ストーリー
春のクラシック未出走で秋には菊花賞を制覇。まさに「大器晩成」で、その後さらなる飛躍を遂げた馬も少なくない。09年の菊花賞馬・スリーロールスも古馬になっての活躍が大いに期待された馬。しかし、志半ばにしてターフを去り、そんな姿をファンが目にすることができなかった馬でもあった。
スリーロールスのデビューは08年の10月。後に「伝説の新馬戦」と呼ばれるようになった京都芝1800m戦で、アンライバルド、リーチザクラウン、ブエナビスタに続く4着。当時は8番人気で、ファンの評価は上位3頭から大きく離されていた。
その後、3戦目の未勝利戦で初勝利こそ手にしたものの、オープンへ挑戦した中京2歳Sは5着。休養を挟み500万4着、重賞に挑んだ毎日杯は11番人気8着に敗退していた。しかし、はなみずき賞で上がり33秒4とこれまでにない末脚を繰り出して2着に好走。ここから徐々に「大器」ぶりを発揮するようになる。
デビュー8戦目は、5月8日の京都芝1800m・500万平場戦。前走で切れる脚を繰り出したスリーロールスは、直線入り口から10秒9の速いラップで馬なりのまま前をとらえる切れを発揮し、そのまま楽々2馬身半差の快勝。いよいよ本格化を思わせる走りを見せた。
短期の休養を挟み、初の古馬相手・弥彦特別は5着に敗れたスリーロールスだったが、続く阪神芝1800mの野分特別で再び爆発的な末脚を発揮。残り600mから11秒0−11秒2の厳しいラップにも楽に対応すると、残り300mで先頭に立って、ラスト1ハロンも11秒5。自身の上がり33秒6で、後続に4馬身差をつける圧勝劇となったのだ。
こうして、春後半から着実に力をつけてきたスリーロールスの次走は菊花賞。新馬戦で後塵を拝した皐月賞馬・アンライバルドや、日本ダービー2着のリーチザクラウンとの再対決だ。
迎えた菊花賞は淀の坂越え・3000m。父が菊花賞馬のダンスインザダークという血統からスタミナ勝負にも不安なし。しかし1000万条件を勝ったばかりで人気は新馬戦と同じ8番人気にとどまっていた。
道中は大逃げを打ったリーチザクラウンから離れた3〜4番手。じわじわ前との差を詰めつつ直線に向くと、すぐ横にいたアンライバルドを振り切り、残り200mではリーチザクラウンも交わし去って先頭へ。ここから外によれる若さを見せたものの、フォゲッタブルの追撃もハナ差で振り切って優勝。「伝説の新馬戦」から1年での大逆転劇だった。
続く有馬記念はレース中に浅屈腱不全断裂を発症して競走中止。大器のさらなる飛躍を見ることはかなわなくなってしまったが、幸いにして命にかかわる怪我とはならず、引退・種牡馬入り。過去のダンスインザダーク産駒の一流馬とはひと味違う切れを持ったスリーロールスが、果たしてどんな産駒を送り出すのか。古馬になって大活躍する子供の出現を楽しみに待ちたい。