データde出〜た
第1276回 2歳王者に輝く馬は? 朝日杯フューチュリティSを分析する
2018/12/13(木)
今週のG1・朝日杯フューチュリティSは、従来の中山競馬場から2014年に阪神競馬場へと開催場が替わり、今年で移設5回目を迎える。開催場変更に合わせてデイリー杯2歳Sの施行時期が繰り下がるなどステップレースにも変化があったため、今回は、過去4回の阪神開催における傾向を中心に見ていきたい。データの分析には、JRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JV、馬天楼 for データde出〜たを利用した。
■表1 人気別成績
人気 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回収 | 複回収 | 2008〜13年 | 同複勝率 |
1 | 2-1-0-1/4 | 50.0% | 75.0% | 75.0% | 172% | 102% | 2-1-1-2/6 | 66.7% |
2 | 1-0-1-2/4 | 25.0% | 25.0% | 50.0% | 147% | 77% | 1-1-1-3/6 | 50.0% |
3 | 0-1-1-2/4 | 0.0% | 25.0% | 50.0% | 0% | 80% | 0-0-1-5/6 | 16.7% |
4 | 0-0-0-4/4 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% | 1-2-0-3/6 | 50.0% |
5 | 0-0-0-4/4 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% | 1-1-2-2/6 | 66.7% |
6 | 1-0-0-3/4 | 25.0% | 25.0% | 25.0% | 355% | 97% | 0-1-0-5/6 | 16.7% |
7 | 0-1-0-3/4 | 0.0% | 25.0% | 25.0% | 0% | 102% | 1-0-0-5/6 | 16.7% |
8 | 0-0-0-4/4 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% | 0-0-1-5/6 | 16.7% |
9 | 0-0-0-4/4 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% | 0-0-0-6/6 | 0.0% |
10 | 0-0-0-4/4 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% | 0-0-0-6/6 | 0.0% |
11〜 | 0-1-2-25/28 | 0.0% | 3.6% | 10.7% | 0% | 98% | 0-0-0-36/36 | 0.0% |
阪神で行われた過去4回の人気別成績で、3着以内の好走馬を出しているのは1〜3番人気、6〜7番人気、そして11番人気以下。表の右に記した、過去10年のうち中山での6回(08年〜13年)の結果も見ると、中山、阪神を通じて高複勝率をマークしているのは1、2番人気馬だ。特に1番人気馬は、阪神に替わってから単複の回収率が100%を突破。中山の6回でもそれぞれ90%、91%とまずまず高く、引き続き1番人気馬への注目は欠かせない。その他では、中山ではすべて馬券圏外だった11番人気以下が、阪神に替わった14年から一昨年まで、3年連続で3着以内に絡んできた。昨年こそ1→3→2番人気で決着したが、穴馬の激走には注意を払いたい。
■表2 枠番別成績
枠番 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回収 | 複回収 | 1〜3番人気 | 同複勝率 |
1枠 | 2-0-0-6/8 | 25.0% | 25.0% | 25.0% | 86% | 37% | 2-0-0-0/2 | 100.0% |
2枠 | 0-0-2-6/8 | 0.0% | 0.0% | 25.0% | 0% | 130% | 0-0-1-0/1 | 100.0% |
3枠 | 0-1-0-7/8 | 0.0% | 12.5% | 12.5% | 0% | 132% | 0-0-0-1/1 | 0.0% |
4枠 | 0-0-0-8/8 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% | 0-0-0-1/1 | 0.0% |
5枠 | 0-2-0-6/8 | 0.0% | 25.0% | 25.0% | 0% | 68% | 0-1-0-0/1 | 100.0% |
