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第1226回 春のG1最終章・宝塚記念を占う

2018/6/21(木)

すでに新馬戦が始まるなど夏競馬に突入しているが、G1としては春の総決算となるのが宝塚記念だ。今年は21年ぶりとなる外国馬のワーザーも参戦。地元の香港ではG1を3勝している強豪だ。迎え撃つ日本馬は、昨年の勝ち馬サトノクラウン、復活を期すサトノダイヤモンドの「両サトノ」に加え、昨年の菊花賞馬キセキ、一昨年の秋華賞馬ヴィブロスなどが出走を予定。そんな春のグランプリを、過去10年のデータから展望してみたい。データの分析には、JRA-VAN DataLab.TARGET frontier JVを利用した。

■表1 人気別成績 

人気 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回率 複回率
1番人気 2- 4- 2- 2/10 20.0% 60.0% 80.0% 59% 106%
2番人気 2- 1- 1- 6/10 20.0% 30.0% 40.0% 100% 62%
3番人気 1- 1- 2- 6/10 10.0% 20.0% 40.0% 90% 102%
4番人気 0- 0- 1- 9/10 0.0% 0.0% 10.0% 0% 45%
5番人気 1- 2- 0- 7/10 10.0% 30.0% 30.0% 113% 122%
6番人気 2- 0- 1- 7/10 20.0% 20.0% 30.0% 278% 94%
7番人気 0- 0- 0- 10/10 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0%
8番人気 2- 0- 1- 7/10 20.0% 20.0% 30.0% 629% 188%
9番人気 0- 1- 0- 9/10 0.0% 10.0% 10.0% 0% 81%
10番人気〜 0- 1- 2- 51/54 0.0% 1.9% 5.6% 0% 54%

表1は人気別成績。1番人気は過去10年で2勝も、複勝率80.0%と手堅い。4着以下に敗れた2頭は、15年15着のゴールドシップと17年9着のキタサンブラック。この2頭に共通するのは前走で天皇賞・春を勝っていたことで、長距離G1を好走した反動があったのかもしれない。2番人気以下はあまり好走率に差がなく、8番人気までは十分圏内といってよさそうだ。10番人気以下の好走例も皆無ではないが、好走率としてはかなり低く、回収率的にも狙いづらい。

■表2 枠番別成績 

枠番 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回率 複回率
1枠 1- 0- 4-10/15 6.7% 6.7% 33.3% 90% 198%
2枠 0- 2- 2-11/15 0.0% 13.3% 26.7% 0% 66%
3枠 0- 1- 1-15/17 0.0% 5.9% 11.8% 0% 85%
4枠 0- 4- 0-13/17 0.0% 23.5% 23.5% 0% 45%
5枠 0- 3- 0-15/18 0.0% 16.7% 16.7% 0% 61%
6枠 3- 0- 0-17/20 15.0% 15.0% 15.0% 108% 32%
7枠 0- 0- 2-18/20 0.0% 0.0% 10.0% 0% 28%
8枠 6- 0- 1-15/22 27.3% 27.3% 31.8% 416% 110%

表2は枠番別成績。なんといっても注目は、過去10年で8枠が6勝を挙げていることだ。たまたま人気馬が偏って入ったわけではなく、10年に8番人気1着のナカヤマフェスタ、15年に6番人気1着のラブリーデイ、16年に8番人気1着のマリアライトと、ダークホースも3勝を挙げている。また、2着がすべて2〜5枠から出ている点も興味深い。枠の傾向は当日の馬場状態に左右されやすい面もあるが、今年もどの馬がどの枠に入るか、しっかりと注意を払いたいところだ。

■表3 牡牝別成績

性別 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回率 複回率
牡馬・セン馬 9- 7- 6-105/127 7.1% 12.6% 17.3% 80% 52%
牝馬 1- 3- 4- 9/17 5.9% 23.5% 47.1% 147% 250%

表3は牡牝別成績。ご覧の通り、近年の宝塚記念では牝馬の好走が目立ち、13年以降は毎年必ず1頭は牝馬が3着以内に入っている。15年にはデニムアンドルビーが10番人気2着、ショウナンパンドラが11番人気3着と牝馬2頭が穴をあけ、翌16年にも8番人気のマリアライトがドゥラメンテとキタサンブラックを撃破する大仕事を成し遂げるなど、まったくもって油断ならない。

■表4 年齢別成績

年齢 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回率 複回率
3歳 0- 0- 0- 1/ 1 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0%
4歳 3- 2- 6- 38/49 6.1% 10.2% 22.4% 89% 74%
5歳 5- 5- 3- 29/42 11.9% 23.8% 31.0% 138% 107%
6歳 2- 3- 1- 20/26 7.7% 19.2% 23.1% 95% 106%
7歳以上 0- 0- 0- 26/26 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0%

