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第1268回 マイルG1実績馬の激突! マイルCSを分析する

2018/11/15(木)

今週のG1は、秋のマイル王決定戦・マイルCS。今年は、昨年の本競走1、2着馬(ペルシアンナイト、エアスピネル)、本年の安田記念1、2着馬(モズアスコット、アエロリット)のほか、ヴィクトリアMを制したジュールポレール、そしてNHKマイルCの勝ち馬・ケイアイノーテックなど、マイルG1の好走実績馬が数多く出走を予定している。この争いを制してマイル王の座に就くのはどの馬か、過去の傾向を見てみよう。データの分析には、JRA-VAN DataLab.TARGET frontier JV馬天楼 for データde出〜たを利用した。

■表1 前年のマイルCS、同年の安田記念連対馬の成績(1987年以降)

実績 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回収 複回収 過去10年 同複勝率
前年マイルCS優勝馬 4-0-0-9/13 30.8% 30.8% 30.8% 98% 45% 0-0-0-5 0.0%
前年マイルCS2着馬 3-4-1-14/22 13.6% 31.8% 36.4% 26% 59% 0-2-0-7 22.2%
同年安田記念優勝馬 5-2-0-6/13 38.5% 53.8% 53.8% 113% 70% 1-0-0-4 20.0%
同年安田記念2着馬 2-1-1-4/8 25.0% 37.5% 50.0% 162% 98% 0-1-0-2 33.3%

2015/11/22 京都11R マイルチャンピオンシップ(G1) 1着 16番 モーリス

まず表1は、前年の本競走連対馬と、同年の安田記念連対馬が、このレースでどんな結果を残したかを調べたものである(1987年以降の本競走出走馬)。この比較では、同コースとはいえ1年前になるマイルCSよりは、別コースでも約半年前の安田記念連対馬のほうが優勢である。 しかし、気になるのは表の右に記した過去10年の結果だ。ここ10年の該当馬のうち、優勝したのは、2015年に破竹の快進撃を続けていたモーリスのみ。1987年以降の全体に比べると、近年は明らかに好走確率が低下している。好走馬は出ているため「消し」とまでは言えないが、他馬の逆転や、別路線からの参戦馬が勝利をさらう可能性も十分にあることは頭に入れておきたい。

■表2 人気別成績

人気 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回収 複回収 過去5年
1 1-3-2-4/10 10.0% 40.0% 60.0% 23% 85% 0-0-2-3/5
2 1-3-1-5/10 10.0% 40.0% 50.0% 47% 98% 1-3-0-1/5
3 1-2-0-7/10 10.0% 30.0% 30.0% 59% 64% 1-2-0-2/5
4 4-0-1-5/10 40.0% 40.0% 50.0% 356% 141% 2-0-0-3/5
5 1-0-1-8/10 10.0% 10.0% 20.0% 98% 64% 0-0-0-5/5
6 0-0-1-9/10 0.0% 0.0% 10.0% 0% 38% 0-0-0-5/5
7 0-0-2-8/10 0.0% 0.0% 20.0% 0% 87% 0-0-2-3/5
8 1-0-0-9/10 10.0% 10.0% 10.0% 181% 39% 1-0-0-4/5
9 0-0-1-9/10 0.0% 0.0% 10.0% 0% 60% 0-0-1-4/5
10 0-0-1-9/10 0.0% 0.0% 10.0% 0% 60% 0-0-0-44/44
11〜 1-2-0-76/79 1.3% 3.8% 3.8% 66% 33%

ここからは過去10年の傾向を見ていきたい。まず人気別では、4番人気が4勝を挙げるものの、2〜3着は計1回のみ。1勝止まりの1、2番人気も、連対率や複勝率なら互角以上。ただ、配当妙味も含めると4番人気が一歩リード、という形だ。 そんな中、やや劣勢な3番人気は、馬券に絡んだ3頭がすべて過去5年から。2番人気も連対した4頭はすべて近5年で、その2〜3番人気も含め、過去5年の連対馬10頭中9頭は2〜4番人気。1番人気は【0.0.2.3】と、連対なしに終わっている。また2桁人気は、過去10年で4頭が馬券圏内に入っているが、過去5年の好走はない。

