データde出〜た
第1223回 米子Sと天保山Sの傾向を探る
2018/6/11(月)
今週から函館開催が始まる。いよいよ夏競馬のスタートだが、今回は阪神競馬場で行われる2つのレースに注目した。土曜日のメインレースである米子S、日曜日のメインレースである天保山Sだ。いずれもオープン特別で、13年以降は同一の条件で行われている。その間のレース結果を分析し、同レースの傾向を探ってみたい。データ分析にはJRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用した。
■表1 近年の米子S好走馬一覧(1)
年 | 着順 | 馬名 | 人気 | 馬場 | 頭数 | タイム | 3角 | 4角 | 上り3F | RPCI |
17年 | 1 | ブラックムーン | 1 | 良 | 10 | 1319 | 9 | 9 | 32.4 | 55.1 |
2 | サトノラーゼン | 4 | 1320 | 6 | 6 | 32.9 | ||||
3 | グァンチャーレ | 5 | 1322 | 5 | 4 | 33.4 | ||||
16年 | 1 | ケントオー | 4 | 重 | 9 | 1346 | 5 | 5 | 34.9 | 47.2 |
2 | クイーンズリング | 1 | 1352 | 2 | 3 | 35.7 | ||||
3 | ダイシンサンダー | 3 | 1354 | 4 | 3 | 35.8 | ||||
15年 | 1 | スマートレイアー | 1 | 良 | 10 | 1340 | 4 | 3 | 34.4 | 51.6 |
2 | オリービン | 5 | 1342 | 1 | 1 | 34.8 | ||||
3 | メイショウヤタロウ | 7 | 1343 | 3 | 3 | 34.8 | ||||
14年 | 1 | サンライズメジャー | 3 | 良 | 12 | 1348 | 10 | 7 | 34.9 | 47 |
2 | ブレイズアトレイル | 4 | 1350 | 11 | 11 | 34.8 | ||||
3 | サンレイレーザー | 2 | 1352 | 7 | 8 | 35.2 | ||||
13年 | 1 | エーシンミズーリ | 1 | 良 | 18 | 1331 | 5 | 4 | 33.6 | 46 |
2 | サワノパンサー | 10 | 1334 | 12 | 8 | 33.6 | ||||
3 | ダノンプログラマー | 3 | 1334 | 10 | 11 | 33.4 |
まず米子Sについて見ていく。芝1600mで行われるレースで、現在の別定戦で行われるようになった2013年以降の結果を表1に記した。出走頭数がやや寂しい傾向にあり、13年は18頭立てだったが、14年以降はフルゲートになっていない。そのせいか好走馬の人気も穏やかだ。13年は10番人気のサワノパンサーが2着に入っており、頭数が多くなればやはり波乱の可能性はアップするかと思われる。
勝ちタイムは年によってバラつきがある。重馬場だった16年でも勝ち馬は1分34秒6の時計。同じ良馬場でも13年から15年は1分33秒台から34秒台の決着だが、昨年はブラックムーンが1分31秒9のタイムを叩きだし、レコードで優勝した。レース内容を調べると、速いペースに引っ張られたものではなく、むしろペースは遅いぐらいだった。そんな展開を後方から行き、最後の直線は外から差した。時計的な価値を見出せるかは微妙で、馬場に引っ張られたレコードという印象が強い。
同馬の上がり3ハロンは32秒4。メンバー中最速の脚で、2着入線のサトノラーゼンも上がりは2位タイ。完全に決め手比べでまさった馬が、上位にきた。阪神芝1600mのコース形態を考えると、ごく自然な傾向で、上がり1位をマークした馬は毎年馬券になっている。同2位、3位の馬も軒並み上位入線を果たしている。全体の時計の出方とは関係なく、瞬発力勝負になりやすい一戦であることが言えるだろう。
■表2 近年の米子S好走馬一覧(2)
年 | 着順 | 馬名 | 間隔 | 前走レース名 | 前着 | 種牡馬 | 母父馬 |
17年 | 1 | ブラックムーン | 19 | 東京新聞G3 | 8 | アドマイヤムーン | ジェネラス |
2 | サトノラーゼン | 18 | 洛陽S | 10 | ディープインパクト | Intikhab | |
