【紫苑S×過去データ分析】混戦模様の今年は1周回ってオークス組!?
2025/9/4(木)

関東の秋華賞トライアル・紫苑Sは、今年から京成杯AHと入れ替わるかたちで中山開幕週の日曜開催となった。重賞に格上げされた16年以降の過去9年分のデータから、レースの傾向を読み取っていきたい。データ分析には、JRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用した。
上位人気が堅調な成績を残す
| キャリア | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回値 | 複回値 |
| 1番人気 | 3- 1- 2- 3/ 9 | 33.3% | 44.4% | 66.7% | 93 | 87 |
| 2番人気 | 3- 2- 0- 4/ 9 | 33.3% | 55.6% | 55.6% | 146 | 94 |
| 3番人気 | 0- 2- 1- 6/ 9 | 0.0% | 22.2% | 33.3% | 0 | 68 |
| 4番人気 | 1- 1- 1- 6/ 9 | 11.1% | 22.2% | 33.3% | 73 | 84 |
| 5番人気 | 2- 0- 1- 6/ 9 | 22.2% | 22.2% | 33.3% | 180 | 91 |
| 6番人気 | 0- 2- 1- 6/ 9 | 0.0% | 22.2% | 33.3% | 0 | 84 |
| 7番人気 | 0- 0- 1- 8/ 9 | 0.0% | 0.0% | 11.1% | 0 | 34 |
| 8番人気 | 0- 0- 0- 9/ 9 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0 | 0 |
| 9番人気 | 0- 0- 1- 8/ 9 | 0.0% | 0.0% | 11.1% | 0 | 88 |
| 10番人気〜 | 0- 1- 1- 62/ 64 | 0.0% | 1.6% | 3.1% | 0 | 20 |
(表1 人気別成績)
過去9年の1着馬の内訳を見ると、1番人気と2番人気が各3勝で、4番人気が1勝、5番人気が2勝となっている。また、1〜3着馬という括りでも1〜6番人気が27頭中23頭を占め、人気馬が順当に走っている印象だ。なお、1番人気については、G1出走歴を持っていれば【3.1.2.0】だが、G1未出走だと【0.0.0.3】と明暗が分かれていることも補足しておきたい。
1〜3着馬の半数以上は前走G1出走
| 前走クラス | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回値 | 複回値 |
| 未勝利 | 0- 0- 0- 6/ 6 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0 | 0 |
| 1勝 | 1- 1- 2-49/53 | 1.9% | 3.8% | 7.5% | 8 | 34 |
| 2勝 | 1- 1- 1-15/18 | 5.6% | 11.1% | 16.7% | 13 | 35 |
| 3勝 | 0- 0- 0- 2/ 2 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0 | 0 |
| オープン特別 | 0- 0- 0- 2/ 2 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0 | 0 |
| リステッド競走 | 0- 0- 0- 4/ 4 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0 | 0 |
| 中央G3 | 0- 1- 1- 3/ 5 | 0.0% | 20.0% | 40.0% | 0 | 160 |
| 中央G2 | 1- 0- 1- 8/10 | 10.0% | 10.0% | 20.0% | 42 | 38 |
| 中央G1 | 5- 6- 4-25/40 | 12.5% | 27.5% | 37.5% | 66 | 80 |
| 地方 | 1- 0- 0- 4/ 5 | 20.0% | 20.0% | 20.0% | 132 | 38 |
(表2 前走クラス別成績)
過去9年の紫苑S1〜3着馬27頭のうち、半数以上の15頭が前走でG1に出走しており、好走率も高い。出走例が最多なのは前走1勝クラス。ただ、複勝率は1割に満たず、しっかり絞り込む必要がある。そのほか、前走G2、前走G3、前走2勝クラスにも複数の好走例があるが、今年の登録馬には該当する馬がいなかった。
前走オークス出走馬は中山と距離の実績に注目
| 実績 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回値 | 複回値 | |
| 中山実績 | 出走して1着あり | 4- 4- 3-12/23 | 17.4% | 34.8% | 47.8% | 86 | 98 |
| 出走して1着なし | 0- 0- 0- 5/ 5 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0 | 0 | |
| 未出走 | 0- 2- 1- 5/ 8 | 0.0% | 25.0% | 37.5% | 0 | 88 | |
| 距離実績 | 芝1600m1着 | 3- 3- 2- 7/15 | 20.0% | 40.0% | 53.3% | 112 | 99 |
| 芝1800m1着 | 2- 3- 4- 9/18 | 11.1% | 27.8% | 50.0% | 32 | 107 | |
| 芝2000m1着 | 0- 2- 1- 8/11 | 0.0% | 18.2% | 27.3% | 0 | 81 | |
| 芝2200m1着 | 0- 0- 0- 2/ 2 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0 | 0 | |
(表3 前走オークス出走馬に関するデータ)
