データde出〜た
第1678回 AJCCの注目点は4歳馬と母父ディープインパクト
2023/1/19(木)
2022/11/5 東京10R ノベンバーステークス
1着 4番 エピファニー(Photo by JRA)
今週は日曜日に中山競馬場でアメリカジョッキークラブカップ(AJCC)が行われる。いつものように過去10年のデータを分析してもいいのだが、今回は切り口を変えてみたい。2023年になって行われた重賞の結果を受け、レースの傾向・予想の参考になるようなポイントがあるかを考えてみた。データの分析にはJRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用した。
■表1 2023年に中京で行われた平地重賞の上位馬(1/15まで)
レース名 | 着順 | 馬名 | 性別 | 年齢 | 人気 | 走破タイム | 着差 | 2角 | 3角 | 4角 | 上り3F |
日経新春HG2 | 1 | ヴェルトライゼンデ | 牡 | 6 | 2 | 2142 | -0.1 | 5 | 5 | 4 | 35.0 |
日経新春HG2 | 2 | キングオブドラゴン | 牡 | 6 | 10 | 2143 | 0.1 | 2 | 2 | 2 | 35.3 |
日経新春HG2 | 3 | プラダリア | 牡 | 4 | 4 | 2143 | 0.1 | 5 | 8 | 10 | 34.8 |
愛知杯HG3 | 1 | アートハウス | 牝 | 4 | 1 | 2031 | -0.3 | 3 | 3 | 3 | 33.9 |
愛知杯HG3 | 2 | アイコンテーラー | 牝 | 5 | 7 | 2034 | 0.3 | 2 | 2 | 2 | 34.5 |
愛知杯HG3 | 3 | マリアエレーナ | 牝 | 5 | 2 | 2036 | 0.5 | 3 | 3 | 3 | 34.4 |
シンザンG3 | 1 | ライトクオンタム | 牝 | 3 | 2 | 1337 | -0.1 | 5 | 5 | 5 | 34.6 |
シンザンG3 | 2 | ペースセッティング | 牡 | 3 | 3 | 1338 | 0.1 | 1 | 1 | 1 | 35.7 |
シンザンG3 | 3 | トーホウガレオン | 牡 | 3 | 4 | 1340 | 0.3 | 4 | 3 | 3 | 35.2 |
京都金杯HG3 | 1 | イルーシヴパンサー | 牡 | 5 | 5 | 1327 | -0.1 | 9 | 9 | 7 | 34.4 |
京都金杯HG3 | 2 | エアロロノア | 牡 | 6 | 4 | 1328 | 0.1 | 8 | 6 | 5 | 34.7 |
京都金杯HG3 | 3 | プレサージュリフト | 牝 | 4 | 2 | 1329 | 0.2 | 4 | 3 | 3 | 35.0 |
中山競馬場の話をする前に中京競馬場の平地重賞の結果(表1参照)をおさらいしておきたい。2023年になって京都金杯、シンザン記念、愛知杯、日経新春杯と4つのレースが行われた。まず気づくポイントは4歳馬がよく活躍していること。京都金杯はプレサージュリフトが3着、愛知杯はアートハウスが1着、日経新春杯はプラダリアが3着と、3歳限定戦のシンザン記念を除いたすべてのレースで4歳馬が馬券になっている。22年は秋以降の重賞で3歳馬の活躍が目立っていたので、こうした明け4歳馬の強さも十分納得がいく。
そして先週行われた2つの重賞は、人気薄の先行馬が2着に残ったのが印象的だった。愛知杯は7番人気のアイコンテーラー、日経新春杯は10番人気のキングオブドラゴンがともに2番手追走から粘り込んだ。アイコンテーラーは前走中日新聞杯でも3着に食い込んでいたので、むしろ不当に軽視されている印象だったが、キングオブドラゴンは前走アルゼンチン共和国杯18着からの大きな変わり身で、驚きもあった。愛知杯は重馬場、日経新春杯は稍重と馬場が渋ったなかでレースが行われたというのも大きく、鋭い末脚を武器にしている馬にとっては不利だったかもしれない。