3 | グァンチャーレ | 18 | 洛陽S | 2 | スクリーンヒーロー | ディアブロ | |
16年 | 1 | ケントオー | 3 | 安土城SH | 8 | ダンスインザダーク | トウカイテイオー |
2 | クイーンズリング | 5 | ヴィクトG1 | 8 | マンハッタンカフェ | Anabaa | |
3 | ダイシンサンダー | 5 | 錦SH1600 | 1 | アドマイヤムーン | マンハッタンカフェ | |
15年 | 1 | スマートレイアー | 5 | ヴィクトG1 | 10 | ディープインパクト | ホワイトマズル |
2 | オリービン | 12 | 高松宮記G1 | 12 | ダイワメジャー | Zilzal | |
3 | メイショウヤタロウ | 3 | 安土城SH | 8 | アグネスタキオン | Storm Cat | |
14年 | 1 | サンライズメジャー | 3 | 安土城SH | 2 | ダイワメジャー | Deputy Minister |
2 | ブレイズアトレイル | 11 | ダービーHG3 | 7 | ダイワメジャー | エルコンドルパサー | |
3 | サンレイレーザー | 7 | 谷川岳S | 1 | ラスカルスズカ | Cozzene | |
13年 | 1 | エーシンミズーリ | 5 | 都大路S | 4 | マンハッタンカフェ | Silver Hawk |
2 | サワノパンサー | 42 | 朱鷺S | 8 | タイキシャトル | トニービン | |
3 | ダノンプログラマー | 3 | ディーH | 8 | ウォーエンブレム | サンデーサイレンス |
米子S好走馬をもう少し詳しく見ていく。表2にはレース間隔、前走レースと同着順、父と母父名を記した。まず前走レースを見ると、京都芝1400〜1800mのレースを使っている馬が多い。安土城Sや洛陽、都大路S組が目立つ。好走馬だけではなく、巻き返してくるケースも十分あり、前走着順はあまり気にしない方がいいだろう。 重賞組では東京新聞杯やヴィクトリアマイル、ダービー卿CTなどマイル組が多い。レース間隔もあまり関係なく、ひと息入っているケースや休み明けでも軽視しない方が良さそうだ。なお、前走1600万クラスからの昇級馬は16年3着のダイシンサンダーだけ。
血統的にはヘイロー系が他を圧倒。ディープインパクトだけでなく、マンハッタンカフェやダイワメジャー産駒など手広く好走馬が出ている。あとはミスタープロスペクター系で、アドマイヤムーンが2回好走。産駒は平坦のスプリンターというイメージだが、奮闘している。
■表3 近年の天保山S好走馬一覧(1)
年 | 着順 | 馬名 | 人気 | 馬場 | 頭数 | タイム | 3角 | 4角 | 上り3F | RPCI |
17年 | 1 | サウススターマン | 5 | 良 | 14 | 1224 | 4 | 5 | 36.3 | 35.6 |
2 | キングズガード | 3 | 1226 | 11 | 11 | 35.4 | ||||
3 | コウエイエンブレム | 1 | 1228 | 2 | 2 | 36.9 | ||||
16年 | 1 | ゴーイングパワー | 4 | 稍 | 10 | 1227 | 5 | 4 | 36.8 | 32.9 |
2 | キョウワダッフィー | 1 | 1227 | 8 | 8 | 36.1 | ||||
3 | ナガラオリオン | 6 | 1231 | 10 | 9 | 36.2 | ||||
15年 | 1 | タガノトネール | 4 | 稍 | 15 | 1223 | 2 | 2 | 36.4 | 36.8 |
2 | キクノストーム | 5 | 1226 | 14 | 13 | 35.3 | ||||
3 | タイセイファントム | 3 | 1227 | 3 | 4 | 36.5 | ||||
14年 | 1 | エーシンビートロン | 5 | 良 | 12 | 1234 | 2 | 2 | 36.4 | 39.8 |
2 | ウォータールルド | 1 | 1236 | 3 | 3 | 36.4 | ||||
3 | ナリタスーパーワン | 3 | 1238 | 5 | 6 | 36.3 | ||||
13年 | 1 | スリーボストン | 5 | 重 | 16 | 1215 | 1 | 1 | 35.8 | 39.5 |
