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第1254回 今年は高速決着!? スプリンターズSを展望する

2018/9/27(木)

中山競馬場で秋のスプリント王決定戦のスプリンターズSが行われる。近2年はレッドファルクスが2連覇を達成しており、今回3連覇の偉業なるか、それとも新たな王者誕生かに注目が集まっている。今回のデータde出〜たでは、レースが行われる中山Cコースの今年の馬場状態ならびに前哨戦の結果から馬券に絡みそうな有力馬を探っていきたい。なお、データ分析にはJRA-VAN DataLab.TARGET frontier JV を利用した。

■表1 スプリンターズS近3年の上位3着以内馬一覧

年/馬場 着順 馬名 勝ちタイム 人気 4角通過順 上がり3F 前半3F通過 レース上がり
2017
(良)
1 レッドファクルス 1分7秒6 1 10 33秒0 33秒9 33秒7
2 レッツゴードンキ クビ 5 7 33秒1
3 ワンスインナムーン 1/2馬身 7 1 33秒8
2016
(良)
1 レッドファクルス 1分7秒6 3 7 33秒5 33秒4 34秒2
2 ミッキーアイル アタマ 2 1 34秒2
3 ソルヴェイグ クビ 9 4 34秒0
2015
(良)
1 ストレイトガール 1分8秒1 1 9 33秒1 34秒1 34秒0
2 サクラゴスペル 3/4馬身 11 6 33秒4
3 ウキヨノカゼ クビ 9 12 32秒8

まず表1はスプリンターズS近3年の上位3着以内馬一覧。14年秋は新潟で行われており、改修後の中山コースでの近3年の結果を掲載している。15年はストレイトガールが1分8秒1、近2年はレッドファルクスがともに1分7秒6でいずれも差し切り勝ちを決めている。

改修以前よりもやや時計が掛かる馬場状態で、中団から33秒台前半の脚で差し切れるというのが近3年のレース傾向といえる。また、近2年は昨年のワンスインナムーンのように逃げ馬が馬券圏内に絡んでいるという点にも注目しておきたい。

■表2 セプテンバーS(1600万下)近4年の勝ちタイム推移

年/馬場 勝ち馬 勝ちタイム 4角通過順 レース前半3F レース後半3F
18/稍重 モズスーパーフレア 1分7秒0 1 33秒2 33秒8
2着 アドマイヤナイト 1分7秒6 2 (33秒5) (34秒1)
17/稍重 タマモブリリアン 1分8秒0 2 33秒5 34秒5
2着 アドマイヤナイト 1分8秒1 5 (34秒1) (34秒0)
16/稍重 メラグラーナ 1分8秒7 8 34秒8 33秒9
15/良 ヤサカオディール 1分7秒9 2 33秒3 34秒6

表2はスプリンターズS前週に行われる1600万下のセプテンバーSの近4年の勝ちタイムの推移。月曜版のデータde出〜たでも示したが、今年のモズスーパーフレアの勝ちタイムは過去3年よりも抜けて速いことがわかる。同馬は前後半の3Fともに過去3年よりも速く、2着に3馬身半差をつけて逃げ切る圧勝だった。

その2着が昨年も2着だったアドマイヤナイトで、昨年の走破タイムと比較すると同じ稍重の馬場ながら今年の方が0秒5速かった。風の状況など様々な要因はあるにしても、今年のスプリンターズSは前3年よりも勝ちタイムが速くなって1分7秒台前後になるのではないかと推測される。

■表3 スプリンターズSの性別成績(08年以降の中山開催)

性別 着別度数 勝率 連対率 複勝率
牡・セン馬 6- 7- 4-88/105 5.7% 12.4% 16.2%
牝馬 3- 2- 5-27/37 8.1% 13.5% 27.0%
3歳牝馬 0- 0- 1- 3/ 4 0.0% 0.0% 25.0%
4歳牝馬 2- 0- 2- 6/10 20.0% 20.0% 40.0%
5歳牝馬 0- 2- 2-12/16 0.0% 12.5% 25.0%
6歳以上 1- 0- 0- 6/ 7 14.3% 14.3% 14.3%

