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第1209回 名種牡馬サウスヴィグラスを追悼する

2018/4/23(月)

2003/11/3 大井8R JBCスプリント(G1) 1着 5番 サウスヴィグラス

現役時代のサウスヴィグラスが制したG1は、引退レースとなった2003年JBCスプリントの1勝のみ。しかし、種牡馬としては地方競馬のリーディングサイアーに4度輝くなど大きな成功を収め、もちろん中央競馬でも産駒が活躍している。今回はそんな名種牡馬のこれまでをデータから振り返ってみたい。集計期間は、産駒が初めて中央競馬で走った2007年6月23日から今年4月15日まで。なお、この集計期間における平地競走の勝利数が、芝17勝に対してダート420勝と大きく偏っているため、ここではダート戦のみを集計の対象とする。データの分析には、JRA-VAN DataLab.TARGET frontier JVを利用した。

■表1 年別成績(ダートのみ)

着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回率 複回率
2007年 2-  3-  2- 30/ 37 5.4% 13.5% 18.9% 20% 71%
2008年 27- 21- 21-189/258 10.5% 18.6% 26.7% 364% 156%
2009年 26- 28- 32-187/273 9.5% 19.8% 31.5% 101% 105%
2010年 30- 27- 34-209/300 10.0% 19.0% 30.3% 134% 117%
2011年 23- 19- 25-236/303 7.6% 13.9% 22.1% 96% 71%
2012年 35- 31- 22-268/356 9.8% 18.5% 24.7% 112% 83%
2013年 43- 35- 50-363/491 8.8% 15.9% 26.1% 112% 104%
2014年 51- 55- 44-512/662 7.7% 16.0% 22.7% 86% 79%
2015年 54- 49- 55-497/655 8.2% 15.7% 24.1% 98% 79%
2016年 55- 65- 35-514/669 8.2% 17.9% 23.2% 77% 81%
2017年 56- 56- 55-535/702 8.0% 16.0% 23.8% 85% 88%
2018年 18- 16- 23-174/231 7.8% 14.7% 24.7% 85% 83%
通算 420- 405- 398-3714/4937 8.5% 16.7% 24.8% 109% 91%
※2018年は4月15日まで

表1は年別成績。初年度産駒がデビューした07年こそ低調な数字にとどまったが、翌08年には単勝回収率364%、複勝回収率156%という驚きの数字を記録している。また、08年から13年までの6年間、11年を除くすべての年で100%以上の単勝回収率を残したのもすごい。14年以降に回収率を若干落としたのは、サウスヴィグラスの種牡馬としての実力が知れ渡ったためだろう。それでも回収率は、基準となる80%をほぼ毎年超えている。産駒の成績だけでなく、得意とするダート戦では馬券的な意味でも優秀な種牡馬であることは一目瞭然だ。

■表2 牡牝・年齢別成績(ダートのみ)

条件 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回率 複回率
性別 牡馬・セン馬 266- 243- 231-2337/3077 8.6% 16.5% 24.0% 104% 88%
牝馬 154- 162- 167-1377/1860 8.3% 17.0% 26.0% 117% 95%
年齢 2歳 63-  60-  62- 554/ 739 8.5% 16.6% 25.0% 112% 102%
3歳 195- 196- 174-1619/2184 8.9% 17.9% 25.9% 119% 97%
4歳 115-  97- 101- 750/1063 10.8% 19.9% 29.4% 116% 89%
5歳 36-  40-  38- 503/ 617 5.8% 12.3% 18.5% 91% 72%
6歳 10-   7-  19- 215/ 251 4.0% 6.8% 14.3% 60% 73%
7歳以上 1-   5-   4-  73/  83 1.2% 7.2% 12.0% 10% 47%

表2は牡牝別と年齢別の成績を示したもので、セン馬は牡馬に含めている。まず、牡牝の成績がほぼ互角というのは特筆事項のひとつ。パワーを要求されるダート戦では牡馬のほうが有利な面もあるが、牝馬でも十分に走れるというのは生産者にとってありがたいことだろう。年齢別のデータを見ると、2歳からしっかり走り、ピークを迎えるのは4歳。5歳以降は徐々に好走率が落ちており、これは標準的な傾向といってよさそうだ。

■表3 競馬場別成績(ダートのみ)

競馬場 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回率 複回率
札幌 18-  20-  17-  96/ 151 11.9% 25.2% 36.4% 100% 130%
函館 31-  25-  25- 151/ 232 13.4% 24.1% 34.9% 117% 103%
福島 31-  29-  27- 278/ 365 8.5% 16.4% 23.8% 85% 87%
新潟 37-  31-  32- 298/ 398 9.3% 17.1% 25.1% 56% 75%
東京 49-  46-  43- 572/ 710 6.9% 13.4% 19.4% 93% 79%
中山 72-  66-  89- 702/ 929 7.8% 14.9% 24.4% 98% 90%
中京 26-  42-  21- 237/ 326 8.0% 20.9% 27.3% 116% 112%
京都 61-  73-  59- 619/ 812 7.5% 16.5% 23.8% 92% 85%
阪神 65-  53-  65- 502/ 685 9.5% 17.2% 26.7% 215% 111%
小倉 30-  20-  20- 259/ 329 9.1% 15.2% 21.3% 82% 69%

