データde出〜た
第1370回 上位拮抗の熱戦が期待されるマイルCSを分析!
2019/11/14(木)
今週のG1はマイルチャンピオンシップ。春の安田記念を制したインディチャンプ、天皇賞・秋で2着に入った2017年2歳王者ダノンプレミアム、秋初戦の毎日王冠を勝った3歳代表のダノンキングリーあたりが人気を集めそうだが、もちろん残る馬たちも虎視眈々と戴冠を狙っていることだろう。そんな秋のマイル王決定戦を、過去10年のデータから占ってみたい。データ分析にはJRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用した。
■表1 人気別成績
人気 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回率 | 複回率 |
1番人気 | 1- 2- 2- 5/ 10 | 10.0% | 30.0% | 50.0% | 23% | 73% |
2番人気 | 1- 3- 1- 5/ 10 | 10.0% | 40.0% | 50.0% | 47% | 98% |
3番人気 | 1- 3- 0- 6/ 10 | 10.0% | 40.0% | 40.0% | 59% | 87% |
4番人気 | 3- 0- 2- 5/ 10 | 30.0% | 30.0% | 50.0% | 250% | 138% |
5番人気 | 2- 0- 1- 7/ 10 | 20.0% | 20.0% | 30.0% | 185% | 95% |
6番人気 | 0- 0- 1- 9/ 10 | 0.0% | 0.0% | 10.0% | 0% | 38% |
7番人気 | 0- 0- 2- 8/ 10 | 0.0% | 0.0% | 20.0% | 0% | 87% |
8番人気 | 1- 0- 0- 9/ 10 | 10.0% | 10.0% | 10.0% | 181% | 39% |
9番人気 | 0- 0- 1- 9/ 10 | 0.0% | 0.0% | 10.0% | 0% | 60% |
10番人気〜 | 1- 2- 0- 86/ 89 | 1.1% | 3.4% | 3.4% | 58% | 29% |
表1は人気別成績。過去10年で1〜3番人気が各1勝なのに対し、4番人気が3勝、5番人気も2勝をマーク。連対率や複勝率の数値も差がなく、1〜5番人気はほぼ互角と考えていいかもしれない。6番人気以下の好走は散発的で、しばしば穴馬が突っ込んでくるわけではなく、上位拮抗のレースといった印象だ。
■表2 年齢別成績
年齢 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回率 | 複回率 |
3歳 | 2- 0- 2- 31/ 35 | 5.7% | 5.7% | 11.4% | 50% | 40% |
4歳 | 3- 6- 4- 23/ 36 | 8.3% | 25.0% | 36.1% | 72% | 98% |
5歳 | 3- 3- 3- 49/ 58 | 5.2% | 10.3% | 15.5% | 108% | 67% |
6歳 | 1- 1- 1- 30/ 33 | 3.0% | 6.1% | 9.1% | 54% | 24% |
7歳以上 | 1- 0- 0- 16/ 17 | 5.9% | 5.9% | 5.9% | 13% | 7% |
表2は年齢別成績。頭ひとつ抜けた好走率を記録しているのが4歳で、好走例も最多となっており、手堅く入るならここからか。4歳に次いで好走例が多いのは5歳で、斤量が1キロ軽い3歳より高い連対率、複勝率を残している。6歳や7歳以上の高齢馬にも好走例は見られるが、確率としては下がってしまう。
■表3 G1での1〜3着実績の有無による成績
レース名 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回率 | 複回率 |
実績あり | 10- 6- 4-76/96 | 10.4% | 16.7% | 20.8% | 132% | 63% |
実績なし | 0- 2- 1-53/56 | 0.0% | 3.6% | 5.4% | 0% | 18% |
G1初出走 | 0- 2- 3-17/22 | 0.0% | 9.1% | 22.7% | 0% | 95% |
※外国馬は除く
表3は、過去にG1で1〜3着に入った実績の有無による成績を示したもの。なお、外国馬は対象外とした。違いが如実に表れているのは1着数で、過去10年のマイルチャンピオンシップ勝ち馬はすべて「実績あり」だった。連対率や複勝率でも「実績なし」とは大きな差がついており、やはりG1実績を持つ馬のほうが有利なのは間違いなさそうだ。また、「実績なし」と「G1初出走」を比較すると、後者のほうが好走率は高く、複勝回収率95%も悪くない数値。このデータを見る限り、G1出走歴がありながら好走歴を持たない馬より、フレッシュな馬のほうが狙ってみる価値は高いかもしれない。
■表4 G1実績なし・G1初出走の好走馬一覧
G1 | 年 | 着順 | 人気 | 馬名 | 芝1600m複勝率 | 前走 |
実績なし | 13年 | 2 | 3 | ダイワマッジョーレ | 66.7%(6戦) | スワンS・2着 |
14年 | 2 | 3 | フィエロ | 71.4%(7戦) | スワンS・3着 | |
3 | 9 | グランデッツァ | 0.0%(1戦) | 毎日王冠・5着 | ||
初出走 | 09年 | 2 | 14 | マイネルファルケ | 88.9%(9戦) | 富士S・9着 |
10年 | 3 | 6 | ゴールスキー | 100.0%(4戦) | 1600万下・1着 | |
