやスワンS、シャイニングレイはCBC賞を勝った。将来、芝中距離で活躍する馬が出るのは自然だと思うが、短距離で実績を残す馬が出ている点は興味深い。このレースの時点では本当の距離適性を判断するのは難しい。素質だけで2000mの距離をこなしている場合もあるということだろう。
騎手成績を見ると外国人ジョッキーの活躍が目立つ。15年はH・ボウマン、16年はC・ルメール、17年はC・デムーロと目下3連勝中。好走馬12頭中、ちょうど半分となる6頭の鞍上が外国人騎手だ。今年秋のG1戦線では外国人騎手の勝利が続いており、ホープフルSでの連勝もまだ続く予感がする。
所属は美浦の馬と栗東の馬がそれぞれ6頭。関東と関西の比較では全くの五分となっており、あまり気にする必要はなさそうだ。馬主はサンデーレーシングとキャロットファームの馬がそれぞれ3頭。いずれかのクラブの馬が毎年馬券に絡んでいる。
■表2 2014年以降のホープフルS好走馬(2)
年 | 着順 | 馬名 | 人気 | キャリア | 間隔 | 前走レース名 | 前距離 | 前着 |
2017年 | 1 | タイムフライヤー | 1 | 4 | 5 | 京都2歳G3 | 2000 | 2 |
2 | ジャンダルム | 4 | 2 | 7 | デイリーG2 | 1600 | 1 | |
3 | ステイフーリッシュ | 8 | 1 | 2 | 新馬 | 2000 | 1 | |
2016年 | 1 | レイデオロ | 1 | 2 | 3 | 葉牡丹賞500* | 2000 | 1 |
2 | マイネルスフェーン | 8 | 6 | 4 | 未勝利* | 2000 | 1 | |
3 | グローブシアター | 2 | 1 | 6 | 新馬 | 1800 | 1 | |
2015年 | 1 | ハートレー | 3 | 1 | 6 | 新馬 | 2000 | 1 |
2 | ロードクエスト | 1 | 2 | 17 | 新潟2歳G3 | 1600 | 1 | |
3 | バティスティーニ | 2 | 2 | 6 | 黄菊賞500* | 2000 | 1 | |
2014年 | 1 | シャイニングレイ | 2 | 1 | 7 | 新馬 | 2000 | 1 |
2 | コメート | 8 | 4 | 8 | きんもく500* | 1800 | 1 | |
3 | ブラックバゴ | 9 | 2 | 4 | 未勝利* | 1800 | 1 |
続いて好走馬のキャリアや前走成績などを見ていく(表2参照)。最少のキャリアは1戦でステイフーリッシュら4頭が該当。最多キャリアはマイネルスフェーンの6戦だ。全体的にはキャリアが浅い馬の方が多い印象だ。キャリア1戦の馬が多いということは、前走新馬戦を勝ったばかりでも大丈夫ということになる。距離は芝1800mから2000mのレースであることが望ましい。未勝利戦や500万クラスのレースでも同様だ。前走マイル戦を使っていた馬も2頭(ジャンダルムとロードクエスト)いるが、ともに重賞を勝っていた。
■表3 2014年以降のホープフルS好走馬(3)
年 | 着順 | 馬名 | 人気 | 父 | 母父馬 |
2017年 | 1 | タイムフライヤー | 1 | ハーツクライ | ブライアンズタイム |
2 | ジャンダルム | 4 | Kitten's Joy | Sunday Silence | |
3 | ステイフーリッシュ | 8 | ステイゴールド | キングカメハメハ | |
2016年 | 1 | レイデオロ | 1 | キングカメハメハ | シンボリクリスエス |
2 | マイネルスフェーン | 8 | ステイゴールド | Jade Robbery | |
3 | グローブシアター | 2 | キングカメハメハ | スペシャルウィーク | |
2015年 | 1 | ハートレー | 3 | ディープインパクト | Congrats |
2 | ロードクエスト | 1 | マツリダゴッホ | チーフベアハート | |
3 | バティスティーニ | 2 | キングカメハメハ | サンデーサイレンス | |
2014年 | 1 | シャイニングレイ | 2 | ディープインパクト | クロフネ |