表3は競馬場別成績。大半の競馬場で優秀な数字が出ており、なかでも札幌と函館は好走率、回収率ともに文句なし。北海道シリーズのダート戦では積極的に狙っていきたい。阪神は単勝回収率215%と非常に高いのが特徴。東京はやや好走率が落ちるものの、単勝回収率93%と水準を上回っており、人気薄でも侮れない。逆に、新潟は好走率のわりに回収率が低めで、上位人気を中心に狙っていきたい。

■表4 距離別成績(ダートのみ)

距離 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回率 複回率
1000m 70-  61-  48- 374/ 553 12.7% 23.7% 32.4% 121% 104%
1150m 20-  18-  17- 191/ 246 8.1% 15.4% 22.4% 78% 86%
1200m 186- 187- 190-1574/2137 8.7% 17.5% 26.3% 110% 92%
1300m 10-  11-  13- 137/ 171 5.8% 12.3% 19.9% 51% 92%
1400m 74-  74-  67- 697/ 912 8.1% 16.2% 23.6% 145% 94%
1600m 12-  11-   5- 132/ 160 7.5% 14.4% 17.5% 142% 83%
1700m 26-  23-  28- 273/ 350 7.4% 14.0% 22.0% 56% 76%
1800m 22-  20-  29- 307/ 378 5.8% 11.1% 18.8% 86% 80%
1900m 0-   0-   1-  10/  11 0.0% 0.0% 9.1% 0% 22%
2000m 0-   0-   0-   8/   8 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0%
2100m 0-   0-   0-   8/   8 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0%
2400m 0-   0-   0-   3/   3 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0%
2500m 0-   0-   0-   0/   0          
2600m 0-   0-   0-   0/   0          
1000m〜1300m 286- 277- 268-2276/3107 9.2% 18.1% 26.7% 107% 94%
1400m〜1600m 86-  85-  72- 829/1072 8.0% 16.0% 22.7% 145% 92%
1700m〜2000m 48-  43-  58- 598/ 747 6.4% 12.2% 19.9% 70% 77%
2100m〜2400m 0-   0-   0-  11/  11 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0%

表4は距離別成績。もっとも安定して走っているのは1000mで、回収率も優秀。もちろん、ダート戦で多く組まれる1200mや1400mでもしっかりと走っており、回収率も高い。1600mは好走率が若干落ちるものの回収率は高く、穴で注意。1700m以上になると距離が長く、やや数字が落ちる。特に1900m以上は苦戦必至といえそうだ。

■表5 距離別成績(ダートのみ・着別度数順)

コース 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回率 複回率
中山ダ1200m 63- 60- 79-589/791 8.0% 15.5% 25.5% 101% 88%
阪神ダ1200m 41- 34- 37-270/382 10.7% 19.6% 29.3% 216% 120%
京都ダ1200m 38- 48- 37-373/496 7.7% 17.3% 24.8% 94% 82%
新潟ダ1200m 33- 27- 26-257/343 9.6% 17.5% 25.1% 57% 71%
東京ダ1400m 27- 24- 25-295/371 7.3% 13.7% 20.5% 93% 73%
函館ダ1000m 25- 23- 18-115/181 13.8% 26.5% 36.5% 132% 107%
小倉ダ1000m 25- 16- 15-162/218 11.5% 18.8% 25.7% 106% 79%
京都ダ1400m 21- 24- 17-178/240 8.8% 18.8% 25.8% 104% 108%
福島ダ1150m 20- 18- 17-191/246 8.1% 15.4% 22.4% 78% 86%
阪神ダ1400m 18- 14- 21-161/214 8.4% 15.0% 24.8% 270% 115%

表3で競馬場別、表4で距離別の成績を確認したが、表5ではより具体的にコース別成績を見てみよう。着別度数順10位までに入ったコースでは、新潟ダート1200mの回収率がやや低いものの、ほかの9コースはいずれも優秀。これらのコースならどこでも狙っていけるが、特に安定して走っているのが函館ダート1000mだ。また、阪神ダート1200mと1400mはいずれも単勝回収率が200%を超えており、高配当にも期待できる。

■表6 枠番・馬番別成績(ダートのみ)

