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第1265回 「勝った次のレース」などの騎手別成績を分析

2018/11/5(月)

今回はシチュエーション別の騎手成績を調べてみたい。分析するのは「勝ったレースの次の騎乗機会」「2着したレースの次の騎乗機会」「その日最初の騎乗機会」「その日最後の騎乗機会」の4パターン。これらのデータを調べることによって、各ジョッキーの個性のようなものが見えてくるのではないかと考えた。集計の対象とするのは、今年60勝以上を挙げている騎手14人(10月28日時点)で、データの集計期間は2018年1月6日〜10月28日。なお、出走取消、発走除外、競走除外となったレースは除き、実際に騎乗したレースのみを集計対象とする。データの分析には、JRA-VAN DataLab.TARGET frontier JVを利用した。

■表1 勝ったレースの次の騎乗機会における成績

騎手 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回率 複回率
C.ルメール 37-25-21-73/156 23.7% 39.7% 53.2% 68% 76%
-3.4% -4.6% -4.1% -9% -9%
M.デムーロ 31-17- 8-55/111 27.9% 43.2% 50.5% 94% 76%
+4.0% +0.6% -4.5% +18% -5%
戸崎圭太 16-12-12-48/88 18.2% 31.8% 45.5% 92% 102%
+5.1% +4.1% +6.0% +32% +25%
福永祐一 10-14- 8-39/71 14.1% 33.8% 45.1% 135% 104%
-0.4% +6.9% +6.2% +57% +26%
北村友一 7-17- 6-38/68 10.3% 35.3% 44.1% 31% 121%
-2.4% +10.7% +10.4% -47% +43%
川田将雅 8- 9- 9-37/63 12.7% 27.0% 41.3% 65% 86%
-3.8% -7.8% -6.8% -1% -9%
松山弘平 6- 9- 5-44/64 9.4% 23.4% 31.3% 48% 97%
0.0% +3.6% +2.7% -41% +17%
田辺裕信 8- 9- 8-35/60 13.3% 28.3% 41.7% 60% 86%
+1.9% +7.9% +10.5% -25% +12%
岩田康誠 7- 6-10-40/63 11.1% 20.6% 36.5% 56% 80%
+1.0% -0.4% +4.3% -10% +5%
藤岡佑介 9- 7- 1-36/53 17.0% 30.2% 32.1% 110% 92%
+4.1% +8.1% +0.7% +27% +18%
和田竜二 5- 4- 3-43/55 9.1% 16.4% 21.8% 36% 48%
+0.6% -2.7% -4.9% -27% -24%
大野拓弥 3- 7- 4-42/56 5.4% 17.9% 25.0% 35% 74%
-3.5% +1.2% -0.4% -47% -7%
武豊 7- 3-10-37/57 12.3% 17.5% 35.1% 72% 73%
-2.5% -9.6% -5.7% 0% -14%
内田博幸 10- 3- 4-37/54 18.5% 24.1% 31.5% 160% 73%
+10.4% +7.8% +7.5% +111% +18%

2018/2/18 東京11R フェブラリーステークス(G1) 1着 12番 ノンコノユメ

表1は、各騎手の「勝ったレースの次の騎乗機会における成績」を示している。それぞれ上下2段に分かれており、上段はそのシチュエーションにおける成績、下段は各騎手の全体成績と比較した数値を意味している。なお、集計対象は同日のレースのみで、次の騎乗機会が翌日や翌週となった場合は集計から除外した。

このケースにおいて、勝率〜複勝回収率の5項目すべてが自身の全体成績よりプラスとなったのが戸崎圭太騎手、藤岡佑介騎手、内田博幸騎手の3人。また、4項目でプラスの福永祐一騎手田辺裕信騎手、連対率と複勝率が10%以上アップする北村友一騎手らも、ひとつ勝った勢いで次のレースでも好成績を収めるジョッキーといえるのではないか。特に内田騎手は自身の全体成績に比べて単勝回収率が111%も上昇。たとえば、今年2月18日には10RのアメジストSを制すと、返す刀で11RのフェブラリーSでも4番人気のノンコノユメをG1制覇に導いている。

