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第1274回 今年も楽しみな馬が揃った阪神JFを展望!

2018/12/6(木)

今週末のG1は、2歳女王を決める阪神ジュベナイルフィリーズ。1歳上の世代には歴史的な存在と呼べる名牝が誕生したが、それに続くような新星の登場はなるか。将来性を秘めた素質馬が多数エントリーしてきた一戦で有力と思われる馬を、過去10年のデータから見極めてみたい。データの分析には、JRA-VAN DataLab.TARGET frontier JVを利用した。

■表1 生産者別成績

生産者 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回率 複回率
ノーザンファーム 7- 5- 2-24/38 18.4% 31.6% 36.8% 78% 106%
社台ファーム 2- 1- 0-15/18 11.1% 16.7% 16.7% 96% 37%
下河辺牧場 1- 0- 1- 2/ 4 25.0% 25.0% 50.0% 245% 125%
千代田牧場 0- 1- 1- 1/ 3 0.0% 33.3% 66.7% 0% 210%
コスモヴューファーム 0- 1- 0- 1/ 2 0.0% 50.0% 50.0% 0% 230%
清水牧場 0- 1- 0- 0/ 1 0.0% 100.0% 100.0% 0% 170%
上村清志 0- 1- 0- 0/ 1 0.0% 100.0% 100.0% 0% 2430%
追分ファーム 0- 0- 1- 3/ 4 0.0% 0.0% 25.0% 0% 115%
ノースヒルズ 0- 0- 1- 2/ 3 0.0% 0.0% 33.3% 0% 80%
フジワラフアーム 0- 0- 1- 1/ 2 0.0% 0.0% 50.0% 0% 85%
酒井牧場 0- 0- 1- 0/ 1 0.0% 0.0% 100.0% 0% 230%
タイヘイ牧場 0- 0- 1- 0/ 1 0.0% 0.0% 100.0% 0% 210%
スピードフアーム 0- 0- 1- 0/ 1 0.0% 0.0% 100.0% 0% 740%
※好走例のある生産者のみ

表1は生産者別成績。過去10年で38頭もの出走馬を送り込み、1〜3着馬30頭の半数近い14頭の好走馬を出したのがノーザンファームである。今年も6頭の生産馬がエントリーしており、注目しないわけにはいかないだろう。

■表2 厩舎・東西別成績

厩舎 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回率 複回率
関東 4- 5- 6- 39/ 54 7.4% 16.7% 27.8% 36% 104%
関西 6- 5- 4-111/126 4.8% 8.7% 11.9% 29% 42%

表2は厩舎の東西所属別成績。2歳牝馬のレースだけに、遠征となる関東馬には厳しい条件のようにも思えるのだが、実際には地元の関西馬と互角以上の成績を残していることに注意したい。ただし、勝った関東馬4頭の当日馬体重がすべて460キロ以上だった一方で、当日馬体重が440キロ未満の関東馬は【0.0.1.13】と苦戦している。この通り、関東馬を狙う際には馬体重に着目したい。

■表3 人気別成績

人気 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回率 複回率
1番人気 4- 1- 1- 4/10 40.0% 50.0% 60.0% 91% 80%
2番人気 2- 2- 0- 6/10 20.0% 40.0% 40.0% 87% 62%
3番人気 0- 2- 2- 6/10 0.0% 20.0% 40.0% 0% 81%
4番人気 1- 1- 3- 5/10 10.0% 20.0% 50.0% 68% 139%
5番人気 3- 1- 0- 6/10 30.0% 40.0% 40.0% 325% 116%
6番人気 0- 0- 1- 9/10 0.0% 0.0% 10.0% 0% 30%
7番人気 0- 0- 0-10/10 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0%
8番人気 0- 1- 2- 7/10 0.0% 10.0% 30.0% 0% 153%
9番人気 0- 0- 0-10/10 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0%
10番人気〜 0- 2- 1-87/90 0.0% 2.2% 3.3% 0% 48%

