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第1377回 全国リーディング1位を快走する安田隆行厩舎を分析

2019/12/9(月)

先週、現役5人目となる通算800勝を達成した安田隆行調教師。今年は12月1日までに61勝を挙げて全国リーディングのトップを快走しており、「JRA賞」の名称となった1987年以降では年間最多の63勝(2003年の藤沢和雄調教師、2017年の池江泰寿調教師)を更新する可能性も十分に秘めている。そんな波に乗る安田隆厩舎についてのデータを今回は調べてみたい。集計期間は2017年1月5日〜2019年12月1日。データの集計・分析にはJRA-VAN DataLab.TARGET frontier JVを利用した。

■表1 安田隆行厩舎の主な管理馬

馬名 生年 主な勝ち鞍
G1馬 トランセンド 2006 10、11年ジャパンCダート、11年フェブラリーS、11年南部杯
カレンチャン 2007 11年スプリンターズS、12年高松宮記念
ロードカナロア 2008 12、13年スプリンターズS、13年高松宮記念、13年安田記念
グレープブランデー 2008 13年フェブラリーS
現役重賞馬 ダノンスマッシュ 2015 18年京阪杯、19年シルクロードS、19年キーンランドC
ダイアトニック 2015 19年スワンS
トロワゼトワル 2015 19年京成杯AH
ケイデンスコール 2016 18年新潟2歳S

2012/9/30 中山11R スプリンターズステークス(G1) 1着 16番 ロードカナロア

表1は、安田隆行厩舎がこれまでに送り出したG1馬と現役の重賞勝ち馬の一覧(対象は中央のみ)。これまで育てたG1馬は4頭おり、そのなかでも光るのが2013年の年度代表馬であり、昨年殿堂入りを果たしたロードカナロアだ。表に掲載した4勝のほかにも香港スプリントの連覇を達成しており、まさに歴史的な短距離馬となった。また、このロードカナロアの先代の短距離チャンピオンと呼べる名牝カレンチャンも忘れられない存在だ。過去の管理馬では、G1に手が届かなかったため表1には入らなかったが、重賞3勝を挙げたダッシャーゴーゴーにも触れておきたいところ。12年高松宮記念では1着カレンチャン、3着ロードカナロア、4着ダッシャーゴーゴーという素晴らしい結果を残した。

残る2頭のG1馬であるトランセンドとグレープブランデーはいずれもフェブラリーSを勝利。こうした実績が示す通り、短距離やダートを中心に活躍しているのが安田隆行厩舎の特徴となっている。そして、この傾向は現在の管理馬にもしっかりと受け継がれており、現役の管理馬が制した重賞はすべて1600m以下。なお、表1掲載の現役馬4頭は、すべてロードカナロアの産駒である。

■表2 人気別成績

人気 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回率 複回率
1番人気 62-  44-  31-  70/ 207 30.0% 51.2% 66.2% 69% 86%
2番人気 38-  28-  16-  56/ 138 27.5% 47.8% 59.4% 110% 93%
3番人気 18-  27-   8-  72/ 125 14.4% 36.0% 42.4% 83% 83%
4番人気 10-  11-  15-  82/ 118 8.5% 17.8% 30.5% 66% 70%
5番人気 6-   8-   8-  50/  72 8.3% 19.4% 30.6% 98% 98%
6番人気 5-   5-   6-  52/  68 7.4% 14.7% 23.5% 112% 77%
7番人気 1-   8-   4-  58/  71 1.4% 12.7% 18.3% 22% 74%
8番人気 1-   2-   4-  45/  52 1.9% 5.8% 13.5% 58% 75%
9番人気 0-   0-   0-  50/  50 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0%
10番人気〜 4-   4-   2- 145/ 155 2.6% 5.2% 6.5% 121% 67%

