データde出〜た
第1629回 本年からG3! 葵Sを分析する
2022/5/23(月)
2018年に従来のオープン特別から重賞へと昇格した葵S。昨年は優勝したレイハリアが次走キーンランドCも連勝し、2着ヨカヨカは次々走の北九州記念を勝つなど、サマースプリントシリーズへとつながるレースだ。その昨年までは未格付けの重賞として行われていたが、本年より「G3」の格付けを得て施行される。そんな葵Sについて、重賞昇格後過去4年の傾向をJRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用して分析したい。
■表1 1〜3着馬の人気と主な配当
年 | 場所 | 1〜3着馬人気 | 単勝 | 馬連 | 馬単 | 3連複 | 3連単 | ||
2018 | 京都 | 9 | 2・6(同着) | 2,940円 | ※1 | ※2 | 35,170円 | ※3 | |
2019 | 1 | 13 | 2 | 230円 | 6,390円 | 7,600円 | 9,170円 | 45,520円 | |
2020 | 1 | 11 | 5 | 330円 | 6,380円 | 9,040円 | 20,820円 | 98,060円 | |
2021 | 中京 | 13 | 3 | 9 | 8,300円 | 26,560円 | 65,780円 | 160,730円 | 1,454,720円 |
※1:4,700円・6,980円 ※2:12,060円・16,520円 ※3:124,940円・138,780円
2021/5/29 中京11R 葵ステークス
1着 7番 レイハリア(13番人気)
表1は過去4年の1〜3着馬の単勝人気と主な配当である(2018年は2着同着)。1番人気が2勝を挙げ、2番人気も2、3着各1回があるものの、9番人気以下の穴馬が毎年連対し波乱傾向が強い。本年と同じく中京で代替された昨年は13→3→9番人気の順で3連単は145万馬券。また、2018年は3連単2通りがどちらも13万馬券前後と、高配当が期待できるレースだ。ちなみにオープン特別時代も2008年(当時芝1400m)が3連単182万馬券、2012〜15年は4年連続30万馬券以上と荒れていた。
■表2 前走クラス別成績
前走クラス | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回収 | 複回収 |
1勝 | 1-1-1-13/16 | 6.3% | 12.5% | 18.8% | 518% | 138% |
OPEN | 2-2-1-20/25 | 8.0% | 16.0% | 20.0% | 126% | 129% |
JRA重賞 | 1-2-1-19/23 | 4.3% | 13.0% | 17.4% | 14% | 40% |
地方 | 0-0-0-1/1 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% |
前走クラス別ではオープン特別組の好走確率がやや高いものの、1勝クラス組や重賞組との差は少ない。しかし荒れ模様のレースということで、ここで注目したいのは単複の回収率の方だ。重賞組は単勝回収率14%、複勝回収率40%と低く、配当妙味があるのは1勝クラス組やオープン特別組だ。
■表3 前走1勝クラス(旧500万条件)からの好走馬
年 | 馬名 | 葵S | 前走 | 芝12成績 | |||||
人気 | 着順 | レース | コース | 人気 | 着順 | タイム差 | |||
2018 | トゥラヴェスーラ | 2 | 2 | 平場 | 阪芝12 | 2 | 1 | -0.4 | 1-1-0-0 |
2020 | ワンスカイ | 5 | 3 | 平場 | 中芝12 | 1 | 1 | -0.2 | 2-0-0-0 |
2021 | レイハリア | 13 | 1 | 雪うさぎ賞 | 新芝12 | 6 | 1 | -0.2 | 1-1-0-0 |
前走1勝クラスからの好走馬は表3の3頭。いずれも前走で芝1200m戦を勝ち上がっているが、この「前走1勝クラス芝1200m1着」というだけでは【1.1.1.9】複勝率25.0%とさほど好走確率は高くない。ここに「前走で2着に0.2秒差以上」という条件をつけると【1.1.1.4】複勝率42.9%、さらに「芝1200m連対率100%」だった馬なら【1.1.1.1】同75.0%となる。この条件を満たせば穴人気くらいにはなりそうなものだが、昨年のレイハリアは13番人気。重賞組やオープン特別組のほうが注目されやすいため、このタイプを見落とさないようにしたい。
