データde出〜た
第1368回 オークス馬が復帰! エリザベス女王杯を占う
2019/11/7(木)
今週は京都競馬場でエリザベス女王杯が行われる。アーモンドアイやリスグラシューといった超トップクラスの馬は不在だが、その分多数の馬にチャンスがありそうなレースだ。いつものように過去10年のデータを分析し、今年のレースを占っていくことにする。データ分析にはJRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用した。
■表1 エリザベス女王杯の好走馬(過去10年)
年 | 着順 | 馬名 | 年齢 | 人気 | 脚質 | 前走レース名 | 前着 | 備考 |
18年 | 1 | リスグラシュー | 4 | 3 | 中団 | アイルラG2 | 2 | ヴィクトリアM2着 |
2 | クロコスミア | 5 | 9 | 逃げ | アイルラG2 | 5 | ||
3 | モズカッチャン | 4 | 1 | 中団 | 札幌記念G2 | 3 | ||
17年 | 1 | モズカッチャン | 3 | 5 | 先行 | 秋華賞G1 | 3 | オークス2着 |
2 | クロコスミア | 4 | 9 | 先行 | アイルラG2 | 1 | ||
3 | ミッキークイーン | 5 | 3 | 中団 | 宝塚記念G1 | 3 | ||
16年 | 1 | クイーンズリング | 4 | 3 | 中団 | 府中牝馬G2 | 1 | |
2 | シングウィズジョイ | 4 | 12 | 先行 | 府中牝馬G2 | 7 | ||
3 | ミッキークイーン | 4 | 2 | 中団 | ヴィクトG1 | 2 | ||
15年 | 1 | マリアライト | 4 | 6 | 中団 | オールカG2 | 5 | マーメイドS2着 |
2 | ヌーヴォレコルト | 4 | 1 | 中団 | オールカG2 | 2 | ||
3 | タッチングスピーチ | 3 | 4 | 中団 | 秋華賞G1 | 6 | ローズS1着 | |
14年 | 1 | ラキシス | 4 | 3 | 中団 | オールカG2 | 2 | |
2 | ヌーヴォレコルト | 3 | 1 | 先行 | 秋華賞G1 | 2 | オークス1着 | |
3 | ディアデラマドレ | 4 | 6 | 中団 | 府中牝馬G2 | 1 | マーメイドS1着 | |
13年 | 1 | メイショウマンボ | 3 | 2 | 中団 | 秋華賞G1 | 1 | オークス1着 |
2 | ラキシス | 3 | 6 | 先行 | 鳴滝特別1000 | 1 | ||
3 | アロマティコ | 4 | 5 | 中団 | 府中牝馬G2 | 7 | マーメイドS3着 | |
12年 | 1 | レインボーダリア | 5 | 7 | 中団 | 府中牝馬G2 | 4 | |
2 | ヴィルシーナ | 3 | 1 | 先行 | 秋華賞G1 | 2 | オークス2着 | |
3 | ピクシープリンセス | 4 | 5 | 後方 | 1000万下 | 1 | ||
11年 | 1 | スノーフェアリー | 4 | 1 | 中団 | チャンG1 | 3 | |
2 | アヴェンチュラ | 3 | 2 | 先行 | 秋華賞G1 | 1 | クイーンS1着 | |
3 | アパパネ | 4 | 4 | 先行 | 府中牝馬G2 | 14 | ||
10年 | 1 | スノーフェアリー | 3 | 4 | 中団 | 英センG1 | 4 | 英・愛オークス1着 |
2 | メイショウベルーガ | 5 | 2 | 中団 | 京都大賞G2 | 1 | ||
3 | アパパネ | 3 | 1 | 中団 | 秋華賞G1 | 1 | オークス1着 | |
09年 | 1 | クィーンスプマンテ | 5 | 11 | 逃げ | 京都大賞G2 | 9 | |
2 | テイエムプリキュア | 6 | 12 | 先行 | 京都大賞G2 | 14 | ||
3 | ブエナビスタ | 3 | 1 | マクリ | 秋華賞G1 | 3 | オークス1着 |
まずは、過去10年のエリザベス女王杯で3着以内に好走した馬を見ていくことにする。すぐに気づく大きな特徴としては、同じ馬が複数回好走しているということ。近2年はクロコスミアとモズカッチャン、それ以前にはミッキークイーンやヌーヴォレコルト、ラキシスらが2年続けて好走。外国馬のスノーフェアリーは連覇の偉業を成し遂げた。
年齢的な観点からは「3歳馬対古馬」が毎年ポイントになる。過去10年では古馬が優勢、3歳馬が若干押されている印象だ。
人気面では1番人気がやや不振で、勝利したのは2011年のスノーフェアリーのみ。2番人気も1勝にとどまり、3番人気が最多の3勝をマークしている。人気薄の激走は09年が印象深い。特異なレース展開となり、11番人気のクィーンスプマンテが逃げ切って勝利し、2着には12番人気のテイエムプリキュアが入った。この年ほど大きな波乱はその後起きていないが、伏兵馬の食い込みは目に付く。
■表2 エリザベス女王杯の脚質別成績(過去10年)
脚質 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回収率 | 複回収率 |
逃げ | 1- 1- 0- 8/ 10 | 10.0% | 20.0% | 20.0% | 771 | 198 |
先行 | 1- 7- 1- 29/ 38 | 2.6% | 21.1% | 23.7% | 20 | 143 |
