スプリンターズSの前哨戦となるセントウルSを展望する
2023/9/7(木)
2022/9/11 中京 11R セントウルステークス(G2)
1着 5番 メイケイエール(Photo by JRA)
セントウルSといえばサマースプリントシリーズ最終戦だが、今年はすでに優勝馬が確定済み。とはいえ、スプリンターズSの前哨戦としての重要性に変わりはない。4年ぶりに本来の阪神芝1200mで開催される一戦を、過去10年のデータから分析する。データの分析には、JRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用した。
5歳以下の関西馬が有望
年齢・所属 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回率 | 複回率 |
5歳以下 | 10- 7- 5-56/ 78 | 12.8% | 21.8% | 28.2% | 100% | 56% |
6歳以上 | 0- 3- 5-60/ 68 | 0.0% | 4.4% | 11.8% | 0% | 52% |
関東馬 | 1- 1- 0-24/ 26 | 3.8% | 7.7% | 7.7% | 10% | 23% |
関西馬 | 9- 9-10-92/120 | 7.5% | 15.0% | 23.3% | 62% | 61% |
5歳以下・関西馬 | 9- 7- 5-46/ 67 | 13.4% | 23.9% | 31.3% | 112% | 64% |
(表1 年齢・所属別成績)
過去10年の1着馬は3〜5歳から出ており、6歳以上の勝利はない。連対率や複勝率に関しても、5歳以下と6歳以上で大きな差がついている。また、所属の東西でも成績差が見られ、1〜3着馬の大半を関西馬が占める。
出走間隔は3カ月以上あけたい
出走間隔 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回率 | 複回率 |
中12週以内 | 4- 8- 5-92/109 | 3.7% | 11.0% | 15.6% | 16% | 46% |
中13週以上 | 6- 2- 5-24/ 37 | 16.2% | 21.6% | 35.1% | 162% | 79% |
(表2 出走間隔別成績)
前走からの出走間隔もチェックしたい。中12週以内と中13週以上に分けたとき、勝率〜複勝回収率の5項目すべてで中13週以上が優位に立っている。言い換えると、夏競馬には参戦しなかった馬がセントウルSでは結果を残しやすいようだ。
前走芝1600m出走馬が好成績
前走距離 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回率 | 複回率 |
芝1000m | 1- 2- 0- 6/ 9 | 11.1% | 33.3% | 33.3% | 48% | 83% |
芝1200m | 5- 6- 7-80/98 | 5.1% | 11.2% | 18.4% | 19% | 44% |
芝1400m | 1- 0- 1-11/13 | 7.7% | 7.7% | 15.4% | 13% | 26% |
芝1600m | 3- 2- 2-12/19 | 15.8% | 26.3% | 36.8% | 278% | 134% |
(表3 前走距離別成績)
前走距離別成績(前走の対象は芝のみ)も面白い傾向が出ている。最多出走は同距離の前走芝1200mだが、成績としてはあまり見るべきところはない。200m短縮の前走芝1400mもイマイチ。ところが、400m短縮の前走芝1600mは優秀な数字がズラリと並ぶ。また、200m延長の前走芝1000mも好走率がなかなか高く、これも侮れない存在となりそうだ。
前走G3出走馬は前走着順に注目
前走クラス | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回率 | 複回率 |
3勝 | 0- 0- 0- 3/ 3 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% |
オープン特別 | 0- 0- 1-24/25 | 0.0% | 0.0% | 4.0% | 0% | 10% |
リステッド競走 | 0- 0- 1- 4/ 5 | 0.0% | 0.0% | 20.0% | 0% | 46% |