表4は年齢別成績。中心となるのは4〜6歳で、そのなかでは過去10年で半分の5勝を挙げた5歳の好走率がもっとも高い。単複の回収率も100%以上と優秀だ。一方、7歳以上は26戦して好走なし。最近は年齢だけでは軽視できなくなっているが、宝塚記念では高齢馬が苦戦している。

■表5 前走G1レース別成績

前走レース名 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回率 複回率
天皇賞・春 4- 3- 2-34/43 9.3% 16.3% 20.9% 36% 53%
大阪杯 1- 0- 0- 1/ 2 50.0% 50.0% 50.0% 450% 240%
ヴィクトリアマイル 0- 2- 3- 5/10 0.0% 20.0% 50.0% 0% 314%
安田記念 0- 0- 1- 6/ 7 0.0% 0.0% 14.3% 0% 15%
菊花賞 0- 0- 0- 1/ 1 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0%
ジャパンC 0- 0- 0- 1/ 1 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0%
海外G1 0- 2- 1- 9/12 0.0% 16.7% 25.0% 0% 33%

表5は、G1に限った前走レース別成績。なお、海外のG1は全レースまとめて表の一番下に付記した。前走G1で出走例が圧倒的に多いのは天皇賞・春だが、好走率、回収率はひと息で、しっかりした取捨が求められそうだ。昨年G1に昇格した大阪杯からは、早速サトノクラウンが勝利。中11週と出走間隔は開くが、同じ阪神の芝内回りコース使用で、距離も200mしか違わないだけに、今後は注目の臨戦となるかもしれない。侮れないのが前走ヴィクトリアマイルで、勝ち馬こそ出ていないものの複勝率50.0%と非常に高い。好走した延べ5頭の内訳は、ブエナビスタ(2回)、ヴィルシーナ、ショウナンパンドラ、ミッキークイーンで、いずれも秋華賞1〜3着に入った馬という共通点がある。なお、前走海外G1は好走例が計3回あるものの、勝ち馬はなし。ジェンティルドンナやドゥラメンテといった名馬でも2、3着までだったことは頭の片隅に入れておいていいかもしれない。

■表6 前走天皇賞・春出走馬の各種データ

項目 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回率 複回率
前走人気 前走1番人気 2- 0- 0- 4/ 6 33.3% 33.3% 33.3% 101% 53%
前走2番人気 1- 1- 1- 6/ 9 11.1% 22.2% 33.3% 30% 50%
前走3番人気 0- 0- 1- 5/ 6 0.0% 0.0% 16.7% 0% 26%
前走4番人気 0- 0- 0- 3/ 3 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0%
前走5番人気 1- 1- 0- 3/ 5 20.0% 40.0% 40.0% 142% 142%
前走6〜9番人気 0- 1- 0- 3/ 4 0.0% 25.0% 25.0% 0% 160%
前走10番人気〜 0- 0- 0-10/10 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0%
前走着順 前走1着 0- 0- 1- 6/ 7 0.0% 0.0% 14.3% 0% 21%
前走2着 0- 1- 1- 5/ 7 0.0% 14.3% 28.6% 0% 41%
前走3着 1- 0- 0- 6/ 7 14.3% 14.3% 14.3% 101% 22%
前走4着 0- 0- 0- 0/ 0          
前走5着 1- 0- 0- 3/ 4 25.0% 25.0% 25.0% 72% 35%
前走6〜9着 1- 1- 0- 6/ 8 12.5% 25.0% 25.0% 33% 90%
前走10着〜 1- 1- 0- 8/10 10.0% 20.0% 20.0% 32% 82%

表6は、前走天皇賞・春出走馬について、前走人気別成績と前走着順別成績を示したもの。この表を見る限り、宝塚記念との相関関係が強いのは天皇賞・春の着順ではなく人気のようだ。たとえば「天皇賞・春1、2番人気」と「天皇賞・春1、2着」の成績を比較すると、前者が【3.1.1.10】なのに対して、後者は【0.1.2.11】。あるいは、天皇賞・春で6番人気以下だった馬の成績が【0.1.0.13】なのに対して、6着以下だった馬の成績は【2.2.0.14】となっている。天皇賞・春は京都芝3200m、宝塚記念は阪神芝2200mと条件がまったく異なるだけに、着順はあまり連動しないのだろう。むしろ、天皇賞・春時点での人気のほうが参考になり、1〜5番人気だった馬がいれば面白そうだ。

■表7 前走G2・G3出走馬の前走着順別成績

前走着順 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回率 複回率
前走1着 2- 1- 1- 9/13 15.4% 23.1% 30.8% 196% 88%
前走2着 1- 0- 1- 4/ 6 16.7% 16.7% 33.3% 418% 96%
前走3着 1- 1- 0- 4/ 6 16.7% 33.3% 33.3% 226% 101%
前走4着 0- 1- 0- 8/ 9 0.0% 11.1% 11.1% 0% 90%
前走5着 0- 0- 0- 5/ 5 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0%
前走6〜9着 0- 0- 1-16/17 0.0% 0.0% 5.9% 0% 40%
前走10着〜 0- 0- 0- 5/ 5 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0%