条件 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回率 複回率
枠番 1枠 38- 36- 39-389/502 7.6% 14.7% 22.5% 88% 82%
2枠 50- 45- 42-417/554 9.0% 17.1% 24.7% 82% 78%
3枠 45- 46- 41-508/640 7.0% 14.2% 20.6% 79% 88%
4枠 65- 49- 52-460/626 10.4% 18.2% 26.5% 167% 101%
5枠 45- 52- 56-429/582 7.7% 16.7% 26.3% 65% 81%
6枠 73- 55- 45-502/675 10.8% 19.0% 25.6% 202% 98%
7枠 58- 64- 59-497/678 8.6% 18.0% 26.7% 75% 95%
8枠 46- 58- 64-512/680 6.8% 15.3% 24.7% 100% 98%
馬番 1番 30-  27-  23- 258/ 338 8.9% 16.9% 23.7% 97% 76%
2番 23-  21-  29- 234/ 307 7.5% 14.3% 23.8% 69% 89%
3番 29-  24-  23- 257/ 333 8.7% 15.9% 22.8% 84% 73%
4番 31-  32-  28- 255/ 346 9.0% 18.2% 26.3% 96% 88%
5番 30-  24-  25- 262/ 341 8.8% 15.8% 23.2% 105% 97%
6番 23-  35-  30- 274/ 362 6.4% 16.0% 24.3% 79% 91%
7番 34-  27-  21- 225/ 307 11.1% 19.9% 26.7% 114% 83%
8番 41-  24-  35- 242/ 342 12.0% 19.0% 29.2% 186% 111%
9番 21-  34-  28- 226/ 309 6.8% 17.8% 26.9% 90% 92%
10番 30-  29-  24- 273/ 356 8.4% 16.6% 23.3% 70% 72%
11番 24-  30-  31- 238/ 323 7.4% 16.7% 26.3% 109% 103%
12番 30-  22-  19- 241/ 312 9.6% 16.7% 22.8% 241% 113%
13番 24-  14-  14- 216/ 268 9.0% 14.2% 19.4% 98% 61%
14番 26-  28-  25- 196/ 275 9.5% 19.6% 28.7% 86% 119%
15番 8-  23-  25- 179/ 235 3.4% 13.2% 23.8% 118% 102%
16番 16-  11-  18- 138/ 183 8.7% 14.8% 24.6% 107% 88%

表6は枠番別と馬番別の成績を示したもの。極端な内外の偏りは見られないが、若干ながら外枠のほうが得意といえるだろうか。とはいえ、内枠も苦手というわけではないので、割引の必要はない。馬番別では8番枠が特に優秀だ。

■表7 騎手別成績(ダートのみ・着別度数順)

騎手 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回率 複回率
内田博幸 18- 16- 16- 72/122 14.8% 27.9% 41.0% 114% 103%
幸英明 13- 11-  7- 85/116 11.2% 20.7% 26.7% 156% 82%
吉田隼人 13- 10-  3- 54/ 80 16.3% 28.8% 32.5% 160% 88%
小牧太 12- 14- 10- 47/ 83 14.5% 31.3% 43.4% 149% 144%
戸崎圭太 12-  9- 11- 44/ 76 15.8% 27.6% 42.1% 89% 86%
北村友一 12-  9- 11- 56/ 88 13.6% 23.9% 36.4% 156% 107%
石橋脩 11-  7-  8- 57/ 83 13.3% 21.7% 31.3% 195% 103%
武豊 11-  5-  3- 31/ 50 22.0% 32.0% 38.0% 87% 65%
岩田康誠 9-  8-  7- 31/ 55 16.4% 30.9% 43.6% 96% 89%
松山弘平 9-  6-  4- 41/ 60 15.0% 25.0% 31.7% 330% 138%

表7は騎手別成績。ダート戦でサウスヴィグラス産駒に騎乗して最多の18勝を挙げたのは内田博幸騎手。とてもバランスのとれた好成績を残しており、安心して狙うことができる。興味深いのは、着別度数上位10騎手で40%以上の複勝率を残したのが、前述の内田騎手のほか、小牧太騎手戸崎圭太騎手岩田康誠騎手と、すべて地方競馬出身のジョッキーということ。冒頭に記したように、サウスヴィグラスは地方競馬のリーディングサイアーに4度輝いている。そのことを思えば、地方出身騎手と好相性というのは、かなり納得しやすいのではないだろうか。

ライタープロフィール

出川塁(でがわ るい)

1977年熊本県生まれ。上智大学文学部卒業後、出版社2社で競馬専門誌、競馬書籍の編集に携わり、2007年からフリーライターに。「競馬最強の法則」「サラブレ」「優駿」などへ寄稿するほか、出版社勤務時代を含めて制作に関わった競馬書籍は多数。馬券は単勝派だが、焼肉はタン塩派というわけではない。メインの競馬のほか、サッカーでも密かに活動中。


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