2 | 1 | ダノンヨーヨー | 90.0%(10戦) | 富士S・1着 | ||
16年 | 3 | 7 | ネオリアリズム | 未出走 | 札幌記念・1着 | |
17年 | 3 | 7 | サングレーザー | 75.0%(4戦) | スワンS・1着 |
前項を受けて「G1実績なし」および「G1初出走」の好走馬をまとめたのが表4で、該当馬は全部で8頭いる。これらの馬の多くに共通する点がふたつあり、ひとつは芝1600mに高い適性を持っていたこと。表4の通り、8頭中6頭は過去に出走した芝1600mで複勝率60.0%以上を記録していた。
また、前走で好走していた馬も多く、8頭中4頭は前走1着、同5頭は重賞で3着以内を記録している。特にG1初出走だった馬に関しては、10年2着のダノンヨーヨーと17年3着のサングレーザーは4連勝中、10年3着のゴールスキーも3連勝中と、勢いに乗っていた点も見逃せない。G1実績を持たない馬やG1初出走となる馬に関しては、「芝1600m実績」と「前走成績」を欠かさずチェックしたい。
■表5 前走レース別成績
前走レース名 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回率 | 複回率 |
富士S・G3 | 3- 5- 1-44/53 | 5.7% | 15.1% | 17.0% | 69% | 48% |
天皇賞(秋)・G1 | 2- 0- 2-13/17 | 11.8% | 11.8% | 23.5% | 75% | 50% |
スワンS・G2 | 1- 4- 1-32/38 | 2.6% | 13.2% | 15.8% | 137% | 58% |
スプリンターズS・G1 | 1- 1- 0- 7/ 9 | 11.1% | 22.2% | 22.2% | 65% | 123% |
毎日王冠・G2 | 1- 0- 1-17/19 | 5.3% | 5.3% | 10.5% | 45% | 47% |
京都大賞典・G2 | 1- 0- 0- 1/ 2 | 50.0% | 50.0% | 50.0% | 235% | 90% |
安田記念・G1 | 1- 0- 0- 3/ 4 | 25.0% | 25.0% | 25.0% | 142% | 52% |
サンチャリオットS・G1 | 0- 0- 2- 1/ 3 | 0.0% | 0.0% | 66.7% | 0% | 186% |
府中牝馬S・G2 | 0- 0- 1- 8/ 9 | 0.0% | 0.0% | 11.1% | 0% | 36% |
清水S・1600万下 | 0- 0- 1- 0/ 1 | 0.0% | 0.0% | 100.0% | 0% | 380% |
札幌記念・G2 | 0- 0- 1- 0/ 1 | 0.0% | 0.0% | 100.0% | 0% | 440% |
※府中牝馬SはG3時代の成績も含む
表5は前走レース別成績。やはり東西の前哨戦である富士SとスワンSからの出走が多く、この両レースでは富士Sのほうが優勢のようだ。ただし、どちらも出走例が多いぶん、好走率はそれほど高くはなく、しっかりとした取捨が必要になる。東西の前哨戦以外では、2000mの天皇賞・秋、札幌記念、1800mの毎日王冠、府中牝馬Sなど、本番より距離が長いレースを使っていた馬の好走が目立つのも特徴と言える。
■表6 前走富士S出走馬の各種データ
項目 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回率 | 複回率 | |
前走着順 | 1着 | 1- 2- 1- 3/ 7 | 14.3% | 42.9% | 57.1% | 140% | 112% |
2着 | 0- 1- 0- 6/ 7 | 0.0% | 14.3% | 14.3% | 0% | 25% | |
3着 | 0- 0- 0- 5/ 5 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% | |
4着 | 0- 0- 0- 2/ 2 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% | |
5着 | 1- 1- 0- 3/ 5 | 20.0% | 40.0% | 40.0% | 176% | 104% | |
6〜9着 | 1- 1- 0-16/18 | 5.6% | 11.1% | 11.1% | 100% | 60% | |
10着〜 | 0- 0- 0- 9/ 9 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% | |
前走人気 | 1〜5番人気 | 3- 5- 1-19/28 | 10.7% | 28.6% | 32.1% | 131% | 91% |
6番人気〜 | 0- 0- 0-25/25 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% |
表6は、前走富士S出走馬の前走着順別成績と人気別成績を示したもの。富士S1着馬はマイルCSでも手堅く走っている一方で、2〜4着馬は合わせて【0.1.0.13】と振るわず、16年に富士S2着馬イスラボニータが本番でも2着に入っただけ。むしろ、5着や6〜9着のほうがよく走っている。もっとも、着順以上にマイルCSとの関連性が見られるのが人気で、この組の好走馬は富士Sで1〜5番人気だった馬に限られる。したがって、まずは前走人気を確認し、そのあとで前走着順も併用するのがベターだろう。
■表7 前走スワンS出走馬の各種データ
