データde出〜た
第1571回 今年も超豪華メンバーが集結! 天皇賞・秋を展望する
2021/10/28(木)
三冠馬コントレイル、3階級制覇を目指すグランアレグリア、長距離G1を2勝したワールドプレミア、古馬に挑む皐月賞馬エフフォーリアなど、今年も豪華なメンバーが揃った天皇賞・秋。現代競馬で重視される芝2000mの大一番を、過去10年のデータから展望していきたい。データの分析には、JRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用した。
■表1 人気別成績
人気 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回率 | 複回率 |
1番人気 | 5- 2- 1- 2/ 10 | 50.0% | 70.0% | 80.0% | 131% | 107% |
2番人気 | 1- 3- 2- 4/ 10 | 10.0% | 40.0% | 60.0% | 31% | 109% |
3番人気 | 0- 1- 1- 8/ 10 | 0.0% | 10.0% | 20.0% | 0% | 41% |
4番人気 | 0- 1- 0- 9/ 10 | 0.0% | 10.0% | 10.0% | 0% | 31% |
5番人気 | 3- 1- 0- 6/ 10 | 30.0% | 40.0% | 40.0% | 431% | 113% |
6番人気 | 0- 0- 5- 5/ 10 | 0.0% | 0.0% | 50.0% | 0% | 146% |
7番人気 | 1- 1- 0- 8/ 10 | 10.0% | 20.0% | 20.0% | 333% | 120% |
8番人気 | 0- 0- 0- 10/ 10 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% |
9番人気 | 0- 0- 0- 10/ 10 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% |
10番人気〜 | 0- 1- 1- 70/ 72 | 0.0% | 1.4% | 2.8% | 0% | 16% |
表1は人気別成績。1番人気は過去10年で5勝を挙げ、複勝率80.0%と好成績を収めている。88年から99年にかけて1番人気が12連敗したこともあるレースだが、現在は本命馬が強いG1となっている。2番人気も複勝率60.0%としっかり好走。3、4番人気はやや振るわないものの、5番人気は3勝、6番人気も複勝率50.0%、7番人気も2頭が連対を果たしており、このあたりの中穴級にも注意したい。これより人気のない馬は苦戦が否めず、激走はあまり期待できないようだ。
■表2 枠番別成績
枠番 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回率 | 複回率 |
1枠 | 1- 2- 0-14/17 | 5.9% | 17.6% | 17.6% | 9% | 27% |
2枠 | 1- 1- 0-16/18 | 5.6% | 11.1% | 11.1% | 61% | 22% |
3枠 | 0- 0- 3-15/18 | 0.0% | 0.0% | 16.7% | 0% | 33% |
4枠 | 4- 1- 2-12/19 | 21.1% | 26.3% | 36.8% | 132% | 101% |
5枠 | 1- 3- 0-16/20 | 5.0% | 20.0% | 20.0% | 18% | 39% |
6枠 | 2- 1- 1-15/19 | 10.5% | 15.8% | 21.1% | 262% | 87% |
7枠 | 1- 2- 2-20/25 | 4.0% | 12.0% | 20.0% | 5% | 59% |
8枠 | 0- 0- 2-24/26 | 0.0% | 0.0% | 7.7% | 0% | 20% |
表2は枠番別成績。舞台となる東京芝2000mは、スタート直後にカーブが設けられている関係で外枠が不利とされる。表2の成績を見る限り、天皇賞・秋でも事情は変わらないようで、過去10年で8枠から連対した馬は見当たらない。また、隣の7枠の好走率は決して悪くないものの、1着となると20年のアーモンドアイだけ。同馬は単勝1.4倍の圧倒的な支持を集めていたことを考慮すると、7枠から勝ち切るのも容易ではなさそうだ。かといって内枠の好走率もあまりよくない。狙いやすそうなのは過去10年で4勝の4枠や単勝回収率262%の6枠で、真ん中から少し外ぐらいの枠が好成績を収めている。
■表3 牡牝・年齢別成績
項目 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回率 | 複回率 | |
