データde出〜た
第1569回 混戦の菊花賞を制する馬は?
2021/10/21(木)
今週日曜日に阪神競馬場で菊花賞が行われる。皐月賞馬エフフォーリアやダービー馬シャフリヤールが不在となる点は寂しいが、その分複数の馬に勝つチャンスがありそうで、予想も楽しみな一戦となった。例年レースが行われる京都芝3000mとは違うコースになるが、いつものように過去10年のデータを分析し、今年の菊花賞を占っていきたい。データの分析にはJRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用した。
■表1 過去10年の菊花賞の前走レース別成績
前走レース名 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回収率 | 複回収率 |
神戸新聞G2 | 8- 5- 4-49/66 | 12.1% | 19.7% | 25.8% | 38 | 51 |
セントラG2 | 1- 3- 2-46/52 | 1.9% | 7.7% | 11.5% | 25 | 47 |
ラジオNIHG3 | 1- 0- 0- 0/ 1 | 100.0% | 100.0% | 100.0% | 1450 | 450 |
札幌記念G2 | 0- 1- 0- 2/ 3 | 0.0% | 33.3% | 33.3% | 0 | 166 |
小牧特別・2勝 | 0- 1- 0- 0/ 1 | 0.0% | 100.0% | 100.0% | 0 | 350 |
阿賀野川・2勝 | 0- 0- 2- 1/ 3 | 0.0% | 0.0% | 66.7% | 0 | 570 |
兵庫特H・2勝 | 0- 0- 1- 6/ 7 | 0.0% | 0.0% | 14.3% | 0 | 44 |
支笏湖特・2勝 | 0- 0- 1- 0/ 1 | 0.0% | 0.0% | 100.0% | 0 | 520 |
まずは過去10年(以下、同様)の菊花賞の前走レース別成績(表1参照)を見ていこう。前走神戸新聞杯組が8勝2着5回3着4回と好走馬の過半数を占めた。前走セントライト記念組に比べると、好走率が高いことは一目瞭然だ。前走日本ダービー組の好走馬は1頭もいないが、前走ラジオNIKKEI賞2着だったフィエールマンと、前走札幌記念3着だったレインボーラインが好走している。前走トライアル組以外でも、夏場に芝中距離重賞で好走した馬は軽視しない方が良さそうだ。
また、前走2勝(1000万)クラス組も5頭好走している。勝つのはかなり難しいだろうが、3着以内なら十分チャンスがありそうだ。
■表2 前走神戸新聞杯組の前走着順別成績(過去10年)
前入線順位 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 |
前走1着 | 5- 0- 1- 1/ 7 | 71.4% | 71.4% | 85.7% |
前走2着 | 1- 4- 1- 4/10 | 10.0% | 50.0% | 60.0% |
前走3着 | 2- 1- 0- 6/ 9 | 22.2% | 33.3% | 33.3% |
前走4着 | 0- 0- 1- 7/ 8 | 0.0% | 0.0% | 12.5% |
前走5着 | 0- 0- 1- 6/ 7 | 0.0% | 0.0% | 14.3% |
前走6〜9着 | 0- 0- 0-18/18 | 0.0% | 0.0% | 0.0% |
前走10着〜 | 0- 0- 0- 7/ 7 | 0.0% | 0.0% | 0.0% |
表2は前走神戸新聞杯組の前走着順別成績。前走神戸新聞杯1着馬が5勝と抜群の好成績。菊花賞ではすべて1番人気に支持され、2014年ワンアンドオンリー(9着)以外は馬券に絡んでいる。前走神戸新聞杯2着馬も連対率50.0%、複勝率60.0%と好成績。前走神戸新聞杯3着馬も2勝2着1回と連対馬が3頭出ている。基本的に前走神戸新聞杯組は3着以内に入っている馬が有力だ。4着以下に敗れていた場合は厳しくなり、6着以下だった馬が巻き返したケースはない。
■表3 前走セントライト記念組の前走着順別成績(過去10年)
前入線順位 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 備考 |
前走1着 | 1- 0- 0- 6/ 7 | 14.3% | 14.3% | 14.3% | キタサンブラックは皐月賞3着 |