表7は、前走G2もしくはG3に出走した馬について、前走着順別成績を示したもの。この場合、前走1〜3着なら【4.2.2.17】となかなかの好成績で、勝った4頭の内訳が5番人気、6番人気2頭、8番人気とダークホースの台頭もありうる。そのなかでも、前々走も重賞3着以内だった馬は要注意。08年1着のエイシンデピュティが大阪杯(当時G2)で2着、11年1着のアーネストリーが天皇賞・秋で3着、16年1着のマリアライトも日経賞で3着と、このパターンの勝ち馬4頭中3頭は前々走でも重賞で好走を果たしていた。一方、前走G2・G3で4着以下だと合算して【0.1.1.34】。好走例も皆無ではないが、かなり苦しくなってしまう。

■表8 過去1年の重賞1着実績・距離別成績

実績 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回率 複回率
芝1600重賞1着 1- 1- 2- 3/ 7 14.3% 28.6% 57.1% 161% 241%
芝1800重賞1着 0- 2- 1-17/20 0.0% 10.0% 15.0% 0% 20%
芝2000重賞1着 4- 4- 5-16/29 13.8% 27.6% 44.8% 159% 181%
芝2200重賞1着 4- 4- 1-18/27 14.8% 29.6% 33.3% 318% 124%
芝2400重賞1着 2- 0- 3-13/18 11.1% 11.1% 27.8% 33% 68%
芝2500重賞1着 2- 0- 0- 9/11 18.2% 18.2% 18.2% 55% 29%

表8は、過去1年に芝重賞1着の実績を持っていた馬について、その芝重賞の距離別で宝塚記念の成績を示したものである。この表を見ると、過去1年で「芝1600m重賞1着」「芝2000m重賞1着」「芝2200m重賞1着」の実績を重視すべきことが一目瞭然。一方、芝1800mや芝2400m、芝2500mの重賞で1着した実績は、宝塚記念ではそれほど活きないようだ。

【結論】

2016/10/16 京都11R 秋華賞(G1)  1着 7番 ヴィブロス 2018/1/14 京都11R 日経新春杯(G2) 1着 7番 パフォーマプロミス

今年の宝塚記念に出走登録がある16頭から、以上で述べたデータから有力と思われる馬を挙げていこう。

まず前走天皇賞・春組は、着順ではなく人気を重視するのがポイントだったが、今年はもっとも上位でもアルバートの6番人気だった。そのアルバートは過去10年に好走例がない7歳馬で、スマートレイアーは8歳馬。もう1頭のミッキーロケットは、5歳馬という点はいいのだが、天皇賞・春の人気が9番人気だった。今年の春天組には食指が動かない、というのが正直なところである。

ほかに前走でG1に出走したのは4頭で、国内G1となると前走大阪杯のサトノダイヤモンドしかいない。その大阪杯では7着に敗れているが、昨年のサトノクラウンも6着からの巻き返しだった。ローテーションは悪くなく、好走例の多い5歳馬でもある。本来の実力は折り紙付きだけに、とにもかくにも当日の状態次第だろう。

ドバイ遠征以来となるのがサトノクラウンヴィブロス。6歳馬の前者は昨年の勝利が過去1年以内の芝2200m重賞1着に相当し、5歳馬の後者は当レースで活躍が目立つ秋華賞好走馬。香港以来となるダンビュライトも、芝2200m重賞のAJCCを今年制しており、この3頭は、いずれも十分な可能性を秘めている。

前走G2・G3出走馬は1〜3着に入っていることが条件で、前々走でも重賞で好走しているとさらにいい。この観点から浮上するのは前々走の日経新春杯で1着、前走の目黒記念で3着に入っているパフォーマプロミスだ。また、前走で芝2000mの鳴尾記念を勝ったストロングタイタンにも警戒はしておきたい。菊花賞馬のキセキは、前走の日経賞で9着に終わっており、データからは推しづらい。

最後に香港馬のワーザーだが、海外馬の出走自体が21年ぶりとあって、データから語るのは難しい。ただ、香港の実績ではあるものの、過去1年以内に芝2000m重賞1着は持っている。また、7歳馬ではあるが、生まれが半年遅い南半球産ということを考慮すると、実質的には6歳馬と考えてもいい。昨年12月の香港カップ2着時には、今回も出走予定のステファノスやスマートレイアーに先着しており、実力を発揮できればチャンスはありそうだ。

ライタープロフィール

出川塁(でがわ るい)

1977年熊本県生まれ。上智大学文学部卒業後、出版社2社で競馬専門誌、競馬書籍の編集に携わり、2007年からフリーライターに。「競馬最強の法則」「サラブレ」「優駿」などへ寄稿するほか、出版社勤務時代を含めて制作に関わった競馬書籍は多数。馬券は単勝派だが、焼肉はタン塩派というわけではない。メインの競馬のほか、サッカーでも密かに活動中。


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