■表4 前走オープン特別からの好走馬
年 | 馬名 | 性別 | 葵S | 前走 | 芝12成績 | ||||
人気 | 着順 | レース | 距離 | 人気 | 着順 | ||||
2018 | ゴールドクイーン | 牝 | 9 | 1 | 橘S | 芝14 | 6 | 3 | 1-0-0-0 |
2019 | ディアンドル | 牝 | 1 | 1 | マーガレットS | 芝12 | 1 | 1 | 4-1-0-0 |
アスターペガサス | 牡 | 13 | 2 | 橘S | 芝14 | 4 | 13 | 2-0-0-0 | |
2020 | レジェーロ | 牝 | 11 | 2 | マーガレットS | 芝12 | 1 | 5 | 1-2-0-1 |
2021 | オールアットワンス | 牝 | 9 | 3 | マーガレットS | 芝12 | 4 | 5 | 2-0-1-1 |
2018/5/26 京都11R 葵ステークス
1着 3番 ゴールドクイーン(9番人気)
表4は前走オープン特別組の好走馬。こちらも芝1200mでの成績はひとつのチェックポイントで、マーガレットS以外では馬券圏内を外していないことが条件になる。また5頭中4頭を牝馬が占めており、この4頭はいずれも前走では6番人気以内かつ5着以内だった。この「前走オープン特別で6番人気以内かつ5着以内」だった牝馬は計【2.1.1.5】で複勝率44.4%になる。なお、牡馬で好走したアスターペガサスは芝1200mで新馬、函館2歳Sと2連勝を飾り、この距離への出走はそれ以来10カ月ぶりだった。
■表5 前走重賞からの好走馬
年 | 馬名 | 葵S | 前走 | 芝12成績 | |||
人気 | 着順 | レース | 人気 | 着順 | |||
2018 | ラブカンプー | 6 | 2 | アーリントンC | 9 | 13 | 2-2-0-0 |
2019 | アウィルアウェイ | 2 | 3 | 桜花賞 | 11 | 10 | 1-0-0-0 |
2020 | ビアンフェ | 1 | 1 | ファルコンS | 2 | 9 | 2-1-0-0 |
2021 | ヨカヨカ | 3 | 2 | 桜花賞 | 11 | 17 | 3-0-0-0 |
最後に表5は前走重賞からの好走馬である。一見すると重賞組もやはり芝1200mで安定した結果を残していることが重要に見えるが、実は馬券圏外に敗れた人気馬も少なくない。たとえば2018年1番人気5着のアサクサゲンキは芝1200m【2.1.0.0】。同年3番人気6着のアンヴァルは芝1200m【3.0.1.0】。そして昨年1番人気5着のモントライゼは芝1200m【1.2.0.0】といった具合だ。
この組は前走8着以内馬が【0.0.0.8】と不振。前走9着以下だった馬が【1.2.1.11】複勝率26.7%で、このうち本競走6番人気以内馬は【1.2.1.4】同50.0%になる。前走で大敗を喫しながら、ここである程度の人気に推されるような馬が狙いだ。これをクリアした馬の中から、芝1200mの成績でふるいにかけるといいだろう。ただ、先にも触れたように重賞組は妙味が薄いため、穴狙いなら1勝クラス組やオープン特別組を優先して買い目に組み入れたい。
以上、重賞昇格後の葵S過去4年の傾向をまとめてみた。3着以内馬12頭すべてに共通するのは、マーガレットSを除く芝1200m戦では4着以下に敗れていないことだが、毎年多くの馬がこの条件をクリアしている。前走クラスに応じその他の条件も組み合わせて判断し、人気の盲点になっている馬がいれば積極的に狙っていきたいレースだ。
ライタープロフィール
浅田知広(あさだ ともひろ)
1970年12月、埼玉県生まれ。立命館大学文学部中退後、夕刊紙レース部のアルバイト、競馬データベース会社を経て、現在はフリー。パソコンが広く普及する以前から、パソコン通信でデータ手入力方式の競馬予想ソフトを公開するなど、競馬のみならずPCやネットワークにも精通。その知識を活かし、Webや雑誌で競馬ライターとして活躍するかたわら、ネットワークの専門誌にも連載を持つ。