前走2着 | 0- 2- 2- 4/ 8 | 0.0% | 25.0% | 50.0% | サトノフラッグは皐月賞5着 |
前走3着 | 0- 0- 0-10/10 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | |
前走4着 | 0- 0- 0- 3/ 3 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | |
前走5着 | 0- 0- 0- 7/ 7 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | |
前走6〜9着 | 0- 1- 0-10/11 | 0.0% | 9.1% | 9.1% | クリンチャーは皐月賞4着 |
前走10着〜 | 0- 0- 0- 6/ 6 | 0.0% | 0.0% | 0.0% |
続いて表3は前走セントライト記念組の前走着順別成績。前走セントライト記念1着馬は、15年キタサンブラックだけが勝ち、その他の馬は4着以下に敗れている。前走神戸新聞杯1着馬に比べると、だいぶ成績が悪い。また前走セントライト記念2着馬の方が同1着馬よりも、連対率や複勝率は高かった。前走セントライト記念3着以下はかなり不振。17年のクリンチャー(セントライト記念9着→菊花賞2着)しか、本番で巻き返した例はない。クリンチャーは当時、重賞勝ちの実績はなかったが、皐月賞で4着と善戦していた。前述のキタサンブラックも皐月賞では3着と好走しており、20年サトノフラッグ(セントライト記念2着→菊花賞3着)も皐月賞は5着と善戦していた。前走セントライト記念組は前走着順も重要だが、皐月賞で好走・善戦しているか、という点もチェックしておきたい。
■表4 前走2勝(1000万)クラス組の前走距離別成績(過去10年)
前走平地距離 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 |
1800m | 0- 0- 0- 8/ 8 | 0.0% | 0.0% | 0.0% |
2000m | 0- 0- 0-10/10 | 0.0% | 0.0% | 0.0% |
2200m | 0- 1- 2- 2/ 5 | 0.0% | 20.0% | 60.0% |
2400m | 0- 0- 1- 7/ 8 | 0.0% | 0.0% | 12.5% |
2500m | 0- 0- 0- 6/ 6 | 0.0% | 0.0% | 0.0% |
2600m | 0- 0- 1- 3/ 4 | 0.0% | 0.0% | 25.0% |
表4は前走2勝(1000万)クラス組の前走距離別成績。前走1800〜2000m組が18頭いて1頭も3着以内に入っていない点に注目だ。一方、前走2200m組は2着1回3着2回で複勝率は60.0%と高い。たった1ハロンの差だが、2000m組と2200m組とでは大きく違うことがわかる。前走2400mと2600m組からは3着馬が1頭ずつ出ている。前走2500m組の好走馬はいないが、昔であれば好走例(04年デルタブルース)がある。基本的に長めの距離(2200m以上)を使われている馬の方がいい。
■表5 菊花賞で好走した前走2勝(1000万)クラス組の馬(過去10年)
年 | 着順 | 馬名 | 人気 | 前走レース名 | 前距離 | 前着 | 日本ダービーの前哨戦 |
20年 | 2 | アリストテレス | 4 | 小牧特別・2勝 | 2200 | 1 | プリンシパルS6着 |
18年 | 3 | ユーキャンスマイル | 10 | 阿賀野川1000 | 2200 | 1 | 京都新聞杯6着 |
17年 | 3 | ポポカテペトル | 13 | 阿賀野川1000 | 2200 | 1 | 青葉賞4着 |
14年 | 3 | ゴールドアクター | 7 | 支笏湖特1000 | 2600 | 1 | 青葉賞4着 |
13年 | 3 | バンデ | 3 | 兵庫特H1000 | 2400 | 1 | 青葉賞15着 |