表3は人気別成績。1番人気が4勝を挙げているほか、過去10年の1着馬はすべて5番人気以内から出ている。1〜3着馬に広げても30頭中23頭が1〜5番人気で、人気サイドの好走が多いことがわかる。5番人気→15番人気→10番人気の波乱となった12年の例もあるが、基本的には堅いレースといっていいだろう。

■表4 脚質・上がり3Fタイム順位別成績

項目 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回率 複回率
脚質 逃げ 0- 0- 0-10/10 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0%
先行 2- 2- 2-31/37 5.4% 10.8% 16.2% 14% 106%
中団 7- 6- 6-59/78 9.0% 16.7% 24.4% 63% 62%
後方 1- 2- 2-50/55 1.8% 5.5% 9.1% 4% 38%
上がり3F 1位 5- 2- 0- 5/12 41.7% 58.3% 58.3% 204% 95%
2位 2- 2- 3- 3/10 20.0% 40.0% 70.0% 74% 288%
3位 2- 2- 3- 4/11 18.2% 36.4% 63.6% 206% 159%
4位〜 1- 4- 4-138/147 0.7% 3.4% 6.1% 1% 35%
※脚質はTARGET frontier JVによる分類

表4は、脚質別成績と上がり3Fタイム順位別成績。まずは脚質から見ていくと、好走数で他の脚質を引き離し、好走率もトップとなっているのが「中団」。一般的な脚質別成績では「逃げ」や「先行」の数値が高くなりやすいだけに、これは阪神JFの大きな特徴といっていい。また、上がり順に関しても明確な傾向が出ており、上がり1〜3位の脚を使った馬の成績が非常に優秀な一方で、上がり4位以下だと厳しい数値が並んでいる。以上から、阪神JFは中団から速い上がりを使える馬が好走しやすいレースといえそうだ。

■表5 「上がり1位で1着」実績の有無

実績 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回率 複回率
あり 9- 8- 8- 93/118 7.6% 14.4% 21.2% 42% 61%
なし 1- 2- 2- 57/ 62 1.6% 4.8% 8.1% 10% 60%

そこで「上がり1位で1着」実績の有無を比較してみた。結果は表5の通りで、その差は歴然。1着馬10頭中9頭、1〜3着馬30頭中25頭がこの実績を持っており、好走率にも明確な差がついている。もちろん、表4の項で述べたことと関連していると考えられ、実際に上がり1位の脚を使って1着になった実績を持つ馬を重視したい。

■表6 「芝1600m以上で1着」実績の有無

実績 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回率 複回率
あり 10- 8- 7-56/81 12.3% 22.2% 30.9% 70% 87%
なし 0- 2- 3-94/99 0.0% 2.0% 5.1% 0% 39%

表6は「芝1600m以上で1着」実績の有無を比較したもの。これも明暗がクッキリと分かれており、好走馬30頭のうち25頭がこの実績を持ち、好走率も雲泥の差だ。また、この実績を持たなかったが好走した5頭の戦歴を確認すると、5頭とも芝1600m以上にそもそも出走しておらず、4頭は重賞勝ちがあった。逆にいえば、芝1600m以上の出走歴がありながら勝てず、重賞勝ちもない馬には相当厳しいとも考えられるだろう。

■表7 デビュー月成績

デビュー月 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回率 複回率
6月 2- 2- 2-35/41 4.9% 9.8% 14.6% 41% 54%
7月 3- 3- 1-42/49 6.1% 12.2% 14.3% 31% 30%
8月 2- 4- 3-29/38 5.3% 15.8% 23.7% 36% 111%
9月 1- 0- 1-12/14 7.1% 7.1% 14.3% 11% 29%
10月 1- 1- 3-20/25 4.0% 8.0% 20.0% 8% 92%
11月 1- 0- 0-11/12 8.3% 8.3% 8.3% 56% 23%