性別 | 牡馬・セン馬 | 8- 8- 8-124/148 | 5.4% | 10.8% | 16.2% | 60% | 46% |
牝馬 | 2- 2- 2- 8/14 | 14.3% | 28.6% | 42.9% | 21% | 65% | |
年齢 | 3歳 | 0- 1- 1- 9/ 11 | 0.0% | 9.1% | 18.2% | 0% | 24% |
4歳 | 3- 6- 5- 31/ 45 | 6.7% | 20.0% | 31.1% | 44% | 90% | |
5歳 | 7- 3- 3- 36/ 49 | 14.3% | 20.4% | 26.5% | 147% | 68% | |
6歳 | 0- 0- 1- 29/ 30 | 0.0% | 0.0% | 3.3% | 0% | 5% | |
7歳以上 | 0- 0- 0- 27/ 27 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% |
表3は、牡牝別と年齢別の成績をまとめたもの。単純に牡馬(セン馬を含む)と牝馬の好走率を比べると牝馬のほうが圧倒的に高い。とはいえ、アーモンドアイが2勝、ジェンティルドンナが2着2回、クロノジェネシスとアエロリットが3着1回ずつと、好走したのはいずれ劣らぬ名牝ばかり。この4頭はすべて牡馬混合G1を勝っており、これが牝馬の好走条件となるか。
年齢別では5歳が7勝、4歳が3勝で、過去10年では3歳の勝ち馬は出ていない。また、6歳は30頭走って3着1回と苦しく、7歳以上の好走例はない。4、5歳が中心となり、古馬に挑む3歳がどこまでやれるか、というのが天皇賞・秋の構図となっている。
■表4 前走レース別成績
前走レース名 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回率 | 複回率 |
毎日王冠・G2 | 3- 2- 5-39/49 | 6.1% | 10.2% | 20.4% | 87% | 60% |
安田記念・G1 | 2- 2- 0- 4/ 8 | 25.0% | 50.0% | 50.0% | 37% | 103% |
札幌記念・G2 | 2- 1- 0-13/16 | 12.5% | 18.8% | 18.8% | 230% | 81% |
宝塚記念・G1 | 1- 3- 3-16/23 | 4.3% | 17.4% | 30.4% | 13% | 67% |
オールカマー・G2 | 1- 0- 0-23/24 | 4.2% | 4.2% | 4.2% | 12% | 6% |
京都大賞典・G2 | 1- 0- 0-13/14 | 7.1% | 7.1% | 7.1% | 24% | 11% |
天皇賞(春)・G1 | 0- 1- 1- 4/ 6 | 0.0% | 16.7% | 33.3% | 0% | 101% |
セントライト記念・G2 | 0- 1- 1- 0/ 2 | 0.0% | 50.0% | 100.0% | 0% | 135% |
表4は前走レース別成績。G1から見ていくと、相性がいいのは前走安田記念で、出走した延べ8頭中4頭が連対を果たしている。前走宝塚記念は2番目に多い延べ7頭が好走を果たしているが、勝ったのは17年のキタサンブラックだけで2、3着が多い。前走天皇賞・春は1200mもの大幅な距離短縮となるが、複勝率33.3%となかなかの好成績で侮れない。
G2では、出走例、好走例ともに最多の毎日王冠が最重要の前哨戦で、この組に関しては後述する表6の項で改めてデータを確認したい。前走札幌記念は、そこで2着以内に入っていれば【2.1.0.4】と怖い存在になる。前走オールカマーは18年にレイデオロ、前走京都大賞典は15年にラブリーデイがそれぞれ勝っているが、ともにこれが唯一の好走例。どちらもあまり直結しないようだ。なお、セントライト記念は2頭がいずれも好走した注目の前走だが、今年の登録16頭に該当する馬はいない。
■表5 前走G1出走馬の各種データ
前走 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回率 | 複回率 | |
人気 | 1番人気 | 3- 2- 0- 3/ 8 | 37.5% | 62.5% | 62.5% | 76% | 93% |
2番人気 | 0- 2- 2- 1/ 5 | 0.0% | 40.0% | 80.0% | 0% | 188% | |
3番人気 | 0- 2- 0- 5/ 7 | 0.0% | 28.6% | 28.6% | 0% | 50% | |
4番人気 | 0- 0- 1- 4/ 5 | 0.0% | 0.0% | 20.0% | 0% | 70% | |