6枠 | 0-1-0-7/8 | 0.0% | 12.5% | 12.5% | 0% | 13% | 0-1-0-1/2 | 50.0% |
7枠 | 0-0-2-8/10 | 0.0% | 0.0% | 20.0% | 0% | 96% | 0-0-1-1/2 | 50.0% |
8枠 | 2-0-0-8/10 | 20.0% | 20.0% | 20.0% | 201% | 57% | 1-0-0-1/2 | 50.0% |
1・8枠 | 4-0-0-14/18 | 22.2% | 22.2% | 22.2% | 150% | 48% | 3-0-0-1/4 | 75.0% |
2・7枠 | 0-0-4-14/18 | 0.0% | 0.0% | 22.2% | 0% | 111% | 0-0-2-1/3 | 66.7% |
3〜6枠 | 0-4-0-28/32 | 0.0% | 12.5% | 12.5% | 0% | 53% | 0-2-0-3/5 | 40.0% |
枠番別では、勝ち馬は1枠か8枠、2着馬が3〜6枠、そして3着馬は2枠か7枠から出ており、各4頭まったく例外がない。4回だけの結果を鵜呑みにはできないものの、3連単のフォーメーションで買い目を絞りたいときには参考にしてもいいだろう。また、表1で複勝率50.0%以上を記録していた1〜3番人気馬のうち、内の1、2枠を引いた3頭はこれまで馬券圏内を外していない。
■表3 脚質、上がり3ハロンタイム順位別成績(※脚質はTARGETによる分類)
レース | 脚質・上がり | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回収 | 複回収 |
朝日杯 | 逃げ | 0-0-1-3/4 | 0.0% | 0.0% | 25.0% | 0% | 227% |
先行 | 1-0-0-15/16 | 6.3% | 6.3% | 6.3% | 14% | 6% | |
中団 | 2-3-3-21/29 | 6.9% | 17.2% | 27.6% | 64% | 102% | |
後方 | 1-1-0-17/19 | 5.3% | 10.5% | 10.5% | 31% | 31% | |
3F 1位 | 3-1-0-0/4 | 75.0% | 100.0% | 100.0% | 320% | 222% | |
3F 2位 | 1-3-0-4/8 | 12.5% | 50.0% | 50.0% | 177% | 212% | |
3F 3位 | 0-0-0-2/2 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% | |
3F 〜5位 | 0-0-2-6/8 | 0.0% | 0.0% | 25.0% | 0% | 38% | |
3F 6位〜 | 0-0-2-44/46 | 0.0% | 0.0% | 4.3% | 0% | 36% | |
前走 | 逃げ | 0-0-1-6/7 | 0.0% | 0.0% | 14.3% | 0% | 130% |
先行 | 3-2-2-21/28 | 10.7% | 17.9% | 25.0% | 45% | 93% | |
中団 | 1-1-1-20/23 | 4.3% | 8.7% | 13.0% | 61% | 40% | |
後方 | 0-1-0-9/10 | 0.0% | 10.0% | 10.0% | 0% | 14% | |
3F 1位 | 2-3-1-13/19 | 10.5% | 26.3% | 31.6% | 105% | 71% | |
3F 2位 | 1-0-0-12/13 | 7.7% | 7.7% | 7.7% | 35% | 14% | |
3F 3位 | 0-0-1-6/7 | 0.0% | 0.0% | 14.3% | 0% | 111% | |
3F 〜5位 | 0-1-1-13/15 | 0.0% | 6.7% | 13.3% | 0% | 82% | |
3F 6位〜 | 1-0-1-10/12 | 8.3% | 8.3% | 16.7% | 19% | 85% |
本競走での脚質、上がり3ハロン順位別成績では、「中団」を追走した馬が好走馬12頭中8頭、上がり3ハロンは1、2位の馬が連対馬全8頭を占めている。ただ、キャリアが浅い2歳馬の一戦、そして前走以前とは出走頭数も相手関係も大きく異なることが多いG1だけに、ここでの走りを事前に予測するのは難しい。そこで前走の成績を見ると、上がり3ハロン1位だった馬が複勝率31.6%。特に、東京競馬場のレースで1位だった馬は、【1.2.1.2】複勝率66.7%と、高確率で馬券に絡んでいる。また前走脚質で好走馬が多いのは「先行」だ。
■表4 前走クラス、レース別成績
(レースは好走馬輩出レース、サウジアラビアRCには14年いちょうSを含む)
