データde出〜た
第1475回 G1・3勝以上馬3頭激突! 過去の結果は?
2020/11/23(月)
今年はコントレイルが3歳クラシック三冠、そしてデアリングタクトが牝馬三冠をそれぞれ無敗で達成。無敗の三冠馬2頭が対戦するというだけでも「史上初」となる今週のジャパンCだが、ここに2年前に牝馬三冠を制したアーモンドアイも加わって、「三冠馬3頭激突」というのもまた「史上初」。競馬ファンならずとも、大いに注目を集めそうな一戦だ。史上初ゆえに過去のデータももちろん存在しないため、今回は「G1・3勝以上馬が3頭以上出走」したレースの結果を振り返ってみたい。データ分析にはJRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用した。
■表1 1986年以降のJRA平地G1で3勝以上を記録した馬
生年 | JRA平地G1・3勝以上馬 |
1983 | ニッポーテイオー、メジロラモーヌ |
1984 | イナリワン、タマモクロス |
1985 | オグリキャップ、スーパークリーク |
1987 | メジロマックイーン |
1988 | トウカイテイオー、ヤマニンゼファー |
1989 | ニシノフラワー、ミホノブルボン、ライスシャワー |
1990 | ビワハヤヒデ |
1991 | ナリタブライアン |
1992 | マヤノトップガン |
1994 | タイキシャトル、メジロドーベル |
1995 | グラスワンダー、スペシャルウィーク、ファレノプシス |
1996 | テイエムオペラオー |
1997 | アグネスデジタル |
1998 | テイエムオーシャン、マンハッタンカフェ |
1999 | シンボリクリスエス、デュランダル、ヒシミラクル |
2000 | スティルインラブ、ゼンノロブロイ |
2001 | スイープトウショウ、ダイワメジャー |
2002 | カネヒキリ、ディープインパクト |
2003 | メイショウサムソン |
2004 | ウオッカ、ダイワスカーレット、ドリームジャーニー |
2006 | トランセンド、ブエナビスタ |
2007 | アパパネ |
2008 | オルフェーヴル、ロードカナロア |
2009 | ゴールドシップ、ジェンティルドンナ、ストレイトガール |
2010 | メイショウマンボ、ロゴタイプ |
2011 | モーリス |
2012 | キタサンブラック |
2014 | リスグラシュー |
2015 | アーモンドアイ、フィエールマン、ラッキーライラック |
2016 | グランアレグリア |
2017 | コントレイル、デアリングタクト |
表1は、JRA-VAN Data Lab.でデータが提供されている1986年以降に、JRAの平地G1を3勝以上した馬の一覧である(生年別)。トライアルも含めたいわゆる「牝馬三冠完全制覇」のメジロラモーヌや、競馬ブームを牽引したオグリキャップなどなど、記録にも記憶にも残る名馬ばかりだ。2000年以降では2005年と2013年が該当馬不在だが、地方競馬で行われたダートグレード競走まで含めれば、2005年生まれはエスポワールシチーとスマートファルコン、2013年生まれではゴールドドリームやケイティブレイブがG1・3勝以上を達成している。後の「G1・3勝以上馬」はほぼ毎年のように出生していると言っていいだろう。
■表2 JRA平地G1・3勝以上馬(当該レース以後達成も含む)が3頭以上出走したレース
年 | レース | 1着 | 2着 | 3着 | 4着以下 |
1988 | 有馬記念 | オグリキャップ | タマモクロス | サッカーボーイ | スーパークリーク(3位失格) |
1989 | 天皇賞(秋) | スーパークリーク | オグリキャップ | メジロアルダン | イナリワン(6着) |
ジャパンC | ホーリックス | オグリキャップ | ペイザバトラー | スーパークリーク(4着) | |
イナリワン(11着) | |||||
有馬記念 | イナリワン | スーパークリーク | サクラホクトオー | オグリキャップ(5着) | |
1993 | 有馬記念 | トウカイテイオー | ビワハヤヒデ | ナイスネイチャ | ライスシャワー(8着) |
1999 | 有馬記念 | グラスワンダー | スペシャルウィーク | テイエムオペラオー | ファレノプシス(8着) |
2001 | 有馬記念 | マンハッタンカフェ | アメリカンボス | トゥザヴィクトリー | テイエムオペラオー(5着) |
テイエムオーシャン(6着) | |||||
2002 | 有馬記念 | シンボリクリスエス | タップダンスシチー | コイントス | テイエムオーシャン(10着) |
ヒシミラクル(11着) | |||||
