データde出〜た
第1444回 実力馬が多数参戦! エルムSを分析する
2020/8/6(木)
札幌競馬場のダート1700mを舞台に行われるエルムS。1996年の第1回は函館ダート1700mのシーサイドSとして行われ、翌97年から札幌のエルムSとなったが、その後も施行時期の変更や代替開催などがあり、現在の時期に定着したのは2015年から。そのため今回はそれ以降の5回を対象とし、JRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用してデータを分析してみたい。
■表1 人気別成績
人気 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回収 | 複回収 |
1 | 0-1-2-2/5 | 0.0% | 20.0% | 60.0% | 0% | 74% |
2 | 3-0-0-2/5 | 60.0% | 60.0% | 60.0% | 286% | 104% |
3 | 0-1-0-4/5 | 0.0% | 20.0% | 20.0% | 0% | 30% |
4 | 1-1-1-2/5 | 20.0% | 40.0% | 60.0% | 244% | 162% |
5 | 0-1-0-4/5 | 0.0% | 20.0% | 20.0% | 0% | 56% |
6 | 0-0-0-5/5 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% |
7 | 1-0-1-3/5 | 20.0% | 20.0% | 40.0% | 570% | 262% |
8 | 0-0-1-4/5 | 0.0% | 0.0% | 20.0% | 0% | 110% |
9 | 0-0-0-5/5 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% |
10 | 0-1-0-4/5 | 0.0% | 20.0% | 20.0% | 0% | 132% |
11〜 | 0-0-0-17/17 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% |
過去5年、人気別の複勝率上位は1、2、4番人気でいずれも60.0%。3番人気こそやや不振なものの、1〜4番人気で計【4.3.3.10】と3着以内馬15頭中10頭を占める。残る好走馬5頭は5〜10番人気。11番人気以下の馬はすべて馬券圏外、単勝オッズでみると40倍以上の馬は【0.0.0.24】と好走がない。
■表2 年齢別成績
年齢 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回収 | 複回収 |
4歳 | 2-0-0-6/8 | 25.0% | 25.0% | 25.0% | 203% | 50% |
5歳 | 3-2-2-8/15 | 20.0% | 33.3% | 46.7% | 258% | 150% |
6歳 | 0-2-2-17/21 | 0.0% | 9.5% | 19.0% | 0% | 40% |
7歳 | 0-1-0-14/15 | 0.0% | 6.7% | 6.7% | 0% | 18% |
8歳 | 0-0-0-4/4 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% |
9歳以上 | 0-0-1-3/4 | 0.0% | 0.0% | 25.0% | 0% | 217% |
年齢別では5歳馬が連対率33.3%、複勝率46.7%と抜群の好成績。勝率では4歳馬が5歳馬を上回るものの、【2.0.0.6】と勝てなければ馬券圏外という成績だ。優勝馬5頭はすべてこの4〜5歳から出ており、6歳以上の馬は計【0.3.3.38】。複勝率でも13.6%にとどまり、4〜5歳馬の同37.0%とは大きな差がある。
■表3 枠番別成績
枠番 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回収 | 複回収 |
1枠 | 0-0-0-5/5 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% |
2枠 | 1-1-0-3/5 | 20.0% | 40.0% | 40.0% | 244% | 80% |
3枠 | 1-1-2-4/8 | 12.5% | 25.0% | 50.0% | 76% | 122% |
4枠 | 2-1-1-5/9 | 22.2% | 33.3% | 44.4% | 362% | 141% |
5枠 | 1-0-0-9/10 | 10.0% | 10.0% | 10.0% | 41% | 15% |
6枠 | 0-0-1-9/10 | 0.0% | 0.0% | 10.0% | 0% | 87% |
7枠 | 0-0-0-10/10 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% |
8枠 | 0-2-1-7/10 | 0.0% | 20.0% | 30.0% | 0% | 98% |
枠番別の成績をみると、2、3、4枠がいずれも複勝率40%以上の好成績。2〜4枠の合計では【4.3.3.12】複勝率45.5%となり、単複の回収率もそれぞれ231%、120%と高い。ほかに、外では8枠が複勝率30.0%と悪くないが、6〜7枠は【0.0.1.19】。また1枠からは好走馬が出ていない。
■表4 前走クラス別成績
前走クラス | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回収 | 複回収 |
3勝(1600万) | 1-0-0-3/4 | 25.0% | 25.0% | 25.0% | 712% | 110% |
OPEN(非L) | 3-1-1-22/27 | 11.1% | 14.8% | 18.5% | 52% | 28% |