表7はデビュー月別成績。ここで着目したいのは好走数で、6〜8月デビューから計22頭が1〜3着に入ったのに対して、9〜11月デビューからは計8頭と大きな差がついている。好走率でいえばそれほどの差ではないのだが、8月までにデビューした馬のなかに阪神JFの好走馬が多くいたのは事実だ。なお、9〜11月デビューで勝った08年のブエナビスタ、10年レーヴディソール、11年ジョワドヴィーヴルの3頭は、いずれもノーザンファームの生産馬だった。

■表8 キャリア別成績

キャリア 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回率 複回率
1戦 1- 0- 2-12/15 6.7% 6.7% 20.0% 45% 136%
2戦 6- 2- 3-27/38 15.8% 21.1% 28.9% 87% 61%
3戦 3- 3- 3-55/64 4.7% 9.4% 14.1% 26% 26%
4戦 0- 4- 2-28/34 0.0% 11.8% 17.6% 0% 135%
5戦〜 0- 1- 0-28/29 0.0% 3.4% 3.4% 0% 8%

表8はキャリア別成績。勝ち馬6頭を送り出し、好走率も高い「キャリア2戦」がベストといえそうだ。次いで複勝率が高いのは「キャリア1戦」で、好走率はやや低いが「キャリア3戦」も3勝を挙げている。そして、2着が4回ある「キャリア4戦」まではチャンスありだが、「キャリア5戦以上」になると29頭で2着1回のみと途端に厳しくなる。このデータを見る限り、現在の阪神JFはキャリアよりも素質が重要なレースなのかもしれない。

また、表7の傾向と合わせて、8月までにデビューを済ませたキャリア4戦以内の馬というのが、ひとつの目安となるだろう。

■表9 勝利数別成績

勝利数 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回率 複回率
3勝 0- 0- 0- 4/ 4 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0%
2勝 7- 8- 7- 78/100 7.0% 15.0% 22.0% 40% 75%
1勝 3- 2- 3-68/76 3.9% 6.6% 10.5% 22% 44%

表9は勝利数別成績。過去10年の阪神JFでは3勝馬が4頭出走も、いずれも4着以下と振るわない。言い換えると、阪神JFまでに3勝するような馬はより短い距離に適性があるか、早熟の可能性を考慮したほうがいいのかもしれない。2勝馬と1勝馬では前者のほうが高い好走率を記録しており、基本的には2勝馬が中心となるレースと考えてよさそうだ。

■表10 「2勝馬」の前走クラスおよび着順別成績

項目 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回率 複回率
前走クラス 500万下 2- 3- 2-27/34 5.9% 14.7% 20.6% 42% 117%
オープン特別 1- 0- 1-10/12 8.3% 8.3% 16.7% 23% 27%
G3 3- 4- 2-36/45 6.7% 15.6% 20.0% 47% 43%
G2 1- 1- 2- 2/ 6 16.7% 33.3% 66.7% 26% 213%
前走着順 1着 6- 6- 4-47/63 9.5% 19.0% 25.4% 59% 90%
2着 1- 1- 1- 0/ 3 33.3% 66.7% 100.0% 83% 183%
3着 0- 1- 1- 2/ 4 0.0% 25.0% 50.0% 0% 142%
4着〜 0- 0- 1-29/30 0.0% 0.0% 3.3% 0% 24%

表10は2勝馬に限ったデータで、上半分は前走クラス別成績、下半分は前走着順別成績を示している。まず前走クラス別成績だが、明らかに好走率が高いのは前走G2。すなわち、デイリー杯2歳Sか京王杯2歳Sから臨む馬がいれば要注意の存在ということになる。そのほかのクラスに関しては際立った差は見られない。

次に前走着順別成績。ここで注目すべきは、「前走2、3着」の好走率が高いことだ。そして、これは2勝馬に限ったデータなので、該当するのは「すでに2勝を挙げ、前走で2、3着に入った馬」ということになる。こういう馬がいれば狙ってみる価値はありそうだ。「前走1着」の場合は、0秒1以上の着差をつけていれば【5.6.2.29】、勝率11.9%、複勝率31.0%なのに対し、タイム差なしの0秒0だと【1.0.2.18】、勝率4.8%、複勝率14.3%というデータが残っていることも記しておきたい。なお、「前走4着以下」の2勝馬は、30頭で3着1回のみとかなり苦戦している。

