絶対王者イクイノックスに迫れる馬は?
2023/11/23(木)
今週日曜日に行われるジャパンCは、G1・5連勝中のイクイノックス「一強」という雰囲気だ。しかし、他にも実績十分で楽しみな馬が揃った。ジャパンCの過去傾向をJRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用して分析してみたい。
天皇賞(秋)レコード勝ち後は着順を落とす?
年 | 馬名 | 性別 | 年齢 | 走破タイム | 次走成績 |
23年 | イクイノックス | 牡 | 4 | 1552 | ジャパンC?着 |
11年 | トーセンジョーダン | 牡 | 5 | 1561 | ジャパンC2着 |
08年 | ウオッカ | 牝 | 4 | 1572 | ジャパンC3着 |
03年 | シンボリクリスエス | 牡 | 4 | 1580 | ジャパンC3着 |
(表1 天皇賞・秋をコースレコードで勝利した馬の次走成績、2000年以降)
イクイノックスが前走天皇賞(秋)をレコードタイムで勝利したので、それにまつわるデータを調べた。2000年から2022年の間、天皇賞(秋)をコースレコードで勝利した馬は3頭いて、いずれも次走はジャパンCに出走した。しかし、03年シンボリクリスエスは3着(1番人気)、08年ウオッカは3着(2番人気)、11年トーセンジョーダンは2着(6番人気)という結果に終わった。トーセンジョーダンの場合は人気よりも走ったので悪い結果ではないのだが、一応3頭ともジャパンCでは天皇賞(秋)よりも着順を落としたことになる。
それでも天皇賞(秋)4着以内馬が有力
前入線順位 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回値 | 複回値 |
前走1着 | 3- 2- 7- 2/ 14 | 21.4% | 35.7% | 85.7% | 45 | 147 |
前走2着 | 2- 2- 1- 9/ 14 | 14.3% | 28.6% | 35.7% | 26 | 50 |
前走3着 | 1- 2- 1- 6/ 10 | 10.0% | 30.0% | 40.0% | 36 | 57 |
前走4着 | 2- 2- 0- 7/ 11 | 18.2% | 36.4% | 36.4% | 114 | 63 |
前走5着 | 0- 1- 1- 6/ 8 | 0.0% | 12.5% | 25.0% | 0 | 38 |
前走6〜9着 | 3- 1- 1- 27/ 32 | 9.4% | 12.5% | 15.6% | 77 | 80 |
前走10着〜 | 0- 1- 2- 29/ 32 | 0.0% | 3.1% | 9.4% | 0 | 54 |
(表2 前走天皇賞・秋組の着順別成績、00年以降)
00年以降のジャパンCにおける前走天皇賞(秋)組の着順別成績を調べたところ、前走1着が勝率21.4%、連対率35.7%、複勝率85.7%と非常に優秀だった。前走4着は連対率36.4%、単勝回収率114%という部分において前走1着を上回っている。前走2着や前走3着の連対率や複勝率も悪くはないので、基本的には前走天皇賞(秋)組は4着以内の馬が有力と言えるだろう。
前走秋華賞1着馬もチャンスあり
前入線順位 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回値 | 複回値 |
前走1着 | 2- 0- 2- 1/ 5 | 40.0% | 40.0% | 80.0% | 160 | 132 |
前走2着 | 0- 1- 0- 0/ 1 | 0.0% | 100.0% | 100.0% | 0 | 280 |
前走3着 | 0- 0- 0- 0/ 0 | |||||
前走4着 | 0- 0- 0- 0/ 0 | |||||
前走5着 | 0- 0- 0- 0/ 0 | |||||
前走6〜9着 | 0- 0- 0- 0/ 0 | |||||
前走10着〜 | 0- 0- 0- 2/ 2 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0 | 0 |
