データde出〜た
第1380回 グランプリ・有馬記念を制する馬は?
2019/12/19(木)
中山競馬場で行われるグランプリ・有馬記念。いわゆる「秋の古馬三冠」最終戦となり、過去10年の3着以内馬30頭中14頭は、前走でその「2冠目」となるジャパンCに出走していた。しかし今年は天皇賞(秋)組や、海外遠征帰りの馬などがファン投票の上位を占め、ジャパンC組は最上位でも8位のスワーヴリチャードとなった。そんな今年の有馬記念を、データから分析したい。データの集計・分析にはJRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用し、集計期間は表4、5を除き過去10年とした。
■表1 人気別成績
人気 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回収 | 複回収 | 過去5年 |
1 | 5-3-1-1/10 | 50.0% | 80.0% | 90.0% | 110% | 116% | 2-1-1-1 |
2 | 2-1-2-5/10 | 20.0% | 30.0% | 50.0% | 124% | 78% | 0-1-0-4 |
3 | 1-0-2-7/10 | 10.0% | 10.0% | 30.0% | 89% | 65% | 1-0-2-2 |
4 | 1-1-1-7/10 | 10.0% | 20.0% | 30.0% | 87% | 87% | 1-0-1-3 |
5 | 0-1-0-9/10 | 0.0% | 10.0% | 10.0% | 0% | 29% | 0-1-0-4 |
6 | 0-0-0-10/10 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% | 0-0-0-5 |
7 | 0-1-0-9/10 | 0.0% | 10.0% | 10.0% | 0% | 49% | 0-0-0-5 |
8 | 1-1-0-8/10 | 10.0% | 20.0% | 20.0% | 170% | 96% | 1-1-0-3 |
9 | 0-1-2-7/10 | 0.0% | 10.0% | 30.0% | 0% | 161% | 0-1-1-3 |
10 | 0-1-0-9/10 | 0.0% | 10.0% | 10.0% | 0% | 53% | 0-0-0-5 |
11〜 | 0-0-2-54/56 | 0.0% | 0.0% | 3.6% | 0% | 29% | 0-0-0-30 |
過去10年、1番人気は【5.3.1.1】と安定しており、馬券圏外に敗退したのは6歳時のゴールドシップ(2015年8着)のみ。5歳以下の1番人気馬はすべて馬券に絡んでいる。ただ、1番人気が連対できなかった年の1〜2着馬は、14年が4→9番人気、15年は8→5番人気と、2、3番人気馬も連対を外していることには注意したい。
また、優勝馬は10頭中9頭が4番人気以内だった。2着馬は10番人気、3着馬は14番人気まで出ているが、過去5年の2〜3着馬は9番人気以内に収まっている。
■表2 枠番・馬番別成績
枠番・馬番 | 着別度数 | 複勝率 | 複勝率 | 複勝率 | 単回収 | 複回収 | 1〜3番人気 | 同複勝率 |
1枠 | 2-2-1-14/19 | 10.5% | 21.1% | 26.3% | 54% | 41% | 2-2-1-2/7 | 71.4% |
2枠 | 1-2-0-16/19 | 5.3% | 15.8% | 15.8% | 45% | 56% | 0-0-0-1/1 | 0.0% |
3枠 | 1-2-1-14/18 | 5.6% | 16.7% | 22.2% | 8% | 84% | 1-0-0-0/1 | 100.0% |
4枠 | 2-2-0-16/20 | 10.0% | 20.0% | 20.0% | 129% | 64% | 1-1-0-1/3 | 66.7% |
5枠 | 1-1-3-15/20 | 5.0% | 10.0% | 25.0% | 20% | 75% | 1-0-2-1/4 | 75.0% |
6枠 | 2-1-2-15/20 | 10.0% | 15.0% | 25.0% | 24% | 99% | 2-1-0-2/5 | 60.0% |
7枠 | 1-0-2-17/20 | 5.0% | 5.0% | 15.0% | 13% | 23% | 1-0-2-4/7 | 42.9% |
