データde出〜た
第1227回 新馬デビュー月と人気・着順だけでG1制覇の可能性を探る
2018/6/25(月)
今年も6月からスタートした2歳戦。将来のさまざまな可能性を秘めた若駒が続々とデビューを果たしており、特にPOGを楽しんでいる方、そしてクラブ馬主の会員のみなさんは、その走りに一喜一憂していることだろう。そこで今回は、特にPOGに関連が深い2歳〜3歳春のG1を制するには、どんな内容で新馬デビューを果たしている必要があるかを考えてみたい。データの分析には、JRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用した。また集計対象は、12年6月以降の新馬デビュー馬とした。
■表1 2歳〜3歳春のG1馬の新馬デビュー月と成績
月 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 |
6月 | 8-0-0-0/8 | 100.0% | 100.0% | 100.0% |
7月 | 4-0-0-1/5 | 80.0% | 80.0% | 80.0% |
8月 | 3-4-0-1/8 | 37.5% | 87.5% | 87.5% |
9月 | 0-3-0-0/3 | 0.0% | 100.0% | 100.0% |
10月 | 6-1-1-1/9 | 66.7% | 77.8% | 88.9% |
11月 | 4-0-0-0/4 | 100.0% | 100.0% | 100.0% |
12月 | 0-1-0-0/1 | 0.0% | 100.0% | 100.0% |
まず表1は、12年の暮れから今年の日本ダービーまで、2歳G1と3歳春のG1(以下、今回はこれを「G1」と表記するが、3歳秋以降のG1は含まない)を制した馬が、何月にデビューしていたか、そしてその新馬戦での着順を調べたものである。たとえば10月の「6-1-1-1/9」なら、2歳10月の新馬デビュー馬からこの期間に9頭のG1馬が誕生していることを示しており、そのうち6頭が新馬戦1着。ほかに、新馬2着、3着、そして着外から、後にこの期間のG1を制した馬がそれぞれ1頭ずついたことを意味している。
デビュー月別のG1馬輩出数を見ると、その10月新馬デビュー馬の9頭が最多。そして8月デビュー馬と、6月デビュー馬がそれぞれ8頭で続いている。表は12月までになっているが、年明けデビュー馬が3歳春のG1を制した例は12年のカレンブラックヒル(NHKマイルC)、春のクラシックでは10年のオークス馬・サンテミリオンまでさかのぼる。そのため、今回の対象期間には、年明けデビューのG1馬は不在だ。
また、デビュー月によって、後にG1を制するために要求される新馬戦の着順にも違いが出ている。まず6〜7月デビュー馬は、後にG1を勝った13頭中12頭が新馬戦で勝利を飾っていた。2歳の6〜7月ならG1までまだまだ時間があるだけに、いくらでも巻き返せそうなものだが、実際は逆に新馬戦を勝ってなければいけない、という傾向が出ている。
新馬戦で負けていてもG1を制するチャンスが多いのは、8〜10月の新馬デビュー馬だ。計20頭の後のG1馬のうち、新馬勝ちを飾っていたのは半数以下の9頭のみ。さすがに馬券圏外では苦しいが、特に2着であれば後々のチャンスは大きい。そして11〜12月デビュー馬になると、5頭中4頭が1着、残る1頭も2着。さすがにG1までの期間が短くなっており、ここで連対を外していると苦しいというデータだ。
■表2 6〜7月デビューのG1馬(2歳〜3歳春)
年 | 馬名 | 場所 | 距離 | 人気 | 着順 | G1制覇 |
12 | マイネルホウオウ | 福島 | 芝1800 | 4 | 1 | NHKマイルC |
ロゴタイプ | 函館 | 芝1200 | 1 | 1 | 朝日杯FS、皐月賞 | |
ローブティサージュ | 函館 | 芝1800 | 2 | 1 | 阪神JF | |
13 | レッドリヴェール | 阪神 | 芝1600 | 3 | 1 | 阪神JF |
イスラボニータ | 東京 | 芝1600 | 2 | 1 | 皐月賞 | |
ハープスター | 中京 | 芝1400 | 1 | 1 | 桜花賞 | |
14 | クラリティスカイ | 中京 | 芝1400 | 4 | 4 | NHKマイルC |
15 | メジャーエンブレム | 東京 | 芝1800 | 1 | 1 | 阪神JF、NHKマイルC |
16 | アエロリット | 東京 | 芝1400 | 2 | 1 | NHKマイルC |
ソウルスターリング | 札幌 | 芝1800 | 1 | 1 | 阪神JF、オークス | |
17 | ケイアイノーテック | 阪神 | 芝1600 | 1 | 1 | NHKマイルC |
ダノンプレミアム | 阪神 | 芝1800 | 1 | 1 | 朝日杯FS | |
ワグネリアン | 中京 | 芝2000 | 2 | 1 | 日本ダービー |