■表2 2着したレースの次の騎乗機会における成績

騎手 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回率 複回率
C.ルメール 31-18-12-39/100 31.0% 49.0% 61.0% 99% 93%
+3.9% +4.7% +3.7% +22% +8%
M.デムーロ 24-19- 8-38/89 27.0% 48.3% 57.3% 91% 81%
+3.1% +5.7% +2.3% +15% 0%
戸崎圭太 13-13- 8-60/94 13.8% 27.7% 36.2% 55% 70%
+0.7% 0.0% -3.3% -5% -7%
福永祐一 8- 4-10-39/61 13.1% 19.7% 36.1% 59% 67%
-1.4% -7.2% -2.8% -19% -11%
北村友一 9- 4- 7-42/62 14.5% 21.0% 32.3% 140% 69%
+1.8% -3.6% -1.4% +62% -9%
川田将雅 17-16-10-30/73 23.3% 45.2% 58.9% 113% 121%
+6.8% +10.4% +10.8% +47% +26%
松山弘平 4- 6- 6-54/70 5.7% 14.3% 22.9% 42% 73%
-3.7% -5.5% -5.7% -47% -7%
田辺裕信 11- 5- 6-33/55 20.0% 29.1% 40.0% 153% 94%
+8.6% +8.7% +8.8% +68% +20%
岩田康誠 7- 8- 7-43/65 10.8% 23.1% 33.8% 106% 90%
+0.7% +2.1% +1.6% +40% +15%
藤岡佑介 4- 6- 5-26/41 9.8% 24.4% 36.6% 26% 70%
-3.1% +2.3% +5.2% -57% -4%
和田竜二 6-12- 6-53/77 7.8% 23.4% 31.2% 53% 91%
-0.7% +4.3% +4.5% -10% +19%
大野拓弥 4- 3- 7-36/50 8.0% 14.0% 28.0% 98% 76%
-0.9% -2.7% +2.6% +16% -5%
武豊 8- 8- 7-24/47 17.0% 34.0% 48.9% 95% 107%
+2.2% +6.9% +8.1% +23% +20%
内田博幸 3- 1- 8-46/58 5.2% 6.9% 20.7% 23% 49%
-2.9% -9.4% -3.3% -26% -6%

表2は、各騎手の「2着したレースの次の騎乗機会における成績」を示している。5項目すべて自身の全体成績よりプラスを記録したのがクリストフ・ルメール騎手、川田将雅騎手、田辺裕信騎手、岩田康誠騎手、武豊騎手で、ミルコ・デムーロ騎手も4項目でプラスをマーク。なかでも勝率のアップ幅が大きい川田騎手や田辺騎手は、2着に惜敗した悔しさをすぐに晴らす傾向を持っているのではないか。また、ルメール騎手とM・デムーロ騎手も勝率のアップ幅がいずれも3%台と高くなっている。

■表3 その日最初の騎乗機会における成績

騎手 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回率 複回率
C.ルメール 25-14- 7-33/79 31.6% 49.4% 58.2% 83% 82%
+4.5% +5.1% +0.9% +6% -3%
M.デムーロ 23-14-15-31/83 27.7% 44.6% 62.7% 69% 82%
+3.8% +2.0% +7.7% -7% +1%
戸崎圭太 16-11- 7-56/90 17.8% 30.0% 37.8% 53% 56%
+4.7% +2.3% -1.7% -7% -21%
福永祐一 17- 6-14-48/85 20.0% 27.1% 43.5% 92% 66%
+5.5% +0.2% +4.6% +14% -12%
北村友一 15-11- 6-57/89 16.9% 29.2% 36.0% 63% 68%
+4.2% +4.6% +2.3% -15% -10%
川田将雅 12-13-12-35/72 16.7% 34.7% 51.4% 53% 81%
+0.2% -0.1% +3.3% -13% -14%
松山弘平 7-10- 6-66/89 7.9% 19.1% 25.8% 48% 59%
-1.5% -0.7% -2.8% -41% -21%
田辺裕信 7-11-13-56/87 8.0% 20.7% 35.6% 41% 76%
-3.4% +0.3% +4.4% -44% +2%
岩田康誠 8-13- 9-49/79 10.1% 26.6% 38.0% 89% 100%
0.0% +5.6% +5.8% +23% +25%
藤岡佑介 13- 8-10-57/88 14.8% 23.9% 35.2% 101% 86%
+1.9% +1.8% +3.8% +18% +12%
和田竜二 8-12- 6-56/82 9.8% 24.4% 31.7% 40% 58%
+1.3% +5.3% +5.0% -23% -14%
大野拓弥 8- 5-10-67/90 8.9% 14.4% 25.6% 55% 95%
0.0% -2.3% +0.2% -27% +14%
武豊 16-10- 9-39/74 21.6% 35.1% 47.3% 74% 89%
+6.8% +8.0% +6.5% +2% +2%
内田博幸 11- 9- 8-61/89 12.4% 22.5% 31.5% 85% 61%
+4.3% +6.2% +7.5% +36% +6%

表3は、各騎手の「その日最初の騎乗機会における成績」を示している。こうして見ると、自身の全体成績よりプラスの数値を記録している騎手が多いことに気づく。集計対象の14騎手のうち、これに該当するのは10騎手もいる。今回の集計対象とした14騎手は、そのまま今年の勝利数が多い順の14騎手でもあるわけだが、その日最初に騎乗するレースで好結果を収めることによって好循環が生まれ、多くの勝ち鞍を挙げているとも考えられそうだ。