前走 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回収 | 複回収 |
新馬 | 1-0-0-1/2 | 50.0% | 50.0% | 50.0% | 295% | 90% |
未勝利 | 0-0-0-5/5 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% |
500万下 | 2-0-0-11/13 | 15.4% | 15.4% | 15.4% | 144% | 44% |
OPEN特別 | 0-0-0-8/8 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% |
重賞(格付けなし) | 0-0-1-2/3 | 0.0% | 0.0% | 33.3% | 0% | 60% |
G3 | 1-1-0-9/11 | 9.1% | 18.2% | 18.2% | 20% | 22% |
G2 | 0-3-3-18/24 | 0.0% | 12.5% | 25.0% | 0% | 141% |
地方 | 0-0-0-2/2 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% |
ベゴニア賞 | 2-0-0-0/2 | 100.0% | 100.0% | 100.0% | 940% | 290% |
サウジアラビアRC | 1-1-1-4/7 | 14.3% | 28.6% | 42.9% | 32% | 61% |
デイリー杯2歳S | 0-2-1-8/11 | 0.0% | 18.2% | 27.3% | 0% | 189% |
京王杯2歳S | 0-1-2-10/13 | 0.0% | 7.7% | 23.1% | 0% | 101% |
(東京スポーツ杯2歳S) | 0-0-0-4/4 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% |
前走クラス別で好走馬を出し、本年も該当馬が登録しているのは、500万条件組と中央重賞組。未勝利戦やオープン特別、地方競馬組には好走がない。また、500万条件も、今年不在のベゴニア賞組を除けば【0.0.0.11】だから、今年は中央の重賞組が中心になる。中でも、前走サウジアラビアロイヤルC出走馬の複勝率が42.9%と高い(14年に同条件の「新設重賞」として行われたいちょうSを含む)。
■表5 前走重賞からの好走馬
年 | 馬名 | 人気 | 着順 | 前走 | 人気 | 着順 | 前々走 | 芝16以上 |
2014 | アルマワイオリ | 14 | 2 | デイリー杯2歳S | 3 | 4 | 10.19 もみじS(芝14)1着 | 0.0.0.2 |
クラリティスカイ | 3 | 3 | いちょうS | 4 | 1 | 10.11 未勝利戦(芝18)1着 | 2.1.0.0 | |
2015 | エアスピネル | 1 | 2 | デイリー杯2歳S | 2 | 1 | 9.12 新馬戦(芝16)1着 | 2.0.0.0 |
シャドウアプローチ | 11 | 3 | 京王杯2歳S | 1 | 3 | 9.26 ききょうS(芝14)1着 | 未経験 | |
2016 | モンドキャンノ | 7 | 2 | 京王杯2歳S | 3 | 1 | 7.24 函館2歳S(芝12)2着 | 未経験 |
ボンセルヴィーソ | 12 | 3 | デイリー杯2歳S | 8 | 2 | 10.10 未勝利戦(芝14)1着 | 0.1.0.1 | |
2017 | ダノンプレミアム | 1 | 1 | サウジアラビアRC | 2 | 1 | 6.25 新馬戦(芝18)1着 | 2.0.0.0 |
ステルヴィオ | 3 | 2 | サウジアラビアRC | 1 | 2 | 8.12 コスモス賞(芝18)1着 | 2.1.0.0 | |
タワーオブロンドン | 2 | 3 | 京王杯2歳S | 1 | 1 | 9.23 ききょうS(芝14)1着 | 未経験 |
表5は、その中央重賞組の好走馬9頭である。この9頭中7頭が前走3番人気以内、同8頭が前走3着以内。そして前々走は8月以降(7頭)の芝1400m以上1着馬(8頭)が多く、これに該当しないモンドキャンノとダノンプレミアムはともに、前走で勝利を飾っていた。
■表6 前走重賞以外からの好走馬
年 | 馬名 | 人気 | 着順 | 前走 | 距離 | 通過順 | 上がり順位 | 人気 | 着順 |
2014 | ダノンプラチナ | 1 | 1 | 11.30 ベゴニア賞 | 芝16 | 4-4 | 2位 | 1 | 1 |
2015 | リオンディーズ | 2 | 1 | 11.22 新馬戦 | 芝20 | 6-5-4 | 1位 | 1 | 1 |
