データde出〜た
第1576回 重賞成績を見れば一目瞭然! 今年の3歳馬はハイレベル!
2021/11/15(月)
今年6月以降に行われた3歳以上の重賞では、3歳馬の活躍が非常に目立っている。夏のサマースプリントシリーズの途中でその予感はあったが、秋競馬入って勢いが増し、G1やG2を勝つ馬が続々と出てきた。競馬ファンやマスコミからも「今年の3歳馬はレベルが高い」という声が聞こえる。
そこで今回は、今年の3歳馬のレベルの高さを、重賞成績で証明することにした。データの分析にはJRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JV を利用した。
■表1 2021年に3歳以上の重賞で好走した3歳馬(6〜10月)
日付 | 開催 | レース名 | 馬名 | 性別 | 着順 | 人気 |
211031 | 4東8 | 天皇賞秋G1 | エフフォーリア | 牡 | 1 | 3 |
211030 | 4阪7 | スワンSG2 | ホウオウアマゾン | 牡 | 3 | 3 |
211023 | 4東5 | 富士SG2 | ソングライン | 牝 | 1 | 1 |
211023 | 4東5 | 富士SG2 | タイムトゥヘヴン | 牡 | 3 | 10 |
211010 | 4東2 | 毎日王冠G2 | シュネルマイスター | 牡 | 1 | 1 |
211003 | 4中9 | スプリンG1 | ピクシーナイト | 牡 | 1 | 3 |
210912 | 5名2 | セントウG2 | ピクシーナイト | 牡 | 2 | 2 |
210912 | 4中2 | オータムHG3 | グレナディアガーズ | 牡 | 3 | 1 |
210829 | 2札6 | キーンラG3 | レイハリア | 牝 | 1 | 3 |
210822 | 4小4 | 北九州記HG3 | ヨカヨカ | 牝 | 1 | 5 |
210822 | 2札4 | 札幌記念G2 | ソダシ | 牝 | 1 | 2 |
210815 | 4新2 | 関屋記念G3 | ソングライン | 牝 | 3 | 1 |
210725 | 3新2 | アイビスG3 | オールアットワンス | 牝 | 1 | 1 |
210704 | 3小2 | CBC賞HG3 | ピクシーナイト | 牡 | 2 | 2 |
210606 | 3東2 | 安田記念G1 | シュネルマイスター | 牡 | 3 | 4 |
まずは今年(2021年)6〜10月、3歳以上の重賞で3着以内に好走した3歳馬を調べた(表1参照)。6月の安田記念でシュネルマイスターが3着に入ったのを皮切りに、CBC賞でピクシーナイトが2着と好走、アイビスサマーダッシュではオールアットワンスが古馬を撃破して重賞初制覇を飾った。ソングラインは関屋記念が1番人気で3着だったが、その後はソダシ、ヨカヨカ、レイハリアと牝馬がそれぞれ重賞勝利を果たした。
秋競馬に入ってからはピクシーナイトがセントウルS2着の後、スプリンターズSで優勝。東京開催ではシュネルマイスターが毎日王冠、ソングラインが富士SとG2を勝利。そして、先日の天皇賞(秋)ではエフフォーリアがコントレイル、グランアレグリアとの“3強対決”を制して優勝。「今年の3歳馬はレベルが高い」ことを象徴するような勝利だった。
■表2 2021年の3歳以上重賞の年齢別成績(平地/6〜10月)
年齢 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回収率 | 複回収率 |
3歳 | 8- 2- 5- 17/ 32 | 25.0% | 31.3% | 46.9% | 115 | 93 |
4歳 | 9- 7- 6- 88/110 | 8.2% | 14.5% | 20.0% | 77 | 54 |
5歳 | 10- 17- 11-129/167 | 6.0% | 16.2% | 22.8% | 79 | 102 |
6歳 | 3- 4- 6- 72/ 85 | 3.5% | 8.2% | 15.3% | 66 | 64 |
7歳以上 | 1- 1- 3- 73/ 78 | 1.3% | 2.6% | 6.4% | 41 | 30 |
表2は今年6〜10月に行われた3歳以上重賞(平地)の年齢別成績。3歳馬の成績は1着が8回、2着が2回、3着が5回と、延べ32回の出走で15回馬券に絡んだ。勝利数は4歳が9勝、5歳が10勝と、古馬勢も3歳とほとんど変わらなかった。しかし、3歳は勝率が25.0%、連対率が31.3%、複勝率が46.9%と、他の年齢に比べると明らかに好成績だ。このデータをふまえて、他の年のデータと比較すると、今年の成績がいかに凄いかがわかる。
■表3 過去10年の3歳以上重賞における3歳馬の成績(平地/6〜10月)
年 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回収率 | 複回収率 |
2021年 | 8- 2- 5- 17/ 32 | 25.0% | 31.3% | 46.9% | 115 | 93 |
2020年 | 2- 2- 0- 18/ 22 | 9.1% | 18.2% | 18.2% | 13 | 34 |
2019年 | 2- 4- 1- 29/ 36 | 5.6% | 16.7% | 19.4% | 18 | 43 |
2018年 | 3- 5- 1- 19/ 28 | 10.7% | 28.6% | 32.1% | 38 | 75 |
2017年 | 3- 0- 1- 28/ 32 | 9.4% | 9.4% | 12.5% | 48 | 26 |
2016年 | 3- 2- 2- 15/ 22 | 13.6% | 22.7% | 31.8% | 217 | 115 |
