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第1439回 免許取得から9年目以内の好調厩舎の起用騎手は?

2020/7/20(月)

2020年の中央競馬は折り返し点が過ぎ、下半期に突入している。上半期の成績が出たところで、その成績を振り返ってみたい。今回は厩舎(調教師)にスポットを当てた。今年ここまで(7/12開催終了時点)成績好調で、免許取得から9年目以内の厩舎の起用騎手を調べることにする。データ分析にはJRA-VAN DataLab.TARGET frontier JVを利用した。

■表1 2020年の調教師成績(7/12開催終了時点)

順位 調教師 所属 年齢 免許取得 年目 本年成績(平地) 勝率 連対率 複勝率
1 矢作芳人 栗東 59 2004 17 31- 20- 26-208(285) 10.9% 17.9% 27.0%
2 友道康夫 栗東 56 2001 20 30- 11- 10- 93(144) 20.8% 28.5% 35.4%
3 堀宣行 美浦 52 2002 19 28- 22- 14- 74(138) 20.3% 36.2% 46.4%
4 国枝栄 美浦 65 1989 32 25- 16- 11-111(163) 15.3% 25.2% 31.9%
5 西村真幸 栗東 44 2014 7 24- 18-  5- 97(144) 16.7% 29.2% 32.6%
6 藤沢和雄 美浦 68 1987 34 23- 15- 16- 80(134) 17.2% 28.4% 40.3%
7 安田隆行 栗東 67 1994 27 22- 18- 32-124(196) 11.2% 20.4% 36.7%
8 杉山晴紀 栗東 38 2016 5 21- 14- 14-152(201) 10.4% 17.4% 24.4%
9 清水久詞 栗東 48 2009 12 20- 16- 20-173(229) 8.7% 15.7% 24.5%
10 伊藤圭三 美浦 57 1997 24 20- 16- 18-119(173) 11.6% 20.8% 31.2%
11 佐々木晶三 栗東 64 1994 27 20- 10- 19- 97(146) 13.7% 20.5% 33.6%
12 池江泰寿 栗東 51 2003 18 19- 20- 21-106(166) 11.4% 23.5% 36.1%
13 池添学 栗東 39 2014 7 19- 14- 11-107(151) 12.6% 21.9% 29.1%
14 石坂正 栗東 69 1997 24 19- 14- 10-121(164) 11.6% 20.1% 26.2%
15 藤原英昭 栗東 55 2000 21 19-  9- 16- 94(138) 13.8% 20.3% 31.9%
16 戸田博文 美浦 56 2000 21 19-  7- 20-109(155) 12.3% 16.8% 29.7%
17 加藤征弘 美浦 54 2001 20 18- 20- 11- 98(147) 12.2% 25.9% 33.3%
18 木村哲也 美浦 47 2011 10 18- 14- 14- 82(128) 14.1% 25.0% 35.9%
19 斉藤崇史 栗東 37 2015 6 18- 14- 13- 96(141) 12.8% 22.7% 31.9%
20 野中賢二 栗東 54 2007 14 18- 14-  9- 81(122) 14.8% 26.2% 33.6%

表1は2020年の調教師成績で、勝利数(平地)が多い順番に上位20人を記載した。7/12の開催終了時点でトップを走るのは栗東の矢作芳人厩舎。今年はコントレイルで皐月賞・日本ダービーを制し、モズアスコットでフェブラリーSを優勝した。上半期だけでG1を3勝するなど、勝ち星の数・質ともに充実している印象だ。2位は友道康夫厩舎、3位は堀宣行厩舎、4位は国枝厩舎と名門厩舎が並ぶ。1位から4位の勝ち星の差は6しかないので、今後も激しいリーディング争いが繰り広げられそうだ。

勝ち星数で4位とわずか1差の5位につけているのが栗東の西村真幸厩舎だ。西村調教師は2014年にJRAの調教師免許を取得し、今年で7年目のキャリアになる。比較的キャリアは浅いものの、実績十分のベテラン厩舎に迫る好成績を収めている。キャリア9年以内の調教師に注目すると、8位に杉山晴紀調教師(5年目)、13位に池添学調教師(7年目)、19位に斉藤崇史調教師(6年目)がランクインした。若手の有望調教師ということで、今回はこの4つの厩舎の起用騎手について調べてみることにする。

■表2 西村真幸厩舎の騎手別成績(平地)

