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第1369回 未来のクラシック好走馬が東スポ杯で見せた走りとは?

2019/11/11(月)

今週末に行なわれる東京スポーツ杯2歳Sは、過去10年でダービー馬3頭、皐月賞1頭を送り出すなど、クラシックの登竜門として名高いG3戦。そこで今回は、過去10年の皐月賞、日本ダービーで1〜3着に入った馬が、このレースでどんな走りを見せていたかを調べてみたい。データ分析にはJRA-VAN DataLab.TARGET frontier JVを利用した。

■表1 翌春のクラシックで好走した東スポ杯出走馬の一覧

着順 人気 馬名 クラシックの着順
皐月賞 ダービー
09年 1 1 ローズキングダム 4 2
10年 1 1 サダムパテック 2 7
11年 1 1 ディープブリランテ 3 1
12年 1 1 コディーノ 3 9
13年 1 2 イスラボニータ 1 2
6 8 ワンアンドオンリー 4 1
14年 1 4 サトノクラウン 6 3
16年 2 4 スワーヴリチャード 6 2
17年 1 1 ワグネリアン 7 1
18年 4 2 ヴェロックス 2 3

表1は、過去10年の東京スポーツ杯2歳S(以下、東スポ杯)に出走した馬のなかで、翌年の皐月賞および日本ダービーで1〜3着に入った馬を一覧にしたもの。該当馬は過去10年で10頭おり、単純計算で毎年1頭は必ず、このレース出走馬が牡馬クラシックで好走していることになる。実際、特定の年に偏ることなくコンスタントに翌春の活躍馬を送り出しているのは表1の通り。この傾向からいえば、今年の東スポ杯出走馬のなかに来年の皐月賞やダービーで上位に入る馬がいたとしても、まったく不思議なことではない。

東スポ杯における着順と人気がどうだったかと見ていくと、着順に関しては1着が7頭で、2着、4着、6着が各1頭という内訳。人気は5頭が1番人気で、2番人気と4番人気が各2頭、8番人気が1頭となっている。そして、2着以内もしくは2番人気以内のどちらも満たせなかったのは13年に8番人気6着だったワンアンドオンリーだけということを考えると、少なくともどちらかは満たしておきたい。

では、皐月賞とダービーのどちらで好走が多いかを比較すると、皐月賞が延べ5頭、ダービーが延べ8頭とダービーのほうが多い。また、同一馬の着順を比較しても、皐月賞のほうが上だったのは4頭(サダムパテック、コディーノ、イスラボニータ、ヴェロックス)なのに対し、ダービーのほうが上だったのは6頭(ローズキングダム、ディープブリランテ、ワンアンドオンリー、サトノクラウン、スワーヴリチャード、ワグネリアン)と、こちらもダービーのほうが多い。東スポ杯、日本ダービーともに東京競馬場で行なわれるので当然かもしれないが、皐月賞よりダービーとのつながりが強いのが東スポ杯というレースのようだ。付け加えると、ダービーで好走した8頭中5頭が、皐月賞4着以下から巻き返した点も馬券的なポイントとなるだろう。

次に、表1で掲載した10頭を「皐月賞のほうが高い着順を収めた馬」と「ダービーのほうが高い着順を収めた馬」に分けて、それぞれ東スポ杯でどんなレースをしていたのか、傾向がよく表れているデータを見ていきたい。なお、東スポ杯で2着以下だった場合の「勝ちタイム」は、1着馬のものをカッコ付きで掲載しており、欄外に1着馬とのタイム差を記している。

■表2 皐月賞のほうが高い着順を収めた馬 東スポ杯成績

着順 人気 馬名 勝ちタイム 上がり3F 上がり順 キャリア
10年 1 1 サダムパテック 1分47秒3 33秒7 1位 2戦 フジキセキ
12年 1 1 コディーノ 1分46秒0 34秒0 3位 2戦 キングカメハメハ
13年 1 2 イスラボニータ 1分45秒9 34秒1 5位 3戦 フジキセキ
18年 4 2 ヴェロックス (1分46秒6) 34秒1 5位 2戦 ジャスタウェイ

