毎年、多くの繋養種牡馬がリーディングサイヤー争いを繰り広げている社台スタリオンステーション。昨年まで11年連続で首位となっていたディープインパクトは、今年5月末時点では3位となっており、首位となっているのは昨年2位だったロードカナロアです。2位にはドゥラメンテと、キングカメハメハの後継種牡馬が上位を占めています。
ロードカナロア
徳武氏 「ロードカナロアは昨年もリーディングサイヤーになれるのではと思っていましたが、年末に向けて重賞級の大物を何頭も送り出してきた、ディープインパクトの底力に押し切られる形となりました」
そのディープインパクトですが、現3歳世代がラストクロップとは言え、血統登録数が6頭しかいないことを考えると、今年はロードカナロアにとって初めてのリーディングサイヤーが濃厚と言えます。
徳武氏 「ディープインパクトと並んで、これまでリーディングサイヤーでは上位を占めて来ていたハーツクライも、種付け頭数を制限した現2歳世代からは、一気に産駒を減らしています。その一方で、ロードカナロアは、この2頭の種牡馬に配合されてきたような、『名牝』と言われる繁殖牝馬に多く配合できたことが、世代を問わないどころか、今や世界の競馬も沸かしているような、産駒の活躍に繋がっていると言えます」
キタサンブラック
まさにリーディングサイヤーへの道が開けてきたロードカナロアですが、それの新たなライバルになる可能性があるのが、昨年の年度代表馬となったイクイノックスや、今年の皐月賞馬ソールオリエンスを送り出したキタサンブラックです。
徳武氏 「キタサンブラックは産駒の活躍を受ける形で、今シーズンはとても忙しく仕事をさせてもらっています。いまやクラシックホースを送り出せる種牡馬との評価ともなっていますし、ここまでの活躍を想像した方は、それほど多くは無かったのではないのでしょうか」
その中でも徳武さんはキタサンブラックに対して、『祖父にあたるサンデーサイレンスの拡大コピーしたような馬』など、この特集記事でも将来性を高く評価されていました。
徳武氏 「確かにキタサンブラック推しではありましたね(笑)。馬体の印象もさることながら、その馬体だけでなく、自身の能力の高さをしっかりと産駒に遺伝させている印象もあります。現2歳世代は54頭しか血統登録されていませんが、4歳世代と3歳世代がどこまで収得賞金を積み重ねてくれるか楽しみです」
キズナ
そしてリーディングサイヤー争いでは、父のディープインパクトと僅差の争いを繰り広げているのがキズナです。
徳武氏 「キズナの産駒たちは世代ごとの産駒数も安定していますし、ディープインパクトよりも馬体に恵まれた産駒たちは、芝やダート、そして短距離戦でも活躍を見せています。そして現2歳世代はロードカナロアと同様に「名牝」を多く集めた、「最強世代」となった感じがします」
セレクトセールに上場されたキズナの現2歳世代の産駒たちは、血統面も評価されたのか、一昨年の当歳セッション、昨年の1歳セッションでも高い評価を集めていました。
徳武氏 「父譲りと言える馬格の良さもまた、高評価に繋がった印象があります。パワーとスピードを両立させた産駒たちが、来年のクラシックに何頭出て来てくれるか楽しみです」
モーリス
そして、モーリスも世代を重ねるごとに安定した種牡馬成績を残すようになってきました。
徳武氏 「この種牡馬成績を受ける形で、スタリオン側としても安心して仕事を任せられる存在となりました。今ではシャトル先の南半球で繋養された産駒からもG1馬が誕生するなど、その活躍はワールドワイドに広がっています」
メジロ牝系の血統馬が世界の競馬を沸かしているのは、古くからの競馬ファンにとっても嬉しい限りですね。
徳武氏 「この牝系は日本だけでも、100年近く血を繋いできており、凄いことだと思います。産駒も芝の短距離から、ジャックドールのように芝2000メートルでもGT勝ち馬を送り出していますし、しかも、現役時の自身のように、産駒たちは古馬となってからどんどん強くなっているのも、種牡馬成績の上昇に繋がっています」
エピファネイア
エピファネイアは初年度産駒のセンセーショナルな活躍に目を奪われてしまいますが、現3歳世代は2歳時から多数の産駒が勝ち上がりを見せていました。
徳武氏 「現3歳世代からは、クラシックを沸かすような大物こそまだ誕生していませんが、秋競馬での活躍だけでなく、古馬となった時に重賞の常連となるような産駒が続々と出てきてくれると思います。エピファネイアもまた、この2歳世代は配合相手として「名牝」を集められただけに、再びクラシックホースが誕生してくれるかもしれません」
ライタープロフィール
北海道在住の“馬産地ライター”として、豊富な取材をもとに各種競馬雑誌で活躍中。