データde出〜た
第1442回 秋に向けての新星は現れるか? クイーンSを展望する
2020/7/30(木)
今回は札幌で行なわれるクイーンSを取り上げる。過去3年、このレースではアエロリット、ディアドラ、ミッキーチャームとG1連対歴を持つ強豪が勝ってきた。今年の登録18頭に同等の実績を持つ馬は見当たらないが、ここでいいレースをして秋のG1戦線に名乗りを上げたいところだろう。そんな牝馬G3を過去10年のデータから展望してみたい。ただし、函館開催の13年は除くため、実際の集計対象は9年分となる。データ分析にはJRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用した。
■表1 人気別成績
人気 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回率 | 複回率 |
1番人気 | 4- 2- 1- 2/ 9 | 44.4% | 66.7% | 77.8% | 123% | 115% |
2番人気 | 3- 0- 1- 5/ 9 | 33.3% | 33.3% | 44.4% | 137% | 73% |
3番人気 | 0- 1- 1- 7/ 9 | 0.0% | 11.1% | 22.2% | 0% | 38% |
4番人気 | 0- 1- 2- 6/ 9 | 0.0% | 11.1% | 33.3% | 0% | 68% |
5番人気 | 0- 1- 0- 8/ 9 | 0.0% | 11.1% | 11.1% | 0% | 28% |
6番人気 | 0- 2- 1- 6/ 9 | 0.0% | 22.2% | 33.3% | 0% | 113% |
7番人気 | 1- 0- 0- 8/ 9 | 11.1% | 11.1% | 11.1% | 361% | 43% |
8番人気 | 0- 0- 1- 8/ 9 | 0.0% | 0.0% | 11.1% | 0% | 43% |
9番人気 | 1- 0- 1- 7/ 9 | 11.1% | 11.1% | 22.2% | 224% | 126% |
10番人気 | 0- 2- 0- 7/ 9 | 0.0% | 22.2% | 22.2% | 0% | 130% |
11番人気 | 0- 0- 1- 7/ 8 | 0.0% | 0.0% | 12.5% | 0% | 133% |
12番人気 | 0- 0- 0- 7/ 7 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% |
13番人気 | 0- 0- 0- 7/ 7 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% |
14番人気 | 0- 0- 0- 5/ 5 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% |
表1は人気別成績。集計対象の9年で1番人気が4勝、2番人気が3勝と、上位人気馬が勝つことが多い。特に1番人気は好走率、回収率ともに良好で、期待に十分応えている様子が見てとれる。一方、3番人気以下に関しては、10、11番人気あたりまで明確な好走率の差は見られない。オッズでいえば、単勝30.0〜49.9倍で【1.2.2.8】、複勝率38.5%、複勝回収率249%というのはかなりの好成績。単勝50.0倍以上になると【0.0.0.27】と苦しいが、単勝50倍未満に収まっていればチャンスありと言えそうだ。
■表2 馬番別成績
馬番 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回率 | 複回率 |
1番 | 0- 1- 1- 7/ 9 | 0.0% | 11.1% | 22.2% | 0% | 162% |
2番 | 3- 2- 1- 3/ 9 | 33.3% | 55.6% | 66.7% | 317% | 144% |
3番 | 0- 0- 0- 9/ 9 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% |
4番 | 0- 0- 2- 7/ 9 | 0.0% | 0.0% | 22.2% | 0% | 64% |
5番 | 0- 1- 0- 8/ 9 | 0.0% | 11.1% | 11.1% | 0% | 18% |
6番 | 0- 1- 2- 6/ 9 | 0.0% | 11.1% | 33.3% | 0% | 68% |
7番 | 0- 0- 0- 9/ 9 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% |
8番 | 1- 1- 1- 6/ 9 | 11.1% | 22.2% | 33.3% | 32% | 86% |
9番 | 2- 0- 0- 7/ 9 | 22.2% | 22.2% | 22.2% | 65% | 31% |
10番 | 1- 0- 1- 7/ 9 | 11.1% | 11.1% | 22.2% | 361% | 72% |
11番 | 0- 1- 0- 7/ 8 | 0.0% | 12.5% | 12.5% | 0% | 23% |
12番 | 1- 0- 0- 6/ 7 | 14.3% | 14.3% | 14.3% | 57% | 24% |
13番 | 1- 0- 0- 6/ 7 | 14.3% | 14.3% | 14.3% | 32% | 18% |