■表4 その日最後の騎乗機会における成績

騎手 クラス 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回率 複回率
C.ルメール 合計 20-12- 9-38/79 25.3% 40.5% 51.9% 111% 82%
重賞 7- 3- 1-10/21 33.3% 47.6% 52.4% 255% 115%
重賞以外 13- 9- 8-28/58 22.4% 37.9% 51.7% 59% 71%
M.デムーロ 合計 17-14-13-39/83 20.5% 37.3% 53.0% 72% 89%
重賞 5- 4- 4- 8/21 23.8% 42.9% 61.9% 97% 112%
重賞以外 12-10- 9-31/62 19.4% 35.5% 50.0% 64% 82%
戸崎圭太 合計 9-14- 9-58/90 10.0% 25.6% 35.6% 46% 77%
重賞 1- 0- 1-11/13 7.7% 7.7% 15.4% 22% 45%
重賞以外 8-14- 8-47/77 10.4% 28.6% 39.0% 51% 82%
福永祐一 合計 11- 9- 9-55/84 13.1% 23.8% 34.5% 62% 72%
重賞 1- 2- 2-21/26 3.8% 11.5% 19.2% 20% 45%
重賞以外 10- 7- 7-34/58 17.2% 29.3% 41.4% 82% 83%
北村友一 合計 9-11-10-59/89 10.1% 22.5% 33.7% 115% 97%
重賞 0- 3- 2- 8/13 0.0% 23.1% 38.5% 0% 120%
重賞以外 9- 8- 8-51/76 11.8% 22.4% 32.9% 135% 93%
川田将雅 合計 12-12- 6-42/72 16.7% 33.3% 41.7% 62% 121%
重賞 4- 5- 1-15/25 16.0% 36.0% 40.0% 52% 90%
重賞以外 8- 7- 5-27/47 17.0% 31.9% 42.6% 68% 137%
松山弘平 合計 9-10- 6-64/89 10.1% 21.3% 28.1% 81% 82%
重賞 1- 0- 1-11/13 7.7% 7.7% 15.4% 31% 23%
重賞以外 8-10- 5-53/76 10.5% 23.7% 30.3% 89% 92%
田辺裕信 合計 11- 3- 9-64/87 12.6% 16.1% 26.4% 81% 66%
重賞 0- 0- 2-10/12 0.0% 0.0% 16.7% 0% 73%
重賞以外 11- 3- 7-54/75 14.7% 18.7% 28.0% 94% 65%
岩田康誠 合計 4- 8-10-57/79 5.1% 15.2% 27.8% 53% 73%
重賞 1- 0- 1-13/15 6.7% 6.7% 13.3% 40% 20%
重賞以外 3- 8- 9-44/64 4.7% 17.2% 31.3% 56% 86%
藤岡佑介 合計 13- 7- 6-62/88 14.8% 22.7% 29.5% 129% 90%
重賞 4- 1- 1-14/20 20.0% 25.0% 30.0% 203% 104%
重賞以外 9- 6- 5-48/68 13.2% 22.1% 29.4% 108% 85%
和田竜二 合計 10- 4- 7-61/82 12.2% 17.1% 25.6% 93% 77%
重賞 0- 0- 0-11/11 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0%
重賞以外 10- 4- 7-50/71 14.1% 19.7% 29.6% 107% 89%
大野拓弥 合計 9- 7- 5-69/90 10.0% 17.8% 23.3% 65% 66%
重賞 0- 0- 1- 8/ 9 0.0% 0.0% 11.1% 0% 64%
重賞以外 9- 7- 4-61/81 11.1% 19.8% 24.7% 72% 66%
武豊 合計 8- 7- 9-50/74 10.8% 20.3% 32.4% 67% 73%
重賞 3- 2- 2-17/24 12.5% 20.8% 29.2% 112% 72%
重賞以外 5- 5- 7-33/50 10.0% 20.0% 34.0% 46% 74%
内田博幸 合計 9- 4- 6-70/89 10.1% 14.6% 21.3% 62% 44%
重賞 2- 0- 0- 8/10 20.0% 20.0% 20.0% 282% 77%
重賞以外 7- 4- 6-62/79 8.9% 13.9% 21.5% 34% 40%

2018/10/21 京都11R 菊花賞(G1) 1着 12番 フィエールマン

表4は、各騎手の「その日最後の騎乗機会における成績」を示している。なお、表1〜3とは趣向を変え、その日最後の騎乗機会を重賞と重賞以外に分けたデータを掲載した。まず、勝率ベースで見たときに、重賞の数値が明らかに高い騎手としてはクリストフ・ルメール騎手、藤岡佑介騎手、内田博幸騎手らが挙げられる。特にルメール騎手はその日の最終騎乗となる重賞で7勝、単勝回収率255%など優秀な成績を収めており、直近では菊花賞を7番人気のフィエールマンで制している。一方、重賞以外で数値が高いのは、福永祐一騎手、北村友一騎手、田辺裕信騎手、和田竜二騎手、大野拓弥騎手といったところ。騎乗馬の関係もあるので一概にどちらがいいともいえないが、傾向として知っておいて損はないだろう。

ライタープロフィール

出川塁(でがわ るい)

1977年熊本県生まれ。上智大学文学部卒業後、出版社2社で競馬専門誌、競馬書籍の編集に携わり、2007年からフリーライターに。「競馬最強の法則」「サラブレ」「優駿」などへ寄稿するほか、出版社勤務時代を含めて制作に関わった競馬書籍は多数。馬券は単勝派だが、焼肉はタン塩派というわけではない。メインの競馬のほか、サッカーでも密かに活動中。


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