データde出〜た
第1572回 リステッド競走優勝馬はハイレベル!?
2021/11/1(月)
先週日曜には東京競馬場でG1・天皇賞(秋)が行われたが、同日の阪神ではカシオペアS、オータムリーフSと珍しくオープン特別が1日に2競走組まれていた。このうちカシオペアSは2019年より新たな格付けとして導入された「リステッド競走」で、同じ年齢条件・コース(芝ダート別)であればリステッド競走のほうが他のオープン特別(以下「非L競走」とする)より高い賞金額が設定されている。先週の例ではリステッド競走のカシオペアS(芝)は1着賞金2600万円、非L競走のオータムリーフS(ダート)は同2200万円。レースレベルもリステッド競走のほうが高い印象だ。
そこで今回は、リステッド競走優勝馬がその後どんな活躍を見せているのかを、非L競走と比較しつつみていきたい。データの分析にはJRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用した。また、2歳のオープン特別はリステッド競走の設定が少なく、3歳戦は逆にリステッド競走ばかりのため、集計対象は2019年以降本年10月24日までの3・4歳以上の平地競走とした(次走以降の集計期間も同様)。
■表1 リステッド競走優勝馬の次走以降のクラス別成績(平地のみ)
クラス | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回収 | 複回収 |
OPEN(非L) | 17-8-10-59/94 | 18.1% | 26.6% | 37.2% | 121% | 107% |
OPEN(L) | 18-11-11-101/141 | 12.8% | 20.6% | 28.4% | 145% | 81% |
G3 | 13-17-16-180/226 | 5.8% | 13.3% | 20.4% | 53% | 70% |
G2 | 3-3-6-49/61 | 4.9% | 9.8% | 19.7% | 21% | 51% |
G1 | 0-1-2-42/45 | 0.0% | 2.2% | 6.7% | 0% | 39% |
※リステッド競走を2勝以上した馬は、1勝目の次走以降のみを集計
まず表1はリステッド競走優勝馬の次走以降のクラス別成績。2勝以上馬は1勝目の次走以降のみを対象とし、2勝目以降の重複カウントは行っていない(表2も同様)。表にあるとおり非L競走に出走した際の成績が非常に良く、勝率18.1%、複勝率37.2%と安定している上、単複の回収率も100%を超えている。また、ふたたびリステッド競走に出走したときの成績も上々だ。
■表2 非L競走優勝馬の次走以降のクラス別成績(平地のみ)
クラス | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回収 | 複回収 |
OPEN(非L) | 10-17-10-88/125 | 8.0% | 21.6% | 29.6% | 53% | 90% |
OPEN(L) | 12-7-12-91/122 | 9.8% | 15.6% | 25.4% | 60% | 65% |
G3 | 17-12-9-158/196 | 8.7% | 14.8% | 19.4% | 77% | 66% |
G2 | 2-5-4-31/42 | 4.8% | 16.7% | 26.2% | 57% | 135% |
G1 | 1-3-2-45/51 | 2.0% | 7.8% | 11.8% | 63% | 62% |
※非L競走を2勝以上した馬は、1勝目の次走以降のみを集計
一方、表2は非L競走優勝馬の次走以降のクラス別成績。表1との違いは明らかで、リステッド競走優勝馬に比べ、非L競走出走時、リステッド競走出走時とも好走確率は低い。オープン特別に出走しているかぎりは、やはりリステッド競走優勝馬のほうが非L競走優勝馬より信頼性は高いと言えるだろう。
ただ、ここで「オープン特別に出走しているかぎり」としたのは、重賞競走が舞台になると両者の関係が逆転しているためだ。G3への出走数はリステッド競走優勝馬のほうが多いにもかかわらず、勝利数は非L競走優勝馬が多いなど、重賞での好走確率は全体的に非L競走優勝馬のほうが高い傾向にある。また、リステッド競走優勝馬からは後のJRA・G1馬が出ていない一方、非L競走優勝馬は2020年にモズスーパーフレアが高松宮記念を制した。