前走G1出走の紫苑S1〜3着馬15頭中14頭は前走オークス(出走取消を含む)。今年も前走オークスという馬が2頭登録している。そこで、前走オークスに絞ったデータを紹介する。この場合、中山への出走歴がありながら1着実績がなかった5頭はすべて4着以下に終わっており、中山未出走馬は別として、出走歴があれば1着実績が必須だ。
距離実績の傾向も興味深い。前走オークス出走馬の場合、紫苑Sと同距離の芝2000mの1着実績より、芝1600mや芝1800mの1着実績のほうが結果につながりやすいのだ。昨年コースレコードが出たように、紫苑Sではしばしば速いタイムが計時されることも、距離に関する実績別成績と関係しているのかもしれない。
前走1勝クラスは3つの条件をチェック
| 前走 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回値 | 複回値 | |
| 前走着順 | 前走1着 | 1- 1- 1-33/36 | 2.8% | 5.6% | 8.3% | 12 | 28 |
| 前走2着〜 | 0- 0- 1-16/17 | 0.0% | 0.0% | 5.9% | 0 | 47 | |
| 前走距離 | 芝2000m | 1- 1- 1-10/13 | 7.7% | 15.4% | 23.1% | 34 | 78 |
| 芝2000m以外 | 0- 0- 1-39/40 | 0.0% | 0.0% | 2.5% | 0 | 20 | |
| 出走間隔 | 〜中3週 | 0- 0- 1-15/16 | 0.0% | 0.0% | 6.3% | 0 | 50 |
| 中4〜8週 | 1- 1- 1-14/17 | 5.9% | 11.8% | 17.6% | 26 | 60 | |
| 中9週〜 | 0- 0- 0-20/20 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0 | 0 | |
(表4 前走1勝クラス出走馬に関するデータ)
前走1勝クラス出走馬に関しては、表4の3つのデータをチェックしたい。それぞれ「前走1着」「前走芝2000m」「前走から中4〜8週」のほうが好走しており、3つの条件をすべて満たせば【1.1.1.0】と凡走がない。具体的には、16年2着のヴィブロス、19年1着のパッシングスルー、21年3着のミスフィガロが好走した3頭だ。23年に「前走3着」「前走芝1800m」「前走から中2週」で3着に入ったシランケドの例もあるが、確率としては3条件を満たす馬のほうが明確に優位だ。
キャリア2、3戦だと好走例がない
| キャリア | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回値 | 複回値 |
| 2戦 | 0- 0- 0- 4/ 4 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0 | 0 |
| 3戦 | 0- 0- 0-10/10 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0 | 0 |
| 4戦 | 4- 2- 2-16/24 | 16.7% | 25.0% | 33.3% | 76 | 90 |
| 5戦 | 1- 4- 3-21/29 | 3.4% | 17.2% | 27.6% | 15 | 74 |
| 6戦 | 1- 0- 2-23/26 | 3.8% | 3.8% | 11.5% | 25 | 39 |
| 7戦 | 1- 2- 0-18/21 | 4.8% | 14.3% | 14.3% | 45 | 31 |
| 8戦 | 1- 0- 2- 8/11 | 9.1% | 9.1% | 27.3% | 25 | 54 |
| 9戦 | 0- 1- 0- 6/ 7 | 0.0% | 14.3% | 14.3% | 0 | 42 |
| 10戦〜 | 1- 0- 0 12/13 | 7.7% | 7.7% | 7.7% | 19 | 9 |
(表5 キャリア別成績)
キャリア別成績では、過去9年で4勝の「キャリア4戦」がベスト。「キャリア5戦」も計8頭の好走馬を出しており、これに次ぐ。しかし、これらより実戦経験が少ない「キャリア2〜3戦」は合わせて【0.0.0.14】と好走例がない。表5を見る限り、キャリアが多いほど有利とまでは言えないが、キャリア3戦以下だと経験不足の可能性はある。
【結論】
1周回ってオークス組のリンクスティップ
今年の紫苑Sは登録15頭で、全馬が出走可能。このうち前走G1出走馬は2頭で、いずれもオークス以来となる。ところが、該当するリンクスティップとサヴォンリンナは芝2000mの勝ち鞍しかなく、表3のデータからすると不安も残る。ただし、桜花賞3着のリンクスティップに関しては、芝1600mの距離実績がまったくないわけではないことを付記しておく。なお、中山は2頭とも未出走である。
前走1勝クラス出走馬は11頭が登録も、「前走1着」「前走芝2000m」「前走から中4〜8週」の3条件をすべて満たす馬は見当たらない。2条件を満たすのはサタデーサンライズ、ダノンフェアレディ、ロートホルンで、今回のデータ分析から挙げるとすればこの3頭か。2戦2勝のラブリージャブリー、3戦2勝のジョスランなどはポテンシャルを秘めていそうだが、どちらも満たすのは1条件だけで、表5のデータからキャリア不足の懸念もある。
以上の状況を踏まえると、オークス組、特にリンクスティップの実績を改めて評価せざるをえないか。また、出走例が少なく傾向を読み取りづらい前走3勝クラス出走馬も、今年のメンバー構成なら格上と言え、テリオスララにも注目したい。
ライタープロフィール

出川塁(でがわ るい)
1977年熊本県生まれ。上智大学文学部卒業後、出版社2社で競馬専門誌、競馬書籍の編集に携わり、2007年からフリーライターに。「競馬最強の法則」「サラブレ」「優駿」などへ寄稿するほか、出版社勤務時代を含めて制作に関わった競馬書籍は多数。馬券は単勝派だが、焼肉はタン塩派というわけではない。メインの競馬のほか、サッカーでも密かに活動中。