■表3 性齢別成績

性別 年齢 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回収 複回収 1〜4番人気 同複勝率
牡・セン 3歳 1-0-2-19/22 4.5% 4.5% 13.6% 40% 50% 1-0-0-4/5 20.0%
4歳 3-5-1-18/27 11.1% 29.6% 33.3% 96% 90% 2-4-1-7/14 50.0%
5歳 3-4-4-40/51 5.9% 13.7% 21.6% 123% 90% 2-3-1-2/8 75.0%
6歳 1-1-0-30/32 3.1% 6.3% 6.3% 56% 16% 0-1-0-4/5 20.0%
7歳以上 1-0-0-17/18 5.6% 5.6% 5.6% 12% 6% 1-0-0-2/3 33.3%
9-10-7-124/150 6.0% 12.7% 17.3% 78% 58% 6-8-2-19/35 45.7%
牝馬 3歳 0-0-0-11/11 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0% 0-0-0-1/1 0.0%
4歳 0-0-2-4/6 0.0% 0.0% 33.3% 0% 103% 0-0-1-0/1 100.0%
5歳 1-0-0-7/8 12.5% 12.5% 12.5% 132% 33% 1-0-0-1/2 50.0%
6歳 0-0-1-2/3 0.0% 0.0% 33.3% 0% 90% 0-0-1-0/1 100.0%
7歳以上 0-0-0-1/1 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0% 該当なし
1-0-3-25/29 3.4% 3.4% 13.8% 36% 40% 1-0-2-2/5 60.0%

牡・セン馬の年齢別では、4歳馬が最多の8連対で、連対率も29.6%の好成績。ただ、3着以内の好走馬9頭のうち、2009年のマイネルファルケ(14番人気2着)、2011年のエイシンアポロン(5番人気1着)を除く7頭は、1〜4番人気に支持された馬だった。5歳馬は3着以内11頭と、好走馬数では4歳を上回る。特に4番人気以内に推された馬は【2.3.1.2】複勝率75.0%と、人気馬の安定感は素晴らしい。該当馬がいれば軽視は禁物だ。 一方、牝馬で連対したのは、08年の優勝馬・ブルーメンブラットのみ。連対率3.4%、複勝率13.8%など牝馬は劣勢で、まずは牡馬の4〜5歳馬から軸候補を探るのが妥当だろう(本年はセン馬の登録なし)。

■表4 前走クラス、レース別成績(日本馬、3着以内馬輩出レース)

前走 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回収 複回収
1600万下 0-0-1-0/1 0.0% 0.0% 100.0% 0% 380%
OPEN特別 0-0-0-5/5 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0%
G3 4-4-1-53/62 6.5% 12.9% 14.5% 76% 42%
G2 2-5-5-54/66 3.0% 10.6% 18.2% 86% 68%
G1 4-1-1-33/39 10.3% 12.8% 15.4% 62% 49%
富士S 3-4-1-44/52 5.8% 13.5% 15.4% 70% 45%
天皇賞(秋) 2-0-1-13/16 12.5% 12.5% 18.8% 80% 38%
スワンS 1-4-2-33/40 2.5% 12.5% 17.5% 131% 71%
スプリンターズS 1-1-0-7/9 11.1% 22.2% 22.2% 65% 123%
京都大賞典 1-0-0-1/2 50.0% 50.0% 50.0% 235% 90%
安田記念 1-0-0-3/4 25.0% 25.0% 25.0% 142% 52%
府中牝馬S 1-0-1-8/10 10.0% 10.0% 20.0% 106% 60%
毎日王冠 0-1-1-14/16 0.0% 6.3% 12.5% 0% 45%
清水S 0-0-1-0/1 0.0% 0.0% 100.0% 0% 380%
札幌記念 0-0-1-0/1 0.0% 0.0% 100.0% 0% 440%