2003 | 宝塚記念 | ヒシミラクル | ツルマルボーイ | タップダンスシチー | シンボリクリスエス(5着) |
アグネスデジタル(13着) | |||||
有馬記念 | シンボリクリスエス | リンカーン | ゼンノロブロイ | アグネスデジタル(9着) | |
2004 | 天皇賞(秋) | ゼンノロブロイ | ダンスインザムード | アドマイヤグルーヴ | ヒシミラクル(16着) |
ダイワメジャー(17着) | |||||
2005 | 宝塚記念 | スイープトウショウ | ハーツクライ | ゼンノロブロイ | スティルインラブ(9着) |
2006 | 有馬記念 | ディープインパクト | ポップロック | ダイワメジャー | メイショウサムソン(5着) |
スイープトウショウ(10着) | |||||
2007 | 宝塚記念 | アドマイヤムーン | メイショウサムソン | ポップロック | ウオッカ(8着) |
ダイワメジャー(12着) | |||||
有馬記念 | マツリダゴッホ | ダイワスカーレット | ダイワメジャー | メイショウサムソン(8着) | |
ウオッカ(11着) | |||||
2008 | 天皇賞(秋) | ウオッカ | ダイワスカーレット | ディープスカイ | ドリームジャーニー(10着) |
有馬記念 | ダイワスカーレット | アドマイヤモナーク | エアシェイディ | ドリームジャーニー(4着) | |
メイショウサムソン(8着) | |||||
2014 | 宝塚記念 | ゴールドシップ | カレンミロティック | ヴィルシーナ | ジェンティルドンナ(9着) |
メイショウマンボ(11着) | |||||
有馬記念 | ジェンティルドンナ | トゥザワールド | ゴールドシップ | メイショウマンボ(15着) | |
2019 | 有馬記念 | リスグラシュー | サートゥルナーリア | ワールドプレミア | フィエールマン(4着) |
アーモンドアイ(9着) |
※赤字:表1の該当馬 背景黄:当該レース前の時点でJRAの平地G1を3勝以上
表1の該当馬(JRA平地G1生涯3勝以上)が3頭以上出走したのは、これまで計20レース。ただ、表2はあくまで「生涯3勝以上」の馬が3頭以上出走したレースであり、出走時にはG1・2勝以下だった馬も多く含まれる。当該レース時点で「JRA平地G1・3勝以上」を達成していた馬(背景黄)が「3頭以上」揃ったのは、2006年と2007年の有馬記念、そして2014年の宝塚記念・有馬記念の計4競走だ(いずれも3頭ずつ)。
■表3 2006年有馬記念の結果
馬名 | 人気 | 着順 | 前走 | 2走前 | その他G1優勝実績 |
ディープインパクト | 1 | 1 | ジャパンC1着 | 凱旋門賞失格 | 3歳クラシック三冠など |
ポップロック | 6 | 2 | メルボルンC2着 | コーフィールドC7着 | |
ダイワメジャー | 3 | 3 | マイルCS1着 | 天皇賞(秋)1着 | 皐月賞 |
スイープトウショウ | 5 | 10 | エリザベス女王杯2着 | 天皇賞(秋)5着 | 宝塚記念、エリザベス女王杯など |
2006年の有馬記念は、前年の3歳クラシック三冠馬で、この年は天皇賞(春)、宝塚記念、ジャパンCを制していたディープインパクトの引退レース。断然人気に応え、2着に3馬身の差をつける圧勝でその花道を飾った。
天皇賞(秋)、マイルCSとG1連勝中だったダイワメジャーは、距離が不安視されながらも3番人気で3着。そしてスイープトウショウは2走前、1番人気に推された天皇賞(秋)で5着に敗れていたこともあって5番人気の評価にとどまり、10着に敗退している。2着にはG1未勝利馬で6番人気のポップロックが食い込んで、3連単は万馬券一歩手前の9680円。単勝1.2倍のディープインパクトが優勝した割には「荒れた」と言っていいだろう。
■表4 2007年有馬記念の結果
馬名 | 人気 | 着順 | 前走 | 2走前 | その他G1優勝実績 |
マツリダゴッホ | 9 | 1 | 天皇賞(秋)15着 | オールカマー1着 | |
ダイワスカーレット | 5 | 2 | エリザベス女王杯1着 | 秋華賞1着 | 桜花賞 |
ダイワメジャー | 6 | 3 | マイルCS1着 | 天皇賞(秋)9着 | 安田記念、天皇賞(秋)など |
メイショウサムソン | 1 | 8 | ジャパンC3着 | 天皇賞(秋)1着 | 天皇賞(春)、日本ダービーなど |
翌2007年の有馬記念はメイショウサムソンが1番人気。前年に二冠(皐月賞・日本ダービー)を制し、この年は天皇賞春秋連覇を飾っていたが、この有馬記念では前年5着を下回る8着に敗退した。また、ダイワメジャー、ダイワスカーレットの兄妹が3、2着に入ったものの、それぞれやはり距離には不安を抱えており、5、6番人気の評価だった。
