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第1575回 前走脚質と継続騎乗がカギ! エリザベス女王杯を分析する
2021/11/11(木)
今週日曜に阪神競馬場でエリザベス女王杯が行われる。牝馬の中距離頂上決戦で、昨年はラッキーライラックが連覇を達成。同馬が引退した今年、新女王に輝くのはどの馬か、注目が集まる。今回はエリザベス女王杯をピックアップし、昨年のレース結果ならびに過去10年の傾向、そして阪神芝2200mのコース傾向から今年狙えそうな馬を探っていきたい。なお、データ分析にはJRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用した。
■表1 昨年のエリザベス女王杯の3着以内馬一覧
年(馬場/頭数) | 着順 | 馬名 | 性齢 | 勝ちタイム | 人気 | 4角通過順 | 上がり3F | 前半1000m通過 |
2020 (良/18頭) |
1 | ラッキーライラック | 牝5 | 2分10秒3 | 1 | 3 | 33秒9 | 59秒3 |
2 | サラキア | 牝5 | クビ | 5 | 12 | 33秒7 | ||
3 | ラヴズオンリーユー | 牝4 | クビ | 3 | 8 | 33秒8 |
表1は今年と同じく阪神競馬場で行われた昨年のエリザベス女王杯の3着以内馬一覧。大外の8枠18番からのスタートとなったラッキーライラックが3コーナー過ぎから上がっていき、直線早めに先頭に立って押し切り勝ち。2着サラキア、3着ラヴズオンリーユーとディープインパクト産駒の2頭が追い込んで好走した。これら上位3頭はいずれもメンバー中3位以内の上がりの脚を使っていた。前半1000m通過59秒3と緩まなかったため、前に行った組は厳しく、中団・後方で脚を溜めた馬に有利に働いたのだろう。今年はどういった流れになるかに注目だ。
なお今年は、昨年の3着以内馬は出走しないが、4着ウインマリリン、6着ソフトフルート、12着リュヌルージュが登録している。
■表2 エリザベス女王杯過去10年の年齢別成績
年齢 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単勝回収値 | 複勝回収値 |
3歳 | 2- 4- 2- 32/ 40 | 5.0% | 15.0% | 20.0% | 29 | 43 |
4歳 | 6- 3- 7- 45/ 61 | 9.8% | 14.8% | 26.2% | 67 | 84 |
5歳 | 2- 2- 1- 49/ 54 | 3.7% | 7.4% | 9.3% | 48 | 30 |
6歳 | 0- 1- 0- 13/ 14 | 0.0% | 7.1% | 7.1% | 0 | 23 |
7歳以上 | 0- 0- 0- 5/ 5 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0 | 0 |
表2は2011〜19年の京都開催を含めた過去10年の年齢別成績。4歳馬が18年リスグラシューら過半数の6勝をあげ、勝率・複勝率トップ。昨年は3着ラヴズオンリーユーが該当しており、毎年1頭は3着以内に入っている。
3歳馬は17年モズカッチャンら2勝をあげ、連対率では4歳馬を上回っている。3着以内馬8頭中5頭は前走秋華賞で3着以内に入っていた。5歳馬は昨年のラッキーライラックら2勝も、連対率・複勝率では3歳馬・4歳馬に差をつけられている。
なお、6歳以上となると、一昨年クロコスミアの2着1回のみと苦戦傾向にある。
■表3 エリザベス女王杯過去10年の前走人気別成績
前走人気 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単勝回収値 | 複勝回収値 |
前走1人気 | 1- 3- 6- 13/ 23 | 4.3% | 17.4% | 43.5% | 14 | 110 |
前走2人気 | 2- 2- 1- 16/ 21 | 9.5% | 19.0% | 23.8% | 48 | 40 |
前走3人気 | 2- 1- 0- 19/ 22 | 9.1% | 13.6% | 13.6% | 45 | 34 |
前走4人気 | 1- 0- 3- 15/ 19 | 5.3% | 5.3% | 21.1% | 80 | 54 |
前走5人気 | 1- 1- 0- 16/ 18 | 5.6% | 11.1% | 11.1% | 42 | 49 |
前走6〜9人 | 2- 3- 0- 39/ 44 | 4.5% | 11.4% | 11.4% | 67 | 59 |
前走10番人気以下 | 0- 0- 0- 25/ 25 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0 | 0 |
表3はエリザベス女王杯過去10年の前走人気別成績。前走1番人気だった馬は昨年のラッキーライラックの1勝のみだが、複勝率43.5%と高い。複勝回収率でも唯一100%を超えている。
優勝馬は前走9番人気(12年レインボーダリア)まで広がっているが、前走10番人気以下の馬からは好走馬が出ていない。
■表4 エリザベス女王杯過去10年の継続騎乗or乗り替わり別成績
前走騎手 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単勝回収値 | 複勝回収値 |
同騎手 | 6- 7- 9-70/92 | 6.5% | 14.1% | 23.9% | 68 | 60 |
乗替り | 4- 3- 1-74/82 | 4.9% | 8.5% | 9.8% | 19 | 40 |
表4はエリザベス女王杯過去10年の、前走から継続騎乗か、乗り替わりかの成績比較。勝利数ではそれほど変わらないものの、継続騎乗の馬は2着3着数で大きく上回っており、複勝率でも大きな差をつけている。特に前走5着以内で継続騎乗の馬は【6.7.7.47】で16年クイーンズリングら過半数の6勝をあげ、複勝率29.9%と優秀だ。