2 | コメート | 8 | ブラックタイド | アフリート | |
3 | ブラックバゴ | 9 | バゴ | ステイゴールド |
ミスタープロスペクター系
ロベルト系
続いて好走馬の血統を見ていく。芝中距離のレースらしくサンデーサイレンス系の独壇場。ハーツクライやステイゴールド、ディープインパクトの産駒が多数いる。母父としても同系統の馬が4頭いる。父と母父、どちらもサンデーサイレンス系に属さない馬はレイデオロ1頭しかいない。
その他の系統ではミスタープロスペクター系に注目。基本的にはキングカメハメハが有力だが、Jade Robberyやアフリートといったダートで強いタイプの名前がある。マイネルスフェーンとコメートが母父に持っており、ともに8番人気で好走した。ダートで強いという意味ではロベルト系も面白い。タイムフライヤーの母父はブライアンズタイムで、レイデオロの母父はシンボリクリスエス。同系統の血を持つ馬がいた場合も要チェックだ。
【結論】
それでは今年のホープフルSを占っていくことにする。出走予定馬は表4の通りだ。
■表4 ホープフルS出走予定馬
馬名 | 馬主 | キャリア | 前レース | 前着 | 前距離 |
アドマイヤジャスタ | 近藤利一 | 3 | 紫菊賞500* | 1 | 2000 |
キングリスティア | 廣崎利洋 | 1 | 新馬 | 1 | 2000 |
※クリノガウディー | 栗本博晴 | 3 | フューチG1 | 2 | 1600 |
コスモカレンドゥラ | ビッグレッドファーム | 4 | 黄菊賞500* | 1 | 2000 |
コパノマーティン | 小林祥晃 | 7 | フューチG1 | 11 | 1600 |
サートゥルナーリア | キャロットファーム | 2 | 萩S | 1 | 1800 |
ジャストアジゴロ | 原禮子 | 2 | 未勝利* | 1 | 2000 |
タイセイモナーク | 田中成奉 | 8 | 未勝利* | 1 | 2000 |
タニノドラマ | 谷水雄三 | 1 | 新馬 | 1 | 2000 |
ニシノデイジー | 西山茂行 | 4 | 東京スポG3 | 1 | 1800 |
ハギノアップロード | 日隈良江 | 6 | 未勝利* | 1 | 1800 |
ハクサンタイヨウ | 篠崎恒雄 | 5 | 東京スポG3 | 10 | 1800 |
ヒルノダカール | ヒルノ | 2 | 未勝利* | 1 | 2000 |
ブレイキングドーン | 前田幸貴 | 2 | 京都2歳G3 | 2 | 2000 |
マードレヴォイス | ディアレストクラブ | 5 | ひいらぎ500* | 6 | 1600 |
ミッキーブラック | 野田みづき | 3 | 京都2歳G3 | 4 | 2000 |
ヴァンドギャルド | 社台レースホース | 2 | 東京スポG3 | 3 | 1800 |
ジョッキーや人気など、本稿執筆時点では不透明な要素はあまり考えずに、馬主やキャリア、前走レースなどを記載した。今年は個人馬主の馬がかなり多い印象を受ける。注目していたサンデーレーシングかキャロットファームの馬は、サートゥルナーリアしかいない。同馬はキャリア2戦で、前走は萩S1着。血統的にもミスタープロスペクター系×サンデーサイレンス系という配合で不満はなく、好感触の要素が満載だ。まずは、本馬に注目したい。
キャリアが1戦の馬はキングリスティアとタニノドラマ。ともに前走は芝2000mの新馬戦を勝っている。データ的には注目馬と言える。実績面では前走東スポ杯1着のニシノデイジー、京都2歳S2着のブレイキングドーンが上位だ。
ライタープロフィール
小田原智大(おだわら ともひろ)
1975年6月、東京生まれ。早稲田大学商学部卒業後、業界紙記者を経て、(株)レイヤード入社。ライター&エディターとして活躍。JRA-VANデータの配信初期から、いち早くデータ競馬の有効性に着目する。05年5月より「競馬 最強の法則WEB」にて、障害戦を除く全重賞レースの傾向と対策、予想を展開。「オッズパーク ダートグレードデータ作戦」では、地方競馬の重賞の攻略にも取り組んでいる。仕事の関係でなかなか競馬場には行けなくなったが、年に1、2回行くローカル遠征が楽しみ。