データde出〜た
第1210回 6週連続G1の皮切りとなる天皇賞・春を分析
2018/4/26(木)
皐月賞のあと1週空いた春のG1シリーズは、今週末の天皇賞・春から再開する。16年、17年と連覇したキタサンブラックがターフを去り、今年はジャパンC勝ち馬のシュヴァルグランが主役になりそうだ。一昨年は3着、昨年は2着に惜敗した伝統の一戦を、今年こそ勝つことはできるのか。もちろん、他馬の陣営も虎視眈々と狙っていることだろう。そんなレースの傾向を、過去10年の結果から読み解いてみたい。データの分析には、JRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用した。
■表1 人気別成績
人気 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回率 | 複回率 |
1番人気 | 1- 0- 1 -8/10 | 10.0% | 10.0% | 20.0% | 22% | 25% |
2番人気 | 4- 1- 2- 3/10 | 40.0% | 50.0% | 70.0% | 212% | 162% |
3番人気 | 1- 4- 1- 4/10 | 10.0% | 50.0% | 60.0% | 58% | 200% |
4番人気 | 1- 3- 0- 6/10 | 10.0% | 40.0% | 40.0% | 115% | 104% |
5番人気 | 0- 0- 2- 8/10 | 0.0% | 0.0% | 20.0% | 0% | 82% |
6番人気 | 0- 0- 1- 9/10 | 0.0% | 0.0% | 10.0% | 0% | 154% |
7番人気 | 1- 1- 0- 8/10 | 10.0% | 20.0% | 20.0% | 169% | 118% |
8番人気 | 0- 0- 0- 10/10 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% |
9番人気 | 0- 0- 0- 10/10 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% |
10番人気〜 | 2- 1- 3- 78/84 | 2.4% | 3.6% | 7.1% | 245% | 130% |
表1は人気別成績。気になるのが1番人気の不振で、昨年キタサンブラックが制すまで10連敗を喫していた。昨年で悪い流れは止まったが、それでも過去10年で馬券圏内を確保したのは2頭のみ。前向きになれるデータでないことは確かだ。ただし、2番人気は4勝して複勝率70.0%、3番人気は複勝率60.0%、4番人気も複勝率40.0%と、2〜4番人気はしっかり走っている。1番人気は不振ながら、一概に人気馬がダメというわけではないので、その点は誤解しないようにしたい。また、10番人気以下も2勝を含む計6回の好走を果たしており、人気薄の激走にも注意が必要だ。
■表2 枠番別成績
枠番 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回率 | 複回率 |
1枠 | 5- 1- 1-12/19 | 26.3% | 31.6% | 36.8% | 1221% | 359% |
2枠 | 1- 2- 2-14/19 | 5.3% | 15.8% | 26.3% | 11% | 267% |
3枠 | 1- 1- 1-17/20 | 5.0% | 10.0% | 15.0% | 31% | 96% |
4枠 | 1- 0- 1-18/20 | 5.0% | 5.0% | 10.0% | 57% | 27% |
5枠 | 0- 1- 0-19/20 | 0.0% | 5.0% | 5.0% | 0% | 10% |
6枠 | 1- 1- 2-16/20 | 5.0% | 10.0% | 20.0% | 29% | 58% |
7枠 | 0- 2- 1-24/27 | 0.0% | 7.4% | 11.1% | 0% | 91% |
8枠 | 1- 2- 2-24/29 | 3.4% | 10.3% | 17.2% | 20% | 39% |
表2は枠番別成績。端的にいって、現在の天皇賞・春は内枠が圧倒的に強い。過去10年で1枠が5勝を挙げ、複勝率36.8%も群を抜いた数字。2枠も複勝率26.3%、複勝回収率267%と好調だ。実は、過去10年で10番人気以下から激走した6頭は、すべて1〜3枠のスタートだった。この事実ひとつをとっても内枠有利は明らかなので、今年も内枠に入った馬を侮らないように心がけたい。
■表3 前走レース別成績(日本馬のみ)
