第1545回 8年ぶりとなる函館芝1800mのクイーンSを分析する|競馬情報ならJRA-VAN

競馬予想・競馬情報ならJRA-VAN

データde出〜た

データde出〜たバックナンバー

第1545回 8年ぶりとなる函館芝1800mのクイーンSを分析する

2021/7/29(木)

今週は日曜日に函館競馬場でクイーンSが行われる。例年は札幌の開幕週に行われているレースだが、今年は変則開催になったため、2013年以来8年ぶりに函館芝1800mで行われる同レースを分析する。データの分析にはJRA-VAN DataLab.TARGET frontier JVを利用した。

■表1 過去10年のクイーンS上位馬

開催 着順 馬名 人気 走破タイム 前走レース名 前着 備考
20年 1札4 1 レッドアネモス 11 1459 マーメイHG3 8  
2 ビーチサンバ 4 1460 ヴィクトG1 9 阪神JF3着
3 スカーレットカラー 1 1460 ヴィクトG1 15  
19年 1札2 1 ミッキーチャーム 1 1470 ヴィクトG1 8 秋華賞2着
2 スカーレットカラー 5 1470 マーメイHG3 3  
3 カリビアンゴールド 9 1470 五稜郭S・3勝 2  
18年 1札2 1 ディアドラ 1 1462 ドバイターフG1 3 秋華賞1着
2 フロンテアクイーン 4 1467 中山牝馬HG3 2  
3 ソウルスターリング 2 1467 ヴィクトG1 7 阪神JF1着
17年 1札2 1 アエロリット 2 1457 NHKマG1 1  
2 トーセンビクトリー 6 1461 マーメイHG3 9  
3 クインズミラーグロ 8 1463 マーメイHG3 2  
16年 1札2 1 マコトブリジャール 9 1477 福島牝馬G3 1  
2 シャルール 1 1477 ヴィクトG1 18  
3 ダンツキャンサー 11 1481 安土城SH 2  
15年 1札2 1 メイショウスザンナ 7 1471 マーメイHG3 10  
2 レッドリヴェール 1 1471 ヴィクトG1 4 阪神JF1着
3 イリュミナンス 4 1473 マーメイHG3 6  
14年 1札4 1 キャトルフィーユ 2 1457 ヴィクトG1 5  
2 アロマティコ 6 1457 巴賞 1  
3 スマートレイアー 1 1457 ヴィクトG1 8 秋華賞2着
13年 3函2 1 アイムユアーズ 1 1494 ヴィクトG1 8 阪神JF2着
2 スピードリッパー 8 1494 夏至SH1600 13  
3 オールザットジャズ 3 1495 ヴィクトG1 13  
12年 1札4 1 アイムユアーズ 1 1472 優駿牝馬G1 4 阪神JF2着
2 ラブフール 10 1472 五稜郭H1600 8  
3 ミッドサマーフェア 4 1473 優駿牝馬G1 13  
11年 1札2 1 アヴェンチュラ 1 1466 漁火S1600 1  
2 コスモネモシン 10 1466 ヴィクトG1 11  
3 アニメイトバイオ 3 1468 七夕賞HG3 3 秋華賞2着

表1は過去10年のクイーンS上位(3着以内)馬一覧。レースでの人気や走破タイム、前走レース名、前走着順、備考として注目したい実績を記載した。そもそも今回、例年(札幌)の結果がどこまで参考になるのか、という問題があることは当然理解している。札幌芝1800mと函館芝1800mのコースを比較した場合、北海道の洋芝でコーナーが4つの小回りコースという点においては同じ特徴を持つ。最後の直線距離も札幌が266.1m(Aコース時)、函館が262.1m(Aコース時)とほとんど差がない。しかし、コース形態には違いがある。

例えば、札幌はコース全体が丸みを帯びているのでコーナーが比較的緩やかだ。一方、函館はコーナー角度がきつく、それを緩和するため3〜4コーナーにはスパイラルカーブが導入されている。一般的な小回りコースのイメージは函館の方で、コーナーリングの得手不得手が大きなポイントになるだろう。

2013/7/28 函館11R クイーンステークス(G3) 1着 5番 アイムユアーズ

12年と13年のクイーンSを連覇したアイムユアーズは、札幌と函館両方の開催で勝っている。今回のレースを考える上では貴重なサンプルだ。勝ちタイムを比較すると12年が1分47秒2(良)に対し、13年が1分49秒4(良)と2分2秒もの差があった。同じ良馬場なのにこれだけタイムが違うとレースの質が似ているとは言い難い。札幌芝1800mのクイーンSと函館芝1800mのクイーンSでは、求められる適性が違うかもしれない。アイムユアーズの場合は、自身の絶対能力でカバーしただけという可能性もありそうだ。今回もいつものように過去10年のデータを見ていくが、どんな結果になるか少々心配ではある。

好走馬30頭の前走レース内訳はヴィクトリアマイルが11頭でマーメイドSが6頭。この2レースで過半数を占めた。あとはドバイターフや福島牝馬Sといった他の重賞組が7頭。オープン特別組が2頭、3勝(1600万)クラス組が4頭だった。