14番 | 0- 2- 1- 2/ 5 | 0.0% | 40.0% | 60.0% | 0% | 356% |
表2は馬番別成績。明確な内外の有利不利は見られないが、局地的に好成績を残している馬番はある。たとえば、2番枠は集計対象の9年で3勝を挙げ、回収率も抜群。あるいは、大外14番枠も複勝率60.0%としばしば好走し、3着以内3頭の内訳が9番人気1頭、10番人気2頭と穴馬ばかりだったため複勝回収率は356%にも達している。
■表3 年齢別成績
年齢 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回率 | 複回率 |
3歳 | 4- 0- 1- 11/ 16 | 25.0% | 25.0% | 31.3% | 80% | 55% |
4歳 | 2- 4- 4- 25/ 35 | 5.7% | 17.1% | 28.6% | 15% | 67% |
5歳 | 1- 5- 4- 33/ 43 | 2.3% | 14.0% | 23.3% | 12% | 91% |
6歳 | 2- 0- 0- 20/ 22 | 9.1% | 9.1% | 9.1% | 239% | 41% |
7歳 | 0- 0- 0- 1/ 1 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% |
表3は年齢別成績。4勝、勝率25.0%の3歳が目立つものの、今年登録がある18頭に3歳馬は見当たらない。中心となるのは4歳と5歳で、好走率としては4歳のほうが優位に立っている。6歳の好走率は高いとは言えないが、7番人気と9番人気で計2勝と激走傾向がある点には気をつけたい。
■表4 前走クラス別成績
前走クラス | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回率 | 複回率 |
2勝 | 0- 0- 0- 12/ 12 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% |
3勝 | 1- 1- 2- 15/ 19 | 5.3% | 10.5% | 21.1% | 14% | 90% |
オープン特別 | 0- 1- 1- 6/ 8 | 0.0% | 12.5% | 25.0% | 0% | 163% |
リステッド競走 | 0- 0- 0- 1/ 1 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% |
G3 | 2- 3- 3- 31/ 39 | 5.1% | 12.8% | 20.5% | 135% | 64% |
G2 | 0- 0- 0- 0/ 0 | |||||
G1 | 5- 4- 3- 23/ 35 | 14.3% | 25.7% | 34.3% | 50% | 69% |
※中央のレースのみが対象
表4は前走クラス別成績で、集計対象は中央のレースのみとなる。好走率が高いのは前走G1だが、回収率はそれほどでもなく、人気になりやすい傾向が見受けられる。前走G3は単勝回収率が高く、穴馬の勝ち切りに要注意。重賞以外では、前走オープン特別が複勝回収率163%、前走3勝クラスも同90%と、これらは2、3着に突っ込んでくるパターンに注意したい。なお、前走2勝クラスから馬券圏内に入った馬はいなかった。
■表5 前走ヴィクトリアマイル出走馬 前走4角通過順別成績
前走4角 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回率 | 複回率 |
4番手以内 | 2- 4- 0- 4/10 | 20.0% | 60.0% | 60.0% | 75% | 136% |
5番手以降 | 0- 0- 2- 7/ 9 | 0.0% | 0.0% | 22.2% | 0% | 37% |
表4で見た通り、前走クラス別ではG1から好走した馬が12頭と最多。そして、そのうち8頭の前走はヴィクトリアマイルだった。そこで、前走ヴィクトリアマイル出走馬に関して「前走4角通過順別」の成績を示したのが表5だ。これを見ると、ヴィクトリアマイルの4角を4番手以内で通過していた馬が計6連対しているのに対し、5番手以降だった場合は3着までとなっている。このデータを見る限り、前走ヴィクトリアマイル組は着順を問わず、先行していた馬を狙うのがポイントと考えられそうだ。
■表6 前走マーメイドS出走馬の各種データ
前走 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回率 | 複回率 | |
人気 | 1〜5番人気 | 0- 2- 2- 9/13 | 0.0% | 15.4% | 30.8% | 0% | 94% |
6番人気〜 | 1- 0- 0-10/11 | 9.1% | 9.1% | 9.1% | 295% | 35% | |
斤量 | 今回増 | 1- 1- 2-10/14 | 7.1% | 14.3% | 28.6% | 232% | 87% |
増減なし | 0- 0- 0- 4/ 4 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% | |
今回減 | 0- 1- 0- 5/ 6 | 0.0% | 16.7% | 16.7% | 0% | 65% |