表2は人気別成績。上位人気の数値が総じてよく、なかでも2番人気の勝率27.5%、単勝回収率110%はかなり優秀だ。3番人気も水準以上で、対抗級の評価をされたときに好成績を残している様子が伺える。一方、穴馬サイドでは6番人気および10番人気以下の単勝回収率で100%以上を記録しているが、それ以外の数値はあまり目立たない。この表を見る限り、人気馬をしっかり走らせるのが安田隆行厩舎の傾向と考えてよさそうだ。

■表3 性別および年齢別成績

項目 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回率 複回率
性別 牡馬・セン馬 93- 79- 55-383/610 15.2% 28.2% 37.2% 90% 82%
牝馬 52- 58- 39-297/446 11.7% 24.7% 33.4% 69% 70%
年齢 2歳 30- 30- 19- 74/153 19.6% 39.2% 51.6% 73% 86%
3歳 60- 43- 45-328/476 12.6% 21.6% 31.1% 93% 74%
4歳 39- 37- 16-131/223 17.5% 34.1% 41.3% 101% 86%
5歳 12- 21- 10- 90/133 9.0% 24.8% 32.3% 44% 72%
6歳 1-  5-  2- 44/ 52 1.9% 11.5% 15.4% 4% 51%
7歳以上 3-  1-  2- 13/ 19 15.8% 21.1% 31.6% 83% 75%

表3は、性別および年齢別の成績を示したもので、セン馬は牡馬に含めている。性別から見ていくと、牡馬の数値が軒並み高い。牝馬も決して悪い成績ではないが、より扱いが得意なのは牡馬と言えそうだ。年齢別では2歳と4歳の好走率が高く、回収率も考慮すると4歳のほうが馬券では面白そうだ。

■表4 競馬場別成績

競馬場 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回率 複回率
札幌 3-  6-  2- 10/ 21 14.3% 42.9% 52.4% 169% 140%
函館 7-  5-  3- 10/ 25 28.0% 48.0% 60.0% 136% 99%
福島 2-  4-  1-  6/ 13 15.4% 46.2% 53.8% 65% 94%
新潟 6-  5-  2- 37/ 50 12.0% 22.0% 26.0% 47% 41%
東京 5-  8-  3- 23/ 39 12.8% 33.3% 41.0% 43% 88%
中山 1-  2-  5- 16/ 24 4.2% 12.5% 33.3% 30% 108%
中京 12-  7-  7- 59/ 85 14.1% 22.4% 30.6% 82% 66%
京都 12-  8-  6- 71/ 97 12.4% 20.6% 26.8% 47% 45%
阪神 13-  6-  9- 73/101 12.9% 18.8% 27.7% 85% 58%
小倉 7-  8-  4- 46/ 65 10.8% 23.1% 29.2% 71% 74%
ダート 札幌 2-  1-  1-  8/ 12 16.7% 25.0% 33.3% 74% 64%
函館 2-  3-  3-  8/ 16 12.5% 31.3% 50.0% 31% 108%
福島 2-  1-  0-  8/ 11 18.2% 27.3% 27.3% 75% 52%
新潟 1-  1-  2- 13/ 17 5.9% 11.8% 23.5% 162% 78%
東京 12- 12-  6- 19/ 49 24.5% 49.0% 61.2% 77% 103%
中山 1-  3-  0-  9/ 13 7.7% 30.8% 30.8% 44% 76%
中京 8- 11-  7- 44/ 70 11.4% 27.1% 37.1% 53% 58%
京都 21- 22- 15- 92/150 14.0% 28.7% 38.7% 68% 83%
阪神 21- 20- 15- 92/148 14.2% 27.7% 37.8% 155% 108%
小倉 5-  1-  1- 25/ 32 15.6% 18.8% 21.9% 61% 35%

表4は競馬場別成績を芝・ダート別で示したもの。「芝」から見ていくと、まず目に入ってくるのが札幌、函館で抜群の成績を残していること。本稿執筆のタイミングからすると真裏の季節にはなるが、来年以降の夏競馬でぜひとも狙ってみたい。中央場所の成績では、地元の京都・阪神より、遠征となる東京・中山のほうが高い複勝率を記録している点が興味深い。