(表3 前走秋華賞組の着順別成績、00年以降)
前走秋華賞1着馬のジャパンC成績(00年以降)は【2.0.2.1】で勝率・連対率40.0%、複勝率80.0%でとても優秀。さらに牝馬三冠競走すべてで連対した馬に限ると【2.0.2.0】で複勝率は100.0%となる。好走したのは09年レッドディザイア(3着)、12年ジェンティルドンナ(1着)、18年アーモンドアイ(1着)、20年デアリングタクト(3着)。こうした実績馬であればジャパンCでも高確率で好勝負になり、勝つチャンスも十分ある。
前走天皇賞(秋)6着以下でも軽視はできない
年 | 馬名 | 性別 | 年齢 | 人気 | 着順 | 前走レース名 | 前人 | 前着 |
19年 | スワーヴリチャード | 牡 | 5 | 3 | 1 | 天皇賞秋G1 | 5 | 7 |
18年 | スワーヴリチャード | 牡 | 4 | 2 | 3 | 天皇賞秋G1 | 1 | 10 |
15年 | ラストインパクト | 牡 | 5 | 7 | 2 | 天皇賞秋G1 | 9 | 12 |
14年 | エピファネイア | 牡 | 4 | 4 | 1 | 天皇賞秋G1 | 4 | 6 |
13年 | トーセンジョーダン | 牡 | 7 | 11 | 3 | 天皇賞秋G1 | 10 | 11 |
11年 | ジャガーメイル | 牡 | 7 | 14 | 3 | 天皇賞秋G1 | 9 | 9 |
07年 | アドマイヤムーン | 牡 | 4 | 5 | 1 | 天皇賞秋G1 | 2 | 6 |
05年 | ハーツクライ | 牡 | 4 | 2 | 2 | 天皇賞秋G1 | 2 | 6 |
(表4 前走天皇賞・秋6着以下から巻き返した馬、00年以降)
先ほどの表2からは前走天皇賞(秋)4着以内が有力という傾向が読み取れたが、6着以下の馬も軽視はできない。例えば、前走6〜9着は勝率9.4%、連対率12.5%、複勝率15.6%をマーク。前走10着以下の馬も含めれば、合計8頭(表4参照)がジャパンCで巻き返した。その内、4歳馬は05年ハーツクライ、07年アドマイヤムーン、14年エピファネイア、18年スワーヴリチャードの4頭。いずれも過去に芝2200〜2400mのG1で連対した実績があった。
【結論】
牝馬三冠のリバティアイランドが金星に挑む
2023/10/15 京都 11R 秋華賞(G1)
1着 6番 リバティアイランド(Photo by Shuhei Okada)
国内外のG1・5連勝中で実力・実績断然のイクイノックスにやはり注目が集まるところ。これまでのパフォーマンスを考えれば東京芝2400mで馬券から消えることは相当考えづらい。ただ、中3週という詰まったローテーションで競馬をするのは今回が初めて。表1で示した気になるデータもあるので、他馬にも勝機はあるかもしれない。
ここは3歳牝馬リバティアイランドに期待してみたい。同世代の牝馬が相手とはいえ、やはり牝馬三冠達成は偉業。13年のジャパンCで、3歳牝馬ジェンティルドンナが当時4歳で古馬最強のオルフェーヴルに勝った点も、リバティアイランドを後押しする材料になっている。斤量(古馬・牡馬と4キロ差)と、ゆったりとしたローテーション(天皇賞・秋よりも2週長い)がアドバンテージになりうるので、イクイノックスが相手でもかなり迫れる可能性があるとみたい。
イクイノックス以外の古馬で注目したいのは、前走天皇賞(秋)組のドウデュース。2番人気で7着と案外な競馬になってしまったが、この一戦で見限るわけにはいかない。日本ダービー制覇の実績がある4歳牡馬の底力に期待したい。
ライタープロフィール
小田原智大(おだわら ともひろ)
1975年6月、東京生まれ。早稲田大学商学部卒業後、業界紙記者を経て、(株)レイヤード入社。ライター&エディターとして活躍。JRA-VANデータの配信初期から、いち早くデータ競馬の有効性に着目する。05年5月より「競馬 最強の法則WEB」にて、障害戦を除く全重賞レースの傾向と対策、予想を展開。「オッズパーク ダートグレードデータ作戦」では、地方競馬の重賞の攻略にも取り組んでいる。仕事の関係でなかなか競馬場には行けなくなったが、年に1、2回行くローカル遠征が楽しみ。