2015年 | 3- 2- 4- 28/ 37 | 8.1% | 13.5% | 24.3% | 171 | 128 |
2014年 | 2- 1- 1- 23/ 27 | 7.4% | 11.1% | 14.8% | 36 | 51 |
2013年 | 2- 1- 3- 28/ 34 | 5.9% | 8.8% | 17.6% | 96 | 93 |
2012年 | 5- 4- 2- 27/ 38 | 13.2% | 23.7% | 28.9% | 101 | 129 |
2011年 | 2- 2- 2- 23/ 29 | 6.9% | 13.8% | 20.7% | 110 | 64 |
表3は過去10年の3歳以上重賞における3歳馬の成績(平地/6〜10月)。2011年以降、勝利数は2〜3つという年がほとんどのなか、2021年は8つも勝っていて勝率も異常に高い。連対率(31.3%)や複勝率(46.9%)も他の年に比べて優秀だ。単勝・複勝の回収率は特別にいいわけではなく、両方ともに100%を超えている年(12年、15年、16年)が他にある。ただ、今回重視しているのは好走率の高さなので、「今年の3歳馬はレベルが高い」とみて間違いない。しかも、2000年以降でみても、同じような好成績を挙げた例は他になく、今年は異例ともいえる成績なのだ。
表1の馬名をあらためてながめると、同じ馬が複数回好走していることに気づく。シュネルマイスターが2回(安田記念、毎日王冠)、ピクシーナイトが3回(CBC賞、セントウルS、スプリンターズS)、ソングラインが2回(関屋記念、富士S)好走している。特に芝のマイル以下では強い馬が揃っており、層の厚さを感じさせる。ダート路線は何とも言えないが、芝中距離以上ではエフフォーリアがしっかりと結果を出した。
■表4 2018年に3歳以上の重賞で好走した3歳馬(平地/6〜12月)
日付 | 開催 | レース名 | 馬名 | 性別 | 着順 | 人気 |
181223 | 5中8 | 有馬記念G1 | ブラストワンピース | 牡 | 1 | 3 |
181222 | 5阪7 | 阪神カッG2 | ミスターメロディ | 牡 | 2 | 2 |
181215 | 5中5 | ターコイHG3 | リバティハイツ | 牝 | 2 | 10 |
181209 | 5中4 | カペラSG3 | コパノキッキング | セ | 1 | 1 |
181208 | 4名3 | 中日新聞HG3 | ギベオン | 牡 | 1 | 1 |
181202 | 4名2 | チャンピG1 | ルヴァンスレーヴ | 牡 | 1 | 1 |
181201 | 5阪1 | チャレンG3 | ステイフーリッシュ | 牡 | 3 | 5 |
181125 | 5京8 | 京阪杯G3 | ダノンスマッシュ | 牡 | 1 | 1 |
181125 | 5東8 | JCG1 | アーモンドアイ | 牝 | 1 | 1 |
181118 | 5京6 | マイルチG1 | ステルヴィオ | 牡 | 1 | 5 |
181104 | 5京2 | JBCクラG1 | オメガパフューム | 牡 | 2 | 2 |
181007 | 4東2 | 毎日王冠G2 | ステルヴィオ | 牡 | 2 | 3 |
180930 | 4中9 | スプリンG1 | ラブカンプー | 牝 | 2 | 11 |
180929 | 4阪8 | シリウスHG3 | オメガパフューム | 牡 | 1 | 2 |
180909 | 4阪2 | セントウG2 | ラブカンプー | 牝 | 2 | 2 |
180902 | 2新C | 新潟記念HG3 | ブラストワンピース | 牡 | 1 | 1 |
180826 | 2札4 | キーンラG3 | ダノンスマッシュ | 牡 | 2 | 4 |
180819 | 2小8 | 北九州記HG3 | ラブカンプー | 牝 | 3 | 7 |
180812 | 2新6 | 関屋記念G3 | プリモシーン | 牝 | 1 | 1 |
180729 | 2新2 | アイビスG3 | ラブカンプー | 牝 | 2 | 2 |
表4は18年6〜12月に3歳以上の平地重賞で好走した3歳馬の一覧。過去10年で、21年の次に3歳馬の好走率(複勝率)が高かった18年(表3参照)では、11月以降にどんな馬がどのレースで活躍したかを調べた。18年はまずラブカンプーが6〜10月の間に4つのレースで好走。スプリンターズSでは11番人気ながら2着に入って存在感を見せた。
そして新潟記念を制したブラストワンピースは、12月の有馬記念で優勝。シリウスSを制したオメガパフュームは、京都で行われたJBCクラシックで2着に入った。毎日王冠2着のステルヴィオは、マイルチャンピオンシップを勝利。その他アーモンドアイがジャパンカップ、ルヴァンスレーヴがチャンピオンズカップを優勝しており、3歳馬が秋のG1で大活躍をしたのだ。この例を見ると、今年11月以降の重賞も3歳馬の勢いが止まらないのではないか、という雰囲気をひしひしと感じる(本稿執筆途中、ステラリアがエリザベス女王杯で7番人気2着と好走した)。
ライタープロフィール
小田原智大(おだわら ともひろ)
1975年6月、東京生まれ。早稲田大学商学部卒業後、業界紙記者を経て、(株)レイヤード入社。ライター&エディターとして活躍。JRA-VANデータの配信初期から、いち早くデータ競馬の有効性に着目する。05年5月より「競馬 最強の法則WEB」にて、障害戦を除く全重賞レースの傾向と対策、予想を展開。「オッズパーク ダートグレードデータ作戦」では、地方競馬の重賞の攻略にも取り組んでいる。仕事の関係でなかなか競馬場には行けなくなったが、年に1、2回行くローカル遠征が楽しみ。