表5では菊花賞で好走した前走2勝(1000万)クラス組の馬を詳しく記した。昨年2着のアリストテレスや、13年3着バンデはまずまず人気を集めていたが、17年ポポカテペトルは13番人気、18年ユーキャンスマイルは10番人気と前評判は低かった。前走のレース内容がいい馬だけが有力、というわけではなく、伏兵馬が飛んでくる可能性も十分ある。また、好走馬全5頭は2勝クラス→菊花賞と、形の上では昇級戦になるが、春にダービートライアルなど日本ダービーの前哨戦を経験していた。特にゴールドアクターやポポカテペトルは、青葉賞で4着と善戦していた。上がり馬とはいえ、重賞・リステッド競走の経験が全くない場合は、厳しいかもしれない。
【結論】
それでは今年の菊花賞を占っていくことにする。出走予定馬は表6の通りだ。
■表6 今年の菊花賞出走予定馬
馬名 | 前走レース名 | 前距離 | 前着 | 備考 |
アサマノイタズラ | セントラG2 | 2200 | 1 | |
アリーヴォ | 柳川特別・2勝 | 2000 | 1 | |
エアサージュ | 札幌日H・2勝 | 2600 | 1 | |
オーソクレース | セントラG2 | 2200 | 3 | |
グラティアス | セントラG2 | 2200 | 9 | |
ステラヴェローチェ | 神戸新聞G2 | 2200 | 1 | |
セファーラジエル | 神戸新聞G2 | 2200 | 7 | |
タイトルホルダー | セントラG2 | 2200 | 13 | 皐月賞2着 |
※テーオーロイヤル | 1勝クラス | 2200 | 1 | 青葉賞4着 |
ディープモンスター | 東京優駿G1 | 2400 | 16 | |
ディヴァインラヴ | 木曽川特・2勝 | 2200 | 1 | |
※ノースザワールド | 浜名湖特・2勝 | 2000 | 2 | |
※ハギノピリナ | 紫苑SG3 | 2000 | 8 | オークス3着 |
※マカオンドール | 木曽川特・2勝 | 2200 | 2 | 京都新聞杯3着 |
モンテディオ | 神戸新聞G2 | 2200 | 3 | |
レッドジェネシス | 神戸新聞G2 | 2200 | 2 | |
ロードトゥフェイム | 九十九里・2勝 | 2500 | 1 | |
ワールドリバイバル | セントラG2 | 2200 | 11 | |
※ワイドエンペラー | 金山特別・1勝 | 2200 | 1 | 京都新聞杯8着 |
ヴァイスメテオール | ラジオNIHG3 | 1800 | 1 | |
ヴィクティファルス | セントラG2 | 2200 | 5 | |
ヴェローチェオロ | 三田特別・2勝 | 2200 | 1 | 京都新聞杯5着 |
フルゲート18頭。※は抽選対象。
今年も神戸新聞杯は中京芝2200mで行われ、なおかつ極度の不良馬場となったが、好走した馬に関しては素直に評価してみたいところ。勝ったステラヴェローチェと、2着レッドジェネシスがまずは有力だろう。かなりタフなコンディションでレースをしたので、疲労が残っていたり反動があったりすると心配だが、力を振り絞って最後の1冠に臨んでほしい。神戸新聞杯3着のモンテディオは前走、1、2着馬とは0.5秒差という内容だった。それほど離されていないし、阪神芝3000mも合いそうだ。人気はないかもしれないが、有力とみる。
前走セントライト記念組の取捨は難しい。勝ったのはアサマノイタズラだが、皐月賞は16着と惨敗している。セントライト記念2着のソーヴァリアントは今回不在で、同3着オーソクレースは今春、休んでいた。タイトルホルダーはセントライト記念で13着と敗れたが、最後の直線で不利があった。皐月賞で2着と好走した地力があるだけに、巻き返してくる可能性がありそうだ。
ヴァイスメテオールは前走ラジオNIKKEI賞で重賞初制覇。菊花賞トライアルは使わず、ぶっつけ本番になったが警戒したい。前走2勝クラス組の中ではヴェローチェオロをマーク。前走は阪神芝2200mの2勝クラス・三田特別を勝った。春は京都新聞杯で5着と、ダービー前哨戦の経験がある。
ライタープロフィール
小田原智大(おだわら ともひろ)
1975年6月、東京生まれ。早稲田大学商学部卒業後、業界紙記者を経て、(株)レイヤード入社。ライター&エディターとして活躍。JRA-VANデータの配信初期から、いち早くデータ競馬の有効性に着目する。05年5月より「競馬 最強の法則WEB」にて、障害戦を除く全重賞レースの傾向と対策、予想を展開。「オッズパーク ダートグレードデータ作戦」では、地方競馬の重賞の攻略にも取り組んでいる。仕事の関係でなかなか競馬場には行けなくなったが、年に1、2回行くローカル遠征が楽しみ。