データde出〜た
第1352回 本番まで混戦は濃厚か!? ローズSを占う
2019/9/12(木)
今週日曜日は阪神競馬場でローズSが行われる。秋華賞に向けての重要なトライアルで、春の実績馬と夏の上がり馬との戦いが一つの見どころだ。春に桜花賞を制したグランアレグリアはスプリンターズSへの出走を表明し、オークス馬のラヴズオンリーユーは残念ながら故障が判明。実績トップクラスの両馬が、秋華賞に出てこないことが確定している。そんな中、ローズSを制して本番に弾みをつけるのはどの馬か。いつものように過去10年のデータを分析し、今年のレースを展望してみることにする。データの集計・分析には、JRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用した。
■表1 ローズSの好走馬(過去10年)
年 | 着順 | 馬名 | 人気 | キャリア | 前走レース名 | 前着 | 前半4F | 後半4F | 4角 |
18年 | 1 | カンタービレ | 5 | 5 | 優駿牝馬G1 | 13 | 47.5 | 45.8 | 1 |
2 | サラキア | 2 | 5 | 青島特別500 | 1 | 8 | |||
3 | ラテュロス | 13 | 9 | HTB賞1000 | 4 | 7 | |||
17年 | 1 | ラビットラン | 8 | 4 | 500万下 | 1 | 46.4 | 46.9 | 13 |
2 | カワキタエンカ | 6 | 6 | 三面川特1000 | 2 | 1 | |||
3 | リスグラシュー | 3 | 7 | 優駿牝馬G1 | 5 | 15 | |||
16年 | 1 | シンハライト | 1 | 5 | 優駿牝馬G1 | 1 | 47.4 | 46.8 | 10 |
2 | クロコスミア | 11 | 10 | フローラG2 | 14 | 1 | |||
3 | カイザーバル | 6 | 7 | 道新スポ1000 | 6 | 4 | |||
15年 | 1 | タッチングスピーチ | 7 | 5 | 500万下・牝 | 1 | 46.7 | 46.8 | 15 |
2 | ミッキークイーン | 1 | 5 | 優駿牝馬G1 | 1 | 17 | |||
3 | トーセンビクトリー | 2 | 7 | 西部スポ1000 | 1 | 9 | |||
14年 | 1 | ヌーヴォレコルト | 2 | 6 | 優駿牝馬G1 | 1 | 47.3 | 46.2 | 4 |
2 | タガノエトワール | 15 | 3 | 未勝利・牝 | 1 | 9 | |||
3 | リラヴァティ | 9 | 9 | 西海賞1000 | 4 | 1 | |||
13年 | 1 | デニムアンドルビー | 1 | 5 | 優駿牝馬G1 | 3 | 46.3 | 49.5 | 12 |
2 | シャトーブランシュ | 9 | 6 | 鳥栖特別500 | 1 | 17 | |||
3 | ウリウリ | 10 | 9 | 500万下・牝 | 1 | 9 | |||
12年 | 1 | ジェンティルドンナ | 1 | 6 | 優駿牝馬G1 | 1 | 49.0 | 45.4 | 2 |
2 | ヴィルシーナ | 2 | 6 | 優駿牝馬G1 | 2 | 5 | |||
3 | ラスヴェンチュラス | 3 | 6 | 三面川特1000 | 3 | 7 | |||
11年 | 1 | ホエールキャプチャ | 1 | 8 | 優駿牝馬G1 | 3 | 49.3 | 46.4 | 3 |
2 | マイネイサベル | 10 | 8 | 優駿牝馬G1 | 6 | 8 | |||
3 | キョウワジャンヌ | 7 | 8 | エクセル1000 | 1 | 5 | |||
10年 | 1 | アニメイトバイオ | 4 | 9 | 優駿牝馬G1 | 4 | 46.7 | 46.7 | 7 |
2 | ワイルドラズベリー | 6 | 6 | 白百合S | 1 | 11 | |||
3 | エーシンリターンズ | 5 | 8 | 優駿牝馬G1 | 14 | 7 | |||
09年 | 1 | ブロードストリート | 5 | 6 | 優駿牝馬G1 | 4 | 46.3 | 46.6 | 8 |
2 | レッドディザイア | 1 | 4 | 優駿牝馬G1 | 2 | 12 | |||
3 | クーデグレイス | 10 | 9 | ルスツ特1000 | 2 | 2 |
表1は過去10年のローズSで3着以内に好走した馬の一覧。まず、人気を見ると1番人気が4勝2着2回という成績。好走率は普通といった印象だ。2012年は1〜3番人気が上位を独占したが、このようなガチガチの人気サイドはこの年だけ。その他の年では、2着と3着には二けた人気の馬がそれぞれ3回もきており、高配当も十分見込める。
上位人気に支持されるのは主に春の実績馬。基本的には桜花賞やオークスで上位にきた馬が注目される。前走オークス出走馬は非常に多く、好走馬30頭中14頭が該当。さらにその内10頭が、オークスで4着以内に入っていた。よって、大敗馬が巻き返してくるケースは少ないのだが、昨年優勝したカンタービレはオークス13着だった。高配当の馬券を当てるには、このようなタイプの馬も拾えるようにしたい。
一方、前走オークス組以外は、夏のローカルで使われていた馬が多い。札幌や新潟、小倉などの条件戦で好走した馬がここに挑んでくる。2勝(1000万)クラスだけでなく、1勝(500万)クラスや未勝利クラスを使われていた馬も多くいるのが大きな特徴だ。