項目 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回率 | 複回率 | |
前走着順 | 1〜3着 | 0- 4- 1-10/15 | 0.0% | 26.7% | 33.3% | 0% | 78% |
4着〜 | 1- 0- 0-22/23 | 4.3% | 4.3% | 4.3% | 227% | 46% | |
前走4角通過順 | 1〜6番手 | 0- 1- 0-13/14 | 0.0% | 7.1% | 7.1% | 0% | 15% |
7番手〜 | 1- 3- 1-19/24 | 4.2% | 16.7% | 20.8% | 218% | 84% |
表7は、前走スワンS出走馬の前走着順別成績と4角通過順別成績を示したもの。着順に関しては1〜3着に入っておきたいところで、好走した6頭中5頭が該当する。4着以下でも10年に大きな穴をあけたエーシンフォワードの例はあるものの、好走率としてはかなり下がってしまう。また、4角通過順も大事で、好走した6頭中5頭はスワンSで4角7番手以下だった馬だ。
■表8 前走芝1800m以上重賞出走馬の各種データ
項目 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回率 | 複回率 | |
前走着順 | 1着 | 1- 0- 1- 2/ 4 | 25.0% | 25.0% | 50.0% | 57% | 140% |
2着 | 1- 0- 0- 5/ 6 | 16.7% | 16.7% | 16.7% | 145% | 51% | |
3着 | 1- 0- 2- 2/ 5 | 20.0% | 20.0% | 60.0% | 94% | 128% | |
4着 | 0- 0- 1- 7/ 8 | 0.0% | 0.0% | 12.5% | 0% | 30% | |
5着 | 0- 0- 1- 4/ 5 | 0.0% | 0.0% | 20.0% | 0% | 120% | |
6〜9着 | 1- 0- 0- 9/10 | 10.0% | 10.0% | 10.0% | 105% | 37% | |
10着〜 | 0- 0- 0-19/19 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% | |
前走人気 | 1番人気 | 0- 0- 1- 3/ 4 | 0.0% | 0.0% | 25.0% | 0% | 82% |
2番人気 | 1- 0- 1- 4/ 6 | 16.7% | 16.7% | 33.3% | 78% | 130% | |
3番人気 | 1- 0- 0- 7/ 8 | 12.5% | 12.5% | 12.5% | 108% | 38% | |
4番人気 | 0- 0- 0- 5/ 5 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% | |
5番人気 | 1- 0- 2- 4/ 7 | 14.3% | 14.3% | 42.9% | 32% | 114% | |
6〜9番人気 | 0- 0- 1- 9/10 | 0.0% | 0.0% | 10.0% | 0% | 13% | |
10番人気〜 | 1- 0- 0-16/17 | 5.9% | 5.9% | 5.9% | 61% | 21% |
表5の項で、前走で芝1800m以上の重賞を走り、距離短縮で臨む馬の好走例が少なくないことを述べた。表8は、このケースに該当する馬のデータを示したもの。前走着順から見ていくと、やはり1〜3着に入っていた馬の数値が良好で、基本的には5着以内、悪くともひとケタ着順には入っておきたい。人気に関しても同様で、1〜5番人気と6番人気以下では明らかに好走率の差がある。距離短縮で臨む馬の前走に関しては、このあたりを目安に考えたい。
【結論】
それでは最後に、今年のマイルCS登録馬について、G1で1〜3着の実績があるか否かに分けて、データから有力と思われる馬を挙げていきたい。
表3の項で確認した通り、過去10年のマイルCSを制した馬はすべてG1で1〜3着に入った実績を持っており、本命・対抗級の評価をする馬に関しては特に重要なデータと言える。今年、G1で1〜3着の実績を持つ馬は全部で9頭。そのなかで有力と思われるのは、前走天皇賞・秋で3番人気2着のダノンプレミアム、毎日王冠で1番人気1着のダノンキングリーと3番人気3着のインディチャンプ、スワンSで4角9番手から2着だったモズアスコット。この4頭ということになる。年齢も考慮すれば、4歳のダノンプレミアム、インディチャンプがより有力ということになりそうだ。
次いで、G1で1〜3着の実績がない馬およびG1初出走となる馬を見ていく。この場合は過去に出走した芝1600mで高い複勝率を残していることや、前走で好走していることが大事だった。該当する8頭の戦績を確認すると、芝1600mで複勝率80.0%(5戦)のマイスタイル、同66.7%のレッドオルガとフィアーノロマーノ、同60.0%のダイアトニックの4頭がこの条件を満たす。このなかで前走の成績も考慮すると、スワンSを4角9番手から1着した4歳馬のダイアトニックが一番手。G1初出走となるが、近5走で4勝を挙げ、現在2連勝中と勢いに乗っている点も、過去の好走例にかなっている。
ライタープロフィール
出川塁(でがわ るい)
1977年熊本県生まれ。上智大学文学部卒業後、出版社2社で競馬専門誌、競馬書籍の編集に携わり、2007年からフリーライターに。「競馬最強の法則」「サラブレ」「優駿」などへ寄稿するほか、出版社勤務時代を含めて制作に関わった競馬書籍は多数。馬券は単勝派だが、焼肉はタン塩派というわけではない。メインの競馬のほか、サッカーでも密かに活動中。