8枠 | 0-0-1-19/20 | 0.0% | 0.0% | 5.0% | 0% | 18% | 0-0-0-2/2 | 0.0% |
1〜13番 | 10-10-7-101/128 | 7.8% | 15.6% | 21.1% | 45% | 64% | 8-4-3-8/23 | 65.2% |
14〜16番 | 0-0-3-25/28 | 0.0% | 0.0% | 10.7% | 0% | 25% | 0-0-2-5/7 | 28.6% |
枠番別では、1〜6枠が連対率15%以上または複勝率25%以上を記録するのに対し、7、8枠は連対率5%以下・複勝率15%以下。馬番で見ると14〜16番に連対がない。馬番14〜16番には3番人気以内に推された馬も7頭と少なくない中での結果だけに、外枠を引いた馬は割引が必要だろう。
■表3 年齢別成績
年齢 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回収 | 複回収 | 過去5年 | 同複勝率 |
3歳 | 5-2-2-21/30 | 16.7% | 23.3% | 30.0% | 82% | 103% | 2-1-1-6/10 | 40.0% |
4歳 | 1-6-2-31/40 | 2.5% | 17.5% | 22.5% | 42% | 74% | 1-3-0-20/24 | 16.7% |
5歳 | 4-2-4-37/47 | 8.5% | 12.8% | 21.3% | 34% | 45% | 2-1-3-19/25 | 24.0% |
6歳 | 0-0-1-18/19 | 0.0% | 0.0% | 5.3% | 0% | 19% | 0-0-1-10/11 | 9.1% |
7歳 | 0-0-0-12/12 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% | 0-0-0-10/10 | 0.0% |
8歳 | 0-0-1-5/6 | 0.0% | 0.0% | 16.7% | 0% | 63% | ||
9歳 | 0-0-0-2/2 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% |
年齢別では3歳馬が半数の5勝をマーク。過去10年の複勝率は30.0%、近5年にかぎると同40.0%の好成績だ。一方、6歳以上は連対なし。1番人気で唯一馬券圏外に敗れた15年のゴールドシップも6歳だった。また、4歳馬が【1.6.2.31】とやや勝ち切れないのも気になるところだ。
■表4 前走天皇賞(秋)組の有馬記念3着以内馬(1986年以降)
年 | 馬名 | 有馬記念 | 天皇賞(秋) | 同年中山実績 | 同年宝塚記念 | ||
人気 | 着順 | 人気 | 着順 | ||||
1992 | メジロパーマー | 15 | 1 | 10 | 17 | 未経験 | 1着 |
1995 | サクラチトセオー | 4 | 3 | 2 | 1 | アメリカJCC1着 | 7着 |
1996 | サクラローレル | 1 | 1 | 1 | 3 | オールカマー1着 | 不出走 |
マーベラスサンデー | 3 | 2 | 2 | 4 | 未経験 | 不出走 | |
1998 | メジロブライト | 3 | 2 | 2 | 5 | アメリカJCC1着 | 11着 |
2004 | シルクフェイマス | 9 | 3 | 5 | 10 | 未経験 | 2着 |
2007 | マツリダゴッホ | 9 | 1 | 8 | 15 | オールカマー1着 | 不出走 |
2008 | ダイワスカーレット | 1 | 1 | 2 | 2 | 未経験 | 不出走 |
エアシェイディ | 10 | 3 | 8 | 5 | アメリカJCC1着 | 7着 | |
2009 | ドリームジャーニー | 2 | 1 | 4 | 6 | オールカマー2着 | 1着 |
2018 | レイデオロ | 1 | 2 | 2 | 1 | オールカマー1着 | 不出走 |
さて、今年は冒頭でも触れたように、前走でジャパンC以外のレースに出走した馬がファン投票の上位を占めた。その中から、まずは天皇賞(秋)組。過去10年【1.1.0.10】連対率16.7%だが、好走馬がわずか2頭では傾向を掴むのは難しい。