2016 | サトノアレス | 6 | 1 | 11.27 ベゴニア賞 | 芝16 | 7-7 | 1位 | 2 | 1 |
続いて表6は、前走重賞以外から好走した3頭である。今年はベゴニア賞組、新馬戦組とも不在だが、この3頭すべて本競走では勝利を飾っているため、共通点の多い馬がいれば特に1着候補として警戒が必要だ。3頭とも前走からは中3週以内、前走は芝1600m以上のレースを4コーナー4番手以下から、上がり3ハロン2位以内を記録して優勝している(本競走では12番手以下からの差し切り)。そして前走が500万条件戦(ベゴニア賞)だった2頭は、ダノンプラチナがデビューから2、1、1着。サトノアレスは2、2、1、1着と、ともに2連勝でここに駒を進めてきた。
その他、表では挙げなかった要素も含め、前走クラスを問わず好走馬の共通点を探ると、勝った4頭はいずれも前走、芝1600m以上のレースを2番人気以内で優勝していた。そして3着以内全12頭は前走が10月以降、キャリアは4戦以内だった。前走が9月だった馬は【0.0.0.4】(8月以前は該当なし)、キャリア5戦以上の馬は【0.0.0.14】に終わっている。
■表7 牡馬相手の2歳G1で3着以内に好走した牝馬(1986年以降)
年 | 馬名 | レース | 人気 | 着順 | 主な実績 |
1988 | アイドルマリー | 阪神3歳S | 1 | 2 | デイリー杯3歳S1着 |
1989 | サクラサエズリ | 朝日杯3歳S | 2 | 2 | 京成杯3歳S1着 |
1990 | ミルフォードスルー | 阪神3歳S | 1 | 3 | 函館3歳S1着 |
今年は牝馬・グランアレグリアの参戦も注目を集めている。しかし、阪神開催4回で牝馬は【0.0.0.3】と好走なし。1番人気・ミスエルテでも4着に敗退したのに対し、同馬以外の1番人気、牡馬3頭はすべて馬券に絡んだ。
また、JRA-VAN Data Lab.でデータが提供されている1986年以降、牡馬相手の2歳G1に出走した牝馬は【0.2.1.18】で複勝率14.3%、複勝回収率は22%止まり。好走した3頭は表7の通り、当該レースで1〜2番人気、そして既に牡馬相手の重賞勝ちを記録していた。ただ、いずれも牝馬限定の2歳G1(阪神3歳牝馬S、阪神JF)が行われるよりも前の好走だ。
【結論】
表1で触れたように、まず1番人気馬の信頼性が高い一戦で、2番人気も悪くない。今年、1番人気に推される可能性が高そうなのはグランアレグリア、次いでアドマイヤマーズだろうか。2頭の比較では、まずアドマイヤマーズ。1番人気で前走のデイリー杯2歳Sを制し、表5〜6から1着候補となる条件はクリア。重賞組で減点材料となる、前々走と前走の間隔が開いた点は、前走の勝利で相殺できる(表5)。前走が「逃げ」になってしまったことは気になるものの(表3)、もともとは控えて競馬をしていた馬。総合的にみて最上位と考えたい。
一方のグランアレグリアも、前走が休養明けだった点はアドマイヤマーズと同様で、こちらも前走1着なら不安なし(表5)。しかしもうひとつ、牝馬という点が非常に大きな問題になる。ただ、一昨年、牝馬限定戦で2戦2勝だったミスエルテとは違い、本馬は2戦とも牡馬相手で前走は重賞勝ち。かなり古い好走例とはいえ、表7の条件はクリアする。また、勝ち馬を輩出している前走・サウジアラビアRC組(表4)、好走馬の多い前走「先行」(表3)。そして過去4年で3勝を挙げたディープインパクト産駒が、今年は本馬1頭のみと、プラス材料も多い。性別さえ問わなければ、むしろこちらが上位とも考えられる。
もう1頭、穴の1着候補としてマイネルサーパスも挙げたい。前走からの間隔などには表6の各馬と違いもあるが、2連勝で、前走は芝1600m以上(芝1800m)での差し切りなど、1着候補となる条件や、前走重賞以外からの好走条件を満たす部分も多い。高複勝率を記録する、前走上がり1位馬という点も好材料だ(表3)。
1600m以上での優勝経験がない2〜3着候補としては、3戦3勝のファンタジスト、前走東京のレースで上がり1位(表3本文)を記録したドゴールあたり。また、2桁人気の好走馬3頭は、前々走で芝1400m戦を制していたため(うち2頭はオープン特別)、キャリアなどには難があっても、前々走でききょうSを制したイッツクールが波乱の立役者となる可能性もありそうだ。
ライタープロフィール
浅田知広(あさだ ともひろ)
1970年12月、埼玉県生まれ。立命館大学文学部中退後、夕刊紙レース部のアルバイト、競馬データベース会社を経て、現在はフリー。パソコンが広く普及する以前から、パソコン通信でデータ手入力方式の競馬予想ソフトを公開するなど、競馬のみならずPCやネットワークにも精通。その知識を活かし、Webや雑誌で競馬ライターとして活躍するかたわら、ネットワークの専門誌にも連載を持つ。