G3 | 4- 8- 6-70/88 | 4.5% | 13.6% | 20.5% | 20% | 60% |
G2 | 2- 0- 0- 1/ 3 | 66.7% | 66.7% | 66.7% | 1656% | 373% |
G1 | 3- 2- 2-10/17 | 17.6% | 29.4% | 41.2% | 41% | 54% |
前走G3・1〜3着 | 3- 5- 1- 9/18 | 16.7% | 44.4% | 50.0% | 82% | 102% |
前走G3・4着以下 | 1- 3- 5-61/70 | 1.4% | 5.7% | 12.9% | 4% | 49% |
(表4 前走クラス別成績)
前走クラス別成績で明らかなのは、前走G1やG2から臨んだ馬が高い好走率を残していること。終わってみれば格がモノをいった、というパターンは想定しておきたい。出走例が圧倒的に多いのは前走G3。この場合、前走のG3で1〜3着に入っていれば【3.5.1.9】とセントウルSでも有望だ。そして、前走が重賞以外の場合、過去10年で3着2回があるだけで、苦戦の傾向が見られる。
急坂の芝1200mで連対率60%以上
連対率 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回率 | 複回率 |
60%以上 | 5- 4- 1-14/24 | 20.8% | 37.5% | 41.7% | 62% | 65% |
50%以上60%未満 | 1- 1- 3-13/18 | 5.6% | 11.1% | 27.8% | 43% | 68% |
50%未満 | 2- 2- 6-73/83 | 2.4% | 4.8% | 12.0% | 5% | 34% |
未出走 | 2- 3- 0-16/21 | 9.5% | 23.8% | 23.8% | 241% | 110% |
(表5 阪神・中京・中山の芝1200m実績別成績)
近3年は中京開催となったが、直線に急坂があるレイアウトは阪神と共通する。そこで、中山を含めた「直線急坂の芝1200m実績」を調べてみた。上表の通り、直線急坂の芝1200mで連対率60%以上だと勝率20.8%、複勝率41.7%の好成績。対して、連対率50%未満だと勝率2.4%、複勝率12.0%と大差がついている。また、この条件に未出走だった馬の回収率が思いのほか高く、激走するケースに注意したい。ただし、急坂の有無を問わず芝1200mそのものに未出走だと【0.1.0.8】と苦戦の傾向が否めない。
【結論】
急坂の芝1200mで3戦3勝のビッグシーザー
2023/2/26 阪神 10R マーガレットステークス
1着 4番 ビッグシーザー(Photo by JRA)
基本的には「5歳以下・関西馬」を重視したいセントウルS。今年は登録馬16頭中11頭が該当している。
その11頭のうち、急坂(阪神・中京・中山)の芝1200mで連対率60%以上を記録しているのは、ジャングロ、ビッグシーザー、ピクシーナイトの3頭。特にビッグシーザーは3戦3勝、ジャングロも2戦2勝と、急坂の芝1200mで無敗を誇る。また、ビッグシーザーは「前走G3で1〜3着」「中13週以上」、ピクシーナイトは「前走G2」「中13週以上」、ジャングロも「前走芝1000m」と、ほかにも好走率の高いデータに合致。3頭とも有望な存在となりそうだ。
前走G1出走のアグリ、ドルチェモアの2頭は侮れない実力馬で、ともに「中13週以上」にも該当する。ただし、アグリは芝1200m(うち急坂1回)で3走してすべて4着以下。ドルチェモアは、好成績の前走芝1600mではあるのだが、過去10年で【0.1.0.8】の芝1200m未出走馬である。同様にホウオウアマゾンも芝1200m未出走で、アグリを含めた3頭は芝1200mに対応できるかどうかだろう。最後にもう1頭、スマートクラージュは年齢や出走間隔が割引ながら、前走G3で3着という点から押さえてはおきたい。
ライタープロフィール
出川塁(でがわ るい)
1977年熊本県生まれ。上智大学文学部卒業後、出版社2社で競馬専門誌、競馬書籍の編集に携わり、2007年からフリーライターに。「競馬最強の法則」「サラブレ」「優駿」などへ寄稿するほか、出版社勤務時代を含めて制作に関わった競馬書籍は多数。馬券は単勝派だが、焼肉はタン塩派というわけではない。メインの競馬のほか、サッカーでも密かに活動中。