■表2 2023年に中山で行われた平地重賞の上位馬(1/15まで)
レース名 | 着順 | 馬名 | 性別 | 年齢 | 人気 | 種牡馬 | 母父馬 |
京成杯G3 | 1 | ソールオリエンス | 牡 | 3 | 2 | キタサンブラック | Motivator |
京成杯G3 | 2 | オメガリッチマン | 牡 | 3 | 9 | イスラボニータ | ディープインパクト |
京成杯G3 | 3 | セブンマジシャン | 牡 | 3 | 1 | ジャスタウェイ | メイショウサムソン |
フェアリG3 | 1 | キタウイング | 牝 | 3 | 11 | ダノンバラード | アイルハヴアナザー |
フェアリG3 | 2 | メイクアスナッチ | 牝 | 3 | 7 | ルーラーシップ | ディープインパクト |
フェアリG3 | 3 | スピードオブライト | 牝 | 3 | 6 | ロードカナロア | ディープインパクト |
中山金杯HG3 | 1 | ラーグルフ | 牡 | 4 | 1 | モーリス | ファルブラヴ |
中山金杯HG3 | 2 | クリノプレミアム | 牝 | 6 | 7 | オルフェーヴル | Giant's Causeway |
中山金杯HG3 | 3 | フェーングロッテン | 牡 | 4 | 2 | ブラックタイド | キングヘイロー |
続いて中山競馬場の平地重賞結果(表2参照)を見ていく。こちらのレース数はまだ3つで、その内4歳以上のレースは中山金杯だけ。そんな中でも1着ラーグルフ、3着フェーングロッテンと、しっかり4歳馬が期待に応えて好走を果たしている。2着に入ったクリノプレミアムは6歳牝馬だが、22年中山牝馬S1着・京成杯オータムハンデ3着と中山芝重賞で好走実績があった。
3歳限定戦のフェアリーSと京成杯は、ともに馬券的には大荒れになった。フェアリーSはメンバー中3頭しかいなかった2勝馬のうちキタウイングとメイクアスナッチによるワン・ツー決着ながら馬連配当が2万1140円。京成杯は9頭立てのなかでダントツ人気がなかったオメガリッチマンが2着に入り、馬連は1万9570円もついた。
フェアリーSと京成杯は好走馬の母父にも特徴があった。フェアリーSは出走馬16頭中2頭いた母父ディープインパクトのメイクアスナッチとスピードオブライトがともに好走。京成杯で2着と激走したオメガリッチマンは、メンバー中唯一、母父がディープインパクトだった。また、京成杯1着ソールオリエンスと3着セブンマジシャンは、母父がともにサドラーズウェルズの系統馬だった。今週のAJCCは4歳以上のレースだが、中山芝重賞なのでこうした点にも注目して考えてみたい。
■表3 今年のアメリカジョッキークラブC出走予定馬
馬名 | 性 | 齢 | 種牡馬 | 母父馬 |
アリストテレス | 牡 | 6 | エピファネイア | ディープインパクト |
エヒト | 牡 | 6 | ルーラーシップ | ディープインパクト |
エピファニー | 牡 | 4 | エピファネイア | ディープインパクト |
オウケンムーン | 牡 | 8 | オウケンブルースリ | エリシオ |
ガイアフォース | 牡 | 4 | キタサンブラック | クロフネ |
シャムロックヒル | 牝 | 6 | キズナ | Tapit |
スタッドリー | 牡 | 5 | ハービンジャー | フジキセキ |
ノースブリッジ | 牡 | 5 | モーリス | アドマイヤムーン |
バビット | 牡 | 6 | ナカヤマフェスタ | タイキシャトル |
ブラックマジック | 牡 | 6 | ディープインパクト | Sholokhov |
ユーバーレーベン | 牝 | 5 | ゴールドシップ | ロージズインメイ |