さらに前走ヴィクトリアマイル組は11頭中10頭が4番人気以内(その内6頭が1番人気)だった。ヴィクトリアマイルでの着順は悪くても、それ以前の成績が評価されて今回上位人気に推されるというパターンが多い印象だ。

一方、前走マーメイドS組は6頭すべてが4番人気以下だった。基本的には前走成績なりの人気になることが多いが、上位人気にはなりづらい傾向だ。前走マーメイドSで2着と好走していた17年クインズミラーグロ、同3着と好走していた19年スカーレットカラーでもそれぞれクイーンSでは8番人気、5番人気という評価だった。前走ヴィクトリアマイル組よりも前走マーメイドS組の方が明らかに配当妙味はあるが、その分狙い方は難しい。

前走ヴィクトリアマイル・マーメイドS以外の重賞組は前走好着順の馬が多い。17年アエロリットは前走NHKマイルC1着、18年ディアドラは前走ドバイターフ1着とG1で勝利していた。前走オープン特別組は14年2着アロマティコ(巴賞1着)、16年3着ダンツキャンサー(安土城S2着)ともに前走は連対。前走3勝クラス組は12年2着ラブフール(五稜郭S8着)や13年2着スピードリッパー(夏至S13着)のように大きく負けていた馬の巻き返しがある。ただ、近年はこの好走パターンはなく、19年は好調カリビアンゴールド(五稜郭S2着)が格上挑戦で3着と結果を残している。

前走レース成績以外で注目したいのは、過去に芝1600〜2000mのG1で3着以内の実績があるかどうかだ。備考に記したようにビーチサンバ、ソウルスターリング、レッドリヴェール、アイムユアーズは2歳時に阪神ジュベナイルフィリーズで好走。ミッキーチャーム、スマートレイアー、アニメイトバイオは3歳時に秋華賞で連対。前走NHKマイルCを優勝したアエロリットを含めると、30頭中10頭は芝1600〜2000mのG1で3着以内に好走したことがあった。中心馬を選ぶ際には、こうした実績も気にしたいところだ。

【結論】

それでは今年のクイーンSを展望する。出走予定馬(7/28午前時点)は表2の通りだ。

■表2 今年のクイーンS出走予定馬(7/28午前時点)

馬名 前走レース名 前着 備考
アラスカ 五稜郭S・3勝 12  
イカット かもめ島・2勝 1  
ウインマイティー 愛知杯HG3 14  
クラヴァシュドール 米子S(L) 3 阪神JF3着
サトノセシル 洞爺湖特・2勝 1  
シゲルピンクダイヤ ヴィクトG1 5 桜花賞2着・秋華賞3着
シャムロックヒル マーメイHG3 1  
テルツェット ヴィクトG1 14  
ドナアトラエンテ 福島牝馬G3 2  
フェアリーポルカ スパーG3 4  
マイエンフェルト HTBH・2勝 1  
マジックキャッスル ヴィクトG1 3 秋華賞2着
ラキ 函館道新・2勝 9  
ローザノワール マリーンH 13  

2021/1/16 中京11R 愛知杯(G3) 1着 18番 マジックキャッスル

まず注目すべき前走ヴィクトリアマイル組はマジックキャッスル、シゲルピンクダイヤ、テルツェット。この3頭はいずれも今年の本競走で上位人気に推されるかもしれない。特にマジックキャッスルは昨年秋華賞で2着に入り、その後は愛知杯1着→阪神牝馬S2着→ヴィクトリアマイル3着と重賞で連続好走。今回1番人気になる可能性が高く、実際に最も有力とみたい。シゲルピンクダイヤは一昨年に桜花賞2着、秋華賞3着とG1で2回好走した経験がある。小回りコースが合っているイメージはないが、地力でどうにかできるか。

前走マーメイドS組はシャムロックヒルのみ。マーメイドSではハナにたってそのまま押し切ったが、ハンデ50キロと1枠発走という恵まれた条件が重なった勝利のように見えた。

前走福島牝馬Sで2着に好走したドナアトラエンテは有力。G1経験はないが、例年は同レース好走馬とクイーンSの相性はいい傾向だ。また、前走米子Sで3着と復調の兆しがあるクラヴァシュドールを警戒。2歳時に阪神ジュベナイルフィリーズで3着に入ったことがある。前走ヴィクトリアマイル組以外ではこのあたりに注目したい。

ライタープロフィール

小田原智大(おだわら ともひろ)

1975年6月、東京生まれ。早稲田大学商学部卒業後、業界紙記者を経て、(株)レイヤード入社。ライター&エディターとして活躍。JRA-VANデータの配信初期から、いち早くデータ競馬の有効性に着目する。05年5月より「競馬 最強の法則WEB」にて、障害戦を除く全重賞レースの傾向と対策、予想を展開。「オッズパーク ダートグレードデータ作戦」では、地方競馬の重賞の攻略にも取り組んでいる。仕事の関係でなかなか競馬場には行けなくなったが、年に1、2回行くローカル遠征が楽しみ。


データde出〜たバックナンバー

データ競馬のための最強ツール TARGET frontier JV(ターゲット)