5番人気 | 0- 0- 0- 3/ 3 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% | |
6〜9番人気 | 0- 0- 1- 8/ 9 | 0.0% | 0.0% | 11.1% | 0% | 66% | |
10番人気〜 | 0- 0- 0- 1/ 1 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% | |
着順 | 1着 | 0- 2- 1- 2/ 5 | 0.0% | 40.0% | 60.0% | 0% | 114% |
2着 | 1- 0- 1- 2/ 4 | 25.0% | 25.0% | 50.0% | 35% | 75% | |
3着 | 1- 1- 0- 4/ 6 | 16.7% | 33.3% | 33.3% | 26% | 36% | |
4着 | 0- 0- 0- 4/ 4 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% | |
5着 | 0- 0- 1- 1/ 2 | 0.0% | 0.0% | 50.0% | 0% | 300% | |
6〜9着 | 1- 1- 1- 5/ 8 | 12.5% | 25.0% | 37.5% | 38% | 86% | |
10着〜 | 0- 2- 0- 7/ 9 | 0.0% | 22.2% | 22.2% | 0% | 67% |
表5は前走G1出走馬について、そのG1の人気別と着順別の成績をまとめたもの。どちらの相関関係が強いかといえば、人気であることは明らかだ。前走G1出走馬で1着があるのは、前走で1番人気に押されていた馬だけ。2番人気だった馬の好走率も非常に高く、合わせて前走G1で1、2番人気ならかなり有望とみなせるだろう。以下、連対例があるのは3番人気までで、4番人気以下だった場合は3着までという傾向が見て取れる。
■表6 前走毎日王冠出走馬の各種データ
前走 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回率 | 複回率 | |
人気 | 1番人気 | 0- 1- 0- 4/ 5 | 0.0% | 20.0% | 20.0% | 0% | 52% |
2番人気 | 1- 0- 2- 3/ 6 | 16.7% | 16.7% | 50.0% | 276% | 146% | |
3番人気 | 0- 0- 0- 4/ 4 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% | |
4番人気 | 0- 0- 1- 6/ 7 | 0.0% | 0.0% | 14.3% | 0% | 21% | |
5番人気 | 1- 0- 0- 4/ 5 | 20.0% | 20.0% | 20.0% | 220% | 52% | |
6〜9番人気 | 1- 1- 2-12/16 | 6.3% | 12.5% | 25.0% | 96% | 89% | |
10番人気〜 | 0- 0- 0- 6/ 6 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% | |
着順 | 1着 | 0- 1- 1- 4/ 6 | 0.0% | 16.7% | 33.3% | 0% | 68% |
2着 | 1- 0- 1- 5/ 7 | 14.3% | 14.3% | 28.6% | 221% | 72% | |
3着 | 1- 0- 2- 3/ 6 | 16.7% | 16.7% | 50.0% | 183% | 143% | |
4着 | 0- 0- 0- 4/ 4 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% | |
5着 | 0- 0- 1- 1/ 2 | 0.0% | 0.0% | 50.0% | 0% | 120% | |
6〜9着 | 1- 1- 0-14/16 | 6.3% | 12.5% | 12.5% | 103% | 60% | |
10着〜 | 0- 0- 0- 8/ 8 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% | |
4角 | 1〜4番手 | 0- 0- 3-13/16 | 0.0% | 0.0% | 18.8% | 0% | 45% |
5番手〜 | 3- 2- 2-26/33 | 9.1% | 15.2% | 21.2% | 130% | 68% | |
上がり | 1〜3位 | 2- 2- 1-12/17 | 11.8% | 23.5% | 29.4% | 155% | 88% |