順位 騎手 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回収率 複回収率
1 松山弘平 6- 3- 0- 6/15 40.0% 60.0% 60.0% 157 100
2 川田将雅 5- 1- 2- 5/13 38.5% 46.2% 61.5% 100 84
3 吉田隼人 3- 3- 1-10/17 17.6% 35.3% 41.2% 831 242
4 西村淳也 2- 2- 0-11/15 13.3% 26.7% 26.7% 50 40
5 和田竜二 2- 1- 0- 3/ 6 33.3% 50.0% 50.0% 250 176
6 石橋脩 2- 0- 0- 7/ 9 22.2% 22.2% 22.2% 447 108
7 松若風馬 1- 1- 0- 5/ 7 14.3% 28.6% 28.6% 425 162
8 福永祐一 1- 1- 0- 0/ 2 50.0% 100.0% 100.0% 370 165
9 横山武史 1- 0- 0- 1/ 2 50.0% 50.0% 50.0% 590 265
10 ルメール 1- 0- 0- 0/ 1 100.0% 100.0% 100.0% 320 160

表2は西村真幸厩舎の騎手別成績(平地)。1位が松山弘平騎手で、2位が川田将雅騎手、3位が吉田隼人騎手、4位が西村淳也騎手だった。この4人は騎乗機会も多く、主戦騎手と言っていいだろう。吉田隼人騎手は美浦所属だが積極的に起用しているのが興味深い。ただし、中山や東京遠征時に頻繁に起用しているわけではない。詳しく成績を調べたところ、6月以降の函館開催で騎乗機会が一気に増え、3勝を挙げたものだった。次の北海道、札幌開催でも注目したいところだ。

5位の和田竜二騎手は【2.1.0.3】で勝利の内訳は中山牝馬Sと福島牝馬S。ともにフェアリーポルカで重賞を制したものだった。6位石橋脩騎手は4月のアーリントンCで、タイセイビジョンに騎乗して優勝している。重賞に関しては、さきほどの上位4騎手が勝ったものではなかった。

■表3 杉山晴紀厩舎の騎手別成績(平地)

順位 騎手 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回収率 複回収率
1 松山弘平 3- 2- 4-11/20 15.0% 25.0% 45.0% 53 87
2 加藤祥太 3- 0- 1- 5/ 9 33.3% 33.3% 44.4% 258 88
3 松若風馬 2- 1- 3-21/27 7.4% 11.1% 22.2% 47 77
4 長岡禎仁 2- 1- 1-14/18 11.1% 16.7% 22.2% 83 162
5 菱田裕二 2- 1- 0- 7/10 20.0% 30.0% 30.0% 88 54
6 川田将雅 1- 1- 1- 1/ 4 25.0% 50.0% 75.0% 42 90
7 ルメール 1- 1- 0- 2/ 4 25.0% 50.0% 50.0% 72 72
8 川又賢治 1- 0- 1- 3/ 5 20.0% 20.0% 40.0% 42 184
9 坂井瑠星 1- 0- 0- 5/ 6 16.7% 16.7% 16.7% 121 23
10 鮫島克駿 1- 0- 0-11/12 8.3% 8.3% 8.3% 61 20

2020/6/6 阪神10R 天満橋ステークス 1着 4番 ワンダーアマービレ

表3は杉山晴紀厩舎の騎手別成績(平地)。1位松山弘平騎手の3勝はすべてデアリングタクトで挙げたもの。今年はエルフィンSを好時計で圧勝し、桜花賞→オークスと無敗の二冠を達成した。加藤祥太騎手は2着数の差で2位になったが、1位の松山騎手と同じく3勝を挙げている。

3位松若風馬騎手は騎乗機会が27で、表3のメンバーでは最も多い。主戦騎手の中でも特に信頼を得ているように感じる。ただし、勝率7.4%、連対率11.1%、複勝率22.2%という数字は平凡にみえる。

4位にランクインした長岡禎仁騎手と杉山晴紀厩舎のコンビと言えば、2月のフェブラリーSがすぐに思い浮かぶ。16番人気のケイティブレイブで2着に入り大波乱を演出したレースだ。また、5番人気ワンダーアマービレが勝利した6月6日・阪神10レースの天満橋Sも印象深かった。長岡騎手が同馬をうまく操り、馬群を縫うように伸びて差し切ったレースだ。複勝率22.2%は松若騎手と同じだが、複勝回収率は長岡騎手が162%とかなり高い。好走時のインパクトと配当妙味があるという意味で、このコンビは今後も注目してみたい。

■表4 池添学厩舎の騎手別成績(平地)