※18年4着のヴェロックスはタイム差なし

2013/11/16 東京11R 東京スポーツ杯2歳S(G3) 1着 1番 イスラボニータ

まず、皐月賞のほうが高い着順を収めた馬を見ていく。該当するのは表2に掲載した4頭。その特徴として挙げられるのが、総じて「勝ちタイム」が速いことだ。13年1着のイスラボニータが記録した1分45秒9は過去10年最速のタイムで、現在も東京芝1800mの2歳レコードとして残っている。その前年に1着のコディーノが記録した1分46秒0も当時のレコードで、これが2番目のタイム。18年のヴェロックスは4着ながら勝ち馬とのタイム差はなく、この年の1分46秒6は過去10年で3位タイ。10年1着のサダムパテックも5番目の勝ちタイムだから遅いほうではない。古くより「皐月賞はいちばん速い馬が勝つ」というだけに、東スポ杯を速い時計で走破していた馬が皐月賞で好成績というのは納得しやすい傾向と言える。

ほかでは「キャリア」にも注目したい。のちに紹介する表3では6頭中3頭がキャリア1戦で東スポ杯に出走しているのだが、表2の4頭にそうした馬はおらず、いずれも2戦以上のキャリアを持っていた。牡馬三冠で最初に行なわれる皐月賞では完成度も問われるだけに、わずかな違いではあってもキャリアの多さが活きる場面があるのではないだろうか。

■表3 ダービーのほうが高い着順を収めた馬 東スポ杯成績

着順 人気 馬名 勝ちタイム 上がり3F 上がり順 キャリア
09年 1 1 ローズキングダム 1分48秒2 34秒0 4位 1戦 キングカメハメハ
11年 1 1 ディープブリランテ 1分52秒7 35秒9 1位 1戦 ディープインパクト
13年 6 8 ワンアンドオンリー (1分45秒9) 33秒7 3位 4戦 ハーツクライ
14年 1 4 サトノクラウン 1分47秒9 33秒8 1位 1戦 Marju
16年 2 4 スワーヴリチャード (1分48秒3) 33秒6 1位 2戦 ハーツクライ
17年 1 1 ワグネリアン 1分46秒6 34秒6 1位 2戦 ディープインパクト

※13年6着のワンアンドオンリーは0秒4差、16年2着のスワーヴリチャードはタイム差なし

2017/11/18 東京11R 東京スポーツ杯2歳S(G3) 1着 3番 ワグネリアン

続いて、ダービーのほうが高い着順を収めた馬を見ていく。こちらで着目すべきは「上がり3F」と「上がり順」だ。表3に掲載した6頭中4頭が東スポ杯で上がり1位を記録しており、上がり33秒台をマークした馬も3頭いる。この通り、ダービーの着順が上だった馬は総じて東スポ杯で速い上がりを使っている。前項の表2を見ると、上がり1位を記録したのも、上がり33秒台を記録したのもサダムパテック1頭だけ。このあたりに皐月賞向き、ダービー向きの適性の違いがよく表れているのではないか。

先に少し触れたが、表3のほうが「キャリア」も全体に少なく、新馬戦を勝ち上がったばかりのキャリア1戦の馬が6頭中3頭を数える。一般に、キャリアが少ない馬のほうが伸びしろを多く残していると考えられ、これがダービーで着順を上げてくる原動力のひとつになっているのではないだろうか。最後にもうひとつ「父」にも触れておくと、表2にはフジキセキ産駒が2頭いるのに対し、表3にはディープインパクトとハーツクライの産駒が各2頭おり、父に由来する距離適性の差が如実に表れている。

ライタープロフィール

出川塁(でがわ るい)

1977年熊本県生まれ。上智大学文学部卒業後、出版社2社で競馬専門誌、競馬書籍の編集に携わり、2007年からフリーライターに。「競馬最強の法則」「サラブレ」「優駿」などへ寄稿するほか、出版社勤務時代を含めて制作に関わった競馬書籍は多数。馬券は単勝派だが、焼肉はタン塩派というわけではない。メインの競馬のほか、サッカーでも密かに活動中。


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