前走クラス別の成績は、G3からG1まで連対率は10%台前半、複勝率も14〜18%台。勝率はG1だけが10%台に乗せているものの、全体としては決め手を欠く印象だ。また、本年の登録馬の前走は、背景緑で示した5レースが中心だが、これも毎日王冠組がやや苦戦しているという以外、特に「買い」と言えるほどのレースはない。前走の着順など、もう少し細かく見る必要がありそうだ。 本年の登録馬のうち、前走でその他のレースに出走していたのは、ミッキーグローリー1頭で、その京成杯AH組は過去10年【0.0.0.4】。14年には同馬と同じく2連勝中の5歳馬・クラレントが、6番人気で15着大敗を喫している。

■表5 前走富士S、スワンSからの好走馬

馬名 性齢 人気 着順 前走 前走人気 前走着順 G1実績
2009 マイネルファルケ 牡4 14 2 富士S 5 9 未経験
2010 ダノンヨーヨー 牡4 1 2 2 1 未経験
2011 エイシンアポロン 牡4 5 1 1 1 朝日杯FS2着
2013 ダノンシャーク 牡5 1 3 1 1 安田記念3着
2014 ダノンシャーク 牡6 8 1 1 7 前年3着
2016 イスラボニータ 牡5 2 2 4 2 皐月賞1着
2017 ペルシアンナイト 牡3 4 1 2 5 皐月賞2着
エアスピネル 牡4 2 2 1 1 朝日杯FS2着
2009 ファイングレイン 牡5 10 3 スワンS 7 5 高松宮記念1着
2010 エーシンフォワード 牡5 13 1 1 8 高松宮記念3着
2011 グランプリボス 牡4 1 2 3 1 NHKマイルC1着
2013 ダイワマッジョーレ 牡4 3 2 4 2 安田記念9着
2014 フィエロ 牡5 3 2 2 3 安田記念8着
2016 フィエロ 牡6 2 2 1 2 前年2着
2017 サングレーザー 牡3 7 3 2 1 未経験

表5は、出走馬の多い富士S、スワンS組の好走馬15頭である。このうち、09年のマイネルファルケ(富士S)、ファイングレイン(スワンS)を除く13頭はすべて、前走で1〜2番人気に推されるか、連対を確保していた。なお、表の右にあるG1実績については後述する。

■表6 前走天皇賞(秋)、毎日王冠、府中牝馬Sからの好走馬

馬名 性齢 人気 着順 前走 前走人気 前走着順 G1実績
2009 カンパニー 牡8 1 1 天皇賞(秋) 5 1 天皇賞(秋)1着
2012 サダムパテック 牡4 4 1 10 8 皐月賞2着
2015 イスラボニータ 牡4 1 3 6 3 皐月賞1着
2008 スーパーホーネット 牡5 1 2 毎日王冠 2 1 前年2着
2014 グランデッツァ 牡5 9 3 2 5 皐月賞5着
2008 ブルーメンブラット 牝5 4 1 府中牝馬S 4 1 ヴィクトリアM3着
2012 ドナウブルー 牝4 5 3 1 3 ヴィクトリアM2着

続いて表6は、前走天皇賞(秋)、毎日王冠、府中牝馬Sからの好走馬7頭だ。こちらは天皇賞(秋)組こそ前走人気、着順は問われないが、毎日王冠と府中牝馬S組はやはり、前走1〜2番人気か、連対していることが好走条件になる。表5もあわせると、前走が天皇賞(秋)以外なら、前走人気、着順のいずれかが「2以内」に収まっているかどうかがポイントだ。