前走レース名 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回率 | 複回率 |
大阪杯・G1 | 3- 3- 2-10/18 | 16.7% | 33.3% | 44.4% | 131% | 124% |
日経賞・G2 | 3- 3- 2-44/52 | 5.8% | 11.5% | 15.4% | 123% | 78% |
阪神大賞典・G2 | 3- 2- 4-48/57 | 5.3% | 8.8% | 15.8% | 298% | 125% |
京都記念・G2 | 1- 1- 0- 3/ 5 | 20.0% | 40.0% | 40.0% | 118% | 176% |
ダイヤモンドS・G3 | 0- 1- 0-12/13 | 0.0% | 7.7% | 7.7% | 0% | 48% |
大阪―ハンブルクC | 0- 0- 1-14/15 | 0.0% | 0.0% | 6.7% | 0% | 190% |
※大阪杯・G1は、16年まで産経大阪杯・G2
表3は前走レース別成績。なお、大阪杯は16年までのG2時代も合算している。そして、ここ10年はその大阪杯組が好調。出走例は少ないが、京都記念組も連対率40.0%と出てきたら見逃せない。また、距離に注目すると面白いことが見えてくる。前走は中距離戦の大阪杯(2000m)と京都記念(2200m)の好走率が高く、長距離戦の日経賞(2500m)、阪神大賞典(3000m)、ダイヤモンドS(3400m)は数字が落ちる傾向にあるのだ。近年の天皇賞・春は速い時計の決着が続いている。そのため、ゆったりとした流れになる長距離戦より、よりペースが速い中距離戦のほうが予行練習に適しているのかもしれない。
■表4 過去1年・芝2000m重賞1〜3着経験の有無
経験 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回率 | 複回率 |
あり | 6- 5- 2-23/36 | 16.7% | 30.6% | 36.1% | 224% | 126% |
なし | 4- 5- 8-119/136 | 2.9% | 6.6% | 12.5% | 134% | 109% |
関連したデータをもうひとつ。表4は「過去1年に芝2000m重賞で1〜3着に入った経験がある馬、ない馬」の成績を比較したもの。一見、3200mの天皇賞・春とは無関係の距離にも思えるが、実際には「経験あり」の馬のほうが遥かに高い好走率を残している。前項で述べた通り、近年の天皇賞・春は高速化が顕著。2000m重賞でも好勝負できるぐらいのスピードを持つ馬のほうが走りやすくなっているようだ。
■表5 大阪杯組・前走着順別成績
前走着順 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回率 | 複回率 |
前走1着 | 2- 0- 1- 2/ 5 | 40.0% | 40.0% | 60.0% | 382% | 206% |
前走2着 | 1- 0- 0- 1/ 2 | 50.0% | 50.0% | 50.0% | 225% | 85% |
前走3着 | 0- 2- 1- 0/ 3 | 0.0% | 66.7% | 100.0% | 0% | 280% |
前走4着〜 | 0- 1- 0- 7/ 8 | 0.0% | 12.5% | 12.5% | 0% | 25% |
表5は大阪杯組の前走着順別成績。ご覧の通り、大阪杯で3着以内に入っていた馬の好走率は非常に高い。G1に昇格した昨年も、キタサンブラックが大阪杯と天皇賞・春を連勝している。ただし、4着以下は数字が大幅にダウンし、天皇賞・春で好走したのは08年に大阪杯6着から2着と巻き返したメイショウサムソンしかいない。そして、同馬は前年の天皇賞・春を勝っており、これは別格と考えていいだろう。
■表6 日経賞組・前走着順別成績
前走着順 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回率 | 複回率 |
前走1着 | 1- 3- 0- 4/ 8 | 12.5% | 50.0% | 50.0% | 77% | 136% |
前走2着 | 1- 0- 2- 5/ 8 | 12.5% | 12.5% | 37.5% | 581% | 336% |
前走3着 | 0- 0- 0- 8/ 8 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% |
前走4着 | 0- 0- 0- 5/ 5 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% |