そこで、JRA-VAN Data Lab.でデータが提供されている1986年以降の有馬記念3着以内馬について、前走で天皇賞(秋)に出走していた馬を調べたのが表4である。好走馬11頭中9頭は、同年に中山芝2200mのG2(アメリカJCC、オールカマー)を勝つか、春のグランプリ・宝塚記念で連対していた。
その他の2頭は、天皇賞(秋)で2番人気だったマーベラスサンデーとダイワスカーレット。この2頭を含む「前走天皇賞(秋)2番人気以内」の馬は、86年以降【2.3.1.1】で複勝率は85.7%を記録している。馬券に絡んだ6頭はすべて天皇賞(秋)5着以内、そして有馬記念では4番人気以内。馬券圏外に敗退した1頭・99年のツルマルツヨシは、天皇賞(秋)が8着、有馬記念は6番人気(4着)と、どちらの条件も満たしていなかった。
■表5 前走海外競馬組の有馬記念成績(1986年以降)
年 | 馬名 | 有馬記念 | 前走 | 有馬記念実績 | 宝塚記念実績 | ||
人気 | 着順 | レース | 着順 | ||||
1997 | タイキブリザード | 6 | 9 | BCクラシック | 6 | 前々年2着 | 前々年2着 |
2004 | タップダンスシチー | 3 | 2 | 凱旋門賞 | 17 | 前々年2着 | 同年1着 |
2006 | ポップロック | 6 | 2 | メルボルンC | 2 | 未経験 | 未経験 |
デルタブルース | 9 | 6 | メルボルンC | 1 | 前々年5着 | 未経験 | |
アドマイヤメイン | 7 | 9 | 香港ヴァーズ | 8 | 未経験 | 未経験 | |
2010 | レッドディザイア | 11 | 14 | BCフィリー&メアT | 4 | 未経験 | 未経験 |
2011 | ヒルノダムール | 8 | 6 | 凱旋門賞 | 10 | 未経験 | 未経験 |
2012 | トレイルブレイザー | 9 | 13 | BCターフ | 4 | 前年8着 | 未経験 |
2013 | オルフェーヴル | 1 | 1 | 凱旋門賞 | 2 | 前々年1着 | 前年1着 |
2014 | ゴールドシップ | 1 | 3 | 凱旋門賞 | 14 | 前々年1着 | 2連覇中 |
2018 | クリンチャー | 11 | 15 | 凱旋門賞 | 17 | 未経験 | 未経験 |
続いて表5は前走海外競馬組。こちらは86年以降の該当全馬を掲載している。3着以内に好走した4頭のうち、2004年のタップダンスシチー、13年のオルフェーヴル、14年のゴールドシップは春秋のグランプリ、宝塚記念と有馬記念の双方で連対した実績があり、少なくとも一方では勝利を収めていた。残る1頭、06年2着のポップロックは国内G1未経験の身で前走・メルボルンC2着好走という特異なタイプだ。また、この海外競馬組で圏外に敗退した馬には、宝塚記念・有馬記念未経験馬が多いことにも注意したい。
■表6 前走菊花賞組の有馬記念成績
年 | 馬名 | 有馬記念 | 菊花賞 | 重賞勝利 | 主な中山実績 | ||
人気 | 着順 | 人気 | 着順 | ||||
2009 | セイウンワンダー | 10 | 6 | 6 | 3 | 2 | 朝日杯FS1着 |
アンライバルド | 8 | 15 | 3 | 15 | 2 | 皐月賞1着 | |
スリーロールス | 6 | 止 | 8 | 1 | 1 | 未経験 | |
2011 | オルフェーヴル | 1 | 1 | 1 | 1 | 5 | 芙蓉S2着 |
2012 | ゴールドシップ | 1 | 1 | 1 | 1 | 4 | 皐月賞1着 |
スカイディグニティ | 7 | 5 | 5 | 2 | 0 | セントライト記念2着 | |
2014 | トゥザワールド | 9 | 2 | 2 | 16 | 1 | 弥生賞1着 |
2015 | キタサンブラック | 4 | 3 | 5 | 1 | 3 | スプリングS1着 |
リアファル | 3 | 16 | 1 | 3 | 1 | 伏竜S(ダ)2着 | |
2016 | サトノダイヤモンド | 1 | 1 | 1 | 1 | 3 | 皐月賞3着 |
ブラストワンピース | 3 | 1 | 1 | 4 | 2 | 未経験 |