4位〜 | 1- 0- 4-27/32 | 3.1% | 3.1% | 15.6% | 51% | 46% |
表6は前走毎日王冠出走馬について、前走の人気別・着順別・4角通過順別・上がり順位別の成績をまとめたもの。前走人気にさほどの相関関係は見られず、9番人気までに収まっていればいいかなというところ。着順は5着までには入っておきたいが、6〜9着から巻き返した例もあり、10着以下でなければ注意を払っておきたい。前走4角通過順は「1〜4番手」と「5番手以降」に分けているが、連対例があるのは5番手以降のほうだけ。1〜4番手だった馬は3着までで、毎日王冠では差す競馬をしておいたほうがいいようだ。前走上がりは1〜3位の脚を使っておきたいところで、4位以下だと好走の確率が下がる。
■表7 芝2000mの複勝率別成績
複勝率 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回率 | 複回率 |
100% | 4- 6- 7-23/40 | 10.0% | 25.0% | 42.5% | 24% | 99% |
75%以上100%未満 | 2- 0- 1-18/21 | 9.5% | 9.5% | 14.3% | 93% | 31% |
75%未満 | 4- 4- 2-82/92 | 4.3% | 8.7% | 10.9% | 68% | 35% |
未出走 | 0- 0- 0- 9/ 9 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% |
表7は、出走時点における芝2000mの複勝率別成績。100%だった馬の好走率が高い一方で、75%以上100%未満でも数値が大きくダウン。75%未満になるとさらに下がってしまい、芝2000m未出走だった馬の好走例はない。天皇賞・秋は芝2000mの日本最高峰ともいえるレースだけあって、求められる水準は非常に高いようだ。
【結論】
今年の天皇賞・秋に登録があるのは16頭で、フルゲート18頭に満たないため全馬が出走可能となる。ここまで述べてきたデータと照らし合わせて、有望と思われる馬を紹介したい。
まずは前走G1出走馬から。該当するのはコントレイル、グランアレグリア、ワールドプレミア、エフフォーリアのG1馬4頭と、G1好走の常連であるカレンブーケドールの計5頭という豪華すぎる顔ぶれが並ぶ。
表5の通り、前走のG1で1、2番人気に推されていた馬の好走率が高く、該当するのはコントレイル、グランアレグリア、エフフォーリアの3頭(順に大阪杯、安田記念、ダービーで1番人気)。このうち、コントレイルとエフフォーリアの2頭は芝2000mで複勝率100%と距離実績も十分。年齢的には4歳のコントレイルのほうが有望かもしれないが、3歳のエフフォーリアも黙ってはいないだろう。
一方、グランアレグリアは芝2000m初出走となった今年の大阪杯で4着に敗退。かなりの道悪だったため情状酌量の余地は大いにあるが、データ上は複勝率75%未満に該当する。やはりここでも距離の克服が最大のテーマとなりそうだ。
ワールドプレミアとカレンブーケドールはいずれも5歳で、前走のG1で3番人気だったことでも共通する。ワールドプレミアは3000m級のG1を2勝しているが、芝2000mの2戦でも2、3着に入って複勝率100%。天皇賞・春以来の臨戦馬はなかなかの結果を出しており、チャンスは十分あるのではないか。カレンブーケドールも芝2000mで複勝率100%。ただし、牝馬の好走条件である牡馬混合G1勝利は、G1未勝利のこの馬には満たすことができない。データを覆し、ここで悲願のG1制覇はなるか。
前走G2出走馬は、毎日王冠組の5頭から見ていくのが妥当だ。毎日王冠では人気、着順ともにシングルには収まっておきたいところで、これを満たすのは4番人気3着のポタジェと9番人気6着のサンレイポケットの2頭。ただし、サンレイポケットは6歳の年齢が引っかかり、狙うとすれば4歳のポタジェか。毎日王冠の4角通過順が4番手で、できれば5番手以降のほうがベターだったが、芝2000mで9戦して複勝率100%の距離実績は侮れない。
札幌記念組も2頭いるが、そこでどちらも連対には至らず。であれば、4連勝で制した中山記念以来となるヒシイグアスか。こちらも芝2000mで3戦3勝と距離適性が高く、強豪たちを一挙に撃破したいところだ。
ライタープロフィール
出川塁(でがわ るい)
1977年熊本県生まれ。上智大学文学部卒業後、出版社2社で競馬専門誌、競馬書籍の編集に携わり、2007年からフリーライターに。「競馬最強の法則」「サラブレ」「優駿」などへ寄稿するほか、出版社勤務時代を含めて制作に関わった競馬書籍は多数。馬券は単勝派だが、焼肉はタン塩派というわけではない。メインの競馬のほか、サッカーでも密かに活動中。