■表3 後にJRA重賞を制した非L競走優勝馬
馬名 | 非L競走優勝 | 後のJRA重賞勝ち |
モズスーパーフレア | カーバンクルS | オーシャンS、高松宮記念 |
アルクトス | 欅S | プロキオンS |
ライオンボス | 韋駄天S | アイビスサマーダッシュ |
ヴェンジェンス | ポラリスS | みやこS |
ワンダーリーデル | アハルテケS | 武蔵野S |
エアアルマス | 太秦S | 東海S |
スワーヴアラミス | ポルックスS | マーチS、エルムS |
ダイワキャグニー | メイS | エプソムC |
タイムフライヤー | マリーンS | エルムS |
サラキア | 小倉日経OP | 府中牝馬S |
ジャスティン | 千葉S | カペラS |
レッドルゼル | 室町S | 根岸S |
シヴァージ | 北九州短距離S | シルクロードS |
レピアーウィット | ラジオ日本賞 | マーチS |
テーオーケインズ | 名古屋城S | アンタレスS |
ザダル | 関越S | エプソムC |
トーラスジェミニ | 巴賞 | 七夕賞 |
サンライズホープ | 三宮S | シリウスS |
※背景灰は表4と重複
表3は非L競走優勝馬のうち、後にJRAで重賞を制した18頭である。先に触れたモズスーパーフレアがその筆頭格で、ほかに府中牝馬Sを制したサラキアの名前も見られる。2018年夏の500万特別優勝後は勝利から遠ざかっていた馬が、2020年の小倉日経オープン優勝を足がかりに府中牝馬S制覇、エリザベス女王杯2着と飛躍し、さらに年末には有馬記念でクロノジェネシスの僅差2着に激走したのは記憶に新しい。
■表4 後にJRA重賞を制したリステッド競走優勝馬
馬名 | リステッド競走優勝 | 後のJRA重賞勝ち |
アルクトス | オアシスS | プロキオンS |
ダイアトニック | 安土城S | スワンS、函館SS |
ロードマイウェイ | ポートアイランドS | チャレンジC |
エアアルマス | エニフS | 東海S |
アウィルアウェイ | オパールS | シルクロードS |
ダイワキャグニー | オクトーバーS | エプソムC |
スマイルカナ | 米子S | ターコイズS |
オーヴェルニュ | 福島民友C | 東海S、平安S |
レッドルゼル | コーラルS | 根岸S |
テリトーリアル | カシオペアS | 小倉大賞典 |
ランブリングアレー | カシオペアS | 中山牝馬S |
トーラスジェミニ | ディセンバーS | 七夕賞 |
ロータスランド | 米子S | 関屋記念 |
カテドラル | 朱鷺S | 京成杯オータムH |
※背景灰は表3と重複
最後に表4は、後にJRA重賞を制したリステッド競走優勝馬。このうちアルクトスは盛岡でダートのJpn1・南部杯を連覇しているが、2019年に非L競走の欅Sを制しており表3と重複。今年のドバイゴールデンシャヒーンで2着になったレッドルゼルも同様で、表4でのみ名前が挙がった馬としてはヴィクトリアM2着のランブリングアレー、高松宮記念3着のダイアトニックあたりが代表になる。
以上、3・4歳以上のオープン特別優勝馬の次走以降について、リステッド競走優勝馬と非L競走優勝馬に分けて検証してみた。まだリステッド競走が設定されてから3年足らず。今後この傾向に変化が出る可能性もあるが、現状では重賞でリステッド競走優勝馬を非L競走優勝馬より上位にとる必要はない。しかし一方で、オープン特別で戦っているかぎりはリステッド競走優勝馬が優位。この2点を踏まえてレースの予想にあたりたい。
ライタープロフィール
浅田知広(あさだ ともひろ)
1970年12月、埼玉県生まれ。立命館大学文学部中退後、夕刊紙レース部のアルバイト、競馬データベース会社を経て、現在はフリー。パソコンが広く普及する以前から、パソコン通信でデータ手入力方式の競馬予想ソフトを公開するなど、競馬のみならずPCやネットワークにも精通。その知識を活かし、Webや雑誌で競馬ライターとして活躍するかたわら、ネットワークの専門誌にも連載を持つ。