OPEN(L) | 0-1-0-0/1 | 0.0% | 100.0% | 100.0% | 0% | 660% |
中央G3 | 1-3-1-12/17 | 5.9% | 23.5% | 29.4% | 71% | 72% |
中央G2 | 0-0-0-3/3 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% |
地方競馬 | 0-0-3-12/15 | 0.0% | 0.0% | 20.0% | 0% | 103% |
前走クラス別では、中央競馬のG3組とオープン特別組の好走が多く、特に連対馬は10頭中9頭がここから出ている。オープン特別組は3勝を挙げる一方で、連対率や複勝率はやや低め。中央G3組は1勝止まりだが、連対率23.5%、複勝率29.4%と好走確率は高い。また、前走地方競馬組は好走しても3着止まりだが、ダートグレード競走出走馬にかぎると【0.0.3.7】で複勝率は30.0%になる。
■表5 前走オープン特別からの3着以内好走馬
年 | 馬名 | 人気 | 着順 | 前走 | 人気 | 着順 |
2015 | ジェベルムーサ | 2 | 1 | マリーンS | 1 | 3 |
2016 | モンドクラッセ | 1 | 3 | 大沼S | 1 | 1 |
2017 | テイエムジンソク | 1 | 2 | マリーンS | 1 | 1 |
2018 | ハイランドピーク | 2 | 1 | マリーンS | 2 | 2 |
2019 | モズアトラクション | 2 | 1 | マリーンS | 2 | 2 |
ハイランドピーク | 10 | 2 | 大沼S | 3 | 6 |
オープン特別組の3着以内好走馬は表5の6頭で、いずれもエルムSと同距離のマリーンSか大沼S(ともに函館)の出走馬。そのうち5頭は前走を上位人気で好走し、エルムSでも2番人気以内に支持されていた。残る1頭、昨年2着のハイランドピークは、前年のエルムS優勝馬だ。
■表6 前走中央G3からの3着以内好走馬
年 | 馬名 | 人気 | 着順 | 前走 | 人気 | 着順 | ダ17〜1800m重賞実績 |
2015 | グレープブランデー | 5 | 2 | プロキオンS | 6 | 5 | 東海S1着 |
2016 | クリノスターオー | 4 | 2 | 平安S | 3 | 2 | アンタレスS1着 |
2017 | ロンドンタウン | 4 | 1 | 平安S | 5 | 12 | アンタレスS2着 |
2018 | ドリームキラリ | 3 | 2 | プロキオンS | 4 | 6 | 前年本競走3着 |
2019 | サトノティターン | 4 | 3 | 平安S | 6 | 9 | マーチS1着 |
続いて表6は前走中央G3組の好走馬。こちらの5頭はプロキオンS(中京ダート1400m、本年は阪神で代替)か平安S(京都ダート1900m)と、エルムSとは200m以上離れた距離のレースに出走していたが、2走前以前にダート1800mの重賞で連対するか、エルムSで3着(以内)に入った実績があったことで共通している。
■表7 前走地方競馬からの3着以内好走馬
年 | 馬名 | 人気 | 着順 | 前走 | 人気 | 着順 | 札幌・函館ダ1700m |
2015 | エーシンモアオバー | 7 | 3 | 名古屋大賞典 | 4 | 4 | 【7.3.2.7】複勝率63.2% |
2017 | ドリームキラリ | 8 | 3 | マーキュリーC | 5 | 4 | 【2.0.1.1】複勝率75.0% |
2018 | ミツバ | 1 | 3 | マーキュリーC | 2 | 1 | 【1.1.1.0】複勝率100.0% |
そして表7は地方競馬組で、この組は札幌・函館のダート1700m成績に注目。好走した3頭すべてに出走経験があり、複勝率60%以上と安定した走りを見せていた。昨年1番人気で7着のグリムや、2017年2番人気7着のピオネロは、このエルムSが北海道のダート戦初出走で掲示板外敗退を喫した。
【結論】
前走でオープン特別か中央競馬のG3に出走していた馬が連対馬10頭中9頭を占めるエルムS。今年まず注目したいのはオープン特別組(表5)から、マリーンSを3馬身半差で圧勝してきたタイムフライヤーだ。そのマリーンSは2番人気で、今回も上位人気は必至。表5の好走条件はすんなりクリアできそうだ。4歳だった昨年は休養明けに加え初ダートで6着に敗退したが、4コーナーで2番手まで押し上げた走り自体は悪くなかった。5歳馬は好成績を残しており(表2)、ダート経験を積んだ今年は好勝負が期待できる。
オープン特別組ではほかに、ここ2年の本競走1、2着と好相性のハイランドピークにもチャンスがある。昨年は前走・大沼Sで6着に敗れ、オープン特別組の好走条件からは外れながらも2着に好走した。年齢をひとつ重ね6歳になった点は割引が必要でも(表2)、今年は大沼Sを3着にまとめており相殺できそうだ。
一方、中央G3組(表6)は前走平安S出走馬が不在で、プロキオンS組にはダート1700〜1800mの重賞で好走歴を持つ馬がいない。また、今回上位人気が予想されるアンタレスSの1、2着馬、ウェスタールンドとアナザートゥルースは重賞実績こそクリアするものの、そのアンタレスS組は過去5年【0.0.0.4】(2017年モンドクラッセ3番人気10着など)に終わっている。それぞれ8歳、6歳という年齢も減点材料となり、データからは強く推しづらい。
ライタープロフィール
浅田知広(あさだ ともひろ)
1970年12月、埼玉県生まれ。立命館大学文学部中退後、夕刊紙レース部のアルバイト、競馬データベース会社を経て、現在はフリー。パソコンが広く普及する以前から、パソコン通信でデータ手入力方式の競馬予想ソフトを公開するなど、競馬のみならずPCやネットワークにも精通。その知識を活かし、Webや雑誌で競馬ライターとして活躍するかたわら、ネットワークの専門誌にも連載を持つ。