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第1548回 新馬勝ちは必須条件? 2歳・3歳G1を制した馬のデビュー戦は?
2021/8/9(月)
今年の2歳戦開幕から約2カ月。これまで新馬戦では65頭が勝利を挙げ、初戦で敗れた馬も未勝利戦で30頭が勝ち上がっている(8月1日現在)。近年の超一流馬では、2018年と2020年の年度代表馬・アーモンドアイが初戦で2着に敗れていたが、他の多くのG1馬はデビュー戦でどんな結果を残していたのだろうか。今回は2歳限定G1と3歳限定G1の優勝馬にかぎって、そのデビュー戦での成績を調べてみたい。データの分析には、JRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用し、2011年以降の2歳・3歳G1優勝馬を対象とした。
■表1 2歳・3歳限定G1優勝馬のデビュー戦成績
デビュー戦 | 該当馬数 | 主な該当馬 |
新馬戦1着 | 57頭 | コントレイル |
新馬戦2着 | 15頭 | アーモンドアイ |
新馬戦3着 | 2頭 | エポカドーロ |
新馬戦4〜5着 | 2頭 | ヌーヴォレコルト |
新馬戦6着以下 | 1頭 | ワンアンドオンリー |
未勝利戦 | 1頭 | トーホウジャッカル |
表1は、集計対象となる78頭のデビュー戦での成績を調べたものである。まず3歳5月の未勝利戦デビューで10着に敗れたトーホウジャッカル(2014年菊花賞1着)は例外中の例外で、他の77頭は新馬戦でデビューしていた。このうち、2020年の三冠馬・コントレイルなど約4分の3にあたる57頭は新馬戦で勝利を挙げている。ただ前述のアーモンドアイのほか、2012年の牝馬三冠馬・ジェンティルドンナや、2015年のクラシック二冠馬・ドゥラメンテと、後に世代の主役を担うような馬が新馬戦では2着に敗れていた例もある。3着以下では苦しくなるが、2着さえ確保していればまだまだ2歳・3歳G1を制するチャンスは十分にありそうな印象があった。
■表2 生年別、2歳・3歳限定G1優勝馬のデビュー戦成績
生年 | 新馬戦1着 | 新馬戦2着 | その他 |
2008〜2015年生まれ | 39頭(67.2%) | 13頭(22.4%) | 6頭(10.3%) |
2016〜2018年生まれ | 18頭(90.0%) | 2頭(10.0%) | 0頭(0.0%) |
しかし近年は、そんな印象通りの結果にはなっていない、というのが表2である。集計対象78頭のうち2008年〜2015年生まれの58頭をみると、新馬戦を勝っていたのは全体の3分の2程度だった。ところが2016年〜2018年生まれになると、該当馬20頭のうち18頭は新馬戦で1着。新馬戦2着はわずか1割の2頭で、新馬戦3着以下や未勝利戦デビューの馬はゼロ。2歳・3歳限定G1を勝つためには、新馬戦1着がほぼ必須になっているのが近年の傾向だ。
■表3 2歳・3歳限定G1優勝馬の新馬戦成績(現3〜5歳世代)
年 | 馬名 | 人気 | 着順 | 主な勝ち鞍(2、3歳時) |
2018 | グランアレグリア | 1 | 1 | 桜花賞 |
ダノンファンタジー | 2 | 2 | 阪神JF | |
サートゥルナーリア | 1 | 1 | 皐月賞 | |
アドマイヤマーズ | 1 | 1 | NHKマイルC | |
ロジャーバローズ | 1 | 1 | 日本ダービー | |
クロノジェネシス | 1 | 1 | 秋華賞 | |
ワールドプレミア | 1 | 1 | 菊花賞 | |
ラヴズオンリーユー | 2 | 1 | オークス | |
2019 | サリオス | 2 | 1 | 朝日杯FS |
ラウダシオン | 1 | 1 | NHKマイルC | |
コントレイル | 1 | 1 | 日本ダービー | |
レシステンシア | 1 | 1 | 阪神JF | |
デアリングタクト | 2 | 1 | オークス | |
2020 | ユーバーレーベン | 4 | 1 | オークス |
ダノンザキッド | 2 | 1 | ホープフルS | |
ソダシ | 3 | 1 | 桜花賞 | |
グレナディアガーズ | 1 | 2 | 朝日杯FS | |
エフフォーリア | 1 | 1 | 皐月賞 | |
シュネルマイスター | 1 | 1 | NHKマイルC | |
シャフリヤール | 1 | 1 | 日本ダービー |
表3はその2016年〜2018年生まれ、つまり現3歳〜5歳世代の20頭。このうち、新馬戦で敗れていた2頭は2018年の阪神JFを制したダノンファンタジー、そして2020年の朝日杯FS優勝馬・グレナディアガーズと、ともに2歳G1を制した馬だった。2歳G1制覇なら新馬戦2着でも可能性あり、3歳G1制覇には新馬戦1着が必須。これを聞けば「逆ではないか?」と思ってしまいそうだが、そんな結果が出ているのが近年の2歳・3歳G1戦線だ。
以上、2歳・3歳限定G1を制した馬のデビュー戦について調べてみた。まだアーモンドアイ(新馬戦2着)の引退から1年も経っていないだけに、気になる馬のデビュー戦を見て「新馬戦2着ならひとまず合格点」と思う方も少なくないだろう。しかしここにきて傾向が変わってきているため、これまで以上に力を入れて新馬戦の走りを見守りたいところだ。
ライタープロフィール
浅田知広(あさだ ともひろ)
1970年12月、埼玉県生まれ。立命館大学文学部中退後、夕刊紙レース部のアルバイト、競馬データベース会社を経て、現在はフリー。パソコンが広く普及する以前から、パソコン通信でデータ手入力方式の競馬予想ソフトを公開するなど、競馬のみならずPCやネットワークにも精通。その知識を活かし、Webや雑誌で競馬ライターとして活躍するかたわら、ネットワークの専門誌にも連載を持つ。