優勝したのは中山巧者のマツリダゴッホ。この2007年はアメリカJCC、オールカマーと中山のG2で2勝を挙げていたが、有馬記念と同距離の日経賞では3着。また、春秋の天皇賞では11着、15着に終わっており、距離・相手関係ともに厳しいとみられて当日は9番人気。この低評価を覆しての激走で、3連単80万馬券の大波乱を演出した。
■表5 2014年宝塚記念の結果
馬名 | 人気 | 着順 | 前走 | 2走前 | その他G1優勝実績 |
ゴールドシップ | 1 | 1 | 天皇賞(春)7着 | 阪神大賞典1着 | 有馬記念、宝塚記念など |
カレンミロティック | 9 | 2 | 鳴尾記念4着 | 大阪杯(G2)4着 | |
ヴィルシーナ | 8 | 3 | ヴィクトリアM1着 | 阪神牝馬S11着 | ヴィクトリアM(前年) |
ジェンティルドンナ | 3 | 9 | ドバイシーマC1着 | 京都記念6着 | 牝馬三冠、ジャパンC |
メイショウマンボ | 4 | 11 | ヴィクトリアM2着 | 大阪杯(G2)7着 | オークス、エリザベス女王杯など |
2014年の宝塚記念に出走したG1・3勝馬は、ゴールドシップ、ジェンティルドンナ、そしてメイショウマンボと、今回のジャパンCと同じ牡馬1頭、牝馬2頭という構成だった。優勝したのは牡馬のゴールドシップ。前走の天皇賞(春)は出遅れもあって7着に敗れたが、このレースではスタート直後の最後方から1コーナーでは4番手まで巻き返し、最後は2着に3馬身差をつけて宝塚記念連覇を達成した。
ドバイからの帰国初戦だったジェンティルドンナは3番人気で9着、そしてヴィクトリアM2着からの参戦だったメイショウマンボは4番人気で11着に敗退。2着には9番人気のカレンミロティック、3着には8番人気のヴィルシーナが入り、1番人気のゴールドシップが優勝しながら3連単は25万馬券になった。
■表6 2014年有馬記念の結果
馬名 | 人気 | 着順 | 前走 | 2走前 | その他G1優勝実績 |
ジェンティルドンナ | 4 | 1 | ジャパンC4着 | 天皇賞(秋)2着 | 牝馬三冠、ジャパンC |
トゥザワールド | 9 | 2 | 菊花賞16着 | セントライト記念2着 | |
ゴールドシップ | 1 | 3 | 凱旋門賞14着 | 札幌記念2着 | 有馬記念、宝塚記念など |
メイショウマンボ | 14 | 15 | エリザベス女王杯12着 | 京都大賞典10着 | オークス、エリザベス女王杯など |
そして同年(2014年)の有馬記念には宝塚記念と同じ3頭が出走し、ここはジェンティルドンナが雪辱。宝塚記念9着後は秋の天皇賞が2着、そして3連覇のかかったジャパンCでは4着に敗れ、このレースでは4番人気まで評価を下げていたが、前々から後続の追撃を振り切って引退レースを勝利で飾っている。
ゴールドシップは道中後方から4コーナーで5番手の外まで進出したものの、直線でもうひと押しがきかず3着。メイショウマンボは前述の宝塚記念を含め3戦連続で2桁着順に敗退しており、有馬記念も14番人気で15着という結果だった。2着はこの年の皐月賞2着馬・トゥザワールド。前走の菊花賞で4.2秒差の16着大敗を喫していたため9番人気にとどまり、3連単は10万馬券とやはり波乱の決着となった。
以上、「JRA平地G1・3勝以上」馬が「3頭」出走した計4レースの結果を振り返ってみた。3連単の配当は9680円(2006年有馬記念)、10万9590円(2014年有馬記念)、25万1440円(2014年宝塚記念)、そして80万880円(2007年有馬記念)と荒れ模様。G1・3勝以上馬の1〜3着独占はおろか、ワンツー決着すら一度もない。この結果から、今回のジャパンCも三冠馬3頭ですんなりとは収まらないのではないか、とも思える。
しかし、これらのレースでG1・3勝以上の3頭が1〜3番人気を占めたことはなく(2014年宝塚記念の1、3、4番人気=平均人気2.67が最小)、3頭すべて前走1着というケースもなかった。今回は、いずれも前走でG1勝ちを飾っているコントレイル、デアリングタクト、アーモンドアイの3頭による上位人気独占が濃厚なだけに、これまでの4回とは違った結果になる可能性も十分にあるだろう。果たしてどんな結果が待っているのか、レース当日を楽しみに待ちたい。なお、ジャパンC過去10年の傾向分析は次回掲載分で行う予定だ。
ライタープロフィール
浅田知広(あさだ ともひろ)
1970年12月、埼玉県生まれ。立命館大学文学部中退後、夕刊紙レース部のアルバイト、競馬データベース会社を経て、現在はフリー。パソコンが広く普及する以前から、パソコン通信でデータ手入力方式の競馬予想ソフトを公開するなど、競馬のみならずPCやネットワークにも精通。その知識を活かし、Webや雑誌で競馬ライターとして活躍するかたわら、ネットワークの専門誌にも連載を持つ。