中団(差し) | 8- 2- 7- 57/ 74 | 10.8% | 13.5% | 23.0% | 95 | 50 |
後方(追い込み) | 0- 0- 1- 47/ 48 | 0.0% | 0.0% | 2.1% | 0 | 7 |
マクリ | 0- 0- 1- 2/ 3 | 0.0% | 0.0% | 33.3% | 0 | 36 |
脚質の傾向は表2を見た方がわかりやすいだろう。先ほど「09年は特異なレース展開」と述べたが、このエリザベス女王杯はそもそも逃げ馬の好走が少ないという傾向があるからだ。また、先行馬も勝ち切るのに苦労している。【1.7.1.29】の成績で、2着が7回と異常に多い。その分、差し馬の勝率が高い。【8.2.7.57】と勝ち馬を8頭も出しているのだ。ペースはスローになることが多いのだが、前残りではなく、差しが決まるイメージを持って予想する方が良さそうだ。
前走レースは、3歳馬であればほぼ秋華賞になる。同レースで3着以内に入っていた馬が特に有力だ。また、好走馬にはオークスで連対していた馬が非常に多い。モズカッチャンやヌーヴォレコルト、メイショウマンボにヴィルシーナ、アパパネにブエナビスタと、大半の馬が該当する。10年1着のスノーフェアリーも英・愛のオークス馬だった。春のクラシック(特にオークス)で好走していた馬なら心強い。
一方、古馬は府中牝馬S組が最有力。17年からレース名がアイルランドT府中牝馬Sと変わったが、レース条件に変更はない。G3時代の府中牝馬Sは本番との関連性は薄かったが、G2になってからはトライアルとしての重要度が非常に高くなった。オールカマーや札幌記念、京都大賞典を経て好走した馬も多く、前走G2組が圧倒的に強い傾向だ。12年3着ピクシープリンセスのように前走条件クラスから好走するケースは稀だ。
古馬はとにかく前走G2以上のレースに出走して、5着以内に入っていることが望ましい。大敗していた馬が巻き返すケースは少ない。また、意外と同年のマーメイドS好走馬が多い。マリアライトやディアデラマドレ、アロマティコが該当。G3の実績にまで目を広げるなら、同レースに注目だ。
【結論】
それでは今年のエリザベス女王杯を占っていくことにする。出走予定馬は表3の通りだ。
■表3 今年のエリザベス女王杯出走予定馬
馬名 | 年齢 | 前走レース | 前着 | 前脚 | 備考 |
アルメリアブルーム | 5 | 大原SH・3勝 | 1 | 差し | |
ウラヌスチャーム | 4 | 京都大賞G2 | 7 | 中団 | |
クロコスミア | 6 | アイルラG2 | 5 | 先行 | |
クロノジェネシス | 3 | 秋華賞G1 | 1 | 差し | |
ゴージャスランチ | 4 | 日本海S・3勝 | 1 | 逃げ | |
サトノガーネット | 4 | アイルラG2 | 8 | 後方 | |
サラキア | 4 | オクトー(L) | 3 | 逃げ | |
シャドウディーヴァ | 3 | 秋華賞G1 | 4 | 差し | |
スカーレットカラー | 4 | アイルラG2 | 1 | 追込 | マーメイドS3着 |
センテリュオ | 4 | 新潟記念HG3 | 7 | 先行 | |
フロンテアクイーン | 6 | アイルラG2 | 2 | 差し | 中山牝馬S1着 |
ブライトムーン | 5 | 古都S・3勝 | 3 | 先行 | |
ポンデザール | 4 | 丹頂SH | 1 | 差し | |
ミスマンマミーア | 4 | 六社SH・3勝 | 3 | 差し | |
ラッキーライラック | 4 | アイルラG2 | 3 | 先行 | 中山記念2着 |
ラヴズオンリーユー | 3 | 優駿牝馬G1 | 1 | 差し | |
レイホーロマンス | 6 | オクトー(L) | 10 | 中団 | |
レッドランディーニ | 4 | アイルラG2 | 7 | 中団 |
まず3歳馬はクロノジェネシスとシャドウディーヴァ、ラヴズオンリーユーがエントリー。先の秋華賞ではクロノジェネシスが優勝。順調度と勢いでは、同馬に軍配が上がる。しかし、春のオークスを制したのはラヴズオンリーユー。内容的にも完勝で4戦4勝の無敗馬でもある。秋は一頓挫があり、秋華賞を回避。ローテーションに狂いは生じたが、近年は休み明けでもしっかりと仕上げられる調教設備がある。よって、実績を重視してクロノジェネシスよりもラヴズオンリーユーを上位に取りたい。
古馬勢は今年も前走アイルランドT府中牝馬S組が中心になるだろう。まずは、クロコスミア。エリザベス女王杯では2年連続で2着に好走。今年は逃げるか、先行するかわからないが、マークが必要だろう。府中牝馬S勝ち馬のスカーレットカラーは、注目レースに取り上げたマーメイドSで3着に入り、さらにクイーンS2着、前走で重賞初制覇と上り調子で来ている点に好感を持てる。末脚を生かせるタイプで、脚質的にも狙える。あとはフロンテアクイーンとラッキーライラックも押さえておきたい。
ライタープロフィール
小田原智大(おだわら ともひろ)
1975年6月、東京生まれ。早稲田大学商学部卒業後、業界紙記者を経て、(株)レイヤード入社。ライター&エディターとして活躍。JRA-VANデータの配信初期から、いち早くデータ競馬の有効性に着目する。05年5月より「競馬 最強の法則WEB」にて、障害戦を除く全重賞レースの傾向と対策、予想を展開。「オッズパーク ダートグレードデータ作戦」では、地方競馬の重賞の攻略にも取り組んでいる。仕事の関係でなかなか競馬場には行けなくなったが、年に1、2回行くローカル遠征が楽しみ。