2 | マルカフリート | 1 | 1217 | 6 | 5 | 35.4 | ||||
3 | シセイオウジ | 3 | 1221 | 13 | 11 | 35.3 |
続いて日曜日に行われる天保山Sの傾向を見ていく。このレースも13年から現在の条件になっており、過去5年分のデータがある。好走馬の一覧は表3の通りだ。
昨年はサウススターマンが勝利したわけだが、なんと5年連続で4〜5番人気の馬が勝利している。二けた人気の激走がない点も大きな特徴で、上位5番人気までの中でほぼ決まっている。大きな波乱はないが、単勝の妙味があるレースと言えるだろう。
勝ち馬は逃げ切り勝ちか、好位抜け出しが基本。ダートの短距離戦らしく、スピード・先行力が非常に大事だ。ペースは例年淀みない流れになるが、それでも前々で捌けないと勝機は薄い。ただ、一方で上がり最速をマークした馬も4頭上位にきている。14年以外は2〜3着に食い込んでいる。この点も大きな特徴だ。先行馬同士では案外決まりにくいと読み、決め手が一番ありそうな馬を相手候補の筆頭として考えてみたい。
■表4 近年の天保山S好走馬の一覧(2)
年 | 着順 | 馬名 | 間隔 | 前走レース名 | 前着 | 種牡馬 | 母父馬 |
17年 | 1 | サウススターマン | 11 | コーラルH | 4 | サウスヴィグラス | シャンハイ |
2 | キングズガード | 13 | 黒船賞G3 | 2 | シニスターミニスター | キングヘイロー | |
3 | コウエイエンブレム | 5 | 栗東SH | 2 | シニスターミニスター | Forty Niner | |
16年 | 1 | ゴーイングパワー | 7 | 天王山S | 2 | サクラバクシンオー | フジキセキ |
2 | キョウワダッフィー | 5 | 栗東SH | 5 | キングカメハメハ | ブライアンズタイム | |
3 | ナガラオリオン | 3 | 欅S | 15 | アドマイヤマックス | トワイニング | |
15年 | 1 | タガノトネール | 9 | 京葉SH | 15 | ケイムホーム | キングカメハメハ |
2 | キクノストーム | 9 | 京葉SH | 4 | スタチューオブリバティ | Fabulous Dancer | |
3 | タイセイファントム | 1 | アハルテH | 5 | ファンタスティックライト | Boundary | |
14年 | 1 | エーシンビートロン | 5 | 栗東SH | 3 | ブライアンズタイム | ホリスキー |
2 | ウォータールルド | 5 | 栗東SH | 2 | ウォーターリーグ | Boston Harbor | |
3 | ナリタスーパーワン | 5 | 栗東SH | 6 | ウォーエンブレム | フレンチデピュティ | |
13年 | 1 | スリーボストン | 5 | 栗東SH | 2 | ボストンハーバー | Forty Niner |
2 | マルカフリート | 11 | コーラル | 2 | アフリート | タヤスツヨシ | |
3 | シセイオウジ | 3 | 欅S | 4 | キングカメハメハ | ブライアンズタイム |
米子Sと同じように好走馬の詳細をもう少しみていく(表4参照)。前走レースはこちらも京都のオープン特別、栗東Sが多い。同レースの勝ち馬こそいないが、2〜5着以内で善戦していた馬が多い。芝に比べると前走大敗からの一変はやや少ない感じだが、ナガラオリオンやタガノトネールは15着から巻き返している。
種牡馬傾向は、父ミスタープロスペクター系が最も多い。キングカメハメハやサウスヴィグラスらが該当。続くのがシニスターミニスターやボストンハーバーなどのボールドルーラー系。芝とは一転し、ヘイロー系の好走馬はかなり少なくなっているのが特徴だ。
ライタープロフィール
小田原智大(おだわら ともひろ)
1975年6月、東京生まれ。早稲田大学商学部卒業後、業界紙記者を経て、(株)レイヤード入社。ライター&エディターとして活躍。JRA-VANデータの配信初期から、いち早くデータ競馬の有効性に着目する。05年5月より「競馬 最強の法則WEB」にて、障害戦を除く全重賞レースの傾向と対策、予想を展開。「オッズパーク ダートグレードデータ作戦」では、地方競馬の重賞の攻略にも取り組んでいる。仕事の関係でなかなか競馬場には行けなくなったが、年に1、2回行くローカル遠征が楽しみ。