表3は中山開催のスプリンターズSの性別成績。連対率ではそれほど差はないが、複勝率で牝馬が牡馬・セン馬を大きく上回っている。短距離では古馬で牝馬の方が2キロ斤量に恵まれているのは有利に働くのだろう。特に3〜5歳牝馬の複勝率が高い傾向にある。3歳牝馬は一昨年3着のソルヴェイグの1回だが、12年にエピセアローム4着があって好勝負できる状況にはある。

■表4 1分7秒5以内の勝ちタイムとなったスプリンターズSの前走脚質別成績(09〜13年)

前走脚質 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単勝回収率 複勝回収率
逃げ 1- 1- 0- 4/ 6 16.7% 33.3% 33.3% 230% 101%
先行 3- 3- 2-19/27 11.1% 22.2% 29.6% 62% 140%
中団 0- 0- 3-22/25 0.0% 0.0% 12.0% 0% 57%
後方 0- 0- 0-14/14 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0%

表4は過去10年の中山開催で勝ちタイム1分7秒5以内となった2009〜13年の前走脚質別成績。今年は改修前のように1分7秒5以内の高速決着になると想定し、そうなった場合のデータを出してみた。黄色で強調したように前走逃げ・先行した馬が好成績をあげており、前走中団・後方から差してきた馬は不振傾向にあることがわかる。

改修後は表1で示した過去3年のスプリンターズSのようにやや時計が掛かる馬場状態で行われてきたが、今年の場合は改修前の中山のように速めの時計が出る馬場と踏んで、前走先行しているスピードタイプの馬を狙うのが面白いのではないか。

■表5 北九州記念の上位3着以内馬

年/馬場 着順 馬名 性齢 走破タイム 人気 4角通過順 自身前半3F通過 自身上がり3F
2018
(良)
1 アレスバローズ 牡6 1分6秒6 6 6 33秒1 33秒5
2 ダイメイプリンセス 牝5 1分6秒8 4 6 32秒9 33秒9
3 ラブカンプー 牝3 1分6秒9 7 2 32秒4 34秒5

ここからは北九州記念、キーンランドC、セントウルSの前哨戦3レースの内容を見ていく。表5は北九州記念の上位3着以内馬。小倉芝も過去数年は以前のように高速決着とならない傾向が見られたが、今年は前半からハイペースで高速決着となった。

前半32秒4のハイペースでラブカンプーが道中2番手で粘る中、内目から差し切ったのがアレスバローズ。同馬は2走前のCBC賞でも1分7秒0の速いタイムで勝利しており、高速馬場への適性の高さを示している。2着にはダイメイプリンセスが入り、アイビスSDの上位2頭がここでも馬券圏内に入った。

■表6 キーンランドCの上位3着以内馬

年/馬場 着順 馬名 性齢 走破タイム 人気 4角通過順 自身前半3F通過 自身上がり3F
2018
(稍重)
1 ナックビーナス 牝5 1分9秒4 1 1 33秒7 35秒7
2 ダノンスマッシュ 牡3 1分9秒8 4 2 33秒9 35秒9
3 ペイシャフェリシタ 牝5 1分9秒9 9 4 34秒0 35秒9

表6はキーンランドCの上位3着以内馬。こちらはモレイラ騎手騎乗のナックビーナスがスタートから主導権を握って、逃げ切り勝ちを決めた。2・3着にも道中内目を通った馬が入り、直線で外が伸びにくい状態だった。ナックビーナスの前半3F33秒7で徹底先行タイプがおらず、すんなりとハナを切れたのが大きかった。

■表7 セントウルSの上位3着以内馬

年/馬場 着順 馬名 性齢 走破タイム 人気 4角通過順 自身前半3F通過 自身上がり3F
2018
(重)
1 ファインニードル 牡5 1分8秒8 1 6 34秒2 34秒6
2 ラブカンプー 牝3 1分9秒0 2 1 33秒3 35秒7
3 グレイトチャーター 牡6 1分9秒1 7 14 34秒9 34秒2

最後にセントウルSの3着以内馬一覧。重馬場で時計が掛かるコンディションで、中団からレースを進めたファインニードルが差し切ってセントウルS2連覇を決めた。ハナ争いでネロに絡まれたラブカンプーは前半33秒3のハイペースで逃げて2着。前が止まる展開になり、ファインニードルには絶好の展開となった。ラブカンプーは近2戦ともにきついハナ争いに巻き込まれているが、どちらも馬券圏内で粘れている

