秋の牝馬頂上決戦・エリザベス女王杯を分析する
2023/11/9(木)
今週はエリザベス女王杯。1995年までは現在の秋華賞に相当するレースとして行われており、メジロラモーヌやヒシアマゾンなどが優勝。3歳(旧表記4歳)・古馬混合戦となった1996年以降ではメジロドーベルやダイワスカーレット、リスグラシュー、ラッキーライラックといった名牝が優勝馬に名を連ねている。今年は4年ぶりに本来の京都に戻っての開催になるが、阪神で行われた近3年も含む過去10年の傾向をJRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用して分析したい。
好走馬の大半は前走G1・G2
前走クラス | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 |
条件戦 | 0-1-0-23/24 | 0.0% | 4.2% | 4.2% |
OP特別 | 0-0-0-18/18 | 0.0% | 0.0% | 0.0% |
中央G3 | 0-0-1-11/12 | 0.0% | 0.0% | 8.3% |
中央G2 | 8-7-4-65/84 | 9.5% | 17.9% | 22.6% |
中央G1 | 2-3-4-27/36 | 5.6% | 13.9% | 25.0% |
海外 | 0-0-0-1/1 | 0.0% | 0.0% | 0.0% |
(表1 前走クラス別成績)
過去10年の前走クラス別成績を調べると、3着以内の好走馬30頭中19頭は前走で中央G2に、9頭は中央G1に出走していた。その他の好走馬は2頭しかいないため、前走がG3以下だった馬は大幅な割引が必要になる。また、G2でも京都大賞典組は【0.0.0.13】の不振だ。
3、4歳馬が中心
年齢 | 着別度数 | 連対率 | 複勝率 | 前走中央G1 | 前走中央G2 |
3歳 | 2-4-2-30/38 | 15.8% | 21.1% | 2-3-2-25 | 0-0-0-0 |
4歳 | 7-3-6-44/60 | 16.7% | 26.7% | 0-0-1-1 | 7-3-4-22 |
5歳 | 1-3-1-54/59 | 6.8% | 8.5% | 0-0-1-1 | 1-3-0-33 |
6歳 | 0-1-0-13/14 | 7.1% | 7.1% | 0-0-0-0 | 0-1-0-7 |
7歳以上 | 0-0-0-4/4 | 0.0% | 0.0% | 0-0-0-0 | 0-0-0-3 |
(表2 年齢別成績)
年齢別では4歳が【7.3.6.44】で複勝率26.7%、3歳が【2.4.2.30】で同21.1%をマーク。4歳の好走馬16頭中14頭は前走で中央G2に、3歳の好走馬8頭中7頭は中央G1に出走していた。5歳以上は劣勢だ。
4歳・前走G2組は前走7着以内馬
前走着順 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 |
1着 | 2-1-1-2/6 | 33.3% | 50.0% | 66.7% |
2着 | 2-1-0-5/8 | 25.0% | 37.5% | 37.5% |
3着 | 1-0-1-2/4 | 25.0% | 25.0% | 50.0% |
4〜5着 | 1-0-1-2/4 | 25.0% | 25.0% | 50.0% |
6〜7着 | 1-1-1-2/5 | 20.0% | 40.0% | 60.0% |
8着以下 | 0-0-0-9/9 | 0.0% | 0.0% | 0.0% |
(表3 4歳・前走G2組の前走着順別成績)
前走でG2に出走していた4歳馬について前走着順別の成績をみると、好走馬14頭はすべて前走7着以内だった。この「4歳」「前走G2」「前走7着以内」の馬は【7.3.4.13】で複勝率は51.9%になる。なお、4歳の好走馬で前走がG2以外だったミッキークイーン(2016年3着、前走ヴィクトリアM2着)は、ここまでの成績が【4.5.0.1】で馬券圏外はジャパンC8着のみ、クラヴェル(2021年3着、前走新潟記念3着)は重賞で【0.1.2.0】と4着以下がなかった。
3歳は秋華賞組か前走1着馬
年 | 馬名 | 女王杯 | 前走 | 主な実績 | |||
人気 | 着順 | レース | 人気 | 着順 | |||