■表11 「1勝馬」の前走クラス別成績

前走クラス 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回率 複回率
新馬 1- 0- 2-12/15 6.7% 6.7% 20.0% 45% 136%
未勝利 1- 0- 0-11/12 8.3% 8.3% 8.3% 18% 10%
500万下 0- 0- 0-19/19 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0%
オープン特別 0- 0- 0- 6/ 6 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0%
G3 1- 2- 1-18/22 4.5% 13.6% 18.2% 36% 55%
G2 0- 0- 0- 2/ 2 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0%

表11は、1勝馬に限った前走クラス別成績。まずいえるのが、前走が500万下やオープン特別だった計25頭は、1頭も好走していないことだ。また、前走未勝利戦で唯一の好走例というのがG1を6勝する名牝ブエナビスタだから、これは例外と考えるべきかもしれない。

よって1勝馬を狙うのであれば、基本的には前走重賞か新馬戦ということになる。まず、重賞から好走した4頭中3頭は前走2着。もう1頭は前々走で重賞2着があるので、1勝馬といえども重賞での好走実績は必須といえる。また、新馬戦から好走した3頭には、いずれもノーザンファームの生産馬という共通項があった。

【結論】

2018/10/27 東京11R アルテミスS(G3) 1着 3番 シェーングランツ

今年の阪神JF登録馬23頭のうち、「上がり1位で1着」「芝1600m以上で1着」の実績をいずれも満たすのが11頭いる。この11頭を2勝馬と1勝馬に分けて、分析したデータから有力と思われる馬を探していきたい。

2勝馬にあたるのはグレイシア、クロノジェネシス、シェーングランツ、ダノンファンタジーの4頭。このうち前走11着のグレイシアは表10のデータから強調しづらいが、残る3頭は前走で2着馬に0秒1以上の差をつけて1着という条件をクリアした。そこでデビュー月とキャリアを確認すると、表7と8で見た「8月までにデビューを済ませたキャリア4戦以内の馬」を満たすのはシェーングランツダノンファンタジー。とはいえ、9月デビューのクロノジェネシスも、ノーザンファームの生産馬のため克服する可能性はある。また、関西遠征となるシェーングランツは前走出走時474キロで、関東馬で重要な馬体重も大丈夫そうだ。

2018/11/3 京都11R KBS京都賞ファンタジーS(G3) 1着 4番 ダノンファンタジー

1勝馬はアフランシール、エイシンゾーン、エールヴォア、タニノミッション、トロシュナ、ビーチサンバ、ラブミーファインの7頭。このうちビーチサンバとラブミーファインを除く5頭は、抽選の突破が必要になりそうな情勢だ。

表11の項で述べた通り、基本的に1勝馬は前走重賞か新馬戦。まず、前走重賞の場合は重賞での好走実績が必要となり、これを満たすのはアルテミスS2着のビーチサンバ、同3着のエールヴォア、函館2歳S2着のラブミーファイン。この3頭では芝1200mの函館2歳Sより芝1600mのアルテミスSを上位にとりたいところで、ノーザンファームの生産馬ということも加味するとビーチサンバの名前を挙げたい。前走新馬戦組からは、ノーザンファーム生産馬のトロシュナはデータからチャンスあり。ただし、タニノミッションは母が06年に当レースを勝った名牝ウオッカで、血統的に怖い存在ではある。

ライタープロフィール

出川塁(でがわ るい)

1977年熊本県生まれ。上智大学文学部卒業後、出版社2社で競馬専門誌、競馬書籍の編集に携わり、2007年からフリーライターに。「競馬最強の法則」「サラブレ」「優駿」などへ寄稿するほか、出版社勤務時代を含めて制作に関わった競馬書籍は多数。馬券は単勝派だが、焼肉はタン塩派というわけではない。メインの競馬のほか、サッカーでも密かに活動中。


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