一方、ダートでの注目は、群を抜く好走率を記録している東京。この勝率でも単勝回収率は77%と、かなり人気になっている様子も伺えるが、東京ではそれだけ勝ちに来ているとも考えられる。なお、芝・ダートともに中山では勝ち切れない傾向がある点にも注意しておきたい。

■表5 距離別成績

  距離 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回率 複回率
1000m〜1300m 25- 23- 16-120/184 13.6% 26.1% 34.8% 99% 77%
1400m〜1600m 28- 23- 17-110/178 15.7% 28.7% 38.2% 54% 74%
1700m〜2000m 13- 12-  6- 91/122 10.7% 20.5% 25.4% 71% 57%
2100m〜2400m 1-  0-  1- 26/ 28 3.6% 3.6% 7.1% 14% 12%
2500m〜 1-  1-  2-  4/  8 12.5% 25.0% 50.0% 47% 90%
ダート 1000m〜1300m 16- 14-  9- 84/123 13.0% 24.4% 31.7% 96% 72%
1400m〜1600m 31- 33- 11- 70/145 21.4% 44.1% 51.7% 109% 89%
1700m〜2000m 27- 26- 27-159/239 11.3% 22.2% 33.5% 84% 89%
2100m〜2400m 1-  2-  3-  5/ 11 9.1% 27.3% 54.5% 38% 101%
2500m〜 0-  0-  0-  0/  0          

表5は距離別成績を芝・ダート別で示したもの。芝で好走率が高いのは「1000〜1300m」や「1400〜1600m」で、「1700〜2000m」になると数値がややダウン。2100m以上になると出走数自体が少なく、この距離の芝に適性のある管理馬が少ないようだ。また、ダートはどの距離も高い好走率を記録しており、そのなかでも「1400〜1600m」の数値は際立って高い。

先に紹介したG1馬も、これらの得意距離にしっかり当てはまっている。芝のG1馬2頭は1200〜1600mで活躍。ダートのG1馬2頭はいずれも1600mのフェブラリーSを勝利しているが、これはダートで抜群の好走率を記録している距離に含まれる。このように、厩舎の代表馬からイメージされる通りの距離を得意にしており、ズレがないのはありがたい。

■表6 クラス別成績

クラス 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回率 複回率
新馬 16- 17-  9- 42/ 84 19.0% 39.3% 50.0% 80% 98%
未勝利 44- 28- 33-188/293 15.0% 24.6% 35.8% 105% 78%
1勝 42- 32- 27-231/332 12.7% 22.3% 30.4% 96% 67%
2勝 16- 31- 15-107/169 9.5% 27.8% 36.7% 40% 79%
3勝 11- 12-  4- 21/ 48 22.9% 47.9% 56.3% 83% 103%
オープン特別 7- 7- 1-37/52 13.5% 26.9% 28.8% 49% 68%
G3 6-  6-  0- 23/ 35 17.1% 34.3% 34.3% 70% 73%
G2 1-  0-  1-  9/ 11 9.1% 9.1% 18.2% 26% 24%
G1 0-  1-  2- 11/ 14 0.0% 7.1% 21.4% 0% 120%

※平地のみ。オープン特別にはリステッド競走を含む。

2019/10/26 京都11R スワンステークス(G2) 1着 17番 ダイアトニック

表6はクラス別成績(平地のみ)。上から順に見ていくと、新馬戦と未勝利戦では前者のほうが高い好走率を記録しており、初戦から動いている様子が見てとれる。また、条件戦も安定して走っており、特に3勝クラスの好走率は抜群。さらに、オープン特別やG3でも問題なく通用している。ただし、今回の集計期間である2017年以降では、G2勝ちは今年のスワンS(ダイアトニック)だけで、G1の勝利はない。全体に優秀ながら、不満があるとすればこの点ぐらいだろうか。