では、それぞれをもう少し細かく見てみよう。表2は6〜7月デビューのG1馬の新馬戦成績で、先にも触れたように13頭中12頭が1着で、例外はクラリティスカイの4着1頭。また、新馬戦で3番人気以下だったのは、同馬のほか、マイネルホウオウとレッドリヴェールの計3頭のみ。単にデビュー戦で勝利を飾るだけでなく、1〜2番人気で勝利を挙げていることが理想だ。また、このうち2400mのオークス・ダービーを制したのはソウルスターリングとワグネリアンの2頭。皐月賞を制したのもほかに2頭で、この時期のデビュー馬にはマイルG1を制する馬が多いのが特徴だ。
■表3 8〜10月デビューのG1馬(2歳〜3歳春)
年 | 馬名 | 場所 | 距離 | 人気 | 着順 | G1制覇 |
12 | アユサン | 東京 | 芝1400 | 1 | 1 | 桜花賞 |
キズナ | 京都 | 芝1800 | 1 | 1 | 日本ダービー | |
13 | ワンアンドオンリー | 小倉 | 芝1800 | 10 | 12 | 日本ダービー |
ミッキーアイル | 阪神 | 芝1600 | 2 | 2 | NHKマイルC | |
ヌーヴォレコルト | 東京 | 芝1600 | 1 | 4 | オークス | |
14 | ショウナンアデラ | 新潟 | 芝1600 | 1 | 2 | 阪神JF |
レッツゴードンキ | 札幌 | 芝1800 | 3 | 1 | 桜花賞 | |
ダノンプラチナ | 札幌 | 芝1500 | 1 | 2 | 朝日杯FS | |
ドゥラメンテ | 東京 | 芝1800 | 1 | 2 | 皐月賞、日本ダービー | |
15 | ディーマジェスティ | 札幌 | 芝1500 | 3 | 2 | 皐月賞 |
シンハライト | 京都 | 芝1600 | 1 | 1 | オークス | |
マカヒキ | 京都 | 芝1800 | 1 | 1 | 日本ダービー | |
16 | レーヌミノル | 小倉 | 芝1200 | 1 | 1 | 桜花賞 |
サトノアレス | 札幌 | 芝1800 | 2 | 2 | 朝日杯FS | |
レイデオロ | 東京 | 芝2000 | 1 | 1 | 日本ダービー | |
アルアイン | 京都 | 芝1600 | 1 | 1 | 皐月賞 | |
17 | タイムフライヤー | 新潟 | 芝1800 | 4 | 2 | ホープフルS |
アーモンドアイ | 新潟 | 芝1400 | 1 | 2 | 桜花賞、オークス | |
ラッキーライラック | 新潟 | 芝1600 | 2 | 1 | 阪神JF | |
エポカドーロ | 京都 | 芝1800 | 4 | 3 | 皐月賞 |
続いて8〜10月デビュー馬の20頭。新馬勝ちを果たせなくてもチャンスが十分にあるグループだ。ただ、それでも連対を外していたのは20頭中3頭だけ。そして4番人気以下だったのも3頭しかいない。「3番人気以内での連対」が、多くの馬に共通する条件だ。なお、この条件を満たさなかった4頭に共通するのは、後にマイル以外のG1を制していること。阪神JFや朝日杯FSなどマイルG1を予想する際に、8〜10月デビュー馬ならこの条件を満たしているか、12月になったら思い出してチェックしたいものだ。
■表4 11〜12月デビューのG1馬(2歳〜3歳春)
年 | 馬名 | 場所 | 距離 | 人気 | 着順 | G1制覇 |
12 | メイショウマンボ | 京都 | 芝1400 | 1 | 1 | オークス |
13 | アジアエクスプレス | 東京 | ダ1400 | 1 | 1 | 朝日杯FS |
14 | ミッキークイーン | 阪神 | 芝1400 | 1 | 2 | オークス |
15 | リオンディーズ | 京都 | 芝2000 | 1 | 1 | 朝日杯FS |
ジュエラー | 京都 | 芝1800 | 2 | 1 | 桜花賞 |
そして最後に表4は、11〜12月デビュー馬5頭である。こちらは5頭中4頭が新馬1着、そして同じく4頭が1番人気。残る各1頭も、2番人気と2着だった。この時期の新馬戦で、3番人気以下や3着以下だった馬では、少なくとも3歳春までのG1は勝てない、ということになる。
以上、新馬デビュー月を大きく3つに分けて、それぞれの特徴を見てみた。どの月にデビューしていても、基本的には「上位人気で好走」が多くの後のG1馬に共通する条件になるが、その「上位人気」や「好走」の中でも、それぞれ微妙に違いがあることがわかった。既にデビューを果たした馬が表2の条件を満たしていれば、まずは大きな期待を持ってこれからのレースを楽しみたい。もっとも、どんなデータでもなかなか「100%」にはならないもの。表2の条件をクリアできていなかったとしても、クラリティスカイのような例外もいるだけに、あまり落胆せずに今後の活躍を期待して応援していきたいものだ。
ライタープロフィール
浅田知広(あさだ ともひろ)
1970年12月、埼玉県生まれ。立命館大学文学部中退後、夕刊紙レース部のアルバイト、競馬データベース会社を経て、現在はフリー。パソコンが広く普及する以前から、パソコン通信でデータ手入力方式の競馬予想ソフトを公開するなど、競馬のみならずPCやネットワークにも精通。その知識を活かし、Webや雑誌で競馬ライターとして活躍するかたわら、ネットワークの専門誌にも連載を持つ。