■表5 阪神芝2200mで行われたG1の枠番別成績(2016年以降)
枠番 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単勝回収値 | 複勝回収値 |
1枠 | 0- 2- 1- 8/11 | 0.0% | 18.2% | 27.3% | 0 | 116 |
2枠 | 1- 1- 2- 7/11 | 9.1% | 18.2% | 36.4% | 119 | 111 |
3枠 | 0- 0- 0-11/11 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0 | 0 |
4枠 | 0- 0- 0-12/12 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0 | 0 |
5枠 | 1- 1- 0-11/13 | 7.7% | 15.4% | 15.4% | 13 | 16 |
6枠 | 0- 0- 2-12/14 | 0.0% | 0.0% | 14.3% | 0 | 105 |
7枠 | 0- 3- 1-12/16 | 0.0% | 18.8% | 25.0% | 0 | 103 |
8枠 | 5- 0- 1-11/17 | 29.4% | 29.4% | 35.3% | 275 | 94 |
表5は2016年以降に阪神芝2200mで行われたG1(16〜21年の宝塚記念、昨年のエリザベス女王杯)7レースの枠番別成績。大外の8枠に入った馬が昨年のエリザベス女王杯におけるラッキーライラックら5勝をあげている。阪神芝2200mは1コーナーまでの距離が長く、内の各馬を見ながらレースを進められるのも良いのだろう。
また、複勝率トップは2枠の36.4%で、1枠も27.3%と高い。これら内の1・2枠は複勝回収率も100%を超えており、注目しておきたい。
■表6 阪神芝2200m戦の前走脚質別成績(2016年以降/2勝クラス以上)
前走脚質 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単勝回収値 | 複勝回収値 |
逃げ | 2- 7- 4- 17/ 30 | 6.7% | 30.0% | 43.3% | 71 | 125 |
先行 | 13- 10- 10- 69/102 | 12.7% | 22.5% | 32.4% | 177 | 112 |
差し | 7- 5- 11- 70/ 93 | 7.5% | 12.9% | 24.7% | 59 | 67 |
追い込み | 5- 6- 2- 56/ 69 | 7.2% | 15.9% | 18.8% | 151 | 49 |
マクリ | 1- 0- 2- 3/ 6 | 16.7% | 16.7% | 50.0% | 35 | 63 |
最後に表6は阪神芝2200m戦を走った馬の前走脚質別成績。全30レースの中で前走逃げた馬が勝利したのは2レースと少ないが、連対率・複勝率は最も高い。前走先行した馬が最多の13レースで勝利し、勝率トップ。単勝回収率・複勝回収率ともに100%を超えている。
前走差し・追い込み組も勝率では前走逃げ組を上回っているが、複勝率で差をつけられている。
<結論>
■表7 今年のエリザベス女王杯の出走予定馬(11/10時点)
馬名 | 性齢 | 前走成績 |
アカイイト | 牝4 | 府中牝馬S 7着 |
アカイトリノムスメ | 牝3 | 秋華賞 1着 |
イズジョーノキセキ | 牝4 | 西宮S(3勝クラス) 2着 |
ウインキートス | 牝4 | オールカマー 2着 |
ウインマリリン | 牝4 | オールカマー 1着 |
エアジーン | 牝5 | 新潟牝馬S 7着 |
クラヴェル | 牝4 | 新潟記念 3着 |
コトブキテティス | 牝4 | 六社S(3勝クラス)1着 |
シャムロックヒル | 牝4 | クイーンS 9着 |
ステラリア | 牝3 | 秋華賞 6着 |
ソフトフルート | 牝4 | 新潟牝馬S 2着 |
デゼル | 牝4 | 府中牝馬S 16着 |
テルツェット | 牝4 | クイーンS 1着 |
ムジカ | 牝4 | 新潟牝馬S 3着 |
ランブリングアレー | 牝5 | オールカマー 7着 |
リュヌルージュ | 牝6 | 新潟牝馬S 6着 |
レイパパレ | 牝4 | オールカマー 4着 |
ロザムール | 牝5 | オールカマー 10着 |
今年の出走予定馬は表7のとおり。
上位人気が予想されるレイパパレ、テルツェット、ランブリングアレーは前走から乗り替わりとなっている。今回ルメール騎手が騎乗予定で1番人気も想定されるレイパパレはデビューから6連勝の後、近2走は宝塚記念3着、オールカマー4着と芝2200m戦で敗れている。先行脚質は合うものの、2200mは本質的に長いのではないだろうか。
これまでのデータからまず推奨したいのが前走オールカマーを勝利したウインマリリン。今年は日経賞も勝利しており、春の天皇賞も5着と強豪牡馬相手でも好勝負している。昨年は4着に敗れているが、先行勢で唯一上位に入っていた。前走オールカマーも直線で一旦狭くなり、立て直して伸びたもので着差以上に余裕があった。今年は勝ち負けになっておかしくない。
もう一頭は秋華賞を勝利した3歳馬アカイトリノムスメ。内回りの阪神芝は合っており、引き続き戸崎騎手が騎乗予定なのも心強い。13年メイショウマンボ以来となる秋華賞〜エリザベス女王杯連勝が見られるかも知れない。
他ではコース傾向から、ハナに立ちそうなロザムールの逃げ粘りには注意しておきたい。
ライタープロフィール
ケンタロウ(けんたろう)
1978年6月、鹿児島県生まれ。早稲田大学社会科学部卒業。初めて買った馬券が大当たりし、それから競馬にのめり込むように。データでは、開催日の馬場やコース適性に注目している。好きなタイプは逃げか追い込み。馬券は1着にこだわった単勝、馬単派。料理研究家ではない。