ここからは過去10年に戻り、【4.1.1.5】の好成績を残す菊花賞組を見てみたい。この組は菊花賞で1〜2番人気に推された馬なら【4.1.0.1】、有馬記念4番人気以内馬は【4.0.1.1】と、ともに6頭中5頭が馬券に絡んでおり信頼性は高い。加えて重賞3勝以上の実績や、中山での重賞勝ち鞍(またはG1・3着以内)があればプラス材料になる。
■表7 前走ジャパンC組の前走人気・着順、有馬記念人気別成績
前走人気・着順、今回人気 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回収 | 複回収 | |
ジャパンC人気 | 1〜5番人気 | 2-4-5-15/26 | 7.7% | 23.1% | 42.3% | 40% | 95% |
6番人気以下 | 1-0-2-32/35 | 2.9% | 2.9% | 8.6% | 24% | 37% | |
ジャパンC着順 | 1〜5着 | 3-3-5-15/26 | 11.5% | 23.1% | 42.3% | 73% | 91% |
6着以下 | 0-1-2-32/35 | 0.0% | 2.9% | 8.6% | 0% | 40% | |
有馬記念人気 | 1〜5番人気 | 3-3-4-19/29 | 10.3% | 20.7% | 34.5% | 65% | 62% |
6番人気以下 | 0-1-3-28/32 | 0.0% | 3.1% | 12.5% | 0% | 61% |
ジャパンC組は過去10年【3.4.7.47】と、出走数、3着以内数ともに群を抜いて多い。この組は、ジャパンC5番人気以内、同5着以内、そして有馬記念5番人気以内に該当した馬が好成績を残している。
■表8 前走その他レースからの3着以内馬
年 | 馬名 | 有馬記念 | 前走 | 主なG1実績 | |||
人気 | 着順 | レース | 人気 | 着順 | |||
2009 | ブエナビスタ | 1 | 2 | エリザベス女王杯 | 1 | 3 | オークス1着 |
2010 | トゥザグローリー | 14 | 3 | 中日新聞杯 | 1 | 1 | (ダービー7着) |
2012 | オーシャンブルー | 10 | 2 | 金鯱賞 | 6 | 1 | 未経験 |
2013 | ウインバリアシオン | 4 | 2 | 金鯱賞 | 8 | 3 | ダービー2着 |
2015 | ゴールドアクター | 8 | 1 | アルゼンチン共和国杯 | 1 | 1 | 菊花賞3着 |
2017 | クイーンズリング | 8 | 2 | エリザベス女王杯 | 8 | 7 | エリザベス女王杯1着 |
※金鯱賞は2017年に春へ移動
最後に、表4〜7に当てはまらなかった3着以内馬も見ておきたい。該当馬全6頭のうち3頭は前走1着馬で、すべて前走が重賞初制覇。また表にはないが、この3頭は芝2400〜2500mで優勝するか重賞2着の実績を持つことでも共通している。一方、前走で敗れていた3頭は、芝2000mを超えるG1での連対実績(牝馬限定戦なら優勝)があった。
【結論】
今年の有馬記念は、ファン投票第1位のアーモンドアイが断然人気に推されそうだ。その1番人気馬は過去10年【5.3.1.1】。また表4本文で記したように、前走天皇賞(秋)で2番人気以内だった馬は、1986年以降【2.3.1.1】とやはり安定した結果を残している。4歳馬は2着が多い点がやや気になるものの(表3)、総合的にみて最上位の評価が妥当だ。
同じ天皇賞(秋)組で一発の魅力があるのはスティッフェリオ。今年のオールカマーを制している点が強調材料となるほか(表4)、ステイゴールド産駒が過去10年で【4.1.2.11】複勝率38.9%と好相性を誇ることも魅力だ。
好成績を残す菊花賞組では、優勝したワールドプレミアよりも1番人気だったヴェロックスに注目(表6)。ジャパンC組は、3番人気で優勝したスワーヴリチャードが筆頭格だ(表7)。海外組なら豪G1コックスプレート1着馬で、本年の宝塚記念も制したリスグラシューだが、有馬記念の出走経験がない点でやや割引が必要だろう(表5)。
ライタープロフィール
浅田知広(あさだ ともひろ)
1970年12月、埼玉県生まれ。立命館大学文学部中退後、夕刊紙レース部のアルバイト、競馬データベース会社を経て、現在はフリー。パソコンが広く普及する以前から、パソコン通信でデータ手入力方式の競馬予想ソフトを公開するなど、競馬のみならずPCやネットワークにも精通。その知識を活かし、Webや雑誌で競馬ライターとして活躍するかたわら、ネットワークの専門誌にも連載を持つ。