<結論>

■表8 今年のスプリンターズSの出走予定馬(9/26現在)

馬名 性齢 前走成績
ファインニードル 牡5 セントウルS 1着
レッドファルクス 牡7 安田記念 9着
レッツゴードンキ 牝6 キーンランドC 5着
ナックビーナス 牝5 キーンランドC 1着
ワンスインナムーン 牝5 朱鷺S 1着
ラッキーバブルズ セン7 香港プレミアC 3着
セイウンコウセイ 牡5 函館スプリントS 1着
スノードラゴン 牡10 CBC賞 12着
ダイメイプリンセス 牝5 北九州記念 2着
アレスバローズ 牡6 北九州記念 1着
ムーンクエイク セン5 キーンランドC 9着
ラブカンプー 牝3 セントウルS 2着
ヒルノデイバロー 牡7 キーンランドC 14着
キャンベルジュニア 牡6 キーンランドC 4着
ラインスピリット 牡7 セントウルS 5着
ティーハーフ 牡8 キーンランドC 11着
キングハート 牡5 キーンランドC 15着
タマモブリリアン 牝5 キーンランドC 13着
グレイトチャーター 牡6 セントウルS 3着
アドマイヤゴッド 牡6 セントウルS 8着
ブラヴィッシモ 牡6 セントウルS 7着
カイザーメランジェ 牡3 セプテンバーS 6着

※フルゲート16頭。キングハート以下は除外対象。

2018/8/19 小倉11R 北九州記念(G3) 1着 5番 アレスバローズ

今年のスプリンターズSの出走予定馬は表8のとおり。

1番人気に支持されそうなのは高松宮記念を制して、前哨戦のセントウルSも勝利したファインニードル。ただし、不安な点は大きく2つある。まずは時計の掛かる馬場への適性が高いこと。今年挙げた3勝はいずれも1分8秒台と時計の掛かる馬場だった。2つ目は休み明けを好走し、間隔が短い2戦目ではパフォーマンスを落とす傾向にある点だ。昨年はセントウルSを快勝したが、スプリンターズSでは12着に敗れている。オープン入りしてからは1着か4着以下かハッキリしており、馬券圏内を外してもおかしくないと見る。

他で上位人気が想定される中では昨年の覇者レッドファルクス、昨年2着で春の高松宮記念も2着のレッツゴードンキも時計が掛かった方が良績の出やすいタイプといえる。

前哨戦3レースの中で今回に最も直結すると見ているのが北九州記念組だ。このレース4着だったグレイトチャーターがセントウルSで上がり最速の3着と着順を上げている点からも評価できる。北九州記念を勝ち切ったアレスバローズは表5で述べたように重賞連勝中で、高速馬場への適性が高い。以前より前半ハイペースでも楽に追走できており、今回も不利がなければ勝ち負けできる可能性が高い。

2018/7/29 新潟11R アイビスSD(G3) 1着 15番 ダイメイプリンセス

また、好位から2着に入ったダイメイプリンセスも高速1200mの適性が高く、有力。昨秋の中山・初風特別では前半32秒9のハイペースで2番手につけて勝利している。ハイペースでも我慢できる先行力は強みだ。また、近2戦ハイペースで競りかけられながらも好走しているラブカンプーも有力だが、状態面はきっちりチェックしておきたい。

テンが速いラブカンプーの出方次第だが、ハナに行けた場合のセイウンコウセイも注意しておきたい。前走の函館スプリントSでは前半33秒1のハイペースで逃げて、ナックビーナスを完封。昨年の高松宮記念を制しており、引き続き怖い一頭だ。他では先行力があって、中山芝では馬券圏内を外していないナックビーナスはもちろん押さえておきたい。

今回は瞬発力がある差しタイプよりも、前で踏ん張れる逃げ・先行タイプの粘り込みに期待して馬券作戦を組み立てたい。

ライタープロフィール

ケンタロウ(けんたろう)

1978年6月、鹿児島県生まれ。早稲田大学社会科学部卒業。初めて買った馬券が大当たりし、それから競馬にのめり込むように。データでは、開催日の馬場やコース適性に注目している。好きなタイプは逃げか追い込み。馬券は1着にこだわった単勝、馬単派。料理研究家ではない。


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