順位 騎手 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回収率 複回収率
1 川田将雅 3- 2- 0- 2/ 7 42.9% 71.4% 71.4% 127 98
2 団野大成 3- 0- 3-13/19 15.8% 15.8% 31.6% 95 60
3 ルメール 3- 0- 0- 0/ 3 100.0% 100.0% 100.0% 390 140
4 西村淳也 2- 3- 0- 9/14 14.3% 35.7% 35.7% 325 123
5 藤岡佑介 2- 0- 0- 4/ 6 33.3% 33.3% 33.3% 198 75
6 シュタルケ 1- 1- 0- 5/ 7 14.3% 28.6% 28.6% 141 117
7 北村友一 1- 0- 3- 7/11 9.1% 9.1% 36.4% 73 57
8 岩田望来 1- 0- 0- 6/ 7 14.3% 14.3% 14.3% 41 22
9 松山弘平 1- 0- 0- 4/ 5 20.0% 20.0% 20.0% 76 30
10 ※中谷雄太 1- 0- 0- 3/ 4 25.0% 25.0% 25.0% 232 87

※中谷雄太騎手は5/24に引退。

続いて池添学厩舎の騎手別成績(平地)をみていく(表4参照)。1位は川田将雅騎手。騎乗機会は7回しかなかったが、3勝2着2回で勝率42.9%、連対率・複勝率71.4%という高い好走率をマークしている。2位には団野大成騎手がランクイン。騎乗機会が19回と、表4のメンバーの中では最も多かった。減量の恩恵を生かし、平場戦での活躍が目立っている。4位の西村淳也騎手も減量を期待してか、平場戦での起用が多い。連対率は35.7%と団野騎手よりもかなり優秀だ。3位はルメール騎手で3戦3勝という素晴らしい成績。エルディクラージュでブリリアントSとスレイプニルSを連勝している。なお、同調教師の兄である池添謙一騎手は【0.1.1.7】という成績でランク外となった。騎乗機会は7回あったものの、今年はここまで勝利がない。

■表5 斉藤崇史厩舎の騎手別成績(平地)

順位 騎手 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回収率 複回収率
1 北村友一 4- 4- 1- 7/16 25.0% 50.0% 56.3% 92 110
2 幸英明 4- 0- 2- 5/11 36.4% 36.4% 54.5% 522 183
3 団野大成 2- 1- 4-14/21 9.5% 14.3% 33.3% 42 133
4 福永祐一 1- 1- 2- 4/ 8 12.5% 25.0% 50.0% 108 73
5 武豊 1- 1- 0- 2/ 4 25.0% 50.0% 50.0% 137 95
6 杉原誠人 1- 1- 0- 2/ 4 25.0% 50.0% 50.0% 112 105
7 ルメール 1- 0- 1- 4/ 6 16.7% 16.7% 33.3% 60 45
8 酒井学 1- 0- 0- 1/ 2 50.0% 50.0% 50.0% 735 215
9 シュタルケ 1- 0- 0- 2/ 3 33.3% 33.3% 33.3% 356 70
10 M.デムーロ 1- 0- 0- 1/ 2 50.0% 50.0% 50.0% 1480 405

2020/6/28 阪神11R 宝塚記念(G1) 1着 16番 クロノジェネシス

最後に斉藤崇史厩舎の騎手別成績(平地)をみていくことにする。1位は北村友一騎手。今年上半期はクロノジェネシスで宝塚記念と京都記念を制した。また、マンオブスピリットで京都新聞杯2着に入り、日本ダービー(16着)にも出走した。大きな舞台での騎乗・活躍が目立っており、今後もこうした起用が多くなりそうだ。

2位は幸英明騎手。【4.0.2.5】という成績で、勝率・連対率・複勝率とも非常に優秀だ。3位は団野大成騎手。騎乗機会の21は、表4のメンバーの中では最多だ。自厩舎所属の騎手ということもあり、多くのチャンスを与えているようだ。8位酒井学騎手の1勝はマーメイドSのサマーセント(7番人気)だった。また、10位M.デムーロ騎手の1勝はNHKマイルCのラウダシオン(9番人気)。ともに伏兵馬で重賞勝利を飾った。主戦の北村友一騎手以外が乗っている場合でも、重賞では常に注意したい厩舎だ

ライタープロフィール

小田原智大(おだわら ともひろ)

1975年6月、東京生まれ。早稲田大学商学部卒業後、業界紙記者を経て、(株)レイヤード入社。ライター&エディターとして活躍。JRA-VANデータの配信初期から、いち早くデータ競馬の有効性に着目する。05年5月より「競馬 最強の法則WEB」にて、障害戦を除く全重賞レースの傾向と対策、予想を展開。「オッズパーク ダートグレードデータ作戦」では、地方競馬の重賞の攻略にも取り組んでいる。仕事の関係でなかなか競馬場には行けなくなったが、年に1、2回行くローカル遠征が楽しみ。


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