また、この表5〜6の22頭のうち、16頭はG1で3着以内の好走実績を持っていた。残る6頭中3頭はG1未経験馬で、G1に出走経験がありながら馬券圏内のなかった馬は3頭にとどまる。

■表7 前走富士S、スワンS、毎日王冠、府中牝馬S組の、前走人気・着順別成績

前走 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回収 複回収
1〜2番人気・2着以内 1-4-2-7/14 7.1% 35.7% 50.0% 70% 106%
3番人気以下・1〜2着 1-3-0-16/20 5.0% 20.0% 20.0% 53% 42%
1〜2番人気・3着以下 3-1-2-18/24 12.5% 16.7% 25.0% 330% 120%
3番人気以下かつ3着以下 0-1-1-58/60 0.0% 1.7% 3.3% 0% 21%

表7は、前走富士S、スワンS、毎日王冠、府中牝馬S組について、前走人気・着順別の成績をまとめたものである。このうち、好走確率が高いのは人気、着順ともに「2以内」を満たす「1〜2番人気・2着以内」の馬で複勝率は50.0%。単複の回収率なら、前走人気だけを満たす「1〜2番人気・3着以下」が高い。一方だけを満たす馬なら、前走着順よりは前走人気を重視したい。

【結論】

表2にあったように、近年の傾向からはまず、2〜4番人気に支持される馬を連軸に据えたい一戦だ。現時点で判断はやや難しいが、特に5歳(表3)の該当馬がいれば、下記に挙がっていなくても評価を上げたい。

2017/4/16 中山11R 皐月賞(G1) 1着 11番 アルアイン

上位人気が予想される中で注目したいのは、前走・天皇賞(秋)で5番人気4着だったアルアインだ。好走確率の高い4歳の牡馬(表3)で、天皇賞組なら前走人気・着順は不問。また、天皇賞組の好走馬3頭のうち、サダムパテック、イスラボニータはともに、前年の皐月賞連対馬(表6)。残るカンパニーも前走の天皇賞で1着と、すべて2000mのG1連対馬だった。アルアインは、昨年の皐月賞でペルシアンナイトを2着に下し優勝。4番人気以内に支持されれば有力だ。

人気どころからもう1頭挙げれば、1番人気で毎日王冠を制したアエロリット。表7の4レースで「1〜2番人気・2着以内」なら複勝率は50.0%。牝馬や毎日王冠組は全体としては劣勢だが(表3、4)、牝馬でも1〜4番人気なら【1.0.2.2】で複勝率60.0%をマークしている(表3)。また、同年の安田記念2着馬は高回収率を残し、過去10年でも該当3頭とはいえ複勝率33.3%と、数字自体は決して悪くない。安田記念の雪辱を果たす可能性も大いにありそうだ。なお、その安田記念を制したモズアスコットが仮に2〜4番人気だった場合も、特に減点材料はなく有力な候補。1番人気だったとしても、3着の候補から外すほどではない(表2)。

ほかに、少々穴っぽいところでは、5歳(表3)のエアスピネル。昨年の本競走2意着は近年、強調材料にまではならないものの(表1)、G1実績(表5〜6)という味ではプラス材料。加えて富士S1番人気での4着敗退は、回収率面で魅力がある(表7)。また、同じく5歳のロードクエストは、スワンSの優勝馬(2番人気)。16年のNHKマイルC2着でG1実績もクリアしており、こちらも穴候補としておもしろい存在だ。

ライタープロフィール

浅田知広(あさだ ともひろ)

1970年12月、埼玉県生まれ。立命館大学文学部中退後、夕刊紙レース部のアルバイト、競馬データベース会社を経て、現在はフリー。パソコンが広く普及する以前から、パソコン通信でデータ手入力方式の競馬予想ソフトを公開するなど、競馬のみならずPCやネットワークにも精通。その知識を活かし、Webや雑誌で競馬ライターとして活躍するかたわら、ネットワークの専門誌にも連載を持つ。


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