2013 | メイショウマンボ | 2 | 1 | 秋華賞 | 3 | 1 | ←、オークス |
ラキシス | 6 | 2 | 鳴滝特別 | 1 | 1 | … | |
2014 | ヌーヴォレコルト | 1 | 2 | 秋華賞 | 1 | 2 | オークス |
2015 | タッチングスピーチ | 4 | 3 | 秋華賞 | 2 | 6 | ローズS |
2017 | モズカッチャン | 5 | 1 | 秋華賞 | 5 | 3 | フローラS |
2019 | ラヴズオンリーユー | 1 | 3 | オークス | 1 | 1 | ← |
2021 | ステラリア | 7 | 2 | 秋華賞 | 9 | 6 | 忘れな草賞 |
2022 | ライラック | 12 | 2 | 秋華賞 | 6 | 10 | フェアリーS |
(表4 3歳の好走馬)
3歳の好走馬は表4の8頭で、うち6頭は秋華賞組。一昨年2着のステラリアが秋華賞6着から、昨年2着のライラックが同10着から巻き返しているように秋華賞での着順は気にならない。ただ、秋華賞組というだけでは【2.3.1.24】複勝率20.0%止まり。秋華賞前までにオープン・重賞勝ちの実績がある馬を狙いたい。
残る2頭は前走条件戦1着のラキシスと、オークス1着以来だったラヴズオンリーユー。エリザベス女王杯が古馬に開放された1996年以降、前走が秋華賞以外で2着以下だった3歳馬は【0.0.0.8】(外国馬除く)に終わっている。
5歳以上なら2200m以上のG1連対実績馬
年 | 馬名 | 女王杯 | 前走 | 主な実績 | ||||
人気 | 着順 | レース | 人気 | 着順 | 女王杯 | その他 | ||
2017 | ミッキークイーン | 3 | 3 | 宝塚記念 | 4 | 3 | 前年3着 | オークス |
2018 | クロコスミア | 9 | 2 | 府中牝馬S | 6 | 5 | 前年2着 | 府中牝馬S |
2019 | クロコスミア | 7 | 2 | 府中牝馬S | 3 | 5 | 2年連続2着 | 府中牝馬S |
2020 | ラッキーライラック | 1 | 1 | 札幌記念 | 1 | 3 | 前年1着 | 大阪杯 |
サラキア | 5 | 2 | 府中牝馬S | 7 | 1 | (前年6着) | 府中牝馬S | |
2022 | ウインマリリン | 5 | 2 | 札幌記念 | 5 | 3 | (前々年4着) | オークス2着 |
(表5 5歳以上の好走馬)
5歳以上の好走馬は6頭。すべて前走でG1またはG2に出走して5着以内だったが、「5歳以上」+「前走G1またはG2」+「前走5着以内」で絞っても【1.4.1.23】複勝率20.7%と好走確率はさほど高くならない。この条件に加え芝2200m以上のG1連対実績(6頭中5頭)を持つ馬から候補を探りたい。
【結論】
4歳馬ライラック、ルージュエヴァイユが有力
2022/1/10 中山 11R フェアリーステークス(G3)
1着 8番 ライラック(Photo by JRA)
エリザベス女王杯は前走でG2に出走し7着以内だった4歳馬の好走確率が高い(表1〜3)。昨年の本競走2着馬(同着)ライラックはその後、牡馬相手に3戦して4、9、17着だったが、牝馬同士に戻った前走の府中牝馬Sで3着。今年も上位争いを期待できそうだ。また、その府中牝馬Sで同馬に先着(2着)した同じ4歳のルージュエヴァイユも有力候補になる。
3頭の登録がある3歳馬ではハーパーが筆頭格。秋華賞組かつ4走前のクイーンCで重賞勝ちを飾っている点がプラス材料だ(表4)。なお、5歳以上で表5の条件をクリアする馬は不在だが、あえて1頭挙げれば昨年の覇者・ジェラルディーナだろうか。前走オールカマーは表5の好走条件「前走5着以内」に0.1秒及ばず6着も、5歳以上でG1連対実績を持つのは本馬1頭だ。
ライタープロフィール
浅田知広(あさだ ともひろ)
1970年12月、埼玉県生まれ。立命館大学文学部中退後、夕刊紙レース部のアルバイト、競馬データベース会社を経て、現在はフリー。パソコンが広く普及する以前から、パソコン通信でデータ手入力方式の競馬予想ソフトを公開するなど、競馬のみならずPCやネットワークにも精通。その知識を活かし、Webや雑誌で競馬ライターとして活躍するかたわら、ネットワークの専門誌にも連載を持つ。