例えば、14年に15番人気ながら2着に入ったタガノエトワールは、前走未勝利戦を勝ったばかり。しかも、キャリアはわずか3戦という戦歴だった。このように比較的キャリアが浅い馬が、ローズSで上位にきている。具体的にはキャリア4〜6戦の馬が狙い目。昨年1着のカンタービレや2着のサラキアはキャリア5戦。春の実績馬も含め、キャリアは浅い方が感触はいい。
ただ、キャリア7戦以上、前走2勝(1000万)クラスで3着以下という馬がきているのも事実。18年ラテュロス、16年カイザーバル、14年リラヴァティが人気薄で3着に食い込んでいる。
あとは、レースのペースと好走馬の4角(コーナー)位置にも注目した。表にはレースの前半4ハロンと後半4ハロンの時計を記載。それぞれの数字を比較することで、おおまかにペースがわかるかと思う。過去10年ではスローペースとミドルペースがほぼ半分ずつある。13年だけハイペースになった。この年は重馬場で時計がかかったのも影響したが、とにかく後半の上がり時計がかかった。それに伴い、上位にきた馬は差し・追い込み馬ばかり。勝ったデニムアンドルビーをはじめ、4角で後ろの方にいた馬が上位を占めた。
良馬場のミドルペースでも10年のように差し馬が上位を占めるケースもある。ローズS全体の傾向としては、決め手がある馬の方が上位にきやすい。ただ、近3年は4角先頭の馬が毎年馬券になっている。ハイペースにさえならなければ、逃げ馬が残る可能性も十分あると考えるべきだろう。
【結論】
それでは今年のローズSを占っていく。出走予定馬は表2の通り。
■表2 今年のローズS出走予定馬
馬名 | キャリア | 前走レース | 前着 | 決め手 | 2走前レース | 2走前着 | 決め手 |
アルティマリガーレ | 4 | 長久手特・2勝 | 1 | 差し | 1勝クラス | 1 | 差し |
ウィクトーリア | 6 | 優駿牝馬G1 | 4 | 追込 | フローラG2 | 1 | 差し |
シゲルピンクダイヤ | 5 | 優駿牝馬G1 | 12 | 中団 | 桜花賞G1 | 2 | 差し |
シャドウディーヴァ | 7 | 優駿牝馬G1 | 6 | 中団 | フローラG2 | 2 | 差し |
スイープセレリタス | 6 | 月岡温泉・2勝 | 1 | 先行 | 500万下* | 1 | 追込 |
ダノンファンタジー | 7 | 優駿牝馬G1 | 5 | 中団 | 桜花賞G1 | 4 | 先行 |
ビーチサンバ | 6 | 優駿牝馬G1 | 15 | 中団 | 桜花賞G1 | 5 | 中団 |
ビックピクチャー | 7 | 1勝クラス | 1 | 先行 | 1勝クラス・牝 | 2 | 先行 |
ベストクィーン | 10 | 未勝利 | 1 | 先行 | ラベン | 2 | 先行 |
メイショウショウブ | 9 | クイーンG3 | 8 | 先行 | 優駿牝馬G1 | 17 | 後方 |
モアナアネラ | 7 | 都井岬特・1勝 | 1 | 先行 | 1勝クラス・牝 | 2 | 差し |
ラシェーラ | 9 | 糸魚川特・1勝 | 12 | 逃げ | スイート(L) | 7 | 中団 |
登録の段階からフルゲートに満たないことは確定しており、頭数的にもやや寂しいレースだ。冒頭に述べたようにオークス馬・ラヴズオンリーユーがいないため、オッズの予想はやや難しい。それでも前走オークス組が上位人気を占めそうな感じだ。
データ的にはウィクトーリアが1番手。前走オークスは4着で、今回のメンバーでは同レース最先着を果たしている。ただ、5着ダノンファンタジーと6着シャドウディーヴァともほとんど差がなく、この3頭の走破タイムは2分23秒3で並んでいる。オークスで大敗したシゲルピンクダイヤ(桜花賞2着)やビーチサンバ(阪神JF3着)も、実力・実績的には遜色がない。阪神芝1800mならば見直さなければいけないし、普通は軽視しにくい。
一方、別路線組は前走2勝クラスを勝利しているアルティマリガーレとスイープセレリタスに注目。キャリアはそれぞれ4戦、6戦と浅いのも強みだ。前走1勝クラス・未勝利クラスの馬は比較的キャリアが多い。上がり目が見込みにくいという意味で、今回は苦しそうだ。
少頭数ながら上位人気勢が実力伯仲で、正直、難しい割には配当的な妙味がそれほどないレースかもしれない。ただ、ペースはあまり上がりそうにないのは大きなポイント。どの馬が逃げるかわからないメンバー構成だ。表2で出走予定馬の前走と2走前の成績・決め手を記したが、上位人気になりそうな馬がほとんど末脚を生かしたいタイプだ。そんな中、ダノンファンタジーは桜花賞で先行、スイープセレリタスは前走月岡温泉特別で先行している。前者は、折り合い次第ながら今回は前々で競馬をした方が、有利な展開に持ち込めると予想する。
ライタープロフィール
小田原智大(おだわら ともひろ)
1975年6月、東京生まれ。早稲田大学商学部卒業後、業界紙記者を経て、(株)レイヤード入社。ライター&エディターとして活躍。JRA-VANデータの配信初期から、いち早くデータ競馬の有効性に着目する。05年5月より「競馬 最強の法則WEB」にて、障害戦を除く全重賞レースの傾向と対策、予想を展開。「オッズパーク ダートグレードデータ作戦」では、地方競馬の重賞の攻略にも取り組んでいる。仕事の関係でなかなか競馬場には行けなくなったが、年に1、2回行くローカル遠征が楽しみ。