前走G3出走の好走は計8頭で、そのうち5頭はマーメイドS組だった。そこでこの組のデータをあたったところ、興味深い傾向が見られたのが「前走人気」と「斤量の増減」のふたつ。まず、前走人気に関しては1〜5番人気に収まっておきたい。15年に7番人気1着のメイショウスザンナ(前走マーメイドSは13番人気10着)の例があり、前走6番人気以下も無視できないとはいえ、好走率としては大きな差がついている。また、マーメイドSからの斤量の増減を見ると、好走した5頭中4頭が今回増だった。
■表7 同年の古馬牝馬重賞に関するデータ
レース名・着順 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回率 | 複回率 | |
愛知杯・G3 | 1〜3着 | 0- 0- 1- 2/ 3 | 0.0% | 0.0% | 33.3% | 0% | 130% |
4着〜 | 1- 1- 0- 5/ 7 | 14.3% | 28.6% | 28.6% | 288% | 112% | |
京都牝馬S・G3 | 1〜3着 | 0- 0- 0- 3/ 3 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% |
4着〜 | 1- 1- 1-10/13 | 7.7% | 15.4% | 23.1% | 250% | 158% | |
中山牝馬S・G3 | 1〜3着 | 1- 3- 1- 7/12 | 8.3% | 33.3% | 41.7% | 43% | 142% |
4着〜 | 1- 1- 0-17/19 | 5.3% | 10.5% | 10.5% | 12% | 19% | |
阪神牝馬S・G2 | 1〜3着 | 1- 1- 1- 3/ 6 | 16.7% | 33.3% | 50.0% | 38% | 76% |
4着〜 | 0- 2- 2- 5/ 9 | 0.0% | 22.2% | 44.4% | 0% | 194% | |
福島牝馬S・G3 | 1〜3着 | 3- 2- 1- 8/14 | 21.4% | 35.7% | 42.9% | 413% | 161% |
4着〜 | 0- 2- 0-12/14 | 0.0% | 14.3% | 14.3% | 0% | 57% | |
ヴィクトリアマイル・G1 | 1〜3着 | 0- 0- 0- 3/ 3 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% |
4着〜 | 2- 4- 3-16/25 | 8.0% | 24.0% | 36.0% | 30% | 75% | |
マーメイドS・G3 | 1〜3着 | 0- 1- 1- 7/ 9 | 0.0% | 11.1% | 22.2% | 0% | 72% |
4着〜 | 1- 1- 1-16/19 | 5.3% | 10.5% | 15.8% | 171% | 51% |
表7は、同年の古馬牝馬重賞における「1〜3着馬」と「4着以下馬」が、クイーンSに出走した場合にどのような成績を収めているのかを示したもの。なお、同一の馬が複数のレースに出走した場合は、それぞれ別個で集計している。
1〜3着馬が好成績を収めているレース、すなわちクイーンSと着順が直結しやすい重賞として挙げたいのが中山牝馬Sと福島牝馬Sのふたつ。いずれも1〜3着馬の複勝率は40%を超え、回収率も高い。両レースともに「芝1800m」「右回り」「最後の直線が短い」といった条件がクイーンSと共通しており、直結するのも大いに納得できる。逆に着順が直結しないのは京都牝馬Sとヴィクトリアマイル。この両レースで1〜3着に入った馬はクイーンSですべて馬券圏外に終わっており、むしろ4着以下に敗れていた馬のほうが狙いやすい。
そのほか、阪神牝馬Sは1〜3着馬も4着以下馬もどちらも高い好走率を記録しており、ここに出走していた馬がクイーンSに出てきたら要注意。また、愛知杯も着順を問わずなかなかの好走率を記録しており、回収率の高さも見逃せない。
【結論】
上記のデータ傾向を元に、今年のクイーンSで有望と思われる馬を挙げていきたい。
まずはフェアリーポルカだ。なんといってもクイーンSと着順が直結しやすい中山牝馬Sと福島牝馬Sを連勝中。このレースで勝ち味に遅い4歳馬ではあるが、3歳馬がいない今年は勝機も十分ありそうだ。また、福島牝馬Sで2着だったリープフラウミルヒもマークしておきたい。
今年のヴィクトリアマイルを使った馬は4頭おり、いずれも掲示板外に敗れているが、このレースは着順が直結しないため気にしなくていいだろう。むしろ注目すべきファクターは4角通過順で、連対例の多い4角4番手以内に該当するコントラチェックは要注意の存在と言える。なお、そのほかのヴィクトリアマイル出走馬であるビーチサンバ、シャドウディーヴァ、スカーレットカラーはいずれも阪神牝馬Sを使っている。そして、このレースを走っていた馬は着順を問わずクイーンSとの相性がいいため、この3頭も軽視はしづらい。
前走マーメイドS組は、そこで「1〜5番人気」かつ「斤量が今回増」となる馬の好走率が高く、この両方を満たすのがナルハヤ。激走傾向のある6歳馬であり、藤田菜七子騎手が騎乗予定という点でも楽しみな1頭だ。そのほか、同じく6歳のカリビアンゴールド、タガノアスワドにも警戒は必要だろう。
ライタープロフィール
出川塁(でがわ るい)
1977年熊本県生まれ。上智大学文学部卒業後、出版社2社で競馬専門誌、競馬書籍の編集に携わり、2007年からフリーライターに。「競馬最強の法則」「サラブレ」「優駿」などへ寄稿するほか、出版社勤務時代を含めて制作に関わった競馬書籍は多数。馬券は単勝派だが、焼肉はタン塩派というわけではない。メインの競馬のほか、サッカーでも密かに活動中。