前走5着 | 1- 0- 0- 2/ 3 | 33.3% | 33.3% | 33.3% | 383% | 103% |
前走6着〜 | 0- 0- 0-20/20 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% |
表6は日経賞組の前走着順別成績。この組もわかりやすい傾向が出ており、好走は1、2着だった馬にほぼ限られる。唯一、14年にフェノーメノが日経賞5着から巻き返して勝っているが、同馬は前年の天皇賞・春を勝っている。3着以下にこのレベルの馬がいなければ、日経賞組は1、2着のみを狙いたい。
■表7 阪神大賞典組・前走着順別成績
前走着順 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回率 | 複回率 |
前走1着 | 2- 0- 3- 5/10 | 20.0% | 20.0% | 50.0% | 104% | 125% |
前走2着 | 0- 1- 0- 9/10 | 0.0% | 10.0% | 10.0% | 0% | 16% |
前走3着 | 0- 0- 0- 7/ 7 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% |
前走4着 | 0- 0- 1- 5/ 6 | 0.0% | 0.0% | 16.7% | 0% | 101% |
前走5着 | 0- 0- 0- 8/ 8 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% |
前走6〜9着 | 0- 1- 0-12/13 | 0.0% | 7.7% | 7.7% | 0% | 106% |
前走10着〜 | 1- 0- 0- 2/ 3 | 33.3% | 33.3% | 33.3% | 5320% | 1240% |
表7は阪神大賞典組の前走着順別成績。阪神大賞典で1着だった馬は本番で複勝率50.0%と2回に1回は好走している。そして、2着以下から好走した3頭(1頭重複のため好走は計4回)には、血統に関する共通点がある。シュヴァルグランとカレンミロティックの父ハーツクライと、ビートブラックの父ミスキャストは、いずれも「父サンデーサイレンス×母父トニービン」の配合を持つ種牡馬ということだ。
■表8 3代以内トニービンの有無
3代以内トニービン | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回率 | 複回率 |
入る | 2- 6- 3-38/49 | 4.1% | 16.3% | 22.4% | 337% | 167% |
入らない | 8- 4- 7-106/125 | 6.4% | 9.6% | 15.2% | 78% | 89% |
実は阪神大賞典組に限らず、トニービンの血が入る馬は天皇賞・春でしばしば好走している。表8は「血統表の3代以内にトニービンが入る馬、入らない馬」の成績を比較したもの。ご覧の通り、連対率や複勝率は明らかに「入る」のほうが高く、単複の回収率はさらに大きな差がついている。できれば出走馬の血統表まで確認して、トニービンが入っている馬に注意を払いたいところだ。
【結論】
今年の天皇賞・春にエントリーがある17頭について、前走別に見ていきたい。大阪杯組は3着以内に入っていればかなり期待できたのだが、今年の3頭はすべて4着以下に敗れている。巻き返しがあるとすれば、すでに天皇賞・春で好走歴があるシュヴァルグランだろう。
日経賞組は1、2着に入っていることが条件で、1着のガンコと2着のチェスナットコートには資格あり。3着以下にフェノーメノ級の実績を持つ馬は見当たらないので、今回はこの2頭としたい。
阪神大賞典組は、まずは1着のレインボーライン。2着以下からは、ハーツクライ産駒のサトノクロニクルとカレンミロティック、アドマイヤドン産駒のアルバートにはチャンスがある。
データからピックアップできるのは以上の7頭となる。そして、表2の項目で述べた通り、天皇賞・春は枠順が結果に大きな影響を及ぼすため、これら7頭のなかで内枠を引いた馬を重視したい。また、ハーツクライ産駒のシュヴァルグランやチェスナットコートを含め、トニービンの血を引く馬にもしっかりと注意を払いたいところだ。
ライタープロフィール
出川塁(でがわ るい)
1977年熊本県生まれ。上智大学文学部卒業後、出版社2社で競馬専門誌、競馬書籍の編集に携わり、2007年からフリーライターに。「競馬最強の法則」「サラブレ」「優駿」などへ寄稿するほか、出版社勤務時代を含めて制作に関わった競馬書籍は多数。馬券は単勝派だが、焼肉はタン塩派というわけではない。メインの競馬のほか、サッカーでも密かに活動中。