■表7 騎手別成績

騎手 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回率 複回率
着別度数順 北村友一 39- 36- 28-118/221 17.6% 33.9% 46.6% 64% 86%
福永祐一 17-  6-  7- 41/ 71 23.9% 32.4% 42.3% 81% 64%
M.デムーロ 10-  8-  5-  7/ 30 33.3% 60.0% 76.7% 140% 127%
川田将雅 9- 14-  7- 14/ 44 20.5% 52.3% 68.2% 58% 100%
鮫島克駿 9-  2-  3- 65/ 79 11.4% 13.9% 17.7% 152% 57%
単勝回収率順 荻野極 3-  0-  0- 12/ 15 20.0% 20.0% 20.0% 353% 80%
中井裕二 2-  2-  1- 50/ 55 3.6% 7.3% 9.1% 174% 94%
富田暁 3-  1-  1- 11/ 16 18.8% 25.0% 31.3% 170% 100%
鮫島克駿 9-  2-  3- 65/ 79 11.4% 13.9% 17.7% 152% 57%
M.デムーロ 10-  8-  5-  7/ 30 33.3% 60.0% 76.7% 140% 127%

※単勝回収率順の対象は騎乗15回以上

表7は、騎手別成績を着別度数順と単勝回収率順(騎乗15回以上)で示したもの。最多勝は、騎乗数でも最多の北村友一騎手。単勝回収率を除けば高水準の数値が並び、重賞もダノンスマッシュとジューヌエコールで計3勝を挙げている。それ以上に注目したいのが、ミルコ・デムーロ騎手で、驚異的とも呼べる好走率を記録し、単複の回収率も抜群。大注目のコンビとなっている。

■表8 種牡馬別成績

種牡馬 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回率 複回率
着別度数順 ロードカナロア 45- 35- 16- 96/192 23.4% 41.7% 50.0% 82% 90%
ディープインパクト 10- 12-  8- 56/ 86 11.6% 25.6% 34.9% 80% 73%
クロフネ 9- 12-  4- 30/ 55 16.4% 38.2% 45.5% 66% 96%
キンシャサノキセキ 9-  9-  7- 44/ 69 13.0% 26.1% 36.2% 78% 75%
ステイゴールド 7- 10-  6- 31/ 54 13.0% 31.5% 42.6% 45% 94%
単勝回収率順 キングカメハメハ 7-  8-  6- 31/ 52 13.5% 28.8% 40.4% 225% 143%
タイキシャトル 1-  0-  1- 15/ 17 5.9% 5.9% 11.8% 178% 71%
トランセンド 4-  4-  2-  9/ 19 21.1% 42.1% 52.6% 121% 96%
ブラックタイド 4-  1-  1- 12/ 18 22.2% 27.8% 33.3% 116% 76%
ロードカナロア 45- 35- 16- 96/192 23.4% 41.7% 50.0% 82% 90%

※単勝回収率順の対象は出走15回以上

表8は、種牡馬別成績を着別度数順と単勝回収率順(出走15回以上)で示したもの。最多勝はロードカナロアで、2位のディープインパクトを突き放す45勝を挙げている。表1の項で現役重賞勝ち馬はすべてロードカナロア産駒と述べたが、その好走率は極めて高く、現役時代の父を扱った経験が産駒にも活きているのだろう。また、単勝回収率順でトップのキングカメハメハはロードカナロアの父にあたり、この系統との相性のよさにも注目。単勝回収率4位のトランセンドも安田隆行師が手掛けた馬で、数は少ないながらも優秀な成績を収めている。

ライタープロフィール

出川塁(でがわ るい)

1977年熊本県生まれ。上智大学文学部卒業後、出版社2社で競馬専門誌、競馬書籍の編集に携わり、2007年からフリーライターに。「競馬最強の法則」「サラブレ」「優駿」などへ寄稿するほか、出版社勤務時代を含めて制作に関わった競馬書籍は多数。馬券は単勝派だが、焼肉はタン塩派というわけではない。メインの競馬のほか、サッカーでも密かに活動中。


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