ラーゴム | 牡 | 5 | オルフェーヴル | Candy Ride |
レインカルナティオ | 牡 | 6 | ルーラーシップ | ファルブラヴ |
レッドガラン | 牡 | 8 | ロードカナロア | シンボリクリスエス |
表3は今年のAJCCの出走予定馬。まず母父にディープインパクトを持つ馬はアリストテレス、エヒト、エピファニーと3頭いる。アリストテレスは21年のAJCCの勝ち馬でもあり実績上位だが、22年は3戦して未勝利に終わった。なかなか間隔を詰めてレースを使えなかったことを考えると、有馬記念以来となる今回は少し前向きに捉えたいところだが、どこまで良化できるかが鍵になりそう。エヒトは22年のAJCCが9着、京都記念が7着なのでG2で通用するかが課題と言えそうだ。
エピファニーは4連勝中の4歳牡馬。重賞未経験の上がり馬の身でリステッド競走やG3ではなく、いきなりG2に挑戦とは強気なレース選択だ。それだけ陣営の期待が大きいと言えるだろう。そして、同じ4歳馬のガイアフォースにも注目。
■表4 2022年セントライト記念出走馬の次走レース成績
着順 | 馬名 | 次走レース成績 | ||||
1 | ガイアフォース | 阪神 | 菊花賞G1 | 芝 | 3000 | 8 |
2 | アスクビクターモア | 阪神 | 菊花賞G1 | 芝 | 3000 | 1 |
3 | ローシャムパーク | 中山 | 2勝クラス | 芝 | 2000 | 1 |
4 | セイウンハーデス | 阪神 | 菊花賞G1 | 芝 | 3000 | 17 |
5 | ラーグルフ | 東京 | 甲斐路H・3勝 | 芝 | 2000 | 1 |
6 | ボーンディスウェイ | 東京 | 本栖湖特・2勝 | 芝 | 2400 | 6 |
7 | オニャンコポン | 福島 | 福島記念HG3 | 芝 | 2000 | 4 |
8 | キングズパレス | 東京 | 2勝クラス | 芝 | 2400 | 2 |
9 | ショウナンマグマ | 東京 | オクトー(L) | 芝 | 2000 | 13 |
10 | ベジャール | 東京 | ノベンバ・3勝 | 芝 | 1800 | 3 |
11 | サイモンバロン | 東京 | 1勝クラス | 芝 | 2400 | 2 |
12 | ロンギングエーオ | 福島 | 三陸特H・2勝 | 芝 | 2600 | 6 |
13 | マテンロウスカイ | 未出走 |
2022/9/19 中山11R 朝日杯セントライト記念(G2)
1着 9番 ガイアフォース(Photo by JRA)
表4は22年のセントライト記念出走馬の次走成績。同レースはガイアフォースとの競り合いの末、アタマ差の2着に終わったアスクビクターモアだったが、次走菊花賞を2番人気で勝利している。ローシャムパークは先日(1/5)行われた2勝クラスのレースを、格の違いを見せつける走りで完勝。そしてラーグルフは3勝クラスの甲斐路S→中山金杯と連勝を果たして重賞初制覇を飾った。同年のセントライト記念のレベルはとても高く、上位にきた馬は地力が高い。ガイアフォースは菊花賞こそ1番人気で8着と敗れたが、距離が長すぎたのが敗因だろう。2200mに戻る今回は本領発揮を期待してよさそうだ。
最後に母父Sholokhov(サドラーズウェルズ系)のブラックマジックを穴で取り上げておきたい。
ライタープロフィール
小田原智大(おだわら ともひろ)
1975年6月、東京生まれ。早稲田大学商学部卒業後、業界紙記者を経て、(株)レイヤード入社。ライター&エディターとして活躍。JRA-VANデータの配信初期から、いち早くデータ競馬の有効性に着目する。05年5月より「競馬 最強の法則WEB」にて、障害戦を除く全重賞レースの傾向と対策、予想を展開。「オッズパーク ダートグレードデータ作戦」では、地方競馬の重賞の攻略にも取り組んでいる。仕事の関係でなかなか競馬場には行